第三十七話
思っていたよりも大きい買い物をして武器屋を出た僕は、腰に装備した新しい剣を撫でながら組合に向かう。お金を使ってしまったので下ろしに行こう。
お昼前なので組合内は空いているな。受付にはケイトさんがいた。
「こんにちはケイトさん。」
「リュウジさんこんにちは。今日はお休みですか?」
「はい。装備の整備をしないといけなかったので休みにしました。で、お金を下ろしたいんですがどうすれば良かったんでしたっけ。」
「はい、冒険者証と預金証明書は持ってますか?」
「あ、あります。これですね。」
「はい確かに。いくら下ろしますか?両替も出来ますよ。あまり多いと手数料が発生しますけど。」
「じゃあ、金貨二枚で、一枚を大銀貨でお願いします。」
「はいわかりました。お待ちくださいね。」
受付カウンターで少し待っていると受付の奥から出てきたラルバさんに声をかけられた。
「おう、リュウジ元気にやってるか?」
「あ、ラルバさん。こんにちは。ちょうどいいところで会いました。僕、もっと強くなりたいんですけど、もっと厳しい訓練をしてもらってもいいですか?」
「ん?どうした。なんかあったか?」
「実は、昨日オークと戦って倒せたんですが、結構危なかったと思うんです。それでですね……」
ラルバさんに昨日あったオークとの戦闘になった経緯を説明した。
「なんだ。無傷だったんじゃないか。じゃあ、リュウジ自身には問題はないと思うぞ。問題は、その時の作戦だな。パーティの人数が三人なんだろ?そうしたらやっぱり前衛はお前だけにした方が良いな。盗賊のやつがどれだけできるかわからんが、魔法使いを単独にしておくのはあまりいいことじゃねえと思うぞ。もっと依頼を受けて連携を考えてみろ。そうして経験を積んでいけばお前自身ももっと強くなれるさ。」
「はあ。そんなもんですか…わかりました。もっと依頼を受けてみます。でもまた訓練してください。」
「おう、わかった。そん時を楽しみにしてろよ。」
ラルバさんはそう言いながら行ってしまった。忙しいのかな?
あ、ケイトさんが戻ってきた。
「リュウジさんお待たせしました。」
カウンターに置かれた袋を開けて確認する。金貨が一枚と大銀貨が十枚ある。当たり前だが、ぴったりだ。
「はい確かに。ありがとうございました。」
お金の入った袋をリュックに入れて組合を出る。次は、防具屋だな。盾の整備をしてもらわないといけないからな。盾を買ってから戦闘に安定感が出た気がするし、危ない場面を何度盾で乗り切ったか。よく見ると表面は傷だらけだ。しっかりと直して貰おう.
「こんにちはー。」
「はい、いらっしゃい。ああ、君か。今日はどうしたんだい?」
防具屋のイーゴさんだ。五十前後くらいのがっしりとした体格の人だ。何回か来たから顔を覚えてくれたみたいだ。早速盾の整備を頼もう。
「盾の整備をお願いしに来ました。結構使ったので痛んでると思います。」
「おお、そうか。役に立ったかい?見せてみな。」
「それはもう!何度助けられたか。しっかり整備してください。」
イーゴさんは盾を受け取って表面を見て、裏側を見て顎に手をやって何やら難しい顔で考えている。
「結構傷がいってるな。よし分かった。三日後に取りに来てくれ。もっと固い革に張り替えてみるよ。」
三日かかるのか。その間は依頼は受けれないなぁ。帰って二人に報告しないと。まあ、次に受ける依頼は野営する必要があるやつにするつもりだから準備の時間にすればいいか。
「はいわかりました。いくらぐらいかかりますか。」
「革の裏に薄い金属片を張り付けたりしようと思ってるから、ちょっと高いが大銅貨九枚だな。」
「わかりました。三日後ですね。よろしくお願いします。」
「おう、期待して待ってな。」
「あ、籠手とか脚用の防具ってなんかいいのありますか?」
そういえば腕とか脚の防具を買わないといけないんだった。頭用もだな。
「籠手はどんなのがいいんだ?指が分かれてるガントレットがいいのか、二股になってるミトンがいいのか。あとは、金属製がいいのか布製か革製か。いろいろあるぞ。」
うーん、籠手と言っても色々あるんだな。素材のことはあんまり考えてなかったなぁ。イメージでは金属製の奴がパッと思い浮かぶんだが、革や布の奴はほぼ手袋だと考えていいのかな。一度見せてもらうか。
「金属製と革製を見せて貰ってもいいですか?」
「じゃあ、こっちだ。」
籠手が並んでいる棚に行くと金属製のガントレットや鍋掴みをもうちょっと頑丈にした二股の手袋タイプのミトン、手の甲までを覆う革製のものなど結構種類は豊富だった。どんなタイプがいいんだろうか。ガントレットでも手の甲側だけを覆うものや全体を覆うもの、手を入れるところは革製でそこに指先まで金属片で覆ってあるものなんかがある。革製のものも似たような感じだが、肘まである皮で出来た手袋の表面に革を縫い付けてあるみたいだ。手のひら側に皮ひもが付いていてそれを使って締め付けるのか。あ、革の上に縦五センチ横一センチで厚さ三ミリくらいの金属片が縫い付けてあるのもあるこっちのが防御力が高そうだな。ガントレットよりも使い勝手がよさそうだ。これは第一候補だな。
「この金属片が張り付けてある籠手が良いですね。使いやすそうで防御力もありそうですね。」
「そうだな。これは冒険者に人気がある。それにするか?」
「はい。次は脚用と兜を見せてください。」
「よし、こっちだ。」
脚甲は、革で出来た膝下までのブーツの表面を金属板で覆ってあるものだった。あまり種類はなく足のサイズを測って作成するみたいだ。一足頼んだ。
兜は逆に種類が多く、ヘルメットみたいな頭だけを覆うものや顔まで覆うフルフェイス型のもの、革製の帽子みたいなもの、形も色々で頭の先端が尖ってるものや、房飾りのついてるものなんかがあった。大体が鎧とセットになっているみたいだ。僕は防具が革製なので帽子みたいなやつが良いかな。
革製の帽子型ものは耳を覆う部分があって、首筋を守る部分もある。何か保育園児が被る帽子を革で作ってごつくした感じだ。脱げないように皮で出来たベルトがあるんだ。革製のものでも結構重いから金属製のものだととんでもなく重そうだ。ま、金属製の兜は今はいいか。
「兜は革製のを下さい。」
「はいよ。全部で銀貨六枚と大銅貨八枚だ。」
なんだか防具は意外と安いのか?武器が高かっただけなのかな?でもこれで防具が揃ったから安心感が増したか。財布代わりの袋からお金を取り出しイーゴさんに渡す。
「じゃあ盾とブーツは三日後に取りに来てくれ。兜と籠手は今すぐ持って帰れるぞ。」
「はい、わかりました。ありがとうございます。三日後ですね。」
新しいものを買った時はいつもだけど、手元に来るのが楽しみでその間の日もテンションが高くなるんだ。あー、三日後が楽しみだなぁ!




