第十二話
さらに歩くこと五分くらい。藪をかき分けて出たところには綺麗な白い花をつけた草がいっぱい生えていた。
「これが薬草です。この時期になると白い綺麗な花が咲くんです。良かった。誰も来てないみたいですね。さあ、採りましょうリュウジさん。あ、花も一緒に採ってください。根を残しておけばまた生えてきますから。花があると少し高く買い取ってもらえるんです。」
「わかった。これでいい?」
根元から剣鉈で刈っていく。稲刈りみたいだ。あれ草刈りか?どっちでもいいか。ちゃっちゃと刈ってしまおう。
暫くニーナと黙々と薬草を刈る。そういえば腹減ったなぁ。空を見上げると太陽がほぼ真上にあった。
「ニーナ、そろそろお昼ご飯にしない?」
「え?お昼にご飯食べるんですか?」
「え?食べないの?お昼ご飯。」
「冒険者の人たちはあまり食べないと思いますよ。依頼をやってると食べれないことが多いので。」
「そうなんだ。でもおなか減らない?」
「うーん、私はもう慣れちゃいましたね。町の人たちは食べる人もいるとは聞きますけど…」
「まあ、今日は用意してないからしょうがないか。今度はお弁当でも持ってこよう。」
僕の言葉にニーナは苦笑いしていた。ほんとにそういう習慣がないんだな。
二人で群生地をほぼ刈りつくし、葉三枚を一束として三十枚を纏めて縛っていく。数えたらその束が三十五束あった。ええと、一束銅貨一枚だから、三十枚で銅貨十枚、それが三十五個あるから銅貨三百五十枚!?両替すると、えーと銀貨三枚と大銅貨五枚!?結構な稼ぎだな!物価的には銅貨一枚で百円くらいのレートだろうか。そうするとこれで三万五千円!これに角ウサギの代金も入るんでしょう?凄いな。
はあー、午前中だけでこれか。冒険者って儲かるのね。
報酬の分け方なんだけど、半分づつにして余ったらパーティ資金ということにした。
「ニーナ、一旦帰ろうか。午後からは組合で訓練がしたいんだ。」
「そうですね。帰りましょうか。ここは誰も来ていなかったので結構採れましたね。角ウサギもありますし。」
「じゃあ、薬草は持つよ。全部ちょうだい。」
「え?そんな重いですからいいですよ。半分くらい持ってください。」
半分持ちますって言ってきかなかったニーナから薬草を奪ってリュックサックに入れる。薬草三十五束ってかなり重いから女の子には持たせられないよ。力仕事は男の仕事ってね。リュックサックに入れちゃえば重さなんて関係ないし。凄いね無限収納。
「あれ?その背嚢ってマジックバッグですか?入れるときに魔力の波動がありましたよ。すごいですね!貴重だしものすごく高いんですよ!何で持ってるんですか!?」
「これってやっぱり珍しくて高いのか。んー、持ってることは内緒にしてね。元々は普通のリュックサックだったんだけどいつの間にかこうなってたんだ。」
「わかってます、言いませんよ?それに魔法使いじゃないと魔力の波動は分からないと思うんですけど、街中ではあまり使わない方がいいですね。マジックバッグは魔力を登録しないと使えませんから、リュウジさんは魔法が使えるかもしれません。」
「え?ほんと?魔法使えるの?僕が? おぉ!やった!どうやったら使えるの?」
「えーと、その辺は町に帰ってからにしましょう。それにまだ使えると決まったわけではないですよ?」
「それでもいいよ!約束だよ!教えてねニーナ!」
僕も魔法が使えるかも!?やった!うー、ワクワクしてきた!
でもそうか、魔法使いにはわかっちゃうんだ。気を付けないといけないなぁ。盗られたら大変だ。僕の全財産が入っているからな。人の多いところでは使わないようにしよう。




