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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第五話

 僕が頭を掻きながら謝ると、ニーナは一瞬頬をぷくっと膨らませてからすぐに微笑んで横に並んで一緒に歩いていく。


 通りには、沢山の人が買い物をしたり、お喋りしながら歩いていた。


「ねえ、ニーナ。エルフとかドワーフとか獣人はいないの?」


「え?エルフですか?この町では見たことないですね。ドワーフも。獣人の人たちはいますよ。ほら、あそこに。」


 ニーナが指さした方を見ると、胸鎧を着けている人がいた。


「あ、ほんとだ。おお!尻尾がある。」


 その獣人の人は、腰とお尻の間からくるんと丸まった尻尾が生えていた。柴犬の尻尾みたいだ。頭を見るとピンととがった耳が見える。


「あの人は、人の姿に近い獣人さんですね。もっと獣の姿に近い人もいますよ。」


 ニーナがそう教えてくれるが、僕はほとんど聞こえていなかった。感動して。写真に撮りてぇ!くそう!なんでスマホが金属の板になってんだ!尻尾!モフモフ!触りたい!が、我慢だ。いきなり触らしてくれって言ったら怒られるだろうなぁ。


「リュウジさん?どうかしましたか?行きますよ?」


 僕が心の中で葛藤しているとニーナに袖を引っ張られる。


「はっ!ごめんボーっとしてた。行こうか。」


 きっと何時か獣人の人と仲良くなれる時が来る。その時まで我慢だ。我慢しよう。 


「あれが冒険者組合です。行きましょう。」


 さらに歩くこと数分。結構な大きさの建物が見えてきた。冒険者組合は、町の中でも大きな建物だそうだ。冒険者組合以外では、町の領主の館と商業組合の建物が大きいらしい。僕たちは冒険者組合の扉を開け、中に入る。そこには、沢山の人たちがいた。鎧や剣、槍を装備した結構ごつい体格の人たちが多い。三人から五人くらいのグループで纏まっている。パーティーかな?いいね、雰囲気ばっちりだ。ワクワクする。


「リュウジさん、受付に行きますよ。申し込みと依頼完了の報告をしないと。リュウジさんのおかげでゴブリンの討伐証明もありますから。」


 受付に行くと綺麗なお姉さんがいた。


「こんにちは、ニーナさん。依頼完了の報告ですか?」


「こんにちは、ケイトさん。依頼の薬草五束です。あとゴブリンに襲われたんですけど、何とか倒すことができました。討伐証明部位と魔石があるので買い取りをお願いします。」


「ええ?ゴブリンに襲われたんですか?」


「はい、最初は一生懸命逃げましたけど、こちらのリュウジさんが助けてくれました。」


 ケイトさんはにっこりと微笑むと僕に向かってお礼を言ってくれた。この人も綺麗な人だな。二十代前半くらいで背中の真ん中くらいまである金色の長髪で瞳の色は青く鼻筋の通った美人さんだ。西洋系の顔立ちだからちょっと年上に見えるのかもしれないけど、確認する勇気はないよ?


「そうですかぁ。よかったですね。リュウジさんと仰るのですか?ありがとうございます。」


「へ?いやいや、突然だったので吃驚しましたがなんとかできてよかったですよ。」


「あ、あとリュウジさんの冒険者登録もお願いします。」


「はいわかりました。それではニーナさんはあちらのカウンターへお願いします。リュウジさんは、私が伺いますね。」


「リュウジさん、私の方が早く済むと思うのであそこのテーブルで待ってますね。」


 ニーナは、酒場の方にあるテーブルを指さして買い取りと書かれたカウンターへ行ってしまう。依頼完了の処理はもう終わっているみたいだ。ケイトさん仕事が早いな。


「わかった。あとでね。ケイトさんお願いします。」


「はい、お願いします。リュウジさん字は書けますか?」


「大丈夫です。書けますよ。」


「では、こちらの書類を読んで記入をお願いします。」


 一枚書類を差し出し、羽ペンを出してくれる。書類には色々書いてあるが要約すると、冒険者証は身分証明書になること、冒険者になるには講義と試験を受けなければなれないこと、冒険者は基本自己責任であること、冒険者組合は依頼の斡旋、素材の買い取りなどを行うこと、冒険者のクラスは銅級から始まり鉄級、銀級、金級、金剛級があること等々書いてあった。まあきっと基本的なことばかりなんだろう。ざっと読んでサインする。


「まあ、リュウジロウ・ゴトウさんと仰るんですか。ニーナさんがリュウジさんと呼んでいたので。失礼しました。」


 ついフルネームを書いてしまった。


「ああ、そんなこと。いいですよ。書き直します。」


「そのままでいいですよ。これは確認用の書類なので。冒険者証に記載される名前はどちらにしますか?」


「本名じゃないと何か不都合や罰則はあるんですか?」


「とくにはありませんよ。組合に照会するときなどはどちらでも検索できますから。」


「んー、じゃあリュウジでお願いします。」


 ケイトさんは書類を受け取るとさらさらっと何かを書き足した。


「リュウジさんは字が読めるようなのでこちらをお渡しします。冒険者の心得です。先ほどの書類に書いてあったことが少し細かく書いてあります。読んでおいてください。試験は明日の午後一の鐘が鳴るころに開始しますのでそれまでに組合に来てください。頑張ってくださいね。」


 ケイトさんがにっこりと微笑んで一冊の冊子を手渡される。どうやら手続きが終わったらしい。ニーナの所に行こう。


「あ、リュウジさん、終わったんですね。試験はいつですか?」


「明日だって。ニーナ、腹減ったんで何か食べに行こうよ。」


「はいっ、私もお腹すきました。いいところあるんですよ、行きましょう!」


 ニーナと並んでお店に向かう。どんな食べ物があるんだろう?美味しいといいなぁ。


「今から行くところは、美味しいの?」


「美味しいところですよ。しかも安いです。期待してください!」


「そりゃあ楽しみだ。よーし行こう行こう。」



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