第二十五話
前の話が抜けていたので投稿しました。大変申し訳ありませんが二十四話からお願いします。
次の日から精力的に依頼を熟していった。折角購入したが盾を使う場面はほとんど無く、採取依頼と訓練を頑張った。宿をまた十日延長し、いつものように冒険者組合に着いて依頼板を見ている時だった。
「リュウジさん、ニーナさんおはようございます。」
「あ、ケイトさんおはようございます。どうかしましたか?」
「あのね、ラルバさんが訓練場に来てほしいって言ってたんだけど、今から大丈夫?」
ラルバさんが?僕たちに用事って何だろう。まだ依頼を受けてないから行ってみよう。
「大丈夫です。いいよね?ニーナ。」
「はい、大丈夫ですよ。行きましょう。でもラルバさんが私たちに用事って何ですかね。」
ニーナも心当たりはなさそうだ。ほんとなんだろう?
「ま、行けば分かるかな?僕は悪いことしてないから大丈夫だと思うよ。」
「私も何にもしてませんよ?でも、何でしょうね。」
二人で訓練場に行くと真ん中あたりにラルバさんが立っていた。
「お、来たか。悪いな朝から。話ってのはな、お前たちそろそろ討伐依頼を受けてもいいぞって伝えたかったんだ。リュウジはもうすぐ剣を買えるんだろ?ニーナは、魔法の詠唱がかなり早くなったって聞いてる。あとは使える種類を増やことだとよ。」
突然そんなことを言われた僕たちは、驚いてぽかんとしてしまった。
「なんだ?嬉しくないのか?試験受けた時まだ討伐依頼はやめとけって言ったのを覚えてるか?」
「あ、はい。覚えています。」
確かにあの時、僕は武器をもって戦ったことなんてなかったから当然だろう思っていた。でもまだ冒険者になって十日くらいしか経ってないんだけどいいんだろうか。
「まだ、冒険者になってそんなに経ってないんですが、討伐依頼を受けてもいいんですか?」
「普通はな、冒険者になって一か月くらい経ってから一度俺たちと訓練するんだ。その時に判断するのが一般的なんだが、お前たちは魔物化した角ウサギを倒しただろ?あれがあったし、訓練にもしょっちゅう来てたしな。だからもうそろそろ討伐依頼を受けても大丈夫だろうってのが組合の判断だ。」
「でも、あの時は大怪我したんですよ?それでもいいんですか?」
あの時の怪我は結構酷かったと思う。ポーションで痕も残らずに治っちゃったけど。
「それからお前たちは、自分たちで出来るだけの準備をしたんだろう?冒険者になったばかりのやつは無理することが多いんだ。そういうところも評価してのことだ。」
「わかりました。これからは討伐依頼も受けようと思います。ありがとうございます。」
「私も頑張ります。新しい魔法も覚えます。」
「おう。頑張れよ。あとは、パーティメンバーも増やした方がいいぞ。二人じゃあ出来ることも限られるからな。」
パーティメンバーのことは僕も考えていたんだけど、どうやらこの町の組合では難しそうだ。組合に行ったときに見ているとソロの人や人数の少ないパ-ティが見当たらないんだよね。一緒に試験を受けた人たちももうパーティに入ってるみたいだし。そうだとすると別の町に行かないと駄目なんだろうなぁ。
もうちょっとこの町で活動した後、別の町に行くことも考えなきゃいけないかな。まあ、まずは討伐依頼を熟せるようになってから考えよう。ニーナともよく相談しないといけないしな。
その日は依頼を受けずに二人で武器屋に行くことになった。目標金額まで貯まったし、ラルバさんとの話もあって少し遅くなったので依頼を受けるのはやめとこうって話になった。どうやらニーナも何か買いたいみたいだ。
「いらっしゃい。お?こないだ来た子か。ちゃんと貯まったかい?」
「はい、やっと貯まりました。銀貨二枚のショートソードを下さい。」
「よし待ってな。今準備してやるからな。あ、剣帯とかはあるかい?」
剣帯って剣を腰に吊っておくベルトみたいなやつかな?
「ないです。ないと困りますか?」
「ないと腰に吊っとけないよ。じゃあ付けとくよ。」
「それは有り難いんですけど、いいんですか?お金払いますよ。」
「いいって、いいって。これから頑張って剣使ってくれて整備に出してくれたらいいからさ。」
そういえば、メンテナンスもしてくれるって言ってたな。
「ありがとうございます。砥ぎに出すときはお願いします。っていうか、こいつって砥いだ方が良いですか?」
今までの主武器の剣鉈だ。大分使ったからそろそろ切れ味が怪しくなってきたんだ。
「ん?ちょっと見せてくれるかい?これがこの間言ってたナイフか。」
店主はそう言って剣鉈を鞘から出していろんな角度から見たり、刃の部分をコンコンと叩いたりしていた。
「これは結構な業ものだね。よく使っているみたいだから刃が鈍ってるみたいだ。砥ぎに出すかい?一本銅貨三枚でやるよ。」
銅貨三枚って三百円くらいってことか。安いな。自分でもできるが、プロに頼んだ方が確実だな。お願いしよう。
「よろしくお願いします。剣を買ったけど使わない訳じゃないんで。」
「そうだね。こいつがあれば剣が駄目になった時でも安心できるしね。大事にしなよ。なかなか手に入らないもんだよこれ。うちにもこれほどのものは無いかもしれないなあ。」
まあ、日本の刃物だから駄目になったらもう手に入らないしね。こっちの人が見ても結構なものなんだな。
「じゃあ、ちょっと待ってて。剣の準備をしてくるよ。」
そういって剣鉈を持って奥に行ってしまう。ニーナはどうしたかな。店内を見回すと、ナイフがたくさん陳列されているところで品定めをしていた。
「ニーナは、ナイフを買うの?」
「はい。今使ってるものがもう駄目になりそうなんです。」
「そうなの?もう長い間使ってるの?」
「そうですね。孤児院で使っていたものを貰ってきたので、その時にはもう大分傷んでたのですが、整備しながら今まで使ってました。かなり小さくなってもう砥ぐことも出来なくなりそうなので、新しいものを買おうと思って。」
見せてくれたナイフは金属部分三センチ程度しか残ってなくて、これをよく使ってたなあって思うぐらいのものだった。
「確かにこれはもう限界だね。新しいのはどんなのが良いの?」
「リュウジさんが使っている剣鉈みたいなのが良いです。あれなら接近戦でも使えますからね。」
「え?ニーナ、ダガーも使えるの?」
「使えますよ。魔法使いの人でもダガーくらいは装備してる人は多いんですよ。近寄られたら杖よりもダガーの方が殺傷能力が高いですからね。」
それはそうか。この世界では刃物の一つくらいうまく使えないと生活していけないもんな。もしかしたら僕よりも扱うのが上手かもしれないな。
ニーナは、暫くナイフが陳列されている棚で吟味した結果、刃渡りが二十五センチくらいの諸刃のダガーを購入していた。ダガーとしては短めらしい。値段が安かったから選んだみたい。ちなみに一般的には四十センチくらいの刃渡りで諸刃のものがダガーっていうらしい。それで片刃で二十センチくらいのものなのはナイフなんだって。じゃあ僕の剣鉈もナイフに分類されるのかな?
「おーい。準備ができたぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
店主のもとに行くと三本の剣が置いてあった。
「この中から選んでくれ。長さや重心、握りなんかが違うから一番しっくりくるものを選んでくれ。」
「わかりました。」
目の前にある三本のうち右端の一番長い剣を手に取ってみる。長さは一メートルちょっとあるくらいかな。握る部分はちょうどいい感じだけど、重心が柄に近い方にあるのか軽く感じる。
「この剣は重心がずいぶん手前側にあるみたいですね。」
「そうだね。ショートソードにしては少し長いからそういう風に作ったんだと思うよ。長いわりに振りやすいだろ?そこの広くなってるところで振ってみていいよ。」
確かにちょっと広くなってるスペースがある。周りを見回して誰もいないことを確認してから振ってみる。
「うーん、確かに振りやすいけど何か違うような気がするなぁ。」
「あはは、その辺は本人しかわからないからね。納得するまで試すといいよ。」
この剣はちょっと違う気がするから次のを試してみよう。真ん中にある剣だ。長さは一メートルないくらいで持ち手はさっきのと一緒な感じだ。重心はちょうど真ん中くらいに作ってあるみたい。
「振ってみたけどこれはいい感じですね。振りやすいです。」
二本目の剣を置いて最後の一本を持つ。お?これは先が重いな。長さは八十センチくらいだ。一番短いけど重心が先の方にあるから振るのに結構力がいる。振り回される感じだ。
「この剣はずいぶんと重心が先にありますね。振り回されちゃいます。長さが短いのに重心の位置でこんなにも変わるんですね。」
「そうなんだよね。重心が先にあればあるほど威力は出せるけど振るのに力がいるし軌道の調節も難しいんだよね。僕のおすすめは真ん中の剣だけどどれが良かった?」
にっこりと微笑んでおすすめを教えてくれる。やっぱり真ん中のやつか。一番しっくりきたしな。
「はい、そのおすすめのやつが良いですね。長さもいい感じですし何より振りやすいのが良いです。」
「うん、そうだね。じゃあそれにするかい?」
「はいお願いします。」
「お買い上げありがとう。明日から使うんだよね。じゃあ最終仕上げをしてくるからちょっと待っててね。」
そう言ってまた奥に行ってしまう。まだお金を払ってないから待ってるしかないか。暫くニーナとお喋りしながら待ってたら二十分くらいで店主が戻ってきた。
「はい、お待たせしたね。きっちり研いできたから気を付けてね。あとこれは剣帯だよ。」
「ありがとうございます。はい銀貨二枚でしたよね。」
カウンターの上に銀貨を置く。
「はい毎度。ああ、それとこれもだな。」
カウンターの上に剣鉈を出してくれた。
「もう出来たんですか?ありがとうございます。」
「砥いだだけだからな。銅貨三枚だよ。またよろしく頼むよ。御贔屓に。」
鞘から出した剣鉈は綺麗になっていた。結構汚れたんだなぁ。これで銅貨三枚ならまたお願いしよう。
「あ、そうだ。金属の買い取りってしてますか?」
僕は、リュックにあったスマホとかのことを思い出した聞いてみた。
「うちでは買い取りはしてないんだよね。どんな金属なんだい?」
「えっと、虹色に光って見えるやつなんですけど。」
と言いながら元スマホを取り出す。
「おお!ミスリルか。しかも不純物が少なそうだね。これならかなりの値段になると思うよ。買い取
り屋か工房を紹介しようか?」
「紹介してくれるんですか?じゃあ工房の方を紹介してください。」
職人街にある暁のローダンという工房を紹介してもらった。武器や鉄製品を主に作っているみたいだ。
「早速行ってみます。いいかな?ニーナ。」
「ええ、今日は依頼も受けませんでしたし、良いですよ。」
「じゃあ、武器屋のロアンの紹介だって言えばわかるからね。」
「わかりました。いろいろとありがとうございました。」
貰った剣帯を腰に巻き、ショートソードを左の腰に吊ってウキウキと武器屋を出る僕だった。




