第三話
「あ、あった。ありましたリュウジさん。」
川岸を歩き出してから十分くらいたった森の中でニーナのリュックを見つけ、さらに三十分くらい歩いて森の出口についた。
「町までは、ここから歩いて一時間くらいです。」
「結構歩くんだね。腹が減ったよ。気が付いてから何も食べてないんだ。」
水しか飲んでないし、ゴブリンと戦ったし、ほっとしたら途端に空腹を覚えた。
「そうなんですか。もうちょっと頑張ってください。町につけば食べれますよ。」
「そりゃあ楽しみだなぁ。ところで何て名前の町?」
「セトルの町って言います。結構大きな町ですよ。冒険者組合もありますし。」
「冒険者組合!僕も冒険者になれるかな?」
冒険者組合。やっぱりあるんだ。ギルドとは違うのかな?でも冒険者はファンタジーの定番職業だから憧れがあるなぁ。
「リュウジさんなら間違いなくなれますよ!あんなに強いんですから。」
瞳をキラキラさせながらニーナが微笑む。かわいい。
「ニーナのお墨付きがあるなら心強い。冒険者になるのに何か試験みたいなのはあるの?」
僕は、頭を撫でたくなる気持ちをぐっとこらえて聞く。
「あります。内容は講習と模擬戦くらいです。講習は、冒険者になる心構えを教えてくれます。模擬戦は試験官の人と戦うんです。ほとんどの人は通過できますけどあまりに駄目だと合格できません。でも、合格できなくても組合で訓練をしてくれるので合格するまで何度でも挑戦できます。」
「そうなんだ。それなら安心だね。ニーナも受けたんだよね。」
「う、私は、三回挑戦してやっとなれました。魔法使いの試験は少し難しいのです。」
ニーナは気持ち落ち込みながら教えてくれた。それによると魔法は体の中にある魔力を動かせないと発動はできない。さらに魔力回路がある程度発達していないと制御と威力が出ないらしい。ニーナは、魔力は動かせたが魔力回路の発達が未熟でなかなか制御できなかったみたいだ。さっき実際に見たから疑うわけではないんだけど魔力とかあるんだ。魔力回路って何だろう。僕にもあるんだろうか。
「でもゴブリンを倒した魔法は凄かったじゃないか!」
「私、炎矢と生活魔法しか使えないんです。だから仲間になってくれる人がいなくて…。他の魔法使いの人は攻撃系の魔法が二~三種類使える人が多いんです。私は落ちこぼれなんです。それで一人で薬草採取の依頼を受けていたんです。」
喋りながらだんだんと下を向いて行ってしまうニーナ。
「森の入り口付近は角うさぎくらいしかいなくて強い魔物もいないんですけど薬草も生えてなくて、少し奥まで行ったんです。そうしたらああなってしまいました。」
「そうだったのか。じゃあ、僕が冒険者になったら仲間になってね。」
こんな可愛い子ほっとけないよ。
「え!いいんですか?こちらこそお願いします!」
パッと笑顔になる。
「さあ!急ぎますよリュウジさん!すぐに冒険者になりましょう!」
ニーナは、僕の手を引っ張って走り出す。手を引っ張られた僕も苦笑しながら一緒に走る。ニーナの表情は、それはそれは輝くような笑顔だった。
角ウサギって適当に言ってたけど本当に角ウサギって呼ばれてるんだって。結構安直なんだな。
ちなみに角ウサギを持ってくるのを忘れていたことに気づき、更に食べると美味しいとニーナから教えてもらった時には凹んだよ。