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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百に十二話

 醤油と味噌を買ったら飲食代は無料にしてくれたのでお礼を言って店を出る。


「ありがとうタニア、いい店を紹介してくれたね」


「喜んでもらえて何よりだよ。で、これからどうする?どこかに行く?」


「そうだなぁ、食材を見て回ろうか。ガルトはどうする?」


「俺は、いい」


 彼は三日後にと言い残して去って行ってしまった。まあ、三日後にまた会ってくれるみたいなので良しとしよう。


 それを三人で見送ってこっちも行こうってことになった。


「ガルトさん仲間になってくれるでしょうか」


「あたしは、なると思うな。もう入れてくれるところなんてないよ、きっと」


 それは悲しいなぁ。ガルトは何も悪いことしてないのに。噂って怖いなぁ。


「まあ、三日後のお楽しみってことにしよう。じゃ、買い出しに行こうか」


「はい」


「うんっ」


 


 翌日、僕たちは深森迷宮に来ている。今日の大きな目的は大蟻を狩ることにした。なるべく小さな群れ、できれば二、三匹でいるのを見つけて狩ってみようって話になったんだ。


 大きな目標はそれなんだけど、小さな目標も決めてみた。オークを狩ることだ。目的は肉。やっぱり美味しいんだよなぁ。醤油も手に入ったし、昨日の買い出しで生姜っぽいものも手に入れることができた。それじゃあ生姜焼き作るよねってなったんだ、僕の中で。


 その時に独り言が出てたみたいで、二人がすごい勢いで食いついてきた。それで生姜焼きの説明をするとすぐにこの目的が決まったんだ。


 だけど、オーク肉だけが目的ってちょっとねーと思って、今の僕たちにとってちょっと難しい大蟻を狩ることを最大の目的にした。


 この間一匹だけ狩れたんだけど、群れてるのを相手にして今どれだけ戦えるのか、今後ガルトが入ってくれた時にどのくらい楽になるのかわかるからな。


「さあ、気合い入れていきますか。大蟻って群れると厄介なんだよね」


「そうですね。私の魔法で良ければいいんですけど、素材が取れなくなっちゃいますもんね」


「大蟻が出たらあたしも前に出るから、ニーナは気を付けてね。また、オークに襲われないでよ」


「もう襲われないですよ!襲われても返り討ちにできます!」


 確かに今のニーナならオークの一匹や二匹くらいなら返り討ちにできるだろう。


「それでも気を付けてね。何かあったら大きい声で呼んでね」


「はい!わかりました。リュウジさんを呼びますね」


 


 目の前には一本の道しかない。しかも当たり前だが、あとは全部木ばっかりだ。


そのまま道なりに進むこと十分くらい。新しい道ができている。


「タニア、どっちに行く?」


「うーん、今日は迷宮町のほうまで行ってみようと思ってるんだ。町には入る気はないけど、近くのほうが大蟻がよく出るっていう話を聞いたんだよ」


 じゃあ、今まで通り気を付けて進んでいこうってことになり、またタニアを先頭に森の中を進んでいく。


 十分くらい歩いたところでタニアから止まれのハンドサインが出た。ニーナとその場で動かずに待っていると徐に立ち上がったタニアが弓を構え続けざまに二本の矢を放った。


「何かいたのかな?」


「どうでしょう?」


 二人で顔を見合わせていたらタニアからこっちにこいってサインが出た。


「ゴブリンが一匹いたから倒しといたよ」


 にっこり笑っていうタニア。ゴブリンが倒れてるところに行って耳を切り取って魔石を取り出し、使った矢を回収する。


「迷宮だと埋めなくていいんだっけ」


「そうだね。放っておけば吸収されるよ」


 迷宮は楽でいいなぁ。


「でも、迷宮内で死ぬと人間も吸収されちゃうからね。ま、連れて帰っても生き返りはしないんだけどさ」


「身に着けてた装備とかってどうなるの?一緒に吸収されるの?」


 物語でよくあるのは、迷宮内のどこかで宝箱の中身になるってことかな。


「そうそう。一緒に吸収されて、どこかで宝物になってるんだって」


「そうなのか、やっぱり」


 迷宮が自前で宝物を用意できるわけないからなぁ。そうなるよね。


「それじゃあ、宝箱の中から冒険者証とか出てくるんですか?」


「うん。それ持って帰ればちょっともらえるしね」


 亡くなった冒険者の冒険者証を持っていくと大銅貨一枚もらえる。


「僕たちはそうならないようにしようね」


「はい」


「あたしもそれはやだなぁ」


 話はこのくらいで切り上げて探索を再開することにする。


 またしばらく移動すると今度はオークを二匹発見した。


「よし、今度は普通にいつも通りに戦おうか。まずはタニアとニーナ、よろしくね」


 はいと返事をして炎矢の詠唱に入るニーナとその横で弓を構えて待機するタニア。それを横目で見ながら盾を構えて突撃準備に入る。


「…敵を撃て、炎矢ファイヤアロー!」


 放たれるニーナの炎矢とタニアの矢。二人は同じオークを狙ったみたいだ。あの二人の攻撃なら確実に仕留めてくれるだろうからもう一匹に向けて走り出す。仕留めそこなってたら途中で目標を変更するだけだ。


 ギャッっと悲鳴を上げて倒れるオーク。二人の攻撃で仕留めてしまった。流石だ。タニアの矢は後頭部に突き立っていてニーナの炎矢は背中から心臓の位置を貫いていた。


「ブフォォォォ」


 残ったオークが走って向かってきている僕に気が付くと同時に棍棒を振りかぶった。


 このままだと直撃する!もう止まれないから、さらに足に力を入れ速度を上げて進行方向を左に向ける。


「くそっ!うおぉぉぉ!」


 体を左に傾けて更に右に捻りながらオークの前に出る。僕の顔の右側を黒い物体棍棒が通りすぎていくのが分かった。


 捻った体を戻す勢いで下げていた剣をオークの脇を目掛けて振り抜く。軽い手ごたえとともにオークの悲鳴が聞こえた。


 オークの脇を通りすぎて盾を体の前に構えて振り向くと右脇の下から血を吹き出しながら棍棒を振り回してくるのが見えた。棍棒の速度はさっきほどではないから盾で防ぐことが出来そうだ。


「ブッフォォォォ!」


「おぉりゃあぁ!」


 盾で棍棒を弾き飛ばしてやる!盾を持った左手を思い切り払う。


 左手にかなりの衝撃があったが、盾を振りぬくことが出来た。盾で払った棍棒は宙を舞っている。


 左手を払った勢いを殺さずに右足で踏み込んで剣を体に巻き付けるように右上から袈裟切りの要領でオークの左側の首の付け根に叩きつける。


 ゴッ、ゴゴゴッと骨を切る手ごたえがあり剣がオークの体を斜めに両断した。


「ふうっ」


 もう敵がいないことを確認して、剣についた血を払う。本当によく切れる剣だなぁ。


 戦闘が終わったことを確認して、ニーナたちがこっちに来た。


「さ、こいつらの魔石と証明部位を取って背嚢に入れてね。あ、あたしこっちのやるからニーナとリュウジでそっちのやってね」


「わかった。ニーナやろうか」


「はい!」


 タニアは自分で倒したほうを解体しているからこっちもさっさと終わらせてしまおう。


 オークは太ってるように見えるが筋肉の塊で解体が大変だ。死んでから時間がたつと筋肉が固くなって解体がやりにくくなってしまう。こっちのオークは剣で斜め切りにしたから魔石を取り出すのは簡単だった。討伐証明部位は牙だったかな?剣鉈で切り取って麻袋に入れる。この作業ももう慣れたもんだ。最初はうえっと思ったけどもう何回やったか覚えてないくらいだし、これがお金になると分かったから平気になった。


「はい、背嚢です」


「ああ、ありがとう」


 ニーナが戦闘前に置いたリュックサックを持ってきてくれた。よく気が付く。


 しゅるんとオーク二体を収納し探索を再開する。


「んじゃ、また先行するね」


「はーい、行ってらっしゃい」


 ニーナに見送られたタニアは僕たちの十メートルほど先を進んでいく。


「結構森が深くなってきた気がするんだけど…」


「なんだか薄暗くなってきましたね」


「僕たちちゃんと帰れるんだろうか」


「タニアさんなら大丈夫ですよ、きっと」


 タニアはずんずん先に進んでいくんだけど、周りを見るとさっきよりも木の密度が濃くなって薄暗くなってきた気がする。


 ほんとに大丈夫だろうかと思いながらもついていくとタニアからハンドサインがあって、その場で止まる。何か見つけたみたいだ。


 タニアが振り返って手招きしたから音を立てないように進む。


「いたよ、大蟻。でも四匹」


 大蟻に気が付かれないように小声で話すタニア。視線の先を見るとでっかい蟻が四匹、何かを啄んでいる。


「四匹かぁ。どうするタニア」


「あたしなら見逃す、かな?」


「あれは食事中ですか?」


 蟻って肉食だったよな?確か。何食べてるんだろう?


「そうみたいだね。何食べてるかわかんないけど今なら奇襲できると思うよ」


「リュウジさん、私が火球で数を減らせれれば行けると思いませんか?」


 確かにニーナの火球なら手前にいる二匹はやれそうだ。うーん、どうしよう…


「タニア、一匹行ける?」


「そのために来たんでしょ?やるよ。でもなるべく早く助けてほしいかな?」


「よし、ニーナ、タニアやってみようか」


「はいっ!」


「わかった!」


 やると決めたからには頑張ろう。ニーナが火球を詠唱し始める。僕とタニアは近接戦闘の準備だ。

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