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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第五十七話

「早速だが、君たちが発見したゴブリンの集落のことを聞きたいんだがいいか?」


 僕達は、組合長のダレスさんに見てきたことを話す。


「森の奥、うーんと、ほぼ直線距離で二時間と少しいった辺りに窪地がありまして、そこに掘っ立て小屋がざっと数えただけですが三十戸ほどあったと思います。集落の中で多数のゴブリンとホブゴブリンの姿を確認しました。一つの小屋から五匹くらい出てきていたので仮に一戸に付き五匹いた場合百五十匹いる計算になります。僕達が見たのはそんなとこですが…」


 僕が代表して思い出しながら話すとダレス組合長は眉間に皺を寄せて黙ってしまった。


「お待たせしました。」


 そんな気まずい雰囲気を晴らすケイトさんの声が紅茶のいい香りと共に聞こえた。


「ああ、ありがとう。ケイト、君は子の冒険者たちの担当だったな。」


「はい、そうです。彼らは信用していいですよ。」


「そうか。分かった。リュウジ君にニーナさんとタニアさんだったね。貴重な情報を提供してくれてありがとう。これから人をやって調査することにしよう。」


「あ、僕たち帰りに木に印をつけてきたのでそれを辿っていけば簡単に行けると思います。」


「ありがとう。こちらの用事はこれで済んだ。帰るときに受付にいるケイトに報酬を貰っていってくれ。時間を取らせて悪かったな。」


 ダレスさんは執務机に戻って書類の処理を再開していた。凄い仕事量だな。机には山のように書類が積まれている。書類といっても紙じゃなくて羊皮紙だろうか。丸めてあるものがいくつも積み重なっている。


「失礼しました。」


 僕は心の中で頑張れって応援して部屋を後にした。部屋を出てすぐにニーナがちょっと興奮した様子で話しかけてくる。


「初めて会ってしまいました、組合長に。私みたいな冒険者には縁のないことだと思っていたんですが、やっぱり風格があって凄い人なんですね。」


「え、そんなに凄い人なの?」


「そうですよ?現役のころは金級の冒険者だったそうです。いろいろな伝説的な話エピソードがあって、例えば百匹もいたオークの群れを一人で殲滅したとかファイアリザードの巣を一人で殲滅したなんてことが知られています。」


「百匹のオークを一人で?凄いね!ファイアリザードっていうのは?」


 字面からいくと火蜥蜴ってことになるのかな?燃えてる蜥蜴か、凄いのがいるんだな。


「ファイアリザードは火を噴く蜥蜴です。巣には十匹以上が共に暮らしているそうです。この町からはるか北にある火を噴く山の中にいるみたいです。鉄級になると受けることができるようになる依頼の一つですね。ファイアリザードの皮は炎に対して耐性があって、いい防具の材料になるそうです。」


 燃えてるんじゃなくて火を噴くんだ。鉄級になるとそんな魔物を狩りにいかないといけないんだな。どう考えても僕には無理じゃないかなぁ。


「あ、鉄級で受けることができる依頼は、ファイアリザード一匹の討伐ですよ?巣の殲滅は金級以上でないと受けることができません。金級でもパーティでの依頼です。」


「そうなのね。組合長の職業は何?」


「たしか魔導士だったと思います。広域殲滅魔法が使える職業です。」


 広域殲滅魔法って…とんでもない魔法があるんだな。戦争用じゃないんだろうか。金級にもなると凄いんだなぁ。


「ニーナも金級になったら使えるようになるのかな?」


「私が金級ですか?なれるとは思っていませんが、なれるように頑張ります!でもまずは他の炎系統の魔法からですね。次に覚えるのは火球ファイアボールです。いま練習してるんですよ。」


 ニーナも一生懸命研鑽してるんだな。僕も頑張ろう。地味だけど、まずは体力と筋力アップだな。


 そういえばタニアが大人しいな。どうしたんだろう?ニーナと反対側にいるタニアのほうを見ると、こちらも目をキラキラさせてたよ。


「どうした、タニア。目が輝いてるみたいだけど…」


「どうしたもこうしたも、あの殲滅の魔導士ダレスだよ!一度会ってみたかったんだぁ。いやーかっこいいね!」


 こっちの人も結構ミーハーだったね。しかし殲滅の魔導士か。二つ名ってやつだ。僕もいつかつけてもらいたいもんだ。


「よかったね、タニア。さ、報酬をもらって帰ろうか。」


 階段を下りて受付へ行くとケイトさんが、笑顔で出迎えてくれる。


「皆さんお疲れさまでした。こちらが今回の情報提供報酬になります。」


 そう言って渡してくれたのは、一人銀貨一枚だった。あれだけのことで銀貨一枚?貰いすぎじゃないだろうか。


「これって多くないですか?情報提供しただけですよ。」


「有用な情報には多くの報酬が出ることになっています。組合の確認が済んで危険度の高い情報だった場合はさらに報酬が出ますよ。もしその情報が誤りだった時は、最悪の場合粛清対象になってしまい組合から手配されることになってしまいますから気を付けてくださいね。」


 確かに情報を持って行くだけでお金がもらえたら、嘘の情報を持っていくことをする輩も出てくるんだろう。あれ?じゃあすぐに報酬を渡さなければいいんじゃないかな?


「じゃあ、報酬を後払いにすればいいじゃないんですか?」


「最初のころは報酬なしだったんですが、かなり前のことですが一度この町が魔物に襲われたことがあったんです。後でわかったみたいなんですが、魔物が来るかもしれないことを予期していたというか、おかしいことに気が付いていた冒険者はいたそうですが、彼らは危なくなる前に周りに何も言わずに町から出て行ってしまったそうです。何とか魔物を撃退したんですが、町が落ち着いてからその出て行った冒険者たちが帰ってきて実は予兆があったと言っていたことが分かって、それから冒険者が持っている情報は貴重だからお金を払ってでも報告してもらおうってなったみたいですよ。」


 ケイトさんはこれは私が生まれるずっと前の話ですって教えてくれた。前払いでこんなに額が大きのは組合長が確度の高い情報だと判断したときだけらしく普通は銅貨数枚とか大銅貨数枚のことが多いみたい。今回僕たちが持ってきた情報は危険度が高く、確認するのに時間がかからない有用なものだと判断されたらしい。


「情報の裏付けが取れたら緊急依頼が出ますからよかったら受けてくださいね。」


 ケイトさんに笑顔で見送られ、組合を後にした。


「リュウジさん、緊急依頼が出たら受けますか?どうしますか?」


「受けよう、リュウジ。あたしは受けた方がいと思う。」


 ニーナもタニアも緊急依頼を受ける気でいるみたいだ。そういう僕も受ける気でいるんだけどね。自分たちで見つけたゴブリンの集落がどうなるか気にならない訳がないじゃないか。


「もちろん受けるよ。頑張って他の人たちの役に立つようにしよう。」


 きっと銅級の僕たちは周りにいるゴブリンの討伐する役割になるんじゃないかな。集落を攻め落とすのは鉄級以上になるよなきっと。


「本当は、集落の方に行きたいですけど無理でしょうね。私たちは出来ることを頑張りましょう。」


「そうと決まれば色々準備をしようか。まずはポーションや傷薬を買いに行こうか。」


「はい!」


「あたしは矢を補充してくるよ。」


「じゃあ、はいこれ。」


 僕はリュックサックから金貨を一枚取り出してタニアに渡す。


「え!こんなに要らないよ!あたしだってお金持ってるんだから。」


 タニアは、金貨を受け取ってから目を丸くして驚いて返そうとしてくる。タニアの弓矢には何度も助けられてるから、そのお礼を兼ねて渡しておこう。


「まあまあ。この際だからいっぱい買ってくればいいよ。いつもより質の良いのを買ってきてもいいしね。僕が買ってこれればいいんだけど、弓矢のことは全く分からないからどれがいいものなのか分かんないんだ。というわけでタニアに任せた。収納のことは気にしなくていいからね。」


 矢は、普通のもので五本で大銅貨一枚する。一本銅貨二枚、二百円だ。それで矢はほぼ使い捨てだ。そう考えると弓矢のコストパフォーマンスはかなり悪い。でも遠距離から一方的に攻撃できる優位性は知ってしまうと手放し難くて、無いと戦略の幅がとても狭くなってしまうほど有用だ。弓矢による攻撃の幅が広がれば、戦闘をより有利に運ぶことができるようになるだろう。そこにお金をかけないってことは自分たちの命を危険にさらしていることになってしまう。


「わかったよ。ありがとう。余ったら返すからね。じゃ行ってくるよ。」


 渋々納得してくれたタニアだったが、買いに行く後姿はなんだか嬉しそうだったな。


「僕達も行こうか。」


「はい、買い出しですね。」


 ニーナにも魔力回復ポーションを沢山持っておいてもらおう。金貨一枚分くらいね。あとは傷用のポーションに、食料も買い足しておかないといけないな。


「まずはポーション類からかな。」


 ニーナと一緒にいくつかの道具屋や商店を周り目的のものを仕入れていった。


 緊急依頼を受ければ、多数のゴブリンと戦わなきゃいけなくなるから物資はあればあっただけいいと思う。元々自分がそういう質なのと幸いお金があるからついつい大量に買ってしまった。食材なんかもリュックサックに入れとけば腐らないことが分かっているからこれも大量だ。諸々全部で金貨一枚大銀貨二枚になってニーナが呆れて無口になってたよ。


 宿に帰ってタニアと合流して今日買ったものを報告したら、


「そんなに買ったの?お金があるからって無駄遣いするんじゃない!」って怒られた。さすがに使いすぎたかな?

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