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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第二十二話

 明るいな、朝……か?どこだここ?宿じゃないな。ぼんやりしていると、見知らぬ女性が声をかけてきた。


「あら?目が覚めましたか?良かった。傷はすっかり良くなってますが、まだ寝ててください。ケイトさんに知らせてきますね。」


 その女性は、部屋を出て行ってすぐに戻ってきた。


「えっと…ここはどこですか?あなたは?」


「ここは、冒険者組合の救護室ですよ。私は職員のミーミリアです。リュウジさんは、組合の酒場で倒れちゃったんですよ。覚えてないですか?」


「ああ、そういえば…ニーナを待ってる間に意識が無くなったのか。……あれ?お腹、痛くないぞ」


「ポーションを使ったのでもうお腹の傷はすっかり良くなってますよ。でも失った血はそのままなので暫く気を付けてください。」


「おお!ポーション!凄いな。少し痕が残ってるくらいなんだ。」


 体を起こし、服を捲ってお腹を見たら傷ついたところに新しい皮膚ができていてその境目が分かるくらいに治っていた。傷に触ってもちゃんと感覚もあるし、これなら痕も残らずに済みそうだ。


「使ったポーションって初級のやつですか?」


「はいそうです。あのくらいの傷なら初級で痕も残らずに治ってしまいますよ。」


「そうなんですか。凄いですねポーションって。」


「リュウジさんも冒険者になったんですから最低でも一本はポーションを持っていてくださいね。」


「そうですね、身に沁みました。早速今日あたり買いに行ってきます。」


 そんな話をしていたらドアがバンっと音を立てて開いてニーナが駆け込んできた。


「リュウジさん!良かった!目が覚めたんですね!何処も痛くないですか!」


 僕の傍まで来て目をウルウルさせながら手を握ってきた。


「ああ、熱も下がったみたいだし何処も痛くないから大丈夫だよ、ニーナ。心配してくれてありがとうな。」


「本当に良かったです。リュウジさんが倒れた時はどうしようかと思いました。本当に、本当に良かったです。」


 ニーナは、そういうとにっこり笑った。何か久しぶりにニーナの笑顔を見たような気がするなぁ。よし、体の調子も戻ったし、また依頼を受けるかな。


「ニーナ、明日からまた依頼受けような。」


「え?明日からはだめですよ。まだ顔色も白いですし体の調子も万全ではなさそうなので、あと二、三日は静養していてください。その間は私だけで薬草採取を受けます。」


「そうですよ。ニーナさんに言う通りです。まだ依頼を受けるのはやめておいてくださいね。それと、今日はまだここにいてくださいね。今から食事を持ってきますから、しっかり食べてください。」


 ニーナとミーミリアさんから駄目出しされてしまった。食事と言えば腹減ったなぁ。まあ、言われた通りにするか。


「わかりました。今日の夕方くらいには帰ってもいいですか?その頃にはだいぶ良くなってると思うんですよね。」





 夕方になり許可が出たので宿に帰ることにした。ニーナが迎えに来てくれて、受付で治療費を払い、宿に帰ってきた。


「そういえば、僕が倒れた時大変だったよね。ありがとうニーナ。」


 突然意識無くして倒れたんだから吃驚するよね。


「あの時は私もどうしたらいいかわからなくて、ゴートランさんとケイトさんがほとんどやってくれました。」


「ゴートランさん?」


 あの時に居合わせた人なんだろうか?とすると冒険者か。あの時のことは何にも覚えてないんだよなぁ。


「はい、鉄級の冒険者さんです。私もあまり面識はないんですが、とてもいい人でした。」


 鉄級の冒険者か。どんな人なんだろう。


「そうか。会ったらお礼を言わないといけないな。」


「そうですね。ケイトさんにもお礼を言わないといけませんね。」


「そうだね。帰るときにはいなかったから次に組合に行ったときでいいかな。それはそうと、治療費いくらだった?僕払うよ。」


「大丈夫ですよ。パーティ資金から出しました。大銅貨六枚でしたから、本当に実費だけでした。あ、これが今回の報酬です。一人当たり銀貨一枚と大銅貨四枚です。大銅貨一枚がパーティ資金になりました。」


「ありがとう、結構な額だったね。よし、盾買いに行こう。」


「盾もそうですけど、まずはポーションを買いに行きましょう。でも明日か明後日ですよ?」


「はいよ、明日は大人しくしてるよ。まだ立つとふわっとするからね。明後日にしようか。」


「じゃあ私は明日ポーションを買ってきますね。二本買ってきます。」


「うん、よろしくね。」


 突然ニーナの表情が引き締まり、真剣な面持ちになった。


「リュウジさん、私はもっと魔法の練習をすることにしました。今回のことで身に沁みました。」


「あ、じゃあさ、僕に魔法の使い方教えてよ。教えてくれるって言ってたよね?」


 真剣だったニーナの顔が首を傾けて、ん?って顔になった。表情がクルクル変わって楽しいなぁ。


「え?いいですけど……まだ使えるって決まってないですよ?」


「それでもいいよ。魔法が使えたら楽しいよね。」


 魔法が使えたらいろんなことができそうだし、使えるといいなくらいに思っとこうか。使えなかった時が悔しいからね。




 次の日はまだ本調子ではない体と相談しながら、午前中は部屋で筋トレをして過ごした。装備が充実してくると重くなるだろうから筋力はあればあっただけいいからね。ニーナは依頼を受けに行ったので一人だ。午後から何しようかな。


 そうだ、リュックサックの中を確認するか。早速リュックを持ってきて手を突っ込んでみる。

 まずは、キャンプ道具からだな。取り出して確認していこう。結構あるぞ。テントが二つにタープが三つ、キャンプ用の折り畳み椅子にタープ用のポールが八本、折り畳みのテーブル、焚火台が三つ、炭が二十キロくらいに薪が十束とキャンプワゴン、寝袋にナイフ、ファイヤスターターは火打石になってる?あと折り畳みのシャベルとランタンポール、ああ、ランタンもあった。でも燃料が全部無くなってるわ。あとは、ペグが十二本とペグハンマーにガイロープが十五本と革手袋か。

  油ってあるかなあ。そうか、揚げ物料理ができるんだからあるよね。良かったランタンは使えそう。

 焚火台はステンレス製だったのが鉄製になってたけど使えそうだ。アルミ製の折り畳みテーブルと椅子はなんと木製になってた。なんでだろ。まあこれも使えそうだからいいか。あとは寝袋はマミー型だったのに筒形の布団になってた。なぜ筒形?普通に布団でよくないか?まあ使えるし、深く考えるのはやめておこう。


 タープ用のポールを取り出すと六本が鉄製で二本が虹色の金属だった。これは防具屋で見たミスリルか?この二本もとはジュラルミンだったんだけどな。法則が分かんねえな。これもいいか。あれだったら鋳つぶしてもらって別のものに作り直してもらおう。そういえばスマホもミスリルになってたな。

 確認し終わったものは仕舞っておく。キャンプ道具は嵩張るものが多いのでベッドの上から床まで物でいっぱいになってしまった。


 次は、調理道具か。一人用のダッチオーブン、ご飯も炊ける鍋、コッヘルにスプーンやナイフ、フォークなんかのカトラリー、割りばしも。焚火台用の五徳もあるし焼き網も二個あった。これだけあれば野営も問題なく出来そうだ。ちなみにコッヘルは、重ねて収納できる鍋とフライパンだ。サイズ違いのものを重ねて収納できる。アルミだったけど鉄製になってた。鉄製になって重くなってるが、まあこれらも使えるしこのリュックサックなら重さは感じないから気にならない。

 一番うれしかったのは調味料があったことだった。塩コショウの入った瓶とアウトドアスパイスの入った瓶とその詰め替え用のものがあったのだ。アウトドアスパイスとはニンニク、黒コショウなどの香辛料がたくさん入っていて、このスパイスだけ食材にかけて焼けばなんでも美味くなるというものだ。料理が苦手な僕には本当に有り難い。


 刃物類も確認しとこう。現在の主武器の剣鉈に普通の鉈、刃渡り二十センチ弱の山刀(やまがたな)にフルタングのナイフ、折り畳みの鋸と外国の有名なマークのついたマルチツールが二つあった。あ、砥石もある!やった!これがあればある程度のメンテナンスは自分で出来る。刃物類の材質はすべて鋼になってた。


 こうしてみるとあの日に持ってたもの以外のもあるな。どうしてだろう?この世界に来た経緯はさっぱり分からないんだが何かあったんだろうか。あったんだろうなあ、ないとおかしいもんな。それじゃあやっぱり神様かな。何にせよ有り難い、あの時に間違いなく死んでたんだろうからな。神様にお礼を言ったほうがいいかな。この世界だと神殿か?前に神聖魔法がどうとか言ってたからな。ニーナが帰ってきたら聞いてみよう。

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