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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百五十六話

 魔人と戦って何とか退けることができた。と言うか逃げられた。

 さらにノルエラさんが魔素中毒にされてしまったがすぐに治すことができた。


 あれから皆で相変わらず無人の宿に行き、各々休憩した後食堂に集まって今後の対応を話し合おうということになった。集まったのは、暁の風からはライル、スレイン、赤の牙からはノルエラさん。あとは僕とニーナとタニアだ。


「この状況があの魔人、なんて言ったっけ?…そう、グェンヴァンだったな。あいつが作り出したのは間違いないだろう」

「そうだな。俺は気ぃ失ってたからあんまり覚えてないんだがよ、皆には迷惑かけちまったな」

「町の人たちはどこに行ってしまったんでしょうか?」

「問題はそこだな。でも探すにしても俺たちだけじゃ手が足りないな」


 あの魔人が何を目的としていたのかは分からない。戦闘時もノルエラさん以外は攻撃されなかったし。

 この迷宮町の人たちがどこかに連れていかれたのか、避難してるだけならいいんだけどなぁ。迷宮の中を探し回るのは現実的じゃないし、探すにしても当てはない。あの魔人が何かしたっていうのが一番怪しいんだよね。


「一度皆で町まで戻って、まずこの依頼を処理したほうが良くない?そしたら組合にも相談できるしね」

「そうだなぁ、タニアの言う通りか。僕もそうした方がいいと思う」

「だな」

「あ、そういえば、皆さん救援に来ていただいてありがとうございました。ほら、ライルもお礼を言う」


 スレインが立ち上がって頭を下げる。そしてライルの背中を叩く。


「痛っ、わかってるよ。あー、なんだ、ありがとな。感謝してるよ」


 ライルは照れ臭そうに頭を掻きながら下げる。


「スレインもライルも元気になって良かったよ。ノルエラさんも大丈夫?」

「ええ、私は何ともないです。ありがとうございます。それと、本当にすみませんでした」


 ノルエラさんが本当に申し訳なさそうに頭を下げてくれる。戦闘中とは全然違う人みたいだな。まあこれも個性の一つか。


「よしっ、んじゃあこれからの行動は、まず街に戻って組合に報告する。んで…どうするんだっけ?」

「全くもう、あなたはもう少し考えて喋りなさい。ただでさえガサツなんだから」

「あはは、組合に報告して人を出してもらわないといけないね。あと、この迷宮町をどうするかを決めてもらわないとね」


 町の人が見つかって戻ってくれば一番良い。最悪なのは誰も見つからなかった時か。


「ここにいた冒険者もいなくなってるんだよね?」

「ああ、この町にはいつもかなりの数の冒険者がいたからな。俺たちが来た時も少なくても五組以上はいたはずだ。そいつらが誰もいない、か…」

「あー、ここでうだうだ考えたって答えなんか出ねぇよ!早く動こうぜ」


 スレインが悩まし気に俯いているとライルが焦れて立ち上がる。確かにここで話してても何も進展しないか。


「よし、ライルの言うように動くか。じゃあ半刻後にここに集合でいいかな?」

「おう!わかったぜ」

「わかりました」


 皆自分たちの仲間の元へ帰っていく。僕たちも準備しよう。


「ニーナ、タニア、すぐに準備しようか」

「わかりました」

「あたしそんなに荷物ないし、リュウジのリュックに入れてくれればいいからすぐだよね」


 ニーナは結構几帳面で色々きちんと纏めてくれるけど、タニアは適当なところがあるからなぁ。武器とかはきちんと手入れしてるんだけど普通の荷物は…残念なことが多いかな?ガルトもエリシャもニーナと同じできっちりしてる。僕?僕はタニア寄りかな?リュックサックがあるから大変助かってる。


「それでもいいけど出来るだけ纏めといてね。取り出すとき大変だよ?」

「はーい」


 頭の後ろで手を組んで、いい返事とは言い難いタニア。なんだかんだ言って上手にやるんだろうなぁ。

 二階に上がってそれぞれの部屋へ。


「ガルト、半刻後に出発になったから荷物纏めてくれる?ってもう出来てる!?」

「そうなるだろうと思ってな」

「流石だね」


 ガルトにリュックサックに入れるか聞いたら自分で背負うとのことだったので、二人で女子部屋へ行く。


「ニーナ達、準備できた?」


 扉をノックして声をかける。いきなり開けたりはしないよ?女の子三人だからね、見られたくないものもあるよね。


「もうちょっと待ってください。タニアさんがまだなんです。でももうすぐ終わると思いますよ」


 扉を少し開けてニーナが対応してくれる。


「リュウジー、大体纏まったからリュックに入れてー」


 ニーナの上からタニアが出てきた。どうやら荷物がまとまったらしい。


「わかったよ。入っていい?」

「どうぞ」


 部屋に入るとベッドの上に背嚢が一つ置いてある。あれかな?

 しかし、一泊もしてないのになぜ荷物を纏めるのに時間がかかるんだろう?謎だ。


「これでいいの?」

「うん」


 タニアの荷物とニーナとエリシャのもリュックに入れる。ニーナとエリシャの二人は、必要最低限のものだけ背嚢に入れて背負っている。タニアが持ってるのは弓と矢、あとはショートソードだけ。いつもと同じ格好だ。


「それじゃあ下に行こうか」


 タニアの荷物を入れて揃って下に降りていくと暁の風の皆はすでに待っていた。


「おー、リュウジ、早いじゃねぇか」

「そう言うライルたちも早いね。赤の牙は?」

「俺たちの荷物はばらしてなかったからな。ノルエラたちももうすぐ来るんじゃねぇか?」

「お待たせしましたか?」

「おう、来たか」

「僕たちも来たばかりです」


 すぐにノルエラさんたち赤の牙も降りてきた。さすが冒険者は準備と撤収が早いな。


「んじゃ、さっさと街まで帰ろうぜ。めんどくせぇことは早く終わらせるに限る」

「そうね。この町のことも魔人のことも私たちの手には余るわ。組合に任せましょう」


 みんなライルとノルエラさんの意見に異論はなく、さっさと出発することになった。


「さすがに三組集まると人数が多くなるな。まあ、鉄級がこんだけいりゃあ魔物なんか寄ってこねぇか」


 ライル達暁の風が先頭で歩き出す。僕たちは最後になった。というか、ノルエラさんがライルの横で一緒に歩いてるから暁の風と赤の牙が並んで歩いている。


「そういえば、馬車って待っててくれてるの?」

「んー、もう帰ってるんじゃない?あたしがお願いしたのは、深森迷宮まで連れてってだからね」

「それじゃあ、いないと思ったほうがいいですね」

「そうだね」

 

 道中は戦闘もなくひたすらのんびり歩くだけだった。ほんとに魔物が寄ってこなかったなぁ。

 深森迷宮の外に出るとやっぱり馬車はいなかった。

 

「さあもう一頑張りだ。みんな大丈夫か?」

「問題ない」

「大丈夫だ」


 ライルは魔素中毒から回復して体の調子が良くなったらしい。魔人との戦闘が終わった頃から絶好調みたいだ。ノルエラさんはいつもと変わりないそうだ。スレインもライルほどじゃないけど長めだったけど今はもういつもと変わらないらしい。


「ねえタニア、組合にどうやって報告すればいい?」

「んー?素直に正直に報告すればいいんじゃない?あたしたち悪いことしてないもん」

「そうですよ。使徒様は正しいことしか行っていません。これで組合がケチをつけようものなら教会から抗議させてもらいます」


 エリシャが握りこぶしを胸の前で握り、ボクシングのワンツーを繰り出しながら怖いことを言う。


「いやいや、そんなことしなくていいから。組合だってちゃんとした組織だから、そんなことないからね」

「ふふ、そうですね。リュウジさん言う通り組合はちゃんとしてますから大丈夫ですよ」


 ライルとノルエラさんがじゃれあいながら歩いているから僕たちものんびりついていく。スレインとバックスが警戒してくれているから安心だ。タニアも喋りながら歩いているようで周囲の警戒は怠っていない。いつまた魔人が襲ってくるかわからないからな。皆の意見では暫くは大丈夫だろうとなったが注意するに越したことはない。襲ってくるのは魔人だけじゃないからね。魔物の方が圧倒的に多いからな。


「もうすぐ着くぞ。報告が終わったら俺たちの驕りで飯食いに行こうぜ」

「やった!ライちゃん大好き!」


 ノルエラさんがライルに抱き着いている。これでなんで付き合ってないんだろう?ライルは満更ではないように見えるけどなぁ。


「お前らもう結婚しろ!あたいたちはノルエラが抜けても大丈夫だからな!」


 おお、僕の言いたいこと言ってくれた!あれは、確かラッチャだったかな。ショートヘアでそばかすのある魔法使いの女の子だ。


「まだ駄目よ!私には目標があるんだから!それが達成できたらね!」

「俺はそんな気ねえよ!」

「酷い!ライちゃん私のことどう思ってるの!?」

「そっ、それは…うう、うるせぇ!俺だってやりたいことあるんだよっ!」

「ライルも大変だぁ。あたしだったらノルエラさんは遠慮する」


 タニアの意見には激しく同意する。僕はニーナがいい。

 ノルエラさん、まだ駄目ってことは結婚するのは決まってるんだ。ライルもあんなこと言ってるけど憎からず想ってるな、あれは。まあ、目標ややりたいことがあるのは良いことだけど、二人とも職業柄死なないように気を付けないといけないね。


「私は早く結婚したいなぁ…」

「ん?ニーナ、どうした?」

「い、いえ!なんでもないです!」


 ニーナがボソッと呟いた声は、ライルとノルエラさんの声で聞こえなかった。


「むう、好敵手はニーナさんですか。強敵ですね」

「えー?リュウジなら三、四人くらいなら大丈夫じゃない?」

「…そうですね」

「何の話?」

「あんたの甲斐性の話」

「?僕の?」

「しっかりしろよ!使徒様!」

「いてぇ!」


 なぜかタニアに蹴られた。何にもしてないのになぁ。



「お、やっと見えたぞ。まだ門は空いてる時間だな。急ごうぜ」


 ライルとノルエラさんとのじゃれあいも一段落ついて、やっとフルテームの門が見えてきた。まだ日が暮れるまで暫くあるけど急いだほうがいいかな?


「ライル、ちょっと急ぐか?」

「…そうだな。組合への報告がどんだけかかるかわからんからな。よし、全員速足だ」


 皆疲れているが歩く速度が速くなった。タニアなんかは文句を言いながら歩いている。


「おお!暁の風じゃないか。無事だったか」

「おう!こいつらのお陰でな」


 門番に冒険者証を見せて街に入る。顔見知りなのかライルたちを見て安心した表情だ。


「俺たちは何ともないんだが、迷宮町の連中がどこ行ったかわかんなくてよ、今から組合に言いに行くんだよ」

「そんなことになってんのか!また俺たちにも仕事が回ってくるかもなぁ」

「そんときゃ頼むな!」


 おう!と元気な返事を返してくれた門番と別れて組合に向かう。

 街中はいつもと変りなく賑わっている。露店には新鮮な野菜が並んでいる。そろそろ食料の補充を考えといたほうがいいかな。

 そんなことを考えていたらいつの間にか組合についていた。いかん、疲れてるのかな?


「すいません、依頼の完了と報告をお願いします」

「はい、わかりました。ああ!スレインさん!暁の風の皆さん!無事だったんですね」


 スレインが受付嬢に依頼完了の報告すると、その受付嬢はスレインと暁の風の面々を見てとても喜んでいる。セトルの組合もそうだったが、こちらの組合の職員も冒険者にとても真摯に向き合ってくれている。いい世界だ。


「ああ。リュウジたちが来てくれなかったらどうなっていたかわからない…いや恐らく駄目だっただろうな」

「そうだったんですか…何があったか聞いても?」

「ここではちょっとな。できれば組合長に報告したいんだが」

「わかりました。聞いてきますが、お忙しい方なのですぐには難しいかもしれません」

「そうか…では、声を上げないように気を付けてな」

「…はい」


 スレインは受付嬢に顔を近づけ小声で伝える。


「深森迷宮で魔人と遭遇したんだ。それと迷宮町の人がいなくなった」

「えっ…」


 受付嬢は目を見開いて絶句する。よく声をあげなかったもんだ。それからスレインを凝視して一つ頷くとゆっくり立ち上がり奥へ歩いて行った。


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