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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第七十七話

「ルウリさんはぁ、わらしのれす!られにもあげまへん!」


「ニーナ、飲みすぎだ。水飲んで。ほら。」


「あい!あいあとごじゃます!」


 んく、んくと僕が持つコップから水を飲む。自分で持ってくれないかなぁ。


「うふふ、誰も取りませんよ~。ね~タニアさん。」


「なんであたし?」


 あれから一時間くらい経ったかどうかってところなんだけど、ニーナが僕に引っ付いて離れなくなった。僕の右腕をしっかり抱えてるから柔らかいものが押し付けられて最初はドキッとしたけど、もう慣れたな。役得だと思っておこう。


「んふふ~、ルウリさん~。んふふ~」


 ぐりぐりと頬ずりをしてくるニーナ。呂律も怪しいしかなり酔っぱらってるなぁ。まあ心配かけたし好きにさせとくか。可愛いし。


 シアさんは、もうダウンして突っ伏して寝ている。ニーナもこの通りだし、ルータニアさんもずーっとうふふ~って笑いながらタニアを弄って遊んでいる。そのタニアは、意外にも真っ赤な顔をしながら平気そうに見える。


「タニア、強いんだね。結構飲んでそうなのに。」


「うふふ~、タニアさんはね~あなたが心配だからか~さっきからゆっくり飲んでるんですよ~、ね~」


「な。そんなことないよ!あたしはニーナが飲みすぎで心配だから…あ。」


「そうなのか。タニアも飲んでいいぞ。今日は飲ませて貰えなさそうだから二人を送っていくからね。あ、でも自分で歩けるくらいにしてくれるとありがたいかな?ニーナはもう駄目そうだからさ。」


「な!馬鹿、リュウジもまだ本調子じゃないんだから気を付けた方がいいぞ。」


「ああ、ありがとな、タニア。でももう明日からでも依頼受けてもいいくらいに元気だから気にしなくてもいいよ。」


 まあ、鎧が破壊されちゃったからすぐには無理なんだけどね。今度も革鎧かなぁ。金属片が貼ってあるラメラーアーマーってあるかなぁ。聞いてみよう。


「でもさ、革鎧も壊されちゃったから新しいの買わないと駄目でしょ?暫く休んだ方が良いよ。そうしよ?ね?」


「わかったよ。心配してくれてありがとうな。タニア。」




 それからすぐに解散になった。時刻は夕方だ。祝勝会が始まったのが昼前だから、五、六時間やってたのか!意外と楽しくていろんな人たちと知り合いになれた。銀の風の人たちにも挨拶できた。態度が悪いとか全然なくてものすごくいい人たちだったよ。ここにいるほとんどの冒険者は三十代で精神年齢元の年齢が四十五歳の僕からしたら、みんな頑張れ若人って感じだなぁ。話している間にそんなことを考えてニコニコしていたら銀の風のリーダーに「なんだか年上の人と話している感じがするんだけど…ほんとに十代?」って言われ、笑ってごまかしといたよ。って、ごまかさなくても良かったんじゃないか!今僕は本当に十八だったんだった!




「ほらニーナ、大丈夫?しっかりしてよ?」


「うーん。らいりょうれすよ?ひょっとめがまわるらけれす。」


「いやあ、これは参ったな。ニーナがこんな風になるとは…これから気を付けるね、リュウジ。」


「まあ、僕がいるときはいいけど、いないときは気を付けてね。」


 今、宿への帰り道だ。僕はニーナを背負って歩いている。ニーナは明日大変だろうなぁ。きっと記憶はないだろうし二日酔い間違いなしだなぁ。


「明日ニーナは、きっと大変だから面倒見てやってね、タニア。」


「げ。リュウジも一緒にやってよ、その方がニーナも喜ぶからさ!」


「うーん、まあいいけど…あんまり役に立たないと思うよ?」


「まあまあ。あたし一人だと絶対途中で嫌になるからよろしくね。」


 宿についてニーナを部屋のベッドに寝かしてあとのことをタニアに任せて自分のベッドに寝転ぶとすぐに眠気が襲ってきてすぐに寝てしまった。


 起きたら朝だった。


 ニーナは大丈夫かな?部屋に行ってみようか。身だしなみを整えてからニーナの部屋をノックをすると返事があった。


「ニーナ、入るよ。」


「はい…どうぞ…」


 扉を開けて中に入ると、ベッドの上でぐったりしているニーナが起き上がろうとしているところだった。


「あ、寝てていいから。頭痛いだろ?何か欲しいものあるか?」


「すいません。…じゃあ、お水を貰っていいですか?」


 小さな机の上にある水差しの口に被せてあるコップに水を注いで渡そうとしたが、ニーナはもう一度起き上がろうとしているが動くと頭が痛くなるのか顔を顰めている。


「ほら、大丈夫か?」


 ニーナの背中を支えてやり起こすと「ありがとうございます。」と言いながらコップを受け取り水を一気飲みする。


「ゆっくり飲まないと咽るよ?」


 ニーナは咽ることなくコップを下すと、


「迷惑かけてごめんなさい…」


と小声でつぶやいた。


「あはは、これくらいなんてことはないよ。それだと僕の方が沢山謝らないといけないね。いつも心配かけてごめんね。そんで、いつもありがとうね。」


「そんな!…あの…昨日は何か迷惑をかけてしまいましたか?」


「ああ、あれじゃあ覚えてないよね。大丈夫だよ?可愛かったから。」


 そう言ったとたん僕を見ていたニーナの顔が真っ赤になったと思ったら両手で顔を隠して下を向いてぷるぷる震えだしてしまった。


「ううう…恥ずかしい…」


 どうやら羞恥心が爆発したらしい。覚えてることもあるのかな?まあ、聞かないでおこうか。ニーナの背中を優しくなでて出かけることを告げる。防具屋に行って新しいの買わなきゃ依頼も出来ないからね。  


 今回のことで防具の大事さが身に染みた。ホブゴブリンの蹴りは革鎧が無かったら胸に穴が開いて即死だったんじゃないかな。これから階級が上がっていくとあんなのと戦わなくちゃいけなくなるんだ。身を守る道具にお金をケチったらだめだな。


「僕はこれから出かけてくるから、今日一日ゆっくり休んでて。朝ご飯は女将さんに頼んで部屋に持ってきてもらうようにしておくよ。」


「ありがとうございます。」


「また寝た方が良いよ。お休み、ニーナ。」


 点滴できると早いんだけどな。そうだ、タニアは起きてるかな?ニーナのこと頼んでからいこう。隣のタニアの部屋をノックしたけど返事がなかった。居ないのかまだ寝てるか、か。ま、いいか。下に行って朝ご飯を食べよう。


 下に降りたらいつもより遅い時間なのに結構混んでいた。なんでだろ?不思議に思っていると真ん中あたりのテーブルで手を振っている人がいるのに気が付いた。


「タニア、おはよう。はや…くはないか。」


「おはよう、リュウジ。ニーナの所にはいった?」


「ああ、あれはまだ駄目だなぁ。今日は無理っぽいよ。だから、ニーナのこと頼んだよ。」


「はいよ。任された。どっか行くの?」


「うん、防具屋に行って新しいの買わないとね。」


「それじゃあ、組合に行って報酬を受け取ってきてよ。まだなんだ。」


「あれ?そうなの?僕が入院してるうちに済んでなかったんだ。」


 三日もあったのにね。まあ、いいか。向こうにも事情があるしな。そう言うことなら喜んでもらってこよう。


「わかった、行ってくるよ。」


「お、大活躍だったそうじゃないか、リュウジ君。朝食を一人前でいいかい?」


 席についてタニアと話していたら女将さんが注文を取りに来てくれた。ニーナの分も頼まないと。


「大活躍って言っても精一杯頑張っただけですよ。あ、ニーナの分もお願いしたんですけど、起きてこれそうにないんで部屋まで持っていくことはできますか?」


「いいよ。消化にいいものを持っていくよ。しかし、あのニーナちゃんが二日酔いだなんて珍しいこともあるもんだねぇ。」


「そりゃそうだよ。リュウジが元気になったんだからね!」


「ん?ああ!そういうことかい!わかったよ。」


 わはは、と豪快に笑いながら厨房に行ってしまった。あれで何が分かったんだろうか。僕が元気になってニーナが二日酔いになるっていうのが何で納得できるんだろう?


「なんで納得した?」


「わかんないならそのままでいいよ。」




 タニアと朝食を摂ってニーナの看病を頼み、僕は当初の目的通り防具屋へやってきた。


「おはようございまーす。」


「おう、いらっしゃい!革鎧破壊されちまったんだってなぁ。よく無事で帰ってきた。」


「そうなんですよ。あの鎧のおかげで命拾いしました。あ、あと盾も壊されちゃったんで新しいのを買おうと思って。」


「ふうむ、今度の鎧はどうしたい?また革鎧でいいならすぐに出せるぞ。」


「今までのでもいいけど、これからもっと強いのと戦うことを考えると金属製の鎧か、革鎧の上に金属片を張り付けたのが良いですかね?」


「それじゃあ、うーん、薄片鎧ラメラーアーマーかね。鎖帷子チェインメイルってのもあるが、今在庫が無くてね。ちょっと待ってな。」


 店主はそう言って奥に行ってしまう。ラメラーアーマー!ゲームだと初期~中盤まで活躍する鎧って印象だなぁ。


 店主が戻ってくるまで店内を見てみるか。客は、ほとんどいないな。強制依頼前は凄い人だったのに今は閑散としている。というかこれがいつもだったような気がする。


 お、盾が置いてあるな。前使ってた円盾は使いやすかったから同じのにしようかな。大きさも色々あるなぁ。小さいのは対人なら有効かもしれないけど、魔物だとやっぱり物足りないかなぁ。うーん、やっぱり前と同じ円盾にしよう。材質は相談だな。


「お待たせ。これなんかどうだい?」


 見せてくれたのは、前のものより薄い革鎧の上に金属片がびっしりと隙間なく縫い付けてある鎧だった。


「これが薄片鎧だ。厚手の布に縫い付けてあるものもあるが、これは薄手の革鎧に張り付けてある。だからちょっと重いが丈夫だぞ。」


 ほら、と薄片鎧を受け取ると腕にずしんと重さがかかる。前の奴より倍近く重いな。


「ちょっと、重くないかな?」


「これくらいで重いって言ってたら金属鎧なんて着れないぞ。それに一回着てみたらいい。着てみるとそんなに感じないと思うぞ。」


 そう言われて着てみて納得する。持つのと着るのとじゃあ全く感じが違ってそんなに重く感じない。


「ほんとだ。そんなに重くない。」


「いいだろそれ。そいつは注文品だから売れないが、今日注文してくれたら五日後には出来上がるようにしよう。で値段は金貨二枚と大銀貨三枚でどうだ?」


 げ、二百三十万円か!高いのか適性なのか分からん!どうしよう?正直に聞いてみよう。


「僕には高いのか安いのか分かんないけど、それはお買い得?」


「ぐ、わかったよ。真っ正直に聞きやがって…金貨二枚と大銀貨一枚にしといてやる。それ以上は負けられねえからな。」


「やった!じゃあそれでお願いします。五日後ですよね?」


「出来上がるのはな。それから調整だからさらに二日ぐらいかかるぞ。」


「わかりました。今からお金下ろしてきます。」


「おう、気を付けてな。」


 それじゃあ、また。と防具屋を出て、組合に向かう。報酬とお金を下さないとな。

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