第五十三話
先週更新できませんでした。申し訳ありません。仕事が忙しくて駄目でした。頑張りますのでこれからも温かい目で見ていてください。よろしくお願いします。
私の目が覚めた時、部屋の中は真っ暗でした。とても暖かい何かに包まれて、すごく気持ちよく眠っていた気がします。なんでしょうかこの暖かいものは。とても落ち着くいい匂いがします。
ここは私たちが借りている家のようです。そして、寝ていたのは私の布団ですね。あれ?いま私は誰かに抱きしめられてる?え?え?誰?タニアさん?…タニアさんはこんなにガッチリしてません………も、もしかして…リュ、リュウジさん!?
気が付いたとたん顔中が熱くなって、心臓が飛び出るんじゃないかって言うくらいドキドキして。え?ええ?えええ?な、なんでリュウジさんが私と一緒に寝てるの!?
「あ、あの!リュウジさん?」
呼びかけてみましたが、起きてくれません。私を抱き枕にして気持ちよさそうに寝ています。動こうとしてみましたが、顔しか動きません。私は唯一動かせる頭を動かしてリュウジさんの顔を見上げてみました。ち、近い!見上げたすぐ傍にリュウジさんの顔があります!寝顔もかっこいいですね!いえ、間違えました。寝顔は可愛いですね!でした。……私、何を言ってるんでしょう。
「ぅうーん。」
あ、リュウジさんが離してくれました。ちょっと残念ですが、ちょっと…いえ、結構……残念ですが…。はっ、今がチャンスです。今のうちに少し離れましょう。…よし、離れますよ…離れ………たくないですー!やっぱりこのままくっついて寝てしまいましょう!そうです!それでいいんです!
明日、起きた時の言い訳を考えておきましょう。そうです、それが良いですね。そうしましょう。それでは…おやすみなさい。
目が覚めた時、もう日が昇っていた。僕はニーナの隣の床の上で寝ていたみたいで、体がバキバキだった。ニーナが寝ていた方をを見るともういなかった。
「ふぁーあ。んーあれから朝まで寝ちゃったのか。」
「あら、おはようリュウジ。昨夜はどうだった?」
寝起きで横から突然声を掛けられて吃驚した。そういえば隣はタニアの場所だったんだ。
「うをっ、タニアか。おはよう。昨夜って?」
「ニーナ抱えて宴会抜け出して、朝まで帰ってこないって…そりゃあねぇ。」
「え?いやいや、なんにもなかったよ?寝てただけだもん。」
「は?寝てただけ?二人で?何で?」
「何でって、眠かったから。」
「眠かったからって……二人とも子どもか!ニーナも折角のチャンスだったのに、何やってたんだ。」
タニアは額に手をやって天井を見上げている。全部聞こえてるからね。
まあ、タニアの言いたいことも良くわかるが、どうもなぁ。やっぱり向こう日本にいる娘と同じくらいの年頃の娘さんだと思っちゃうとね。ニーナの気持ちも何となく分かってるんだけど、どうにももう少し踏ん切りがつかないと言うかなぁ。ただ、ニーナは可愛いと思う。うん、滅茶苦茶可愛いと思う。守ったあげたいと強く思う。それ以上の思いが出てこないんだよなぁ。これは父性というんだろうか。この気持ちが変わるときが来るんだろうか。まぁ、その時はその時だな。
「タニア、朝飯食べに行こうか。」
あれから一人でぶつぶつ言いながら寝転がっているタニアに声をかけるが、
「あたしは明け方に帰ってきたばっかりだからもう少し寝てたいよ。昼になったら起こして。」
壁の方を向いて左手をあげてひらひらと振って返事して寝てしまった。
「そんなに遅くまでやってたの?わかった、お休み。」
昨夜は遅くまで宴会してたみたいだな。声をかけたけどもう寝息が聞こえてくる。さすが冒険者、寝るのが早いな。仕方がないニーナと朝ご飯を食べようか。
ニーナたちの部屋を出て、居間に行くと誰もいなかった。
「あれ?ニーナ?…いないのか。」
どこに行ったんだろう?ま、いいか朝ご飯の支度をしよう。リュックサックの中に何があったかな?まだパンはあったはずだから、サンドイッチでも作るか。
自分の部屋からリュックサックを持ってきて食材を出していたらニーナが帰ってきた。
「あ、リュウジさん、おはようございます。…その、昨日はありがとうございました。」
ニーナは、僕と目が合った瞬間に顔が真っ赤になって下を向いてしまった。そこまで照れられるとこっちも恥ずかしくなってくるな。
「おはよう、ニーナ。どこに行ってたんだ?」
「そこの井戸まで顔を洗いに行ってました。リュウジさんは、朝ご飯の準備ですか?」
「うん、お腹すいたからね。ちょっと遅めだけど。あ、そうそう、タニアは昼くらいまで寝てるって言ってたよ。」
「昨日は遅くまでやってたんですね。私たちだけで朝ご飯にしましょうか。私やりますから、リュウジさんも顔を洗ってきてください。寝ぐせが凄いですよ?」
「わっ、ほんと?」
言われて頭を触ると頭頂部に寝ぐせが付いてるのが分かった。こっちに来るまで坊主頭だったから全然気にしてなかった。
「ありがと、ニーナ。顔洗ってくるよ。」
「いってらっしゃい。朝ご飯用意しておきます。」
寝ぐせを直して朝ご飯を二人で食べて(美味しかった)これからの予定を決めよう。
「ニーナ、これからどうする?いつ頃帰ろうか。」
「そうですねぇ、タニアさんが起きるのがお昼過ぎですから、もう一泊して明日の朝出発でいいんじゃないでしょうか。」
「明日ね。よし、ニーナ。今日は二人で森に行ってお肉を取ってこよう。」
「わかりました。でももうないんですか?結構たくさん買い込んできましたけど。」
「そうなんだよ。今日の分はあるんだけど帰り道の分が心許なくてね。」
「それなら村長さんに売ってもらえるものがないか聞いてみませんか。」
「あ、そうか。売ってもらえばいいのか。そんなことも思いつかないとは…」
思い込みって危ないなぁ。なぜか分からないが、この村では売ってもらえないだろうって思っちゃったんだなぁ。
「じゃあこれから村長さんの所に行って頼んでみませんか?」
村長さんに頼んだら、お金はいらないので持って行ってくださいと三人分の食料を頂いてしまった。ついでに明日帰りますと報告すると「また村に何かあったとき、よろしくお願いします。あの家はあなたたち用に空けておきますから。勿論掃除もしておきますからな。」と頭を下げられ家まで確保してもらってしまい、ニーナと二人で恐縮してしまった。家は遠慮したけど、大丈夫ですからと押し切られてしまった。もちろん僕達でよければって快諾したよ。
帰ってきたらタニアが起きていて一人でお茶を淹れて飲んでいた。
「あ、タニアおはよう。体調は大丈夫?」
「おはようニーナ、リュウジ。寝たから大丈夫。それよりもお腹減ったよ。」
「うふふ。お昼ご飯には大分早いですけど、作りましょうか。」
「タニア、この家僕たち用に空けておいてくれるって、村長さんが言ってたよ。」
「は?この家貰ったの?何で?」
「僕たちも遠慮したんだよ?けど、大丈夫だからって。」
「ここに住むわけじゃないんでしょ?貰ってもねぇ。」
そうなんだよね。ここに住むわけじゃないから遠慮したのに断り切れなかったんだよね。
まだ二人には相談してないけど、僕の予定というか計画では、もうすぐ別の町へ行こうと思ってるんだけど。折角この世界に来たんだからいろんなところに行ってみたいし、ダンジョンにも潜ってみたいしね。
「まあ、くれるっていうんだから貰っとけばいいと思うよ。あって困るもんでもないし。」
「そうなんだけど…まためんどくさい依頼を受けなきゃいけなくなったりしてね。」
「その時は一生懸命やればいいんじゃないでしょうか。私は折角なので頂いてもいいと思います。」
タニアは否定的で、ニーナは肯定的だな。僕は使うか分からないけど、村長さんたちの好意を無駄にするのも悪いから貰っておけばいいと思ってる。
「あたしはいらないと思うんだけどなぁ。……まあいいか。で、いつ帰るの?」
「明日。朝に出ようか。」
「分かった。明日の朝ね。」
さあ、久しぶりにセトルの町に帰ろう。




