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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第四十九話

 それから暫く森を探索して、角ウサギを三匹仕留めることができた。ゴブリンとは出会わなかったけどタニアは痕跡がたくさんあるって言ったからまだまだいるんだろう。


「今までで十三匹のゴブリンを仕留めたんだよな。普通の群れなら二十匹くらいいるのが多いんだろう?」


「そうだね。今回はゴブリンの上位種がいるかもしれないから、もしいたとなると三十、下手したら五十匹くらいいるかもしれない。」


「うわー、それは一度に襲われたら僕達じゃ絶対無理なやつじゃないか。」


「そうなんだよね。だからこうやってチクチク倒していくしかないんだ。頑張っていくしかないね。」


 ゴブリンが五十匹!そんなにいたらムサット村なんかあっという間に壊滅出来るんじゃないか?


…これは、上位種がいないことを祈るしかないな。とりあえず巣を見つけないと。敵の情報が少ないから対策が立てられない。現状では最悪を想定するしかないか。


「それだけいたら、ムサット村が危ないんじゃないですか?」


「そうだよね。僕もそう思ってたんだ。どうしようタニア。」


 タニアに聞いてみても難しい顔をするしかないみたいだ。眉間に皺を寄せて考えている。


「あたしだってどうにかしたいんだけどね。こればっかりは数の問題だからどうもしようもない。だからチクチク数を減らすしか…ね。ま、取り合えず巣を見つけよう。」


 幸いなことにゴブリンたちは少しづつしか出てこないからそれを漏れなく倒していくしかできないか。あとは巣を見つけてどのくらいの規模なのか、そして上位種がいるのか確認できれば最高だ。


 洞窟や洞穴と言えば丘になった麓にあることが多いな。森の中に小高くなったところがあればそこを目指せばいいと思う。


「タニア、木に登れる?」


「登れるよ、なんで?」


「洞窟があるところってさ、小高くなったところにあることが多いよね。高いところから見ればそういうところが分からないかな?」


「そんなことしなくてもゴブリンたちの足跡を追えれば見つかると思うよ?」


「え?そうなの?洞窟や洞穴があるところの目星がついた方が良いかと思ってさ。」


「目星がつけれれば早く見つかるけど、ゴブリンの行動範囲や動き方とかを見たいから足跡を追いたいんだよね。」


「そうなんだ。なんか余計なこと言ってごめんね。」


「いやいや、そういう提案はどんどん出してくれたほうがいいよ。皆で考えたほうがいい案が出ることが多いから。」


 時間があるときは皆で議論したほうが良い結論が出ることが多いか。確かにそれはあるなぁ。この世界の常識が怪しい僕が出す意見でも、何か役に立つ事があるかもしれないしね。


「そうですね。私もどんどん意見を言っていきますね。」


「ニーナはここのゴブリンについてどう考えてるの?」


「はい、一般的なゴブリンの行動と何か違いますし、私もゴブリンの上位種がいると思います。だからタニアさんの言う通り、出てきたゴブリンを倒していくのが一番安全で確実だと思いますよ。」


 ニーナもタニアと同じ考えだ。僕もそれが一番いいと思うし、巣を見つけて偵察をするのが良いだろうと思う。


「よし、それじゃあ探索の続きをしようか。」


「はい。」


「あたしに任せといてよ!」






 角ウサギは、四匹狩れたのでゴブリンの巣を探すのをメインにした。タニアは、順調に足跡なり痕跡を見つけているみたいだ。僕やニーナにはよくわからないんだけど。地面を見て周りを見てを繰り返しながら森の中を進んでいく。ゴブリンに遭遇しないまま小高くなっているところまできた。


「止まって。ほら、あそこに穴が開いてるでしょ。あそこに足跡が続いてるからあそこがゴブリンの巣だと思う。このあたりで隠れながら観察しよう。」


 タニアが巣穴らしき洞穴を見つけたみたいだ。目を凝らすと木々の隙間から穴が見えた。


「わかった。じゃあ見つからないようにカモフラージュしなくちゃね。」


「「カモフラージュ?」ってなんですか?」


 ニーナが首を傾げ、タニアはそれなんだって顔をして聞いてきた。


「あ、そうか。あのね、えーと、隠蔽?ちがうな、…あ!偽装だ。」


 カモフラージュって言ってもわかんないのか。英語が通用しなくて日本語なら通用するって理由がよくわからないけど、なるべく日本語で話すように気を付けよう。


「あ、わかった。木に紛れるんだな。どうやればいいんだ。」


「簡単なのは、頭とか体に木の枝を張り付けちゃえばいい。本格的なものだとマントを木の葉で覆って顔も緑や茶色で迷彩柄に塗って地面と同化するんだ。」


「じゃあ、今回は簡単な方でいいんですよね?早速やりましょう。」


 ニーナもタニアもやる気満々だ。隠れるところの木の枝を折って其々それぞれの頭に括り付ける。僕の場合は革の兜だ。ニーナとタニアは手拭き用の布を頭に巻いてもらいロープで縛って固定する。顔の横にも枝がくるように胸の辺りにも括り付ける。僕は革鎧と体の隙間に突っ込むだけだ。ニーナとタニアはお互いに紐で縛っている。


「ちょっと確認してみる。そのまま隠れてて。」


 タニアが音もたてずに移動して、少し離れたところでこっちを見ている。少ししたらいい笑顔で戻ってきた。


「凄い!パッと見ただけじゃわかんないよ!こんな簡単なことでこんなにも分かりにくくなるんだ!」


「そうなんですか?私たちの方からはタニアさんしっかり見えましたよ。」


 タニアが見に行った処は低木の茂みがないところだったため、あの格好では良く目立つ。


「タニアがいたところだとさっき言ってた本格的な方じゃないと目立つね。でもこれなら見つかりにくくなるだろ?嗅覚が鋭い相手だと見つかっちゃうけど、視覚に頼る相手ならごまかせると思うよ。」


「うん、ゴブリン相手なら誤魔化せると思う。よし、これで見張ろう。」


 ゴブリンの巣穴らしき洞穴が良く見える所まで近づいて、カモフラージュに使ったのと同じ茂みがあったのでそこに隠れた。


「ここなら良く見えるね。」


「そうですね。でもいつまで見張りますか?」


 お腹の減り具合から見て、今は昼を過ぎて午後三時あたりだと思う。


「そういえばお腹すいたな。何か食べる?」


「駄目ですよ、リュウジさん。美味しそうな匂いで見つかっちゃいます。」


「そうだよ。我慢しなさいリュウジ。」


 あれま、二人に却下されてしまった。見つかったらいけないから、しょうがない我慢しよう。


「はは、ごめんごめん我慢するよ。」






 それから日が暮れて暗くなるまで見張ったけど、偵察のゴブリンたちが帰ってきた以外は動きがなく洞窟からは出てこなかった。やっぱりあの洞窟が巣みたいだ。夜になってから動くかな?


「ゴブリンたち帰ってきただけで出てこないな。上位種はいるかな?どう思うタニア。」


「入り口に見張りのゴブリンがいるでしょ。普通は見張りなんかいないから、上位種いると思う。動いてる数も少ないし。二人とも夜目は効く方?」


 確かに入り口の近くに三匹あまり動かず、周囲を警戒しているのがいる。あれが見張りか。こちらには気が付いていないようだ。


「私はあまり。」


「僕もダメだな。月が出てれば見えるだろうけど森の中じゃ無理だなぁ。」


「そっか。日が暮れたばっかりの今からならまだいいけど、夜の森はちょっと危険だから今日は帰ろう。あたしについてきてね。」


 タニアはそう言ってきた方向へ歩き出す。ニーナが続いて僕が最後だ。ゴブリンがいるかもしれないから明りは点けれない。幸い今日も月が出ているみたいで木々の隙間から青白い月の光が届いていてなんか神秘的だ。これなら歩くことには不自由しないな。


 歩くこと三十分くらいかな、森の出口に近づいてきた。やっと帰れるかとほっとした所でタニアが止まった。


「どうした?」


「しっ。ゴブリンだ。五匹いる。村に向かっているみたいだ。」


「よし、じゃあ仕事をしますか。行ってくるよニーナ、タニア。いつものよろしく。」


「わかりました。気を付けてくださいね。万物の根源たる魔素マナよ…」


 ニーナが早速呪文を唱えている。タニアもすでに弓に矢を番えて準備万端だ。


「初手は任せて。行ってこいリュウジ!」


「おう!」


 二人に送り出された僕は、走り出す。ゴブリン五匹ならいつもの通りやれば問題ないだろう。ゴブリンたちは三匹と二匹に分かれて歩いている。


 タニアの放った矢がゴブリンの頭に刺さり、ニーナが撃った炎矢も心臓の辺りを貫いて二匹を倒してくれた。あと三匹だ。剣を振りかぶりながら走り背中を見せていた一匹を切り捨てる。返す刀ですぐ左にいたゴブリンの胴を薙ぎ、振り切ったその勢いのまま右に一回転して最後の一匹の首を刎ねた。


 おお、今の連撃はなんか綺麗に嵌って気持ち良かったな。まあ、ゴブリンが固まっていたからできたんだろう。右から振るのに比べて、左から右に剣を振るのは力が入りにくい。回転の遠心力を利用するのはいいかもしれない。僕はまだ筋力が少ないみたいだから回転の力を使う練習をしてみようかな。


「リュウジ!今のは綺麗に決まったな。」


「凄いです、あっという間でしたね!」


「たまたまだよ。うまく嵌ってくれて良かったってところだ。」


 あれを狙って出来るようになれないと駄目だなぁ。下半身も鍛えないといけないし、上半身というか腕の筋力を上げないと攻撃力を上げられないな。素振りするときに使うのをこの剣じゃなくて鉄の棒にしてみようかな。腕立ても腹筋ももっとやらないとな。やること一杯だなぁ。


 ゴブリンの後片付けをして借り家に帰ってきた。巣も見つかったし、もうちょっと滞在してゴブリンを減らしたら一度帰れるかな。

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