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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第七十八話

 組合に入ると中は閑散としていた。珍しいこともあるんだなぁ。いつもはもうちょっと人がいるのに。


「こんにちは、ケイトさん。」


「あら、リュウジさんこんにちは。今日はどうしました?」


 受付に座っていたケイトさんに声をかけるとにっこり微笑んでくれる。この人も美人さんだなぁ。


「この間の報酬をまだもらってないって聞いてもらいに来ました。」


「あ、そうですね!リュウジさんたちはまだ貰っていなかったんでしたね。」


 まだ?ってことはほかの人たちはもう貰ってるのか。


「なんで僕たちだけ後だったんですか?」


「ニーナさんとタニアさんが、リュウジさんがいないときに受け取れませんって言って受け取ってくれなかったんです。」


「そうですか。何でですかね?」


「きっと一番頑張ったリュウジさんに受け取って貰いたかったんじゃないですか?」


 そんな気を使ってくれなくてもよかったんだけど、まあ、そういうことなら有難く受け取りましょう!


「じゃあ、早速ください!」


「うふふ、ちょっとお待ちくださいね?」


 ケイトさんはカウンターの下から木札を三個と羊皮紙を一枚取り出して渡してくれた。


「はい、報酬の引き換え札とタニアさんの級昇格通知書です。タニアさんに渡して下さい。それで、いつでもいので冒険者証を書き換えますので持ってきてくださいと伝えてくださいね。」


 おお!タニアが鉄級になるんだ!


「今回はタニアさんだけですけど、ニーナさんとリュウジさんももうちょっと依頼を熟せば昇格しますよ。今回の緊急依頼での貢献度が大きかったんですね。」


「じゃあ、ライル達も?」


「はいそうです。彼らも鉄級に上がっていますよ。頑張って下さいね。」


「もうちょっとですか……!」


 うしっ、気合入れよ!よーし!頑張って鉄級になるぞ!


 引き換え札を貰って買い取り担当のアッシュ爺さんの所に行く。


「おう、リュウジ、元気になって良かったなぁ。」


「ありがとうアッシュさん。はいこれ。」


 はいよと受け取ってすぐに三つの皮袋を渡してくれる。


「これがリュウジの分で、ニーナちゃんとタニアちゃんのはこっちだな。」


 僕のは他の二つに比べて明らかに重い。いくら入ってるんだ?


「なんだか僕のはずいぶん重いけど…」


「リュウジの分は上乗せが大きくてな。あとの二人もちゃんと多くなってるから心配するな。頑張ったご褒美だな。」


 自分の分を開けてみる。げ、金貨が一、二、三…五枚!?


「いいの?」


「いいも何もそういう評価だからな。貰っとけ。」


 ありがとうとお礼を言ってウェストポーチに仕舞い、お腹側に持ってきてしっかり持つ。盗られないようにしないと!


 この町は比較的平和らしいけど掏りがいない訳じゃないからね。リュックサック持ってこればよかった。


 ニーナとタニアに渡さないとね。しかし、思ったよりも多かったなぁ。でもこれで防具が買えるな。あ、お金下ろすの忘れてた!っていっぱい貰ったからいいのか。よし、寄り道せずに帰ろう。




「ニーナ、大丈夫?入ってもいい?」


 宿についてニーナに部屋をノックすると意外と元気な声が返ってきた。


「はい、どうぞ。」


 扉を開けて中に入るとベッドの上で座っているニーナと目があった。


「もう大丈夫みたいだね。調子はどう?」


「はい!心配してくれてありがとうございます。もう大丈夫です。」


 朝より顔色もいいし、もうすっかり良さそうだ。


「ニーナ、良くなった?」


 かちゃと音がして扉が開いたと思ったらタニアが入ってきた。


「あ、タニア。ちょうどよかった。貰ってきたよ。」


「ん?…ああ!報酬ね!どうだった?多かった?」


「僕の分は金貨五枚だった。吃驚したよ。」


 はいこれがニーナの、これがタニアの。と皮袋を渡すと二人とも中を覗いておお!と声を上げる。


「金貨三枚も入ってます!こんなに…」


「あたしも!やった!あれが買える!」


「あ、あとタニアにはこれも。」


 はい、と羊皮紙を渡す。


「何これ?」


「開けてみてよ。」


 中身を読むと最初は訝しげだったタニアの顔が見る見るうちに笑顔になっていく。


「やった!!やったー!」


「え?どうしたんですか?タニアさん。」


 勢いあまってタニアに抱き着かれたニーナは、きゃっと言いながらベッドに押し倒される。


「ニーナ!あたし、鉄級になったよ!ん~!」


 ニーナに抱き着き頬擦りをするタニアは滅茶苦茶嬉しそうだ。


「良かったな、タニア。でも、そのまま何もなく鉄級になれるのか?」


 試験とか無いんだろうか。


「なれますよ。銅級から鉄級へは組合が決めた規定に従って上がれます。昇級試験があるのは銀級に上がるときからですね。」


 タニアに抱き着かれながらニーナが教えてくれる。


「そういえば、ニーナと僕ももうちょっとだって言われたよ?」


 ケイトさんがそう言っていた覚えがある。まあもうちょっとがどれくらいかは分からないけどね。


「そうなんですか!?こうしてはいられません!リュウジさん!依頼を受けましょう!」


 さあ、早く行きますよ!とタニアを引きはがしてベッドの上に立ち上がるニーナ。気が早いなぁ。


「今日は駄目だよ?まだ本調子じゃないでしょ?ニーナ。」


「いえ、もう大丈夫です!今から着替えます!」


 と言いながら寝間着を脱ぎ始めるニーナ。


「ちょ、ニーナ!まだリュウジがいるから!」


 首元のリボンをほどくニーナの手を慌てて止めるタニア。何が起こってるのか反応できなかった僕。


「リュウジ!あっち向いてて!」


 タニアの大声で再起動した僕は、慌てて部屋を出る。扉の向こうでは、二人が何かを言っているくぐもった声が聞こえてくるが聞き耳を立てるのはマナー違反だな。自分の部屋へ行こう。


 部屋ヘ帰ってきたのはいいけど、何しよう?あ、武器屋に行って整備してもらわなきゃ。また出かけるって言いに行くか。


「ニーナ、いる?」


 扉をノックすると勢いよく開いた。


「はい!いますよ!組合に行くんですよね!?」


 まだ、テンションが落ちてなかったかぁ。


「ニーナ。依頼はまだ受けれないよ。」


「なんでですか?」


「だって、鎧がないもん。」


「あ。……そうでした。」


 僕の革鎧が壊れちゃったのを思い出したみたいで、一気にテンションが落ちた。


「ごめんなさい。忘れてました。」


「ああ、いいんだ。もう注文はしてきたんだけど、出来上がるのは五日後だって言われたよ。それまで休養にする?それとも採取依頼でも受ける?あと、今から剣も手入れに出そうかと思ってるんだ。」


「そうですか。じゃあ、明日タニアさんと一緒に決めましょう。私も一緒に行っていいですか。」


「いいよ。武器屋に行くだけだけどね。」


「リュウジさん、マジックバックを持ってきてください。道具屋にも行きましょう。ポーションを補充しないと一本もないんです。全部使っちゃいました。」


「わかった、持ってくるよ。ちょっと待っててね。」


 部屋に戻ってリュックサックが入った背嚢を背負ってニーナの部屋をノックする。


「ちょっと待っててください。すぐにいきます。」


 言われて待つこと五分くらい?遅いなぁ何やってるんだろうと思いながら壁にもたれて待っていたら扉が開いた。


「ごめんなさい、お待たせしました。」


「遅かった…可愛いねぇ。」


 出てきたニーナは、さっき着ていた冒険用の装備じゃなくて、真っ白なブラウスと若草色の膝下丈のスカートという姿だった。これで鍔の広い帽子を被っていたらどこぞのお嬢様だな。


「さあ、行きましょう?リュウジさん。」


 僕の手を取って宿の階段を下りてロビーへ行き、鍵を預けるとき女将さんがニーナを見て


「あら、ニーナちゃんデートかい?」


「はい、行ってきます!」


なんてこと言うもんだからそれにニーナが嬉しそうに答えると、周りにいた男たちの視線が痛いこと!まあ、頑張って気にしないことにしよう。


「まずは、武器屋からですね。行きましょう!」


 僕も着替えてこれば良かったかなぁ。こっちに来たばっかりの時に買ったヨレヨレの普段着だから、ニーナとの差が凄くて申し訳ない。


「ニーナ、服も買いに行こうか。僕が持ってる服はこんなのばっかりだからさ。」


「わかりました。じゃあ道具屋さんの後に行きましょう。」


 振り返って後ろにキラキラした光が幻視出来る笑顔が眩しすぎる。何だこの可愛い生き物は!女の人は服とか買いに行くのが好きだなぁ。これは地球あっちでも異世界こっちでも変わらないのか。僕も買い物は好きなんだけど、時間がかかるのだけは勘弁してほしいなぁ。


「まずは、武器屋に行こうか。」


「はい!」


 それからニーナと一緒に色々見て回った。武器屋では蒼のショートソード(そんな名前だったんだ)を預けて、道具屋では初級ポーションを五本と中級があったので一本購入した。ここまでで使った金額は、銀貨三枚と大銅貨二枚だ。驚くほど安い。ラメラーアーマーって高いんだなぁ。古着屋では程度いいものを選んで三着購入した。一応デートだと思っていたからニーナにもプレゼントしたよ?そのうちちゃんと仕立てたのをプレゼントできるといいなぁ。

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