表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
32/173

第三十二話

三十二話に三十一話を投稿してました。修正しました。報告ありがとうございました。


 盾で弾き飛ばしたやつがまだ一匹残ってるはずだ。一匹ぐらい仕留めないと情けないからな。


 突き飛ばした方を見ると、もう起き上がってやる気満々だった。顔つきが怖くなってる。


「ギギィ!ギギギギィ!」


 何言ってるか分からないが、怒ってることは分かった。地団太踏んで、ダガーを振り回している。分かりやすくていい。状況は一騎打ちなんだが、なんだか気合が入らないな。


「さあこい!」


 大きい声を出して無理やり気合を入れる。油断はしない。ラルバさんとやった訓練の通りに体のすぐ前に盾を構え、剣を上段に構える。ああ、肩を上げたのに痛みがないって素晴らしい。


 最近四十肩でボールを投げるときでも腕が痛かったからなぁ。若いってのは…素晴らしいなぁ。


 そんなことを考えなら構えているとゴブリンが攻撃してきた。だが、ただ闇雲にダガーを振り下ろすだけの攻撃だ。盾を前に動かしその攻撃を弾く。と同時に上段に構えていた剣を力いっぱい振り下ろす。剣は、肉と骨を断つ感触とともにゴブリンの左肩口から右脇腹まで綺麗に断ち切っていた。




「ふう。よーし、終わったか。」


 いつものように襤褸布で剣についた汚れをふき取り一息つく。一匹仕留めただけで大仕事を終えた気になってしまうな。あとは証明部位を切り取って魔石を取り出すだけだ。ニーナたちがやってきたので手分けして最後の処理まで終わらせてしまう。


「お疲れー。怪我もなくて良かったね。」


「ありがとう、タニアのおかげだよ。そこそこって言いながら凄い腕前じゃないか。あの時は怪我を覚悟したからな。」


「む~、私も頑張ったんですよ?」


 ニーナがちょっと拗ねた顔で言う。タニアだけ褒めたからかな。ニーナの頭をポンポンと撫でながらお礼を言う。


「はは、ニーナもありがとうな。最初に数を減らしてくれたから余裕だったよ。」


「ニーナは、リュウジが危なかったとき駆けだそうとしたんだからな。弓を射た後だったからすぐに止められたから良かったけど、あの時のニーナは必死な顔してたよ。駄目!って言いながら走り出したからな。リュウジは愛されてるなー。」


「なっ、何を言ってるんですか?タニアさん!?」


 にこやかにサラっとニーナをからかうタニア。ニーナは顔を真っ赤にしてワタワタしている。


「あー、あの時のことがあったからなぁ。心配してくれてありがとう、ニーナ。」


 魔物化角ウサギのときは、かなり心配かけたからなぁ。


「あ、いえ、あ、あ、あの……はい……」


 お礼を言ったら今度は耳まで真っ赤になって俯いてしまった。相変わらず可愛いねぇ。


 戦闘の後始末も終わり、ニーナも落ち着いた頃合いで休憩は終わりだ。


「さあ、続きと行くか。」


「はい、頑張りますよ。」


「次はどっちに行く?」


 当てがない、というかさっぱり分からないのでタニアに振ってみよう。


「タニアはどっちがいいと思う?」


「うーん、じゃあこっちで。」


 タニアは迷うことなく南東の方を指さす。そっちの方に何かあるんだろうか。


「わかった。でも何で?」


「こいつらはこっちの方から来たんだ。足跡というか痕跡が残ってる。だからこっちに行けばまた遭遇する可能性があると思う。足跡をたどってみよう。昨日も遭遇したし、この辺りにはゴブリンの数が多い気がするんだ。もしかしたら近くに巣があるかもしれない。」


 ゴブリンの巣か。見つけたらどうしよう。小説とかなら侵入して殲滅しようって話になるんだろうけど、僕たちの実力的にそんなことできないと分かってるからね。こっちのメンバーも少なく、狭くて暗くて相手の本拠地だから、襲うならよっぽど準備しないと駄目だろう。現実的には組合に報告かな?


「巣があったとしてどうする?僕達では侵入するのは無理だと思うぞ。」


「そうだね。見つけたら偵察して組合に報告かな。あたしも侵入するのは勘弁だね。」


「だったら周りにいるゴブリンを狙った方が良いですね。少しでも数を減らした方が良いと思います。」


 今日の目標もゴブリン十五匹だし、その方向で行くか。


「じゃあ、その方向で行こう。タニアよろしく。」


「わかった。こっちだよ。」


 先行するタニアに間を開けて付いていく。暫くするとまた止まれのハンドサインがあった。タニアがこっちに戻ってくる。


「二十メルチぐらい向こうに開けた場所がるんだけど、そこに五匹の群れがいた。リュウジどうする?」


「五匹か……僕が三匹引き受ければ行けるかな。今度は僕が先に正面から行くから、ニーナたちはもう少し向こうに回って攻撃してくれ。」


「わかりました。でもさっきよりも数が多いから、気を付けてくださいね。」


「おう、じゃあ準備できたら合図してくれ。そうしたら僕が突っ込むから。」


「はいよ。頑張れよ。」


「後ろからの襲撃に気を付けてね。」


「あたしがいるから大丈夫だよ。ニーナはしっかり守ってやるさ。」


 タニアは挑発的な笑顔を残してニーナと移動していった。よし、今回はちょっと踏ん張るか。僕も少し移動し準備する。ゴブリンたちはまだこちらに気づいていないみたいだ。タニアたちの方を見るとあちらも準備できたみたいでこっちに向かって手を挙げている。


「よし、行くか!」


 こちらも手を挙げて答え、自分で自分を鼓舞し走り出す。


「うおおぉぉぉぉ……!」


 走りながら自然と声が出ていた。木々の間をすり抜け数秒でゴブリンたちにたどり着いた。


 いきなりの襲撃に騒がしく混乱しているゴブリンたちの一匹、一番近くにいたやつに目標を定め、剣を振り抜く。この場所は木が少なくて剣を水平に振っても当たらないスペースがある。バットを振るように右側から首を目掛けて振った剣は大した抵抗もなく頭を飛ばした。まずは一匹。振り切った剣を戻すのではなく左足を軸にして一回転し、左側にいた次の目標ゴブリンを袈裟切りで切り捨てる。その時右からゴブリンが来るのが見えたので、踏み込んだ右足に力を入れ体を左後ろに倒すと目の前をダガーが通り過ぎて行った。


「くぅぅ!」


 今までやったこともない動きに体が悲鳴を上げるのが分かる。無理な動きで体が一瞬硬直した所に別のゴブリンが襲い掛かってきた。ヤバい!上体を起こせない!?


 そうだ!力を抜けばいいんだ!


 思いついたとおりに体の力を抜き地面に倒れる。すぐに左方向に転がって離脱を図る。いやな予感がしたので素早く起き上がり盾を体の近くで構えるとそこに衝撃があった。その衝撃を踏ん張って耐えて、前を見るとゴブリンがダガーを盾に突き刺していた。


 盾が引っ張られる。ダガーが盾に刺さって抜けないみたいだ。盾を前に出してやると引き抜こうと踏ん張っていたゴブリンがバランスを崩したので、盾を引き戻し顔を狙って剣を突き出すと左目から後頭部に貫通し、ビクンと痙攣してその場に崩れ落ちた。


 三匹目を倒し、その場が静かになっていたことに気が付いてあたりを見るとゴブリンはすべて倒れていた。終わったかと思いながら、ほうと一息ついて剣を拭って鞘に納める。残りはニーナとタニアがやってくれたな。


 盾を見ると錆びたダガーが刺さっていたので抜いて小袋に仕舞う。捨てるとまた拾って使うんだって。 


 しかしこの盾にはよくお世話になってるな。買って良かった。帰ったら剣と一緒にメンテナンスに出そう。


 いつものように耳を切り取り、魔石を取り出す。僕ももう慣れたよ。三人でやればあっという間に終わる。浅く穴を掘り、集めた薪を並べてゴブリンを焼く。相変わらず凄い匂いがするがちょっと遠巻きにして燃え尽きるのを待って土を被せたら終わりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ