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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第十五話

 薬草の生えている場所についてみたら、そこらへん全部採りつくされてました。がっかりだよ。だから角ウサギを探しに行こうって話になって、周辺を探してみたんだ。


「ニーナ、角ウサギって魔物?それとも動物?」


「動物ですよ。魔物は、体のどこかに魔石があります。大体は心臓の近くですね。」


「朝、組合で聞いた猪の話はどういうこと?元は動物だったんでしょ。」


「私も聞いた話なんですが、森の中や洞窟なんかには魔力溜まりができることがあるみたいなんです。そこに動物が留まっていると魔物化することがあるみたいです。」


「へぇー、そうなんだ。魔力溜まりって見えたり、近づくとなんか変な感じがしたりするの?」


「魔力溜まりは基本的には見えないそうです。でも、魔法使いの人には分かりますよ。近くにあると肌がピリピリした感じがします。私にもわかると思います。」


「そんな感じなんだね。じゃあ、この森に魔力溜まりがあれば角ウサギの魔物化もあるってことか。魔物化すると何か変化するのかな?」


「一番大きな変化は、体が大きくなるみたいです。あとは力が強くなったり、中には魔法を使うことができる魔物もいるみたいです。」


「うへー、そんなのには会いたくないなあ。もっと強くなってからなら考えなくもないけど…」


「そうですね。私も会いたくはありません。見かけたら逃げます!」


 それにしても、角ウサギがいないなぁ。薬草が採れないと他の採取依頼を考えないとなぁ。

 角ウサギ出てこーい。出てこーい。なんて考えてたからか、目の前にある低木が揺れた。


「ニーナ!」


「はい、見ました。木が揺れましたね。いますよ、きっと。」


 周りをを警戒していると、ガサッと後ろの方から音がした。やばい!ニーナ!


「えいっ!」


 ゴスッと音がしたと思って後ろを見たら、ニーナの足元で角ウサギが伸びていた。ニーナがやったの!?凄いな!

 ニーナが得意げに杖を持ち上げてにっこり笑っていた。


「やりました!リュウジさん!一発でした!」


「凄いぞニーナ!やるなぁ!」


「えへへー。もっと褒めてください!さあ、もっと角ウサギを狩りますよ!」



 それから、お昼くらいまで頑張って探したんだけど角ウサギは見つからなかった。探している途中で森の中のちょっとした広場みたいなところを見つけたんで、陽当たりのいい真ん中あたりで休憩していた時だった。

 森との境界当たりから一匹の角ウサギが出てきた。普通の角ウサギより一回り大きく見えたんで、でっかい角ウサギだなーと思って見ていたんだ。


 そうそう今更だけど、普通の角ウサギは、元の世界の学校で飼ってた白いウサギぐらいの大きさ(体長三十センチから四十センチくらい)で、額の所から十センチくらいの真っ直ぐな角が一本生えている。あそこに見える角ウサギはそれより一回り大きく見える。


「ニーナ、あそこ見て。でっかい角ウサギだよ。」


「あ、ほんとですね。あんな大きい角ウサギは見たことありません。」


「さっきの話だと魔物化したやつかも知れないね。」


「そうかもしれませんが、ただ単に大きいだけかもしれませんし。」


「まあ、なんにせよ狩ることには変わりないけどね。」


「はい、でも気を付けて行きましょう。」


 僕たちは、戦闘態勢を整えて角ウサギのほうへ近づいて行った。角ウサギは耳を掻いたりしていたが、僕たちに気が付くと凄い勢いで走りだしたと思ったらそこからさらにスピードに乗って突っ込んできた。

 その速さに吃驚したがギリギリで回避できた。僕の二メートルくらい後ろにいたニーナも何とか避けれたみたいだ。角ウサギは、ニーナを通り過ぎて三メートルくらい向こうに着地した。え!?七、八メートル飛んだ!?

 しかも、こっちに振り返りまた突撃してきそうだ。

 僕は急いでニーナの前に出て剣鉈を構える。


「ニーナ大丈夫!?こいつめっちゃ速いぞ!」


「はいっ、何とか躱せました。でも凄く速いですね!本当に、さっき話していた魔物化した個体かもしれません。」


「魔物化した個体か。どうする?逃げる?」


「逃げるにしてももう見つかっていますし、攻撃する気満々ですよ、あれ。」


「だよねぇ。よしいっちょ気合れますか!うおっと!」


 また角ウサギが飛んできた!やっぱり速い!避けるので精一杯だ。


「頑張ってください!リュウジさん!」


「ニーナも攻撃してよ!?僕じゃ、避けることしかできないよ!」


「わかってます!魔法で攻撃しますから、引き付けていてください!」


 そう言いながら呪文を唱えながら僕の後ろからゆっくりと移動していくニーナ。

 角ウサギは、また飛んでくるつもりだろう。それ以外の攻撃方法を見たことないからな。速いけど何とか見えてはいる。避けてばっかりじゃだめだ!攻撃しないといかんな!

 僕は、何とか角ウサギを仕留めることができないかと腰を落とし、右足を後ろに引いて剣鉈を逆手に持ち替え腰の位置に構える。ニーナの魔法はもう少しかかりそうだ。


「ニーナ、次にウサギが攻撃した後を狙って!」


 そう言った瞬間に角ウサギが突っ込んでくる。やばい!避けにくい腹に向かってきた!

 咄嗟に腰を引き何とか避けれた。角ウサギは服を掠めて通り過ぎる。駄目だ、速すぎて手が出せない!


炎矢(ファイヤアロー)!」


 ニーナは角ウサギが着地する場所を狙って魔法を放つ。が、角ウサギは、着地すると同時に前にジャンプして避けてしまった。炎矢が当たった地面は黒く焦げてちょっと抉れていた。


「もう一度行きます!」


 ニーナは、また詠唱に入る。大体一分弱くらいで詠唱できるみたいだな。


「頼んだ!僕は何とか攻撃を当てる!」


 もう何回か角ウサギの突撃は見た。速いがタイミングを合わせるくらいは出来そうだ。どこに当たるかは運任せだ。とにかく当てることを考えよう。

 こっちを向いた角ウサギは、また突撃態勢だ。もっとよく見ろ。見えてるんだから当てることもできるはずだ。

 僕が集中して角ウサギを見ていたら、また飛んできた!よし!見える!今度も僕の胴体を狙ってきた。

 逆手で持っていた剣鉈を順手に握り直しいつかやったように角ウサギの軌道に剣鉈を突き出す。


「はあっ!」


 よし!もらった!と思ったら、角が剣鉈と触れたと思ったところで角ウサギが頭を振り剣鉈を弾いた!


「え!?」


 剣鉈を外側に弾かれた僕は、剣鉈を落としはしなかった。が、腹が無防備になる。

 角ウサギは、振った頭を戻したが攻撃を弾いた衝撃で軌道が逸れ、僕の腹の肉を抉って通り抜けていった。


「ぐうっ」


 痛ぇ!くそっ、やられた!でも痛いには痛いが我慢は出来る。血は出ているがそう多くはなさそうだ。まだいけるか。


「大丈夫ですか!?リュウジさん!」


 ニーナがこっちに来ようとしたが、それを止める。


「大丈夫だ!ちょっと痛いけど、まだいける!ニーナは魔法を何とか当ててくれ!」


 振り返って剣鉈を構える。ちょうど角ウサギもこっちを向いたところだ。

 攻撃方法が突撃だけだからまだ何とかなっているが、あまり傷を受けて動きが鈍ってくるとヤバいな。どうしようか。さっきのタイミングで突きに行くとまた弾かれそうだ。腹括るしかないな。上から思いっきり振り抜く!よし!行くぞ!

 角ウサギが土煙を上げて飛んできた!ここだ!


「うおおおぉぉぉりゃあぁぁぁ!」


 思い切り角ウサギの頭部を目掛けて剣鉈を振り下ろす。と同時に右手に衝撃が走った。剣鉈は、角ウサギの頭蓋骨を断ち切った感触があり、長い耳が宙に舞った。しかし同時に角ウサギの角も僕の右腕に傷を与えていった。


「ニーナ!」


炎矢(ファイヤアロー)!」


 角ウサギが通り過ぎ、僕の後方に()()()()ところにニーナの魔法が当たる。

 着地した!? 結構な致命傷だと思ったんだけどな!?凄いな魔物化!

 ニーナの炎矢(ファイヤアロー)は、角ウサギの胴体に命中し、それでやっと動かなくなった。


「やったな!ニーナ! あいたたたた。」


 ほっとしたとたんに傷の痛みが襲ってきた。右腕はまだいいけど腹が痛い。腹を抑えて蹲る。押さえた指の間から血が滴っている。あー結構出てるな。服が真っ赤じゃないか。また買わないといかんのか…


「リュウジさん!?傷見せてください!」


「ニーナ、水筒と綺麗な布を出すから処置を手伝ってくれないか?いてててて。」


「ああっ!結構な傷ですから動いたら駄目ですよ!そこで待っててください。私が背嚢を持ってきます。」


 情けないことに、立ち上がろうとしたけど腹の傷が痛くて足に力が入らず動けなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 食べれた 受けれた 避けれた もの凄く訛ってますね!
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