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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百五十八話

いつも読んでいただいてありがとうございます。

しかも誤字脱字報告まで!大変ありがたいです!本当に、本当にありがとうございます。

今回はちょっと短めですが楽しんでいただければ幸いです。

「それじゃ、みんなありがとな!暁の風、無事の生還にかんぱーい!」

「かんぱーい!」


 ライルの発声で木のジョッキをぶつけ合う。金の皿亭にやってきて店主に確認したら、ほかの客の邪魔にならないよう隅のほうでやってくれるならいいとのことだったので、言われたように店の角のある窓際の机を三つほどくっつけて陣取った。


「いやー、今回は本当に助かったよ。特にリュウジたちだな。お前いつの間に神官を仲間にしたんだ?」


 一杯目のジョッキを飲み干して、お代わりも半分くらい飲んだスレインが聞いてきた。もう酔っぱらってるのか?顔が赤くなってる。


「ああ、半島のほうに新しく見つかった迷宮に行ったときに出会ったんだ。危ないところを助けてね」

「はい。運命の出会いでした」


 エリシャも酔っぱらっているのか僕の腕を抱えてしなだれかかってくる。ちなみに僕の両隣には、左側にニーナ、右側にエリシャが座っている。


「む」


 それを見たニーナが僕が持っていたジョッキを下ろさせて、もう一方の腕を抱きかかえてくる。おお、柔らかいものが当たるなぁ。両腕が幸せだ。


「そうか、いい出会いがあったんだな。そのおかげで今回は助かったんだから、俺らにとっても運命だったな」

「はは、そうだな。エリシャのおかげで僕も神聖魔法を使えるようになったんだ」

「おお!それだ!そいつから使徒様って呼ばれてるだろ。ありゃなんでだ?」


 ガウラスとバックス、ノルエラさんと話していたと思ったライルが入ってきた。


「あー、なんて言ったらい「使徒様は女神アユーミル様に会えるのです。なので使徒様なのです!」」


 僕が喋ってたらエリシャが拳を突き上げながらかぶせてきた。エリシャ、嬉しそうだなぁ。


「は?女神様に会える?どこで?」

「教会に行って祈るとね。時々だよ」

「何々?リュウジがどうしたの?」

「私もーまぜてくださーい」


 シアさんとルータニアさんが突撃してきた。シアさんはニーナの椅子に無理やり座って、ルータニアさんは後ろから僕に抱き着いてきた。うわぁ、首と肩と背中が幸せだぁ。


「あー!」

「駄目です!」

「いいじゃないですかぁ」


 ニーナはわかるけどなんでエリシャまで?しかもルータニアさんも?んー、モテ期が来た?


「るうじさんは私のです!あげません!」


 ニーナの舌が回ってない、もう酔ってるな。いつの間に飲んだんだろう?


「ルー!リュウジさんに迷惑かけるんじゃありません!こっちに戻ってきなさい」


 おお?珍しくガウラスが叱ってる。ガウラスは普段大人しく丁寧で、細マッチョでイケメンだから怒ると迫力があるな。


「い・や、でーす!迷惑じゃないですもんねぇ、リュウジさん」


 首に回していた腕に力が入って首が締まる…後頭部が幸せ…ルータニアさん力強いな…あ…目の前が暗くなって…き…た…


「きゃー、るうじさーん!こらぁ、るーたりあさん!はなしなさーい!るうじさんが!」

「きゃー、ごめんなさーい」


 体が揺さぶられて首の圧迫が解除されて、目が見えるようになってきた。落ちる寸前ってこんな感じなんだなぁ。


「もー!るーたりあさんはあっちいってくらはい!」

「えー」

「えーやあいれすよ(じゃないですよ)!」


 まだ頭がふわふわしてるところでニーナに頭を抱きかかえられて顔全体が柔らかいものに包まれる。いいにおいがするなぁ。


「くぉら!酔っぱらい女ども!俺が話してんだろうが!」

「大きい声出すなライル!聞こえるわっ!」

「んだとっ!」


 駄目だ。みんな酔うのが早すぎる。因みに今ライルと言いあってるのはシアさんだ。いつもと違いすぎる…


「ニーナ、もう大丈夫だから離して?」

「らめれすっ!るうじしゃんはわあし()がまもるのれす!」


 むう。酔っぱらいのニーナは解放してくれそうもないな。こうなれば最終手段だ。


「あ、あはははははっ。る、るうじしゃん!な、なんれ…くしゅぐっ…ああっははは」


 ニーナの脇腹から脇の下にかけてくすぐってやるとやっと解放された。


「ふう。苦しかったけど幸せだった」

「…もう、るうじしゃん!なんれくしゅぐるんれすかっ」

「ごめんごめん。でもニーナ飲みすぎだよ。はい、ここに座って。すいませーん。お水もらえますかー?」

「はーい」


 ニーナを持ち上げて僕の膝の上に座らせる。

 そういえばエリシャは大人しいけど…あ、寝てるのね。静かでいいね。


「んむぅ。えいっ」

「うわ」


 正面を向いて座らせたニーナが、一度自分から降りて僕と向かい合わせになるように座り直したと思ったら、僕に抱き着いて胸に顔を押し付けて深呼吸すると満足したのかにへらっと笑って目を閉じた。あ、寝るなこれ。


「んふふぅ…るうじさーん…だいしゅきぃ…」


 抱きついてきたニーナの背中をポンポンしていると独り言を呟いて力が抜けた。お酒を飲んだからか、ニーナの体温が高くて暖かい。


「ニーナちゃん寝ちまったのか。んでリュウジよう、さっきの話だが使徒様ってほんとかよ?」


 ライルがニーナが寝たのをみて、少し小さい声で話を蒸し返してきた。むう、誤魔化せたと思ったんだがなぁ。


「それは…エリシャが言ってるだけだって言いたいけど、女神様に会えるのは本当だよ。教会に行けば必ずってわけじゃないけど時々な。アユーミル様って小さくて可愛いんだぞ」

「ええ?教会にある女神像は大きいじゃねぇか」

「ああ、身長はニーナと同じくらいだな。スタイルも…似てるな。顔は似てないけど、神々しい美人さんだぞ」

「そりゃあお前、神様だからな。んー、そうなるとリュウジは勇者か…おいそれと話すこともできんなぁ」

「そんなこと言うなよ。今まで通りでいいんだ。女神様に何かやれなんて言われてないから勇者ってのとはちょっと違うんじゃないかな」

「そうなのか?あ!あとよ、なんで神聖魔法使えるようになってんだ?」

「ああ、エリシャが仲間になった新しく発見された迷宮の宝箱に入ってた本を読んだらなぜか使えるようになったんだ」

「なんだそれ?俺も読めたら使えるようになるのか?」

「今持ってるぞ、見る?」

「おう、見せてくれ。神聖魔法が使えたら冒険が楽になるからな」

「悪いけどリュックサックを取ってくれないか?今動けないからさ」

「私がぁ、とってあげますー」


 吃驚したぁ。ガウラスに連れていかれたルータニアさんが後ろから出てきて、僕の足元にあるリュックサックを取ってくれる。


「はい、これですよねー」

「あ、ああ、ありがとう」

「んふふー、いいんですよー」


 ルータニアさんは酔っているのかいないのかわからないなぁ。いつもと喋り方が変わらないけどなんだか積極的?

 ルータニアさんはそのまま僕が座っている椅子の横の床に座り込んでもたれかかってくる。今日はどうなってるんだ?


「お前、どうしたんだ?神聖魔法でなんかやったのか?」

「何にもしてないぞ。ニーナは酔うと甘えてくることがあるけど、エリシャは使命がどうのこうのって言ってたなぁ。ルータニアさんはわからん」


 とりあえずあの本を出すか。誰か読める人はいるかな?リュックの口を開けて手を突っ込み本を取り出す。


「これ」

「これが。立派な本だな」

「汚すなよ」

「わかってる」


 受け取るとライルは表紙を眺めて、背表紙、裏表紙と見ていく。あ、難しい顔になってる。


「よめねぇ」

「私もー、読めないですねぇ。何書いてあるかすらー、わかりませんねぇ」


 本を開き数ページ捲っていたが、ライルはもとよりルータニアさんも読めない。本当に僕しか読めないのかな?


「なあ、これ何て書いてあるんだ?」


 本を閉じたライルが表紙の文字を指す。


「ああ、これは『神聖魔法についての考察』って書いてあるんだ」

「はー、ほんとに読めねぇんだな」

「不思議ですねー」

「ライちゃんこっちに来てよっ!一緒に飲もっ」

「仕方がねぇな、いってくるか。これからも付き合ってくれよなリュウジ」

「そっちこそ遠慮なんてするなよ」


 ノルエラさんに呼ばれて席を立つライル。いいやつだな。


「私はー、ここでリュウジさんと一緒でもいいですかー?」

「え?いいですよ」

「やったー。椅子持ってきますー」


 暁の風のみんなはお酒に強いな。うちのメンバーは、ニーナとエリシャが寝てる。タニアは赤の牙の魔法使いの人たちとご機嫌で喋ってる。ガルトは周りの話を聞きながら杯を傾けている。あの二人は強いな。ガルトは体が大きいからなんとなく強そうに思うけど、タニアは意外だ。

 僕はまあ、そこそこいける口だ。でも沢山飲むと眠たくなっちゃう。日本酒だったら三から五合くらいは飲める。でも五合も飲むとトイレと友達になるな。


「リュウジさんーちょっとずれてくださいー」

「ごめん、今動けないんだよね」

「あらー寝ちゃってるんですねー、可愛いですねぇ」


 空いている椅子を持ってきたルータニアさんが僕の後ろから覗き込んで微笑む。


「ニーナが座ってたとこ空いて…ないな」

「あ、でもここに入っちゃいますねー」


 ニーナが僕に乗っかって寝ちゃったから空いてた椅子には、いつの間にかシアさんが座って赤の牙の女性魔法使いのラッチャさんと飲んでいた。

 シアさん…クールな人だと思ってたけど、酔うと口調がギャルっぽくなってる。意外だ。


「リュウジさんのー組にはー、空きってありますかー?」


 ルータニアさんは僕の隣に陣取ってそんなことを聞いてきた。え?移籍するつもりなのか?


「ルータニアさんは魔法使いだったよね?うちは高火力の娘がいるから募集はしてないなぁ」


 僕に抱き着いて寝ているニーナの背中をポンポンと叩くとニーナがうぅーんと身動ぎする。


「むー。そうですかー。残念ですー」

「そんなこと言うとライルかスレインに怒られるよ?」

「大丈夫ですよー。私が暁の風に入ったのは一番最後なんですー。でーその時の約束でー、抜けたくなったらーいつでも大丈夫ーって言われてますからねー」

「そうなんだ。んー、でもうちはいらないかな?」

「むー」

 

 不服そうなルータニアさんは、僕の顔を見ながらポンと手を打つ。なんだかいい笑顔になってるぞ。


「じゃあー、リュウジさんの二番目でもいいですよー?」

「ん?二番目?」

「そうですー。ニーナさんが一番目ですよねー?だから私は二番目ですー」

「ぶっ」


 なにを言い出すんだこの娘は。


「リュウジさんは使徒様なのでー、教会からー絶対子供を作れーって言われますよー。なのでー、妻はー何人いても大丈夫のはずですー」


 あー、エリシャもそんなようなこと言ってたなぁ。あれって本気だったのかぁ。


「わたしが二番目です!」

「うわあっ、吃驚したぁ」


 酔いつぶれて寝てたはずのエリシャがいきなり復活したよ。しかも二番目って言ったなぁ。


「…じゃあー、三番目ですねー」

「……ルータニアさん、本気?」

「本気ですよー」

「マジですか…」


 この後、ルータニアさんを説得するのにかなり苦労した。この場は、何とか諦めて貰えたけど、またいつか言い出しそうだなぁ。

 楽しい宴会だったけど、滅茶苦茶疲れたよ。奥さんいっぱい(ハーレム)って…僕にそんな甲斐性はないと思う。出来るもんならやってはみたい。でも難しいだろうなぁ。


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