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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第四十六話

 部屋に戻って、サンドイッチを作って食べてから装備を整えて出発した。今日は、そんなに深く入らないので必要なものだけを持っていく。ウェストポーチにポーションと少しの食料を入れて水筒をぶら下げたら準備完了だ。修理と改造してもらった防具と新しく購入した剣と剣鉈を装備して部屋の外に出るとちょうどニーナとタニアも部屋から出てきたところだった。


「あ、準備できたんだね。早速行こうか。」


「今日は、森の浅いところでゴブリンの痕跡を見つけるだけにしておくつもり。見つけたら戦うけどね。」


「では、行きましょう。」




 西の森にやってきました。ここからはタニアの出番だ。


「よし、あたしが先行するからついてきて。」


「おう、任せた。」


「よろしくお願いします。」


 森に入った所で早速何か痕跡を見つけたらしい。タニアが手招きしている。


「どうした?見つけた?」


「うん、ここ見て、結構な数が通った跡がある。分かりやすいでしょ。ずっと奥から続いているね。」


 そこには僕が見ても何かが通ったとわかるような痕跡があった。これならタニアじゃなくても辿っていけそうだ。


「これなら私が見てもすぐにわかりますね。ずっと奥に続いています。奥には巣があるんでしょうか。」


「ありそうだなぁ。巣を見つけて叩くかそれとも出てきたやつを叩くか。どうしようかねぇ。どっちがいいと思う。」


 巣を見つけて叩ければ一番いいんだけど、実力的にきっと無理だなぁ。となるとこの辺りで待って、出てきたやつを時間をかけてある程度数を減らすのが現実的だろうか。


「あたしは、巣を叩くのはあたし達の力的にまだ無理だと思う。数を減らすのが現実的だと思う。」


「私も数を減らすのが良いと思います。ある程度減らした後で巣を見つけに行って組合に報告した方が良いと思います。」


「やっぱりそうだよね。よし、まず数を減らしてそれから巣を探そう。見つけたら報告する、とそういう方針で行くか。」


「わかった。それじゃああたしはもう少し奥まで見に行って、通り道に罠を仕掛けてくるよ。その間の警戒をお願い。」


「罠なんか仕掛けることができるんだ。さすが盗賊シーフだね。」


「そんなに期待しないでよ。ちょっとした嫌がらせみたいなことしかできないんだから。」




 タニアはそれから一時間くらいかけてゴブリンの通り道に罠を仕掛けていった。内容はよくわからなかったけど致命傷になるのじゃなくて上手くいけば怪我を負わせることができるくらいのものみたいだ。


「お待たせ、出来たよ。これで少しでも傷を負ってくれればいいんだけどね。さ、あとは森から出てきたところを返り討ちにするだけだね。」


「じゃあいったん戻りますか。」


「はい。頑張りましょう。」




 村に帰った僕たちは、村長にお願いして西の外れにある空き家を貸してもらった。村長には泊まるなら我が家でって言われたけど、夜にかけて襲ってくるんだったら近くにいて見張っていた方が良いだろうと思い聞いてみたら、ここを教えて貰えた。こんな所でいいのかって聞かれたけど屋根があって崩れなければいいし、ここの家が一番西側にあったんでここにした。


「村長の家でも良かったのになんでこんなところ借りたんだ?」


「まあここが一番西側にあったのと、ここならほかの家と離れてるし多少戦闘をして音が出ても怒られないだろ?」


「それは分かりますが、何もこんな所じゃなくてもいいんじゃないですか?」


 二人とも不満たらたらだな。村長の家に泊まっても良かったんだけど、ゴブリンが襲ってきたらここまで遠いし、リュックサックから物を取り出すところを見られたくなかったからなぁ。


「二人ともまあ落ち着いて。ね?僕もあんまり深い考えがあるわけじゃないけど、ここのほうが襲撃現場に近いから見張りを立てとけばすぐにわかるからね。ガリウさんたちの負担を少しでも軽くしてあげないと。」


 二人ともまあ、そういうことならと納得してくれた。この家には竈もあるし薪も貰えた。埃を払えばまだ十分に住むことができそうだ。ゴブリンが来る時間までまだあるし、掃除をしてしまおう。


「さあ、二人とも掃除して寝るところを作ってからご飯にしよう。」


 村にある井戸から水を汲んできて、口元を布で覆ってマスクをしてから村長から借りた箒を使って埃を払って雑巾かけて、エアマットを出して置けば寝床は完成。で、竈のある広い土間に机と椅子を出せばリビングもできた。


「ん、いいんじゃない?これからどれくらいの期間かかるか分からないからね。気兼ねなく過ごせる場所が出来た。」


「ご飯も出来ましたよ。さ、座ってください。食べましょう。」


「やったー。いただきます。」


 ニーナが作ってくれたのは野営したときに作ってくれた具だくさんのスープだ。これ美味しんだよね。味付けは僕が持ってた塩胡椒だけなんだけどなぜか美味い。


「ニーナが作ったこのスープ美味しいよね。味付けは塩胡椒だけなんだよね?」


「そうですよ?そんなに美味しいですか?いつもと同じ作り方してるだけですけど…」


「そりゃあ、ニーナの愛情入りだからね。たっぷり入ってるんでしょ、ニーナ。」


「はいそうですね、たっぷり入れました…って何言ってるんですかタニアさん!」


 タニアはこっちを見ながらにやにやしているし、ニーナは真っ赤になって突っ込んでいる。仲良いなぁ。


「また揶揄ってるよ。ニーナ美味しいよ、ありがとう。」


「あ、はいありがとうございます。材料があればもっと違うものも作れるんですが、今はこれで我慢してくださいね。」


「良かったなーリュウジ、ニーナの愛情がいっぱい詰まったスープが食べれて。」


「もう、タニアさんにはあげませんよ!」


「にしし、ごめんごめん。ごめんてー、ニーナちゃん。」


「二人とも、遊んでないで食べないとスープが冷めちゃうぞー」




 あとは固いパンだけどこれにも段々慣れてきたな。最初は固くて食えるかって思ったんだけど、慣れてくると結構美味しいんだよね。なんかちょっと酸味があってね、しょっぱいものと一緒に食べると意外と合うんだ。干し肉を薄く切った物を乗せて食べると美味いんだ。原材料は何だろう。小麦ではなさそうなんだけど、ライ麦っていうのがあったっけ?よく分からないけど食べれるからいいか。


 そんな感じでご飯を食べて装備を身に着けたらちょうど夕暮れ時なので三人で外に出て見張りをする。


「村長の話では、これぐらいの時間からゴブリンがやって来るんだったかな。今日は来るかな?」


「ここ二日ほど来ていないそうなので今夜あたり来そうですね。」


「あ、噂をすれば来たみたいだよ。」


 タニアが指さした森の方からゴブリンが出てきた。


「数は…五匹か?これならいけそうだね。いつものように僕が前に出るから二人は援護よろしく。」


「はい、任せてください。」


「もうちょっとこっちに来てからにしよう。増援があると危ないからさ。」


「わかった。もう少し待ちだな。」


 いつものように胸の前で盾を構えて剣を抜いて戦闘態勢を整える。金属片を張り付けた盾は少し重くなっているが、許容範囲内だ。あとはこの剣がどれだけ切れるかかな。


「もうそろそろいいかな?よし、行ってくる。」


 ゴブリンたちはギャアギャア言いながら、真っ直ぐに村に向かってくる。こっちに気が付いているのか向こうも武器を構えて戦闘態勢だ。


 それを見ながら走っていく。


「万物の根源たる魔素マナよ 我の意に沿い顕現せしめ矢の形をもってかの敵を撃て 炎矢ファイヤアロー」


 ニーナの魔法が発動し、僕を追い越してゴブリンに向かっていく。同時にタニアの放った矢が飛んでいき先頭にいたゴブリン二匹に命中し、後ろ向きに倒れる。


 二人の攻撃に少し遅れてたどり着いた僕は、残った三匹の内の一匹に狙いを定め剣を袈裟切りにする。


「はあっ!」


 今までのショートソードと同じように力を込めて振った剣は、ゴブリンの左肩と首の間から入りバターを切るように両断した。骨も切ったはずなんだが、コツっと軽い抵抗があった程度で振り切れてしまった。


「なんだこの切れ味は!凄い!」


 剣を振り切った体勢から右足を踏ん張り、夕陽を反射してほんのりと青く輝いている剣を引き戻し左右から棍棒を振りかぶって攻撃してきたゴブリン二匹を迎え撃つ。二匹同時では無理だな。左から来た一匹には盾を出して防ぐ。もう一匹の攻撃は耐えるしかないか。


「ぐっ」


 体勢が悪く踏ん張り切れなかったので腕だけで棍棒を防ぐことになって勢いを殺しきれなかった。いかん!これじゃあ右からの攻撃を真面まともに食らってしまう!そう思い来るのを覚悟していたが、一向に衝撃が来ない。ドンッと音がしたと思ったらゴブリンが振った棍棒はすぐ横を通り地面を叩いていた。


 ニーナかタニアの援護だろう。助かった、が、棍棒を防いだ盾がその勢いを殺せずに腕が下がってしまった。


 その状態で一瞬硬直した僕にゴブリンが追撃してくる。盾を弾き飛ばした棍棒を再び振り上げ頭を狙ってきた。


「このっ!」


 無理やり体を後ろに反らし、その一撃を躱す。顔すれすれで躱せたがこっちも態勢を立て直さないと攻撃に移れない。そう思い後ろに飛ぶと同時に盾を構え直す。


 いったん距離を取れたことでゴブリン二匹がよく見えるようになった。左のゴブリンはすでにこちらに向かってきているが、右のゴブリンは左肩に矢が刺さっていて左手が動かないようだ。援護はタニアだったのか。あとでお礼を言わないとな。しかしそのゴブリンも片手で棍棒を握り直し、まだやる気満々だ。


 まずは左のゴブリンだ。少し腰を落とし盾を少し前に構える。一対一なら態勢が整えばゴブリンはもう僕の敵じゃない、と思う。


「グギャッ!!」


「ふんっ!」


 ゴブリンが棍棒を振り下ろしてくるのに合わせて盾を前に出す。盾にガツッと棍棒が当たったが衝撃はあまりない。力が乗り切る前に勢いを殺せたからだ。棍棒を弾かれて態勢を崩したゴブリンのがら空きになった胴を目掛けて剣を右から振り抜くと抵抗なく両断した。続けて残ったゴブリンが攻撃しようとしたが、右側からゴブリンの胴体にニーナが放った炎矢が突き刺ささり、ギャッと鳴いて地面に倒れた。


 しかし、炎矢が刺さったゴブリンは息絶えてなかったみたいだ。まだ起き上がろうとしていたので、近寄って止めを刺した。


「ふいー、終わったかな?」


 ニーナたちの方を振り返るとこっちに歩いて来るところだ。今のうちに耳と魔石を取り出してしまおう。

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