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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百五十一話

 誤字報告いつもありがとうございます。大変助かっております。

 なるべく誤字脱字を少なくするよう気を付けますが、その時はまた報告をしていただけると大変ありがたいです。

 それでは少し短いですが楽しんでいただけると幸いです。

 それは突然の救援要請だった。


 治癒院での仕事が終わった後、皆と相談した結果また深森迷宮に入ることになった。

 今度は迷宮町まで行って、もうちょっと奥まで行って実力を試そうってことになり、買い出しなどの準備をしていた時だった。


「あ、お帰りなさいリュウジさん。組合から何か言付けを頼まれましたよ。すぐに来てくださいとのことでした」

「ありがとうございます。早速行ってみます」


 買い出しを終えて、宿に帰ると受付の人に話しかけられた。組合から呼び出しなんて珍しいな。何かあったんだろうか。

 ニーナと二人で出ていこうとすると宿の受付の人に呼び止められる。


「あの!全員で来てくださいと言ってました」

「あ、そうなんですね。部屋にいるかな?」

「お二人ともおられますよ」

「ありがとう」


 タニアとガルトを呼んで組合に向かう。


「あたしたちに何の用があるんだろうね?」

「全く心当たりがないし、珍しいよね」


 組合に到着して中に入っても様子はいつもと変わりがない。


「とりあえず受付に行ってみるか」

「そうですね」


 今はお昼前なので組合も比較的空いている。受付カウンターも人はまばらだ。カウンターの向こうにミレナさんの耳が見える。


「こんにちは、ミレナさん。何か用事があるって聞いたんですけど」

「ああっ、よかった!リュウジさんにガルトさん!あなたたちに救援要請がきています」

「へ?救援要請って何ですか?それと誰から?」

「救援要請は、何らかの事態に陥った時に知り合いの組に出すことができるものです。今回は暁の風という組からあなたたちと赤の牙に出されました」

「ライルたちだ。何があったんだろう?」

「リュウジ!そんなに悠長にしてたら間に合わなくなるかもよ!ミレナさん、どこに行けばいいの?」

「はい、深森迷宮の迷宮町から連絡が来ました。赤の牙の皆さんとはまだ連絡が取れていませんが、取れ次第向かっていただけるよう要請します」

「わかりました。準備でき次第向かいます。ライルたちがどうなっているかはわかりますか?」

「ある程度ですが。暁の風は、迷宮町から奥へ二日ほど進んだ地点にいたそうですが、そこでこれまで見たことのない魔物に襲われ、組の一人が町まで戻ってきたそうです。その方が言うには、残された人たちの命に関わることは問題ないそうですが、自身での脱出は困難だそうなので救援要請をしたそうです」


 とりあえず命に別状はないってことだな。ちょっと安心した。でも助けが必要ってことだからすぐに向かおう。


「よし、準備ができたら出発しよう。赤の牙も来てくれるだろうからとりあえず迷宮町まで行って暁の風と合流しよう」

「はい!」

「幸い食料は仕入れてきたからあとはポーション類かな」

「あたし買ってくるよ。お金頂戴?」

「はいよ。金貨二枚くらいで足りるかな?」

「多すぎだよ!でも多いほうがいいのか…わかった、回復ポーション以外のものを買ってくるよ」

「あ、解毒のポーションも買わなくていいよ」

「え?使えるようになったんですか?使徒様」

「うん昨日ね。まだそこまでしか読み進めてないんだけどさ」

「じゃあ、麻痺とか解呪のやつだね。わかった、行ってくる」


 お金を渡すと組合の人込みをするりと抜けて行くタニア。さすがの身の熟しだなぁ。待ち合わせは宿だ。僕たちは宿に急ごう。


「タニアが帰ってくるまでに装備を整えておこう」

「リュウジ、長めの綱を持っていった方がいい」


 綱?ああ、ロープか。確かにガイロープはあるけど、全部タープを立てる用に短くしてあるから長いのはないな。


「そうだね。ガルト、ニーナ、エリシャ一緒に行こう。道具屋でいいよね」

「ああ」


 道具屋で長いロープを購入して宿へ帰った直後にポーションを抱えたタニアが帰ってきた。


「リュウジについてきてもらえばよかった。あー、重かったぁ」

「お帰り、ありがとうタニア。あ、そうだ、今ので思い出した。ちょっと待ってね」

「どうしたんですか」


 僕がリュックサックを下すとニーナがのぞき込んできた。

 アユーミル様、やってくれたかなぁ?

 リュックに手を突っ込むと頭の中に入っているもののリストが浮かんでくる。それから、『どなたを登録しますか』って表示されたウィンドウが出てきた。


「さすがアユーミル様」


 えーとどうやるんだ?……ああ、そういうことね。


「ニーナ、ガルト、タニア、エリシャ、僕に触ってくれる?」

「え?わかりました」

「どこでもいいの?」

「触りましたよ」


 ガルトとタニアが僕の背中に手を。ニーナが僕の左腕にくっつく。エリシャは右腕をつかんでいる。

 よし、登録。

 そう念じると、ウィンドウが切り替わり、使用可能登録者っていう題名が出て、その下に皆の名前が表示された。


「できた!これで皆もこのリュックを自由に使えるようになったよ」

「わたしやってみたいです!」


 エリシャが一番早く手を挙げた。


「はいエリシャ、どうぞ」

「やった」


 タニアが買ってきたポーションをエリシャが入れていく。


「吸い込まれるように入っていきますね。面白いです」

「一本取りだしてみようか」

「はい」


 リュックの中に手を入れるとエリシャの目が見開かれる。


「頭の中に一杯文字が浮かんできました。これって入っているものですか?」

「そうだよ。入っているものとその個数がわかるよね。ポーションを一本って念じてみて」

「ポーションを一本……あっ!何かが手に!」

「そのまま取り出してみて」


 エリシャが手を引き抜くとポーションが握られている。


「すごい…」

「私たちも使えるようになったんですね。これからは依頼中は私が持ちますね」

「いいの?」

「はい。これ(背嚢)を背負っていても魔法なら大丈夫ですよ」


 ニーナなら戦闘中もそこまで動き回らないし、よく気が付くから任せられるな。


「よーし、皆準備してここへ集合しよう。これから出ると向こうに着くのは夕方かな」

「そうだね。どうする?あたしは今から行くほうがいいと思う」

「わたしもそう思います」

「そうだな」


 ニーナも頷いているし、皆今から行く気だな。なんにせよ早く行くことができれば助かる確率が上がるはずだ。


「あー、組合に馬車用意してもらえば良かったなぁ」


 今の時間だと深森迷宮に行く馬車はあるかどうかわからない。徒歩かぁ。


「ふふーん、あたし頼んどいたよ。えらい?えらい?」

「おお!さすがタニア。よく気が付くじゃないか!」

「もう準備されてるはずだよ」

「僕たちも急いで準備しよう」


 準備に時間がかかるのは僕とガルトだ。間に合いそうになかったらリュックサックに放り込んで馬車の中で着替えるか。

 ニーナからリュックサックを受け取り、ガルトと部屋に急ぐ。


「ガルト、時間がかかるようだったら装備は馬車の中でやろうか」

「そうだな。じゃあもう入れてしまおう」


 鎧下に着る肌着を着てから服を着る。あとは服を脱いで鎧をつければ完成だから、このほうが早いか。

 隣の部屋の扉の閉まる音が聞こえてきた。早いなぁ。女の子だから時間がかかるかと思ったけど、さすがは冒険者だ。


「リュウジー、ガルトー、あたしたち先に行くよー」

「僕たちもすぐ行く」


 タニア達の声が遠ざかっていく。

 剣と盾だけ持って集合場所へ行くと確り準備のできた三人がいた。


「みんな揃ったね。先ずは組合によって一言声を掛けてから出発しよう」

「二人とも鎧はどうしたの?」

「着けるのに時間がかかるから馬車の中で着ることにしたんだ」

「じゃあ、私お手伝いしますね」

「ありがとうニーナ。よろしく頼むよ」

「あたしはガルトを手伝おうかな」

「すまんが頼む」


 組合に寄ってこれから出発する旨を伝え、門に急ぐ。

 組合が用意してくれた馬車に乗るとすぐに動き出した。


「なるべく早く着くようにしますからね。ちょっと揺れますよ」

「わかりました。お願いします」


 御者のお兄さんが気を使っていつもより早く運んでくれるみたいだ。

 僕たちが席に着くと、ピシィッと鞭の音がして馬車が一気に加速する。


「うおっ、と」

「きゃっ」


 進行方向に対して九十度横向きに座っていたから馬車の後ろ方向に倒れてきた。いつものように僕の隣に座ったニーナがエリシャに押されて僕に抱き着いてきた。反対側に座ったタニアとガルトは何事もなかったかのようだ。


「大丈夫ですか?ニーナさん」

「はい、大丈夫です。すいませんリュウジさん」

「いや、僕が支えてあげられなかったのがいけなかったね」

「ニーナは隙あらばリュウジにくっつくなー」

「そ、そんなことないですよ!これは偶々(たまたま)です、偶々!」


 タニアに揶揄われて真っ赤な顔で否定するニーナも可愛いなぁ。


「まあまあ、あれはしょうがないよ。ところで、迷宮町まで行ったらそこからはどうやって行けばいいんだろう?」


 急いで出てきたからまた聞き忘れちゃったよ。


「もー、リュウジのそれは治んないなぁ。迷宮町に行ったら一軒しかない宿屋にスレインがいるんだって。だからスレインに案内してもらえばいいって言ってたよ」

「やっぱり来てたのはスレインだったのか。わかった、ありがとうタニア。しかし、ライルたちはどんな状況なんだろうね」

「この組には回復できる人が二人いますからね。しかも使徒様なら腕や足が千切れていても治せますから死んでさえいなければ大丈夫でしょう」

「そうですね!」

「あんまり期待されても怖いなぁ」


 かなりの速度で走っているにもかかわらず、そこまで揺れないな。


「もうすぐ着きますよ」

「はやっ」

「すごいですね!全然揺れなかったです」

「ありがとうございます。はい、到着しました。気を付けて行ってきてください」


 馬車から降りてお礼を言い、深森迷宮に入る。


「外は夕方だったけど、迷宮内はまだ明るいね」

「でも、すぐに暗くなるからこのあたりで野営の準備をしよう。リュウジよろしく。あたしは周りを見てくる」

「はいよ」


 迷宮に入ってすぐのところにはちょっとした広場がある。これから入ってくる人達はいないと思うけどちょっと横にずれて設営しよう。


「じゃあ、色々出していくからみんなよろしくね」

「はい」

「ああ」

「わ、わかりました」


 流石にみんな慣れたもので道具を出していくとどんどん処理していってくれる。あっという間に設営が終わってしまった。

 エリシャはまだ慣れていなかったのでニーナと一緒に一生懸命頑張ってくれた。

 さあ、明日からは迷宮町まで行って、ライルたちのところまで急がないといけないな。怪我しててもいいから生きていてくれ。

 

 


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