第三十一話
ちょっと短めです。
次の日。
昨日遅くまで騒いでいたからちょっと寝坊してしまった。食堂に降りていくともう二人がテーブルについて朝食を食べていた。
「おはよう。」
「おはようございます。リュウジさん。」
「あ、リュウジ、おはよ。」
「アルテさん、おはようございます、僕にも朝食をお願いします。」
注文を取りに来てくれたアルテさんに朝食をお願いして会話に混ざる。
「今日も依頼を受けるんだよね。まだあるかな?」
いつも組合に行く時間よりも一時間くらい遅れちゃったからな。
「ゴブリンの討伐依頼ならあるんじゃない?なかったら薬草でも採りに行けばいいさ。」
朝食を食べ終わり身支度と装備を整え、組合に着いた。依頼板にはまだゴブリン討伐が残っていたから躊躇せず取って受付に持って行った。受付に座っているのはケイトさんではなかったが、この人も綺麗な人だな。
「あ、ケイトのお気に入りの人たちだね。確かリュウジ君だったかな?私はジェシーナっていうんだよろしくね。」
えらくフレンドリーな人だ。とっつきやすくていいな。人気がありそうだ。しかし、僕達ってケイトさんのお気に入りなんだ。素直にうれしい。
「こちらこそよろしくお願いします。依頼を受けたいんですが、良いですか。」
「はーい、わかりました。…………はい、いいですよ。受理しました。頑張ってね~。」
か、軽い。ケイトさんとは全然違うね。組合にはいろんな人がいるなぁ。自由でいいと思う。仕事さえしっかりしてくれれば。
組合を出て町の外に向かう。今日も屋台で食料を調達していこう。
「あはは、この組合は面白いね。フルテームとは全然違うよ。」
「そうなんだ。向こうはもっとまじめ?」
「そうだね。荒っぽい人も多いけど受付にあんな感じの人はいなかったよ。」
そのうちその港町にも行ってみよう。旅することになるから、もっと慣れてからかな。
「タニアは、昼にご飯食べる?」
「あれば食べるよ。なんで?」
「リュウジさんは、お昼ご飯を食べないと気が済まないらしいんです。」
ニーナ、それじゃあ僕が変な人みたいだぞ。多少食い意地は張ってることは否定しないけどね。
「今から屋台によって買っていくから、タニアの分が要るかどうかを聞きたかったんだ。」
「じゃあ、お願いするよ。あ、お金は出すからね。」
「いいよ。パーティ資金から出すから。軽食程度になるから期待はするなよ。」
わかったと返事を聞きながら屋台で買い込んでいく。器を持っていけばそれに入れてくれるので、包んでもらって町を出たところでリュックに仕舞おう。
僕のリュックサックのことは昨日の歓迎会の時に伝えてある。仲間になったことだしあまり隠し事をするのは良くないと思ったからだ。幸い快く秘密にしてくれるらしい。逆に荷物を持たなくていいと喜んでいた。
「よし、準備完了。行こうか二人とも。」
「はい。」
「はいよ。」
今日も南の森に行くことになっている。昨日タニアにあった所よりも奥に行くつもりだ。目標は少し多めのゴブリン十五匹とした。
「あれ?タニアって弓も出来るの?」
南の森に続く街道でふと気が付いた。タニアが小型の弓を背負ってる。
「上手くはないけどそれなりにはできるよ。このパーティなら弓の出番があるかなって思ってさ。」
「凄いですね。剣術に短剣術それに弓まで出来るなんて…誘って良かったですねリュウジさん。」
「ああ、ほんとにな。後方からの援護とニーナの護衛を任せてもいいか?」
「あんまり期待しないでよ。あくまでそこそこだからさ。一番得意なのは短剣だし。」
そこそこでも遠距離攻撃手段ができたことが有り難い。これで標的を見つけたら先制攻撃ができる。あとは森の中でどこまで使えるかだな。タニアの言う通り過度な期待はしないようにしよう。
「じゃあ今日はタニアとの連携を意識しながらゴブリンを倒そう。タニアは索敵って出来る?」
「索敵なら任せて。得意な方だから。森に入ってゴブリンが出るくらいの所に来たら、あたしが先頭になるよ。」
今までは、運よく奇襲を受けることはあまりなかった。奇襲されたと言えば角ウサギくらいか?あれは奇襲っていうのかな?奇襲って突然襲い掛かられるってことだから奇襲になるのか。それもタニアがいればある程度は防ぐことができるってことか。
「それは本当に有難いな。頼りにするよ、タニア。」
「任せて!で、発見したらリュウジが突撃すんの?」
「向こうが気づいてたら僕が前に出る。気づいてなかったら、今回はタニアが弓で攻撃、ニーナも魔法で攻撃。それから僕が突撃するってことでいいかな?」
「んで、敵が多かったらあたしも近接参加?」
「できれば。そんな感じで行こうかと思う。」
これなら、上手くいけば五匹くらいの数なら何とかなりそうだ。それ以上だったらスルーだな。
「五匹くらいまでの群れならこのやり方で何とかなりそうかな。相手がそれ以上だったら見逃すのがいいと思うけどどうかな?」
「わかりました。私とリュウジさんの実力からすると、それがいいと思います。」
森に入り二十分くらい歩いてきた。この辺からゴブリンが出るといわれている場所だ。
「じゃあ、ちょっと間を開けてあたしの後についてきて。見つけたら合図するよ。」
タニアは、森の中を足音を立てずに進んで行く。さすがシーフだ。あんなの真似できない。
「タニアの足音がしないよ。僕たちが近くにいると邪魔になるな。」
「ほんとですね。言われた通り離れて付いていきましょう。」
ちょっと離れてタニアについていくこと三十分くらいか。タニアが教えてくれた止まれを意味するハンドサインを送ってきた。僕たちは素直に従いその場で立ち止まりしゃがむ。
タニアがこっちに戻ってきた。
「ここから十五メルチ先にゴブリンが四匹いる。」
十五メルチって…十五メートルってことか?あ~よく考えたらこの世界の単位のこと何にも知らないなぁ。帰ったらニーナに聞いてみよう。
「どうしたんですか?リュウジさん。ゴブリン四匹だそうですよ?」
「ああ、ごめんちょっと考え事してた。…よし。四匹ならさっきの作戦で行けると思う。タニア、弓で狙える?」
「森の中でも十五メルチくらいなら余裕だ。任せときな。」
「ニーナもいけるか?」
「行けます。」
「じゃあ、それで行こう。僕が突撃してからの位置取りは任せるから、援護よろしく。」
「わかりました。リュウジさんも頑張ってくださいね。」
「援護は任せとけ。」
よし戦闘開始だ。ニーナが小さい声で詠唱を始めると、タニアは弓に矢をつがえ弦を引き絞る。先制攻撃はタニアだった。ピシュンという音とともに放たれた矢は、木々の間を綺麗に抜けて目標の内の一匹の頭に命中した。向こうの方でギャギャッという声が聞こえる。それに続いてニーナも負けじと炎矢を放つ。弓矢の速度に負けないぐらいの速さで炎矢が飛んでいく。
僕はそれを見てから走り出す。いつもの突撃スタイルだ。盾を前面に構え、剣を下手で後ろ側に流して木々の間を走る。前では炎矢に胸を貫かれたゴブリンが倒れるところだ。他の二匹がようやく迎撃態勢を取った所だったが、僕の方が速かった。
「ぅおらぁ!」
盾で目の前の一匹を突き飛ばす。グゲェッと鳴きながら弾き飛ばされたそいつは後回しだ。もう一匹は……右か!視界の端でゴブリンが武器を振り上げてるのが見えた。
「くっ」
左足を踏ん張って態勢を変えようとしたが、ゴブリンの攻撃の方が早かった。これは食らう!と思った時ゴブリンの頭に矢が突き立った。タニアか!こんなに動いてる的にも当てるのか。何がそこそこだ、凄いじゃないか!だけど助かった!矢の飛んできた方を振り返るとタニアがニーナとハイタッチしてた。




