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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第五十八話

 翌日。


 いつもの時間に組合に行くと依頼板に人だかりができていた。


「なんだろ?いっぱい人がいるね。」


「緊急依頼が出たんでしょうか?」


「うーん、見えないなぁ。あ!」


 タニアが僕の肩に手を置いて背伸びをして依頼板を見ようとしていた。


「リュウジさん、おはようございます。こちらまで来ていただいていいですか?」


 後ろから声を掛けられて振り向くとケイトさんだった。なんだか表情が硬いな。何かあったんだろうか。ケイトさんに案内されて受付の奥に連れていかれたのは小さめの会議室みたいなところだった。


「こちらで掛けてお待ちください。すぐに連れてきますから。」


 部屋の中には机と椅子があり 言われた通り椅子に腰掛けて待つことにする。


「ケイトさんは誰を呼びに行ったんだろうね。」


「きっと組合長だよ。昨日の件だと思う。さっきちらっと見えたんだけど、皆が見てたのは緊急依頼だったもん。」


 昨日の今日でもう出たのか。動きが早いな。ってことは、それだけ緊急の案件だってことになるのか?


「昨日組合に報告したのがお昼過ぎですよね?それでもう依頼が出てるんですか。」


「そうそう、早いよね。そんなに急ぐことだったんだって思ったよ。」


 座ってああだこうだと話していたら、扉がノックされ、返事をする前に開いて男の人が入ってくる。組合長のダレスさんとケイトさんだ。ダレスさんは何も言わず正面にある椅子に座ったが、ケイトさんは扉の前で立ったままだ。


「忙しいところすまんな。来た時に見たかもしれんが、緊急依頼を出した。昨日の件で確認が取れたからな。あの集落にはゴブリンだけじゃなくホブゴブリンもいたといっていたな。」


「はい。僕にはわからなかったんですが、タニアがそうだと。」


「そのホブゴブリンだが、あの集落の中で上位種が確認された。さらに悪いことにどうもこの町を攻めようとしているという報告があった。総数は分からないが二百はいるだろう。よく報告してくれた。もう少し発見するのが遅かったら対応が遅れ大変なことになるところだった。目印も役に立ったそうだぞ。ということで追加報酬だ。」


 そういわれて僕たちの前に置かれたのは大銀貨が六枚入った袋だった。


「え?こんなに?」


「なんだ?いらんのか?お前たちも緊急依頼を受けてくれよ、戦力はいくらあってもいいからな。主戦力は鉄級になるだろうが、周りにいるゴブリンどもを倒すのは銅級冒険者だ。ホブゴブリンの上位種は今この町にいる銀級パーティに応援を要請しているところだ。彼らはここ出身だから断ることはないだろう。報酬は弾む。君たちにも期待している。」


 あとの細かいことはケイトに聞いてくれと言い残してダレスさんは部屋を出ていく。僕達は顔を見合わせて放心状態だ。なんだか事が大きくなりすぎて考えが追いつかない。何故あんな大きな集落が今まで発見されなかったんだろう。見つけても報告しなかったんだろうか。


「ケイトさん、あんな大きさの集落が今まで発見されなったのは何でですか?」


「それはわからないわ。きっと知っている冒険者もいたと思うけど、あなたたち以外からの報告はなかったのよ。それであの追加報酬額なの。それとさっき組合長がゴブリンたちが攻めてくるような話をしてたでしょう?今は緊急依頼の形をとってるけど、もうすぐ強制依頼になるはずよ。それまでにしっかり準備をしておいてね。」


「はいわかりました。昨日の内に準備は済ませてあるんです。きっと沢山ゴブリンを倒さないと駄目なんだろうなと思って。」


 ケイトさんが教えてくれた詳しい話は、結構緊迫感のあるもので、おそらくゴブリンたちは十日前後の内にここに攻めてくるだろうというものだった。その間に態勢を整えこちらから攻勢に出るという。この町の銀級パーティ、『(しろがね)の風』という名前だそうで今は依頼で町にはいないらしい。彼らが戻ってくるのが遅くとも五日後になるのでそれを待って強制依頼に切り替えて…ってことみたいだ。


 現状の緊急依頼はゴブリンの数を減らすためのもので報酬がかなり良い。通常の依頼では一匹当たり銅貨二十八枚だが、今回は一匹当たり銅貨五十枚と十匹ごとに銅貨二十枚貰えるものだ。これは僕たちのような駆け出しの冒険者にはかなり美味しい。ゴブリン十匹ならいけると思う。


「この緊急依頼は受けるよね?」


「もちろんだよ。」


「もちろん受けます。」


 タニアとニーナもやる気満々だ。


「ケイトさん、強制依頼になるとどうなるんですか?」


「強制依頼になるとその町の組合に所属している冒険者とその町に滞在している冒険者は必ず参加しなければいけません。参加しないと冒険者証の剝奪や降格などの罰則があるので必ず参加して下さいね。無茶な命令はないので安心してください。参加すれば報酬もありますし活躍すると昇級もありますよ。なので生き残ってくださいね。」


 強制参加か。まあそうだよな、住んでるところが危険になって抗う力があるのに何もしないって駄目だもんね。僕も死にたくないけど出来る限りやってみよう。




 緊急依頼を受けた僕たちは早速森に入ってゴブリン退治だ。


「うーんいないなぁ。近々攻めてくるって言ってたからそのせいかな、やっぱり。」


 森に入ったはいいが、目的のゴブリンが全くいない。集落に籠って攻める準備でもしてるんだろうか。少しでも数を減らしておきたいんだけど、いないんじゃそれも出来ない。


「もっと奥まで行ってみますか?それこそ集落の近くまで行けばいると思いますけど。」


「でも組合から近づくなって言われるからそれはやめとこうよ。突いて一杯出てきたらやられちゃうよ。」


 ニーナと話していたら前にいたタニアから止まれの合図があった。お喋りをやめて身を屈めて息を殺しておく。タニアからのハンドサインだ。前方にゴブリン二匹だって。音を出さないようにタニアに近づくとタニアが小声で囁いてくる。


「あの二匹はあたしが弓で仕留めるよ。新しく仕入れた矢を使ってみたいんだ。」


 タニアは今回貫通力の高い矢を沢山購入してきた。普通の矢は鏃が平たい菱形で鉄でできている。今回購入してきた矢は、鏃の材質は鉄製で一緒だが形が細長く、軽く螺旋状で根元が太くなっているドリルみたいだ。普通の矢も射ると回転して飛んでいくんだけど、新しいこの矢はその回転が早いらしい。回転が早い分貫通力が上がるみたいだ。その代わり射程が少し短くなっているそうだ。今回はその使用感を確かめるために使いたいらしい。


 いつもより少し近づいてから矢を射るタニア。射た先を見るとゴブリンの側頭部に矢が突き立っていた。間を開けずにもう一射すると仲間が倒れてこちらに気が付いたもう一匹の眉間に命中しそのまま貫通してゴブリンの向こうにあった木に矢が刺さっていた。


「えー!頭貫通するの!?凄い威力だね。」


 頭蓋骨って分厚くて相当丈夫だからそれを貫通してさらに木に刺さるなんて本当にすごい威力だ。


「でもあれだけの攻撃力があるとリュウジの援護には向かないかも知れない。」


「なんで?」


「リュウジとゴブリンが射線上に並んじゃうとこれじゃあ怖くて射れないよ。」


「そうかぁ。僕にも刺さるんじゃ使えないか。あ、その時は普通の矢でお願いします。」


「そうだね。使い分ければいいんだ。先制攻撃の時とか仲間に当たらないときに使うことにする。」


 タニアはこれからの使い方を考えてるのかぶつぶつ言いながら考えている。僕はニーナと一緒に後始末だ。耳を切り落として、魔石を取り出したら軽く穴を掘って燃やす。薪はリュックサックにたくさん入っているのでそれを使う。終わったら土を被せて終了だ。面倒くさいがやっておかないとアンデッド化することがあるらしい。その話を聞いたとき、アンデッドって本当にいるんだ!って思ったよ。この辺りでは見ないらしいからみんながきちんと処理してるってことだね。


「よし終わり。もうちょっと頑張る?」


「そうですね、時間的にはもう少し行けますよ。」


「じゃあ、ここから西に向かっていって帰ろうか。タニアもそれでいい?」


 考えが纏まったのかすぐ近くにタニアがいた。こっちの話も耳に入っていたようだ。


「ん?いいよ。それでいこう。じゃついてきて。」


 タニアを先頭にいつもの陣形で森の中を歩いていく。途中で薬草が生えていたので採取する。これからきっと需要があるからいくつあってもいいだろう。


 森の木々の隙間から空を見るともうすぐ日が暮れそうだ。森の中だから暗くなるのが早い。活動できてあと一時間だろう。タニアもそれが分かっているから歩く方向は町の方に向いている。


「さあ、もう少しで町に着くよ。それにしても今日もゴブリンあんまりいなかったねぇ。これじゃあ上がったりなぁ。」


「そうだなぁ。角ウサギもあんまりいなくて狩れなかったしね。」


「でも薬草採取はできたじゃないですか。暫く薬草採取してなかったのでまたやりませんか?ポーションもたくさんいるでしょうし。」


「そうだね、初心に帰ってやろうか。組合に帰ってケイトさんに聞いてみよう。依頼料が上がってるかもしれないしね。」


「はい!そうしましょう!」


 ニーナは魔法使いだから戦闘がないとただの森歩きになってしまう。目的は一つじゃなくてもいいんだから、色々やってみればいいか。最近は、討伐依頼ばっかりだったから採取依頼をしよう。


 タニアも賛成のようで、こうも獲物がいないとなぁって嘆いてたよ。ま、そうと決まれば明日からは薬草採取をメインにして、ゴブリン等を見つけたら狩っていくという話で纏まった。町に入るのに時間がかかって組合に帰ったのが遅く、ケイトさんは仕事が終わっていたみたいでいなかったが、当番の職員の人採取依頼のことをに聞いたらいつもと同じですよって言われたよ。そんなにうまい話はないよね、残念。

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