第十六話
「リュウジさん持ってきましたよ。どうすればいいですか?」
ニーナに手伝ってもらい、水筒の水で傷を洗い傷口に異物がないことを確認してタオルを取り出して押さえようとしたらニーナに止められた。
「あ、ちょっと待ってください。薬草をすり潰したものを塗ります。塗っておくと傷が早く治るんですよ。」
ニーナは、傷口に緑色のゲル状のものを塗ってくれる。結構痛いな。
「いててて。そうか、薬草っていうくらいだからそういう効果もあるのか。そういえば、ポーションってあるの?」
「ごめんなさい痛かったですか? ポーションですか?ありますよ。治癒ポーションや毒消しポーション、麻痺を治すものもあります。」
「高いものなの?」
「等級があって、治癒ポーションだと初級のものだと大銅貨五枚くらいです。中級だと銀貨一枚と大銅貨五枚程度で、上級だと金貨一枚からそれ以上です。効果は、初級で外傷が治る、中級では骨折が治る、上級だと千切れた腕がくっつくとかだそうですよ。」
「凄いね。骨折や腕がくっついちゃうの?」
「そうみたいです。実物は中級までは見たことがあるんですが、上級は見たことがないです。もちろんどっちも使ったことはないですよ?」
「使う状況にはなりたくはないねぇ。これでも効果はあるんでしょ?」
腹の処置したところを指さす。少し血が滲んでるな。
「初級ほど効果は出ませんが、何もしないよりかは良いです。私もポーションは持ってないんですけど薬草は少し持ってくるようにしてるんです。」
薬草を塗ってもらい、タオルを押し当ててニーナの持っていた布で縛っておく。薬草のおかげか痛みも少し良くなった来た。鎮痛効果もあるのか。すごい草だな、薬草って。
これからどうしようかとニーナと相談して、さっき休憩してたところで暫く休んでから帰ることになった。
「この角ウサギはどうする?解体するの?」
「いえ、このまま持って帰って組合に報告しましょう。結構無茶したので、報告するとケイトさんに怒られそうですね。」
「そうだね。こんな怪我もしちゃたしなぁ。しかし、怪我するとこうやってすぐには動けなくなるからポーションかなんかの回復手段があるといいんだけど、魔法とかでも何とかなるのかな?」
「魔法では神聖魔法を使える人がいるんですけど、大抵は神殿で仕事を行っています。中には冒険者になってる人もいますが、あまり聞いたことがないです。冒険者の人たちは、ポーションを主に使っていますね。私は持ってませんでした。」
「これからは、最低でも一人一個ずつは持っておいたほうがいいね。町に戻ったら買っておこう。それとやっぱり剣と盾を買いたいな。そうだなぁ、とりあえずは盾だな。」
「私は前に出れませんので、リュウジさんにはもっと防御を厚くしてもらった方がいいかもしれません。」
「今回の角ウサギとの戦闘で思ったんだけど、やっぱり盾か手甲だな。盾があるだけで防御が大分できると思う。あとは懐具合と相談かな。」
「そうですね。町に帰ったら防具屋さんで相談しましょう。」
「そうと決まれば、そろそろ帰ろうか。よっと。」
腹の傷はやっぱり痛いが、我慢できそうだ。ゆっくりなら歩けそうだな。
「ニーナ、ゆっくりなら歩けそうだ。何か杖の代わりになるものを見つけてきてくれないか。」
「わかりました。無理はしないでくださいね。」
ちょうどいい長さの木の枝を見つけて何とかセトルの町まで帰って来ることができた。町に入る前に僕のリュックサックから普通の角ウサギ二匹と魔物化したと思われる角ウサギを取り出して、別の袋に入れておく。町に入る列に並び、やっと冒険者組合にたどり着いた。
「ニーナ、ちょっときついんであっちで座っててもいい?」
「いいですよ。報告は私がしてきますから休んでいてください。」
僕が椅子に座るまでついてきてくれて報告に行ったニーナを見送り、服を捲って処置した所を確認したらタオルが真っ赤に染まっていた。なんだか体も熱くなってきた気がするし熱が出てきたかな。あー、これはいかんなぁと思ったところで、視界が周りから徐々に暗くなっていき僕は意識を失った。




