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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百六十九話

 ライルってルータニアさんが好きだったんだなぁ。ということがわかってしまった。ニーナはよくわかったな。僕は全然気が付かなかったよ。

 ルータニアさんといえば、あれからちょくちょく僕にちょっかいを掛けてきて、ニーナとエリシャに威嚇されることを繰り返している。懲りない人だよなぁ。

 まあ、そのお陰でニーナの可愛い表情が見れるから嬉しいんだけどね。


「そろそろ、野営の場所に到着します」

「わかりました。ライル、見張りはどうする?」

「そうだな…今晩は俺たちが担当するわ。次は頼んでもいいか?」

「わかった。じゃあよろしくな。あ、そうだライル」

「なんだ?」

「寝る前にさ、模擬戦でもしないか?」


 僕がそう言うとライルの顔つきが好戦的なものに変わる。


「おおいいぜ!一回リュウジと戦ってみたかったんだよ。いつやる?今からでもいいぜ」

「今からはやめときなさい。まだ野営場所についてもいないでしょ」

「あ、そうだったぜ」


 シアさんに窘められて後ろ頭を搔くライル。


「やるのはいいけど、ほどほどにしとけよ。お前はすぐ熱くなるからな」

「わーってるよ。手合わせ程度にしとくって」

「こりゃ、俺たちだけで夜番だな」


 口ではああ言っているけど、目がキラキラしてるライルを見てるとスレインが正解だなぁ。


「皆さん着きましたよ」


 ミレナさんが、野営場所についたので馬車を止める。皆はすぐに馬車から降りて準備を始める。


「ミレナさんはどこで寝るんですか?」

「私は馬車の荷台で寝ますので大丈夫ですよ。積み荷のこともありますし」

「この辺りは物騒なんですか?」

「この辺はそうでもないぜ。湖のあたりまで行くとちょっと物騒になってくるけどな」

「そうですね。湖の周りはこの辺りよりも森も深くなりますし、時々盗賊が出たりするそうですよ。組合の依頼にも時々ありますから」

「リュウジー、天幕この辺でいい?」

「ん?ああ、いいよ。天幕の下になる場所の小石とか尖ったものは除けといてね」

「あーい」


 タニアとガルトがリュックからいろいろ取り出して準備してくれている。僕も手伝わねば。


「ガルト」

「なんだ」

「悪いんだけど、ミレナさんと一緒に馬車で寝てもらっていいか?」

「ん?いいぞ」

「んにゃっ」


 ガルトが普通に了承するとミレナさんが目を見開いて驚く。美人(美猫か?)は驚いても美人だ。

 組合の職員とはいえ、女の人を一人で馬車に寝かせるのはよろしくないだろう。タニアでも良かったんだけど、どうせならガルトが良いだろう。ミレナさんも嬉しそうだしね。


「あの…ガルトさん…よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ」


 そんなことをやってるうちにテントが立っている。四、五人用の大きいほうだ。中にはエアマットも敷かれている。


「ありがとう、悪いね手伝わなくて」

「ん。あんたにしちゃ良い仕事したからよし」

「そうですね。ミレナさん嬉しそうですね」

「そうだね。あれ以上はどうもできないけどね」

「うふふ、十分だと思いますよ」

「ま、ガルトが抜けたらあんたのせいだからね」

「あ、その可能性は考えてなかった」

「ばか」


 タニアに小突かれて、そんなことになったらまたメンバー探しかぁと思ってたらエリシャに呼ばれた。


「使徒様、暁の風の皆さんが荷物を出してほしいといわれたので出してきました」

「ありがとうエリシャ。よし僕らもご飯の準備をしようか」

「はい。ですが使徒様、ライルさんが嬉しそうに剣を磨いていましたが…」

「…そうだった。ニーナ、エリシャ支度を任せてもいいか?ちょっと行ってくるよ」

「はい、行ってらっしゃい。怪我しないでくださいね」

「大丈夫だよ。エリシャもいるし、僕も使えるからね」

「でも、気を付けてくださいね」

「うん、ありがとう」


 ニーナの頭を撫でてから剣を持ってライルのところに行く。

 ライルは、待ってましたとばかりに立ち上がり、嬉しそうに大剣を一振りする。


「おう、リュウジやっと来たか。早くやろうぜ」

「ああ、お手柔らかに頼むよ。怪我するなって言われたからね」

「かー、心配してくれる女がいるってのはいいねぇ!覚悟しろよ!」

「馬鹿お前!護衛の最中だってこと忘れるなよ」

「わぁってるよ。さあやろうぜ」


 模擬戦をやるとなると広い場所が必要になるな。


「あっちでやろう」

「いいぜ」


 馬車とテントは道から遠いところに設置してあるから、まあ道の方か。ライルと二人、自分の武器に布を巻きつけながら歩いていく。

 布を三重に巻き付け、確りと縛って固定する。これなら多少あたっても最悪骨折くらいで済むだろう。骨折くらいなら治せるようになったからね。千切れたのをくっつけるのはまだできないんだけどね。聖典には過去の使徒だった人は、生やすことまで出来たって書いてあったから僕にも出来るようになるんだろうか。


「んじゃ、やるか。結構本気で行くからな」

「ああ、そうじゃないと訓練にならないからね」


 二十歩ほど離れて対峙する。ライルは両手持ちの大剣を真っすぐ構えている。僕は、いつものスタイルである左手に盾と右手にショートソードだ。ライルの大剣は二メートルほどの長さがあるため間合い的には、僕のほうがかなり不利だろう。どうやって懐に入るかだなぁ。


「おーい、だれか合図してくれ」

「はいはい。私が合図するわ。行くわよ、始め!」


 シアさんが買って出てくれて、合図を出してくれる。さあ、どうするかな。まずは近づくしかないか。


「いくぜっ!」


 なんてことを考えてたら、ライルが大剣を振り上げて突っ込んできた。

 ライルは、僕と違って筋肉がモリモリの男だ。重そうな大剣を軽々と振り回すことができる。あの大剣の一撃をまともに受ければ吹っ飛ばされることは確実だろう。躱すか往なすか。

 盾で受けると動けなくなりそうだ。避けよう。

 大剣は、真上からの振り下ろしだ。右に半身分避けて脇腹に向けて攻撃だ。


「ふっ!」

「んなろっ」


 ライルの大剣が、地面に当たる前に止まり僕に向かって飛んでくる。なんちゅう力だ。

 脇を締めて左腕を体にくっつける様に固定して大剣を盾で受けるようにする。それと同時に左足で体を右の方へ流れさせる。少しでも衝撃を逸らすためだ。

 盾に物凄い衝撃が来る。


「ぐっ」


 どごっという音ともに体が浮いて弾き飛ばされる。が、何とか転ぶことなく着地できた。砂煙をあげながら道の端まで滑って止まる。


「まだだぜっ!」


 ライルが大剣を右下に構えながら走って接近してくる。このままだと僕が一方的にやられるだけになっちゃう。

 さてどうするか。あそこからなら盾側に下からの斬撃か。一回盾で迎えに行ってみるか。力負けしそうだけど。


「おりゃあ!」


 予想通り!力が乗り切る前に大剣に盾を合わせる。しかも上方向に力を逃がすようにだ。


「んなっ」


 ごがんっと音を立てて盾に衝撃があったが、さっきよりも弱い。何とか左手一本でライルの大剣を弾くことはできたが、こっちも態勢を崩されてしまう。


「くぅ!」

「こなくそ!」


 ライルは、両手で握っていた大剣から左手を離して僕を掴みに来る。

 そんなことはさせない。右に流れた態勢を右足を踏ん張ることで強引に立て直し、下から上に剣を振る。目標は掴みに来た左腕だ。


「させるかよっ!」

「くそっ」


 ライルは、危ないと悟ったのか左手を引っ込める。こっからだ。盾を体の前に戻し、前に出して視線を塞ぐ。

 そのまま前に出て攻撃に移ろうとした。


「!」


 嫌な予感がしてそのまま前転の要領でライルの脇を抜けると、それまでいた空間に向かって大剣が振り下ろされる。

 後ろでがつんと地面を叩く音が聞こえた。今ライルは、右手一本だったはずだよな。


「くそっ、動きが速いぜ!」

「お前も、とんでもない力だな!」

「そりゃどうもっと!」


 また両手持ちにした大剣を横凪に振ってくる。当たるとまた吹き飛ばされるから後ろに小さく飛んで躱す。態勢を整えていて助かった。通り過ぎるときにぶうんと音がする。剣速も早い。

 しかし、ライルのパワーには驚かされる。パワーもさることながら意外と動きがいい。これはなかなか難しいかもしれないな。だけど諦めることはしない。諦めたらそこで終わりだ。

 こっちからもどんどん攻撃していかないとジリ貧だ。

 さて、どうしようか。ライルは、こっちを見て嬉しそうな顔をしている。


「楽しいな、おい」

「こっちはそうでもないよ、必死だよ、必死」

「なんだよ、お前も楽しんだ方がいいぜ。その方が力が出るしな」


 さて、仕切り直しだ。少しだけどライルの速さと癖みたいなものがわかってきた。


「今度はこっちからだっ!」


 盾を前に出して視界を塞いで前に出る。ライルからは盾で僕の剣が見えなくなるからやりづらいはず。僕の方からはライルの動きが見えるから、攻撃が来ても対処できるだろう。


「そんなもんっ!」


 ザッと踏み込む音が聞こえた。

 ライルの使っている大剣は長い。刃の長さだけで二メートル近くあるだろう。それが上下左右のどこからも見えないということは突きの動きだろう。刃には布が巻いてあるから盾を貫通することはないとはいえ、まともに当たれば左腕は骨折、さらに肩や肘の関節がどうなるかわからないな。

 点の攻撃なら躱して懐に入ることができる。あとはどっちに避けるかだ。


「今だっ!」


 盾を引き戻して視界を確保すると、ライルはやはり突きを繰り出すところだった。

 僕は、体を左斜め前に前傾させながら突きの左側を抜けるように前に出る。耳に大剣がすぐ横を抜けるボッという音が聞こえる。殺す気か、あいつ。

 だが、当たってはいないからな。そのまま一歩を踏み出せばもうライルは目の前だ。


「やられるかっ」

「ふっ!」


 足に入る最大限まで力を込めて踏み込む。右足で地面を蹴り飛ばし体を前に出す。それと同時に右下に構えていた剣をライルの胴に向かって振る。

 右足をライルの横に踏み込むと同時に剣を跳ね上げると手に固い感触が返ってくる。


「あっぶねっ!」

「くぅ」


 どうやらライルは、大剣を引き戻して柄の部分で防御したらしい。くそっ、決まったと思ったのに!

 そのままの勢いでライルの後ろに抜け距離をとる。だが、このまま落ち着かせはしない。

 ライルの態勢が整う前に接近しておきたい。間合いが開くとライルが有利になってしまうからな。


「っ!」


 僕が前に出るとこっちを横目で見たライルは、そのまま前に出ながら体を捻り大剣を横凪に振り、こっちを牽制する。


「お前、えげつねぇな。あれ」

「お前のがもっとえげつないよ。間合いが広いのは有利だよなぁ」

「どうする?まだやるか?」


 ライルが親指で右の方を指す。つられてそっちの方を見るとニーナやタニア、ルータニアさんやシアさん、さらにはミレナさんまでもが僕たちの模擬戦を見ていた。

 とくにニーナは、顔色が悪いように見える。ああ、心配かけちゃったか。


「あー、この辺でやめておこう。あんな顔されたらねぇ」

「間違いねぇな。でもよ、楽しかったかったからまたやろうぜ」

「こっちからも頼むよ。魔物相手ならいくらでも経験が積めるけど、対人戦はそうはいかないからね」

「そうだな。俺の方もいい経験になったぜ」


 そういって、ニッと笑うライル。いやぁ、こいつには勝てる気がしないなぁ。まあ、この旅の間に一回でも勝てればいいか。

 手を握って突き出してきたライルに拳を合わせて皆のところに戻る。


「あ、ライルちょっと待って」

「なんだよ」

「『きれいになれ(浄化)』」

「うおっ」


 そんなに長い間やってたわけじゃないけど、かなりの汗をかいていたからな。浄化の魔法で綺麗にしておこう。自分も鎧を脱いで浄化をしておく。


「なんだぁ、その呪文は」

「ははは、魔法って呪文が必須じゃないんだってよ。要は想像力らしいぞ」

「なんですかー!それー!」


 浄化を終えてライルに説明していると、ルータニアさんが後ろから抱き着いてきた。うわっ、柔らかいしいい匂いがする!


「こらぁ!」

「いけませんっ!」

「うわっ」


 ルータニアさんが抱き着いてきたと思ったら、ニーナとエリシャも抱き着いてきた。なんで?


「リュウジさーん、想像力ってーどーゆーことー?」


 ルータニアさんの身長は小さくて僕の顎のあたりまでしかない。大体百五十センチくらいか。だから背中から抱き着かれると首筋に髪が触って擽ったい。その状態から僕におぶさるように登ってきて、耳元で囁くもんだから背中がゾクゾクする。背中には凄く柔らかい二つの膨らみが。

 すぐそこでいい匂いがするし、両側からも柔らかい二人がくっついてくるし、もう、もう…


「ルー、くるし、い…」


 僕が覚えているのはそこまで。首にはルータニアさんの腕が確りと巻き付いて綺麗に極まっていた。



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