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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第七話

「ここが私の泊っている宿です。ちょっと狭いんですけど掃除が行き届いていていいところですよ。」


 ニーナに連れて行ってもらった宿は大通りから少し入ったところにある緑の憩い亭という宿屋だった。一階が食堂になっていたが、到着した時間が中途半端だったのかあまり客がおらず空いていた。早速中に入り受付に行くとそこには恰幅のいいおばちゃんが座っていた。おばちゃんはニーナを見つけると立ち上がりカウンターに両手をつき前のめりになって喋りだした。


「ニーナちゃんおかえり!怪我しなかったかい?お腹すいてないかい?」


「あはは、ただいまです。アルテさん。大丈夫でしたよ。ここにいるリュウジさんに助けてもらいましたから。ご飯も食べてきました。」


「そうかい。良かったねぇ。あんたもありがとね、ニーナちゃんは小さいのに頑張ってるからねぇ。」


「もうアルテさんまで!私はもう大人です!そんなことはいいんです。良くないけどいいんです。それよりもアルテさん、部屋って空いてますよね?」


「ん?ああ、空いてるよ。一部屋でいいかい?」


 アルテさんが僕に向かって聞いてくる。落ち着いて話すアルテさんは、優しそうな顔をした40代くらいの人だった。


「はい、お願いします。ご飯はどうしたらいいですか?」


「一泊大銅貨2枚。朝食は一食銅貨5枚だよ。朝食は朝の二の鐘までにテーブルについてくれれば出せるよ。夕食は外でもいいしうちで食べてくれてもいいよ。」


「じゃあ、朝食もお願いします。とりあえず十日間でお願いします。」


「はいよ。じゃあ、銀貨二枚と大銅貨五枚になるよ。」


 僕は、財布からお金を出してアルテさんに渡した。結構少なくなって来たなぁ。


「はい毎度あり。これが部屋の鍵だよ。二階の五号室だね。ニーナちゃんの隣の部屋にしといたからね。」


「はい、ありがとうございます。」


 お礼を言って鍵を受け取る。なんだか古い形の鍵だなあ。古い金庫の鍵みたいだ。持ち手のところに2-5って刻印してある。


「出かけるときは私に預けてから出かけるんだよ。持って出かけて無くすとこっちも大変だからね。私がいないときはこの箱をカウンターに置いていくから入れてっておくれ。あ、あと体を拭きたかったら言っとくれ、お湯は桶一杯分は値段に入ってるからね。」


 と言って鍵入れと書かれた浅い木の箱を見せてくれた。


「わかりました。それじゃこれからよろしくお願いします。」


「こっちこそよろしくね。掃除はしっかりしてあるけど、気になったところがあったら言ってくれれば何とかするからね。」


 そういってにっこりと笑うアルテさん。いい人だなあ。冒険者組合の受付のお姉さんもそうだし、いい人が多いな。


「わかんないことはあるかい?それじゃあ、この町を楽しんどくれ。」


「ありがとうございます。ニーナ、行こうか。さすがに疲れたよ。」


「そうですね。体も拭きたいですし、私も疲れました。アルテさん、お湯をいただけますか?」


「あ、僕もお願いします。」


「はいよ。後で持って行くからね。」


 ニーナと一緒に食堂の奥にある階段を上り、二階に上がる。部屋数は八部屋ある。ニーナの部屋は六号室だった。鍵を使ってドアを開け、中に入ると六畳間より少し狭い感じの部屋で、ベッド、小さな机と椅子が一脚あった。窓はあるが、鎧戸みたいなのがあってまだ日がある時間帯なのに薄暗かった。壁に蠟燭立てみたいなのがあって夜になると蝋燭が一本渡されるらしい。


「確かにちょっと狭いけど十分だな。ふー、やっと落ち着けるか。」


 僕はリュックサックを部屋の隅に置き、ベッドに腰掛ける。ベッドは固いな。腰が痛くなりそうだ。


 そうだ、キャンプ用のエアマットがあったな。使えるかな?


 リュックサックに手を突っ込み、エアマットと念じると手に感触があった。取り出して確認すると材質は革になっていて中身は何かよく分からないものが詰まっていた。空気を吹き込むところは皮ひもで縛るようになっていた。


「まあ、何とか使えそうだな。シーツの下に敷いてみよう。」




ちょっと膨らましてから口を縛るのにコツが要ったが上手にできた。これなら安心して眠れそうだ。一人でそんなことをしているとコンコンとノックされた。


「はい、どうぞ。」


 ドアを開けるとアルテさんが湯気の立つ桶と布を持ってきてくれていた。


「お湯を持ってきたよ。終わったら廊下に出しといてくれればいいからね。頭が洗いたかったら中庭に井戸があるからそこでやってくおくれ。部屋だと掃除が大変だからね。あと蝋燭は一本ね。壁にある燭台で使っておくれ。」


「ありがとうございます。助かります。」


 そう言って隣の部屋にも声をかけている。ニーナの分だろう。風呂が無いのはどうしようもないのでこれで我慢するしかない。どっかにないかな、風呂。ま、無いものねだりしてもしょうがないか。


 窓の外を見ると夕暮れだった。この世界の夕焼けも奇麗だな。明日の冒険者試験頑張ろう。今後の生活のためだからな。どうなるかは分かんないけど、ま、なるようにしかならんか。よし、体でも拭いてちょっと早いけど寝よう。あー、風呂入りてぇ。

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