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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百三十七話

誤字脱字報告、ありがとうございます。

大変有難いです!

感想、ご指摘もありがとうございます!

 ニーナに起こされて目が覚めた。


「おはよう、ニーナ。何もなかった?」


「大丈夫でしたよ」


 隣を見るとタニアがまだ寝ている。ガルトはいないからもう起きたのか。


「タニアさんはもう少し寝かせておきましょう。朝ご飯の支度を手伝ってもらっていいですか?」


「わかった。ちょっと待っててね」


「はい、ゆっくりでいいですからね」


 タニアを起こさないように静かに外に出る。動いたときにマットが波打ってタニアが呻いたけど、反対側を向いてすぐに静かになったから大丈夫だろう。


 とりあえずブーツだけ履いてテントの外に出る。


 生活魔法で掌に水を出してそのまま顔を洗い、寝癖を直す。


「ふー、さっぱりした。水道も水筒もいらないなんて便利すぎる。浄化の魔法も教えてもらったから洗濯もいらないし、魔法って凄いなぁ」


 手から出る水を止めてニーナの手伝いに行こう。髪は襤褸布で水分を取っておく。


「お待たせ。何すればいいかな?」


「リュウジさんは食材を出してください。そうしたら、ガルトさんが火を熾してくれてますからスープの準備をしてもらえますか?」


「了解。何を出そうか」


「えーと、サンドイッチを作りたいので、葉野菜と肉を出してもらえますか」


 言われた通りに野菜と肉、あとは塩胡椒なんかの調味料も出しておく。スープの具材は何にしようかな?…んー、適当に腸詰肉と葛野菜でいいか。


「ガルト、火は大丈夫?」


「ああ」


「じゃあ、スープを作ろうか」


 鍋を取り出して魔法で水を入れて焚火で温める。野菜と腸詰肉をその中に入れて味を調え、暫く煮込めば完成だ。


 木の匙で味見する。もうちょっと塩かな。匙を水で洗ってガルトにも見てもらう。


「ガルト、味見」


「もう少し塩だな」


「やっぱり?」


 塩を足して味見をするといい感じになった。


「どう?」


「いい」


「んじゃ、完成だな」


 ニーナはどうなったかなと思って振り返るとすぐ後ろで頬を膨らませているニーナがいた。


「むう、リュウジさんとガルトさんがイチャイチャしてます」


「あはは、ごめんごめん。」


 私も一緒に料理したかったですと僕だけに聞こえるかどうかくらいの小さい声で囁くニーナ。ガルトに嫉妬してるのかぁ、可愛いなぁ。


 頭をポンポンすると耳まで真っ赤になった。


「わ、私の方は出来ました。リュウジさんの方はどうですか?」


「できたよ。タニアを起こして朝ご飯にしようか」


「私が起こしてきます」


 ニーナがテントに入ってすぐにタニアと一緒に出てきた。タニアは大きな欠伸をしながら後ろ頭を掻いている。おっさんか。


「おぁよー」


「おはよう。タニア、ご飯食べれる?」


「ん?もちろん!」


「タニアさん、寝癖ついてますからまず顔を洗って直しましょう」


「はーい」


 戻ってきたタニアは、寝癖が直り表情もいつもに戻った。


「さー、ご飯だ」


「村長さんの分もありますから、一緒に食べましょう」


「おお、有難いの。ご相伴に預かるとしようかの」


 村長さんは、いつの間にか起きて馬の世話をしていた。


「いただきまーす」


「これおいしー!」


 タニアがサンドイッチを一口頬張ると目を見開く。どれ、僕も。


「うまっ!」


「よかったです」


 塩胡椒の加減が絶妙でパンの焼き加減も最高だ。


「本当に美味いのう。お嬢さんはいいお嫁さんになるのう」


「そうですか!ありがとうございます」


 ニーナ、褒められて凄く嬉しそう。確かにニーナならいい奥さんになりそうだな。


「このスープも美味しいですね」


 褒められて機嫌のいいニーナは、笑顔が輝いていた。


 朝ご飯を食べ終えたら出発だ。テントや食器類を片付けて、焚火の後始末をしたら荷馬車にお世話になる。




「お疲れ様じゃったの、ここが儂らの村じゃ。今日はこのまま泊まっていくんじゃろ?儂の家でいいかの?」


「お世話になります」


 案内された村長さんの家は、周りの家より一回り大きかった。


「大したもてなしも出来んが、泊ってってくれ」


 中に入ると人気がない。


「一人暮らしですか?」


「そうじゃ。妻はだいぶ前に召されての。息子三人と娘も家を出たからの、今は一人じゃ。」


「そうなんですか…」


 息子さんと娘さんは全員フルテームの街にいるらしい。出稼ぎに行ってそのまま結婚して住んでいるそうだ。


「じゃがの、一番上の息子が今度帰ってきて儂の後を継いでくれるんじゃ。それが楽しみでのう。孫も一緒じゃからの」


 とても嬉しそうに話す村長さん。どこの世界でも孫は可愛いみたいだ。


「ほいじゃあ、晩飯を作るかの。皆さんはこのまま待っとってくれ」


「あ、私も手伝います」


 よっこいせと立ち上がる村長さんに、ニーナが手伝いを買って出る。


「ん?それはありがたいの。よろしくじゃ」


 二人が作ってくれた料理は、素朴だったがとても美味しかった。ここでしか栽培していない野菜が

あるらしいので帰りに買っていこう。


 


 二人部屋を二部屋借り、男女で分けて就寝し、何事もなく朝になる。


「おはようガルト。もうすっかり準備できてるじゃないか」


「ああ、早くに目が覚めた」


 外はまだ薄暗い。もうすぐ夜明けの時間かな。僕も準備しよう。と言っても身嗜みを整えるくらいか。装備品はもう少し後でいい。リュックサックを背負って準備完了だ。


「待たせたね、ガルト」


「いや」


 二人で居間にいくと村長さんが朝食を作ってくれていた。


「おはよう。今日から行くんじゃろ?気を付けてな」


「おはようございます。はい、ありがとうございます」


 村長さんと挨拶していると後ろから足音が聞こえてきた。ニーナ達かな?


「あ、リュウジさんおはようございます。村長さんもおはようございます」


「おはよー」


 皆で朝食を食べた後、部屋で装備を整え村長さんにお礼を言って迷宮に出発する。


「無事帰ってくるんじゃぞ」


「はい、色々とありがとうございました。よし、行こうか皆」


 村を出て山のほうへ向かって歩き出す。


「村長さんの話だとあの山の麓に入り口があるんですよね。その前に森を抜けないといけませんが…」


 その森で途中一泊しないといけない。まだ迷宮まで行く人が少なくて道がないから時間がかかる。


「ま、先に行った三人が通った跡があるでしょ。それを辿っていきましょ。あたしに任せて」


「いつも頼りにしてるよ、タニア」




 歩いて二時間少々で森の入り口まで来た。


「村長さんの話だと、この森にはゴブリンや森狼、角うさぎがいるんだっけ。あ、あと猪か」


「そう言ってましたね。猪以外はセトルの周りの森と同じですね」


 きっともっと動物もいるんだろうけど、よく出会うのがそれくらいみたいだ。


「熊っていないのかな?いないに越したことはないけどさ」


 この世界にきて何度か森に入ったけど熊に出会ったことはない。出会いたくもないけどね。


「熊はもっと深い森にいる」


「ここも十分に深いと思うけど…もっと?」


 ガルトが頷く。しかももっと寒いところにいて巨体らしい。


「こんなところで話してても時間の無駄だね。さっさと行こうよ」


 タニアの言う通りだ。出来るだけ進もう。


「じゃあ、先頭は任せた、タニア」





 森に入って一日が経った。ゴブリンとか森狼なんかと出会ったけど何事もなく退治できた。角ウサギが二羽狩れたのは良かった。今日の夕食になったよ。


今は野営の準備も済んで夕飯を食べ終えたから、あとは寝るだけだ。


「今夜の順番はどうしよう」


「私、最初でもいいですか?」


 ニーナが意見を言うのは珍しいな。どうしたんだろ?


「いいよ。じゃあ、次は…」


「次はリュウジさんです。それで、タニアさんでガルトさん」


「僕はいいけど、みんなは?」


 皆異論はないみたい。


「それで、リュウジさんは真ん中で寝てください」


 寝る場所まで指定されてしまった。


「なんで?」


「わかった。じゃああたしは左側でいい?」


「はい、いいです」


 タニアは何かわかったらしい。ニーナとタニアは顔を見合わせてほくそ笑んでいる。何企んでるんだろう?まあ、何でもいいけど言われた通りに寝るか。


「それじゃ、ニーナよろしく。お休み」


「はい、おやすみなさい」




 なんでニーナが寝る場所まで指定したかが分かった。


 そんなに深刻なことではなく、ただ単に僕の隣で寝たかっただけみたい。


 なんだか柔らかいくて温かいものが僕の上にあるなぁと思ったらニーナが僕に抱き着いて寝ていた。


 森の中だからまだ暗いけど、もう日が昇る頃だろう。


「ニーナ、朝だよ、起きて」


 空いているほうの手で頭を撫でながら起こすと僕の胸に顔を擦り付けてきた。


「うう…もうちょっと…」


「もうちょっとって、ガルトが困るからさ。起きて」


 宿の部屋だったら喜んで甘やかしてあげるけど、冒険(しごと)中だからなぁ。


「タニアも起きて。ニーナを何とかしてくれ」


「うー…わかった…。ほら、ニーナ起きよう」


 タニアに起こされたニーナは、僕にしがみついて離れない。うーん、このニーナの甘えん坊はなんだろう?寂しいのかな?


「どうした?ニーナ。なんかあったか?」


「んーん。何もないですよー。ただ…甘えたかっただけです…」


 そう言いながら僕から離れないニーナ。気が済むまで甘えさせておこうかな。そのほうが良いような気がする。


「タニア、ガルトにちょっと遅くなるって言っといてくれる?」


「んー、じゃあ暫く声が聞こえないとこまで離れてようか?」


「いや、そこまでしなくて大丈夫。それは街に帰ってからにするよ」


「そう?わかった」


 タニアに気を使ってもらっちゃったな。って言うか普通に流されたけど、下ネタな会話だったような気がする。ま、気にしないでおこう。


「ニーナ。何して欲しい?」


「キス、してください」


 タニアが外に行ってからニーナを一時間くらい甘えさせてみた。抱きしめたり、キスしたり頭撫でたり。そうしたら満足したのかいつものニーナに戻ってくれた。


「良かったねニーナ。満足した?」


 二人で外に出ると、タニアとガルトで朝ご飯を作ってくれていた。


「はい、すいませんでした」


「にゃはは、いいよ。最近溜まってたもんね」


 ニーナの顔が真っ赤になる。ボンって音が聞こえた気がするくらいの勢いだ。


「タニアさんっ!」


 真っ赤な顔のままタニアを追いかけるニーナ。朝から騒がしいなぁ。まあでも、ニーナが元に戻って良かった。


「さあ、今日は森を抜けよう。ガルト、朝から迷惑かけたな」


「いや、そうでもない。しっかり見ててやれ」


「ありがとう」


 ガルトがいて良かったよ、ほんと。

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