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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百十九話

「ガルトさんは二年前にこの街に来ました。前のところでも鉄級の冒険者だったそうです。そちらでも何かあったらしくこの組合に来た時も一人でした。私が担当したんですが、こういうことが起こるのが今回で三回目なんです、彼」


 ミレナさんから聞いた話では、ガルトはこっちに来てからもう三組のパーティから追い出されてるらしい。それも彼にあまり落ち度がないにもかかわらずだそうだ。


「あー…わかりました。彼は寡黙なほうなんですかね?普段もあまり喋らないことが多いですか?」


 一緒に歩いてきた感じでは、話しかけられれば返事はするが、一言か二言で済ましてしまうことが多かった。


「そう、ですね。返事はしてくれますが、一言か二言で終わってしまうことが多い気がします」


「意思疎通不足だね。今までよく冒険者やってこれたね」


 タニアもそう思うか。ニーナも頷いている。


「でも!彼は有能なんですよ?鉄級まで昇格してますからね。どうでしょう?無理にとは言いませんが、できればよろしくお願いします」


 そう言って頭を下げるミレナさん。


「わかりました。僕たちでよければ気にかけておきます。期待に沿えるかはわかりませんが」


「それでいいです。本当によろしくお願いします」


 換金して、オークの肉を三十ガオンスキログラム自分たちで食べるように貰ってから組合を後にして、宿への道を歩きながら三人でガルトについての話をする。


「しかし、あれだけ喋らないと連携が取りにくいだろうなぁ」


「そうだねぇ。でも鉄級まで行けたんならそれなりに出来るんだろうけど、よっぽどあいつガルトに慣れてるか、関心がないかのどっちかじゃないと一緒に戦えないと思うなぁ」


「でもガルトさんも一緒に組んでた人たちがいたんですよね?その人たちはどうしたんでしょうか?」


 確かにここに来る前はパーティを組んでたんだよな。なぜその人たちと離れてこっちに来たんだろうか。


「あまり込み入ったことを聞くのはまだ早いよな。知り合ったばっかりだし。まあ、街で見かけたり出先で見かけたら声をかけるくらいでいいかな?」


「あたしもちょっと情報を集めてみるよ」


「私も!…何かできますか?」


 勢い込んで拳を握りながら首を傾げるニーナ。


「ニーナは、リュウジと一緒に待ってればいいよ」


 タニアに暗に出来ることはないよーって言われてちょっとがっかりしてた。


 


 初めて迷宮に行ってから数日たったある日、ニーナと二人で買い出しのためにフルテームの街を歩いていると組合の前に人が集まっていた。


「あれ?なんだろうね。人がいっぱいいる」


「行ってみましょう」


 急ぐことなくゆっくり歩いていくと色んな声が聞こえてきた。大丈夫なのか?とか、血だらけじゃないかとか、よく帰ってこれたなとか、あいつ死神なんじゃないのかとか。


 聞こえてきた話を総合すると、どこかのパーティがひどい怪我を負って帰ってきたらしい。


「あ、リュウジとニーナ。買い出し?」


 組合前の人の中からタニアが出てきた。


「うん。もう終わって帰るとこ。何の騒ぎ?」


「ほら、例のガルトが新しく入ったところが深森迷宮の奥に行って返り討ちにあったみたいよ」


「ええ!?大丈夫なのか?」


「怪我は酷いけど、死ぬことはないだろうっていうことみたいよ。ガルトはほとんど無傷だったみたいだけどね。それで彼がほかの仲間を何とか連れてきたんだって」


 大の大人三人を連れてきたって…しかも怪我して動けないやつをだぞ。なんて怪力なんだろうか。あ、台車か何かあったのかな?それならいけるな。


「なんだか、またガルトの周りで何か起こったなぁ。大丈夫だろうか、あいつ」


 普通なら落ち込むよなぁ。僕なら落ち込むこと確実だ。


「この家業冒険者はこんなこともよくあるし、ある程度は慣れてるから大丈夫だと思うよ」


 タニアは冒険者なら普通のことだって言う。こんなことがよくあるんだ。


「でも、立て続けなのでちょっと心配ですね」


 ニーナも心配してるけど、基本的に大丈夫っていう前提がありそうだ。


「そうだね、この騒ぎが落ち着いてきたらガルトを探して話を聞いてみるか」


 今はまだ周りに人がいっぱいいて騒がしいし、こんなところで騒ぎの中心人物を連れて行ったら変な注目を浴びそうだから少し時間をおいて落ち着いてからにしたほうがいいだろう。


「こうも騒がれちゃ、ガルトもしばらく依頼を受けないと思うし、それでいいんじゃない?それに今日は組合が事情を聴くはずだから話すのは無理だと思うよ」


 人の群れを何とか搔き分けて組合に入ってみると、確かにタニアの言う通り職員に連れられて受付の奥へ行くガルトの後ろ姿が見えた。今から事情聴取されるのか。疲れてるのに大変だ。


「じゃあ、できることもないし宿へ帰ろうか」


 その日は、タニアとニーナと一緒に宿へ帰ってさっさと寝ちゃったよ。




 次の日。


 朝ご飯を食べながらタニアが昨日集めてきた情報を聞く。


「ガルトは、出身はどこかわからなかったけど、スヴァル帝国から来たみたい」


 スヴァル帝国!初めて聞く名前の国だ。ていうか、この国の名前って聞いたかな僕?


「スヴァル帝国ってどこにある国なんですか?」


 ニーナも知らないんだ。


「この王国からみて北西にある国だって。こことは山脈に隔てられてるからあまり国交はないはず」


「どんな国なんでしょうね」


「まあ、スヴァル帝国のことはまた今度ね。で、ガルトなんだけど、そこでも所属していた組パーティが壊滅したことがあったんだって。そこで何があったかは分からなかったけど、ミレナさんが言ってたように二年前にこっちに来たらしいよ」


「そうかぁ。で、また同じようなことが起こってる、と」


 しかも今回起こったので四回目。こうなるともうどこも入れてくれなくなっちゃいそうだなぁ。


「しかし、なんでガルトが入った組ばかり駄目になるんでしょう?」


「前の奴はよくわかんないけど、今回はガルトが入って他の仲間が調子に乗った、みたいなことを聞いたね」


「ということは、ガルトは優秀な盾役だってことか。確かに彼は傷らしい傷は負ってなかったな」


 さらには、迷宮からここまで搬送もしてるから全滅から救ったってことになる。そう考えると彼はとても凄い冒険者だと思う。


「いいね、彼。仲間にしたくなってきた」


「へ?ガルト、仲間に入れるの?」


「いいですね、それ!ガルトさんが入ってくれればリュウジさんの負担が減りますし、私たちも動きやすくなりますよ。ね!タニアさん!」


 ニーナは入れる気満々だな。タニアはどうだろう?ちょうどいいタイミングでニーナが聞いてくれたな。


「あたしは、ちょっとよく考えた方がいいと思う。確かに盾役がいればリュウジの負担は減るから良いことなんだけど、まだガルトがどんなやつかよくわかってないからね」


 あれ?タニアは結構慎重派だったか。


「今すぐって訳じゃないからさ。もうちょっと話を聞いて人となりを確かめてからにしよう」


 まあ、僕は仲間にする気満々。最終的にはタニアもいいよって言うと思うけどね。

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