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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百十四話

いつもと違う曜日の投稿ですが、今年最後の投稿です。

 門を通って街に入ると目の前には白い家々の壁が並んでいる。


「うわっ、眩し」


「ほんとですね、綺麗な街並みです。どんなお店があるんでしょうか。ワクワクしますね」


 家の壁が白いのはあれか?貝殻を燃やした奴か?何だっけ?ええと……そうだ、漆喰だ。ちょっと触ってみよう。


「あ、リュウジさんちょっと待ってください。依頼完了なので証書を受け取ってから解散にしますので」


 リッツモルさんに見つかってしまった。


「あ、すいません」


「ちょっとリュウジ、恥ずかしいなぁ」


「もう、リュウジさんたら」


 タニアとニーナに呆れられてしまった。好奇心に勝てなかったよ。気を付けないとな。


「それでは。皆さん今日までありがとうございました。また機会があったらよろしくお願いします」


 僕とライルとノルエラさんに依頼完了証が渡される。リッツモルさんたちは「それでは」と街中に消えていく。あっちの方にランドウズ商会があるんだろう。


「護衛依頼か。初めてにしては良く出来たかな?どう思う、ライル」


「そうだな、お前らのお陰でいい依頼だったよ。とくに食事とあのまっとれすだな」


 ライルは、マットレスがよほど気に入ったみたいだな。


「確かに食事は素晴らしかったね。リュウジ君、また一緒に冒険しよう。もちろん、ライちゃんもだぞ!」


 ノルエラさんはほんとにライルのことが好きなんだなぁ。もう、くっついちゃえばいいのに。


「わかったわかった、そのうちな。じゃあ、皆で組合まで行くか?ノルエラ、案内よろしく」


「わかった。おーい、みんなー、組合行くよー」


 ノルエラさんの号令でタニア、ニーナと暁の風と赤の牙の皆が集まってくる。


 僕たちはフルテームの組合の場所を知らないからね。引率してくれるなら有難い。


「ノルエラがいてくれてよかったぜ。俺ら初めてだからなぁ」


「初めてでもこの街の組合は大きいからすぐわかると思うよ。すぐそこだしね」


 正門の近くには宿屋や商店が店を開いているから街の人も多くて混雑している。並んでる建物は三階建てや五階建ての横に広いものが多く一階が店舗になっている。店舗の上階は全部部屋なんだろうか。街自体は滅茶苦茶大きくないみたいだから上に積んでいったんだろうなぁ。なんだか歪な感じの建物が多い?


 僕が周りをきょろきょろと見ていたらタニアに注意された。


「リュウジ、あんまりよそ見してると置いてかれるぞ」


「ああ、ごめん。なんだか歪で高い建物が多いなって思ったんだ」


 セトルの町が二階建ての建物が多くて、戸建てだったからな。セトルの町は建築様式は違うが雰囲気は日本の町みたいだった気がする。少なくても違和感は覚えなかった。


 でもこの街は、うーん、何というか…なんて言ったらいいんだろう?


「どうしたんですか?リュウジさん。何かあったんですか?」


 僕が腕を組んで首を捻っていたら、ニーナが心配してくれたみたいだ。


「いや、街並みがね、あんまり見たことない感じだったからなんだか気になってさ」


「ああ、違和感があるのはこの街の建物だろ?この街は人が増えてるのに街壁を新しく作らないから既存の建物の増築を繰り返してるんだ。だから歪で変な感じがするんだと思うよ」


 街を広げないんだ。こんなに土地余ってそうなのになぁ。街の外の様子を思い出してみても草原が広がってるだけですぐに広げられそうなのに。


「なんで広げないんですか?壁を作るだけならすぐに出来そうなものですけど」


 ニーナも同じ感想を持ったみたいだ。


「ああ、昔、この街の持ち主と街の住民とで街を広げる広げないって争ったことがあったみたいよ。その時に持ち主が怒って街は広げないって宣言したらしいの」


 僕たちの話を聞いていたのかノルエラさんが説明してくれる。よく知ってるなぁ。


「それでこんな風になったのか。大きい地震が来たら全部崩れそうだなぁ」


「そうですね。地震はあまりないんですけど、起こらないわけじゃないので心配になりますね」


「それより怖いのが海からの魔物の侵入ね。時々あるみたいよ。そういう時は私たちも駆り出されるから心しといたほうがいいわよ」


「海から魔物が来るんですか?」


 海の生物は水が無いと駄目だから陸には上がってこれないんじゃないかな?


魚人(シーマン)や大蛸、大烏賊なんかが時々襲ってくるわ。そうなると船は壊されるわ、建物も被害を受けたりして大変な騒ぎになるわよ」


「そうね。あたしがスラムに住んでた時も魚人が攻めてきたことがあったね。あんときはボロ家は壊されるし、子供が攫われるし、あたしも危なかったんだ」


 魚人ってどんな姿なんだろう?魚に手足が生えてるとかかな?それとも人型にうろこが生えた感じかな?攻めてくるってことは、どっかに国があるんだろうか?


「攫われた人はどうなるんですか?」


「うーん、帰ってきた人がいないからわかんないけど、食べられちゃうんじゃない?あたしはそう聞いてるよ」


「肉食なんだ。魚人って…」


「あいつらは海の底に集落があるって噂なんだ。だからこっちから攻めていけないんだよ」


「この街の組合でも何とかできないかって話が上がるんだけど、海の中じゃあ手が出せないのよね。水中で呼吸できるようになる魔道具もあるんだけど、数が無くてね」


「あ、組合あそこですね」


 タニアとノルエラさんの話を聞きながら歩いていたらあっという間に冒険者組合に着いてしまった。


「じゃあ俺とリュウジとノルエラで報告しに行くか。他の皆は待っててくれ」


「じゃあ、そこのお茶屋で待ってるわ」


 ルータニアさん達は二軒隣にある喫茶店に行くみたいだ。組合にも酒場がありそうだけどそこにはいかないんだ。


「あ、じゃああたしたちも行く」


「俺らも行くよ」


 タニアと赤の牙も一緒みたいだ。


「わかった。じゃああとで」


 僕たちは三人で組合に入る。


「おー、セトルの組合より大きいな」


 扉を開けて中に入ると正面に長いカウンターがあり、綺麗なお姉さんやイケメンなお兄さんが座っている。向かって右側には依頼板が三面あり、もう遅い時間なのに依頼が隙間なく張り出してある。反対側は酒場だろうか。セトルの町の組合酒場はちょっと小汚い感じだったけど、ここのは普通にレストランみたいに綺麗になっている。


「そうかぁ、あれじゃあタニアたちは落ち着かないかなぁ」


「そお?私はこれくらい綺麗な方がいいんだけどね。セトルの組合のも味があっていいと思うけど、ちょっと汚いと思うのよねぇ」


「うえー、俺もちょっと気後れするなぁ」


 ノルエラさんはいいところのお嬢さんみたいなこと言ってるな。ライルと幼馴染だったから育ちも同じようなものかと思ってたんだけど違うのかな?


「ま、なんでもいいや。リュウジ、貰った証書は持ってるな」


「うん、持ってるよ」


 背負っている背嚢(普通の奴ね)からさっきリッツモルさんに貰った依頼完了証を取り出して並んでいる列に加わる。


 列は一つしかなく先頭で開いている窓口に誘導されるみたいだ。列の進みは結構早く、暫く並んでいると順番が回ってきた。


「次の方、どうぞ」


 ライルが先に行って次にノルエラさん、最後に僕だ。


 呼ばれた窓口の受付さんは、年齢不詳で黒色の毛並みで猫耳が生えた、綺麗っていうより可愛い人だった。というか人型の猫だった。


「うわぁ、可愛い」


「あら、ありがとうございます。初めてのご利用ですか?」


 思わず口に出た言葉に笑顔で答えてくれる猫さん。獣人さんかな?


「はいそうです。すいません初対面なのに」


 語尾は「にゃ」じゃないんだ。


「いえいえ、可愛いと言われて喜ばない女性はいませんわ。あ、私はミレナと言います。これからよろしくお願いしますね。それで、ご用件は?」


「あ、そうでした。依頼完了証です。よろしくお願いします」


「はい承りました。冒険者証もお借りしても?」


「すいません、これです」


 慌てて首から下げていた冒険者証を見せる。


「リュウジさんとおっしゃるのね。鉄級…っと」


 ミレナさんは小声で処理している。頭越しに見える尻尾がゆらゆらと揺れてとても可愛い。僕は犬派なんだけど、これを見ちゃうとなぁ。いや、猫もかわいい。それは間違いない。


 猫の顔で流暢に喋ってるのを見るとものすごく違和感があるんだけど、これがこっちの世界では普通なんだと覚えよう。


「はい終わりました。報酬をお渡ししますのでしばらくお待ちくださいね」


 手も猫と同じに見えるんだけど器用に羽ペンを使っている。どうやって持ってるんだろう?めっちゃ不思議だ。


「はいお待たせしました。報酬です」


 お金の入った麻袋をカウンターにトンと置いてにっこり微笑むミレナさん。猫さんが笑ってる!


「ありがとうございます」


「はい、また来てくださいね。お待ちしてます」


 ここは受付で依頼完了から報酬受け渡しまで終わるんだ。素材はどうするんだろう?まあ、また今度聞けばいいか。


「お、終わったかリュウジ」


「ああ、お待たせ二人とも」


 ライルもノルエラさんも待っててくれた。


「リュウジさんの受付はミレナさんだったでしょう?」


「そうですが…なんかありましたか」


「あの方は、この組合で唯一の獣型獣人の方です。可愛かったでしょう?」


 獣型獣人…まあ、言われれば納得するなぁ。じゃあ、人間に耳や尻尾が付いてる人は人型獣人か。でも、唯一なんだ。言われてみれば人型の人は何人かいるな。僕が初めて見たのもそれだったかな?確か。


「ええ、思わず可愛いって言っちゃいました」


「おまっ、良く初対面の人に言えたなぁ」


 ライルが呆れたように僕を見てくる。


「いや、初めて見たからさ。思わず、ほんとに思わず出ちゃったんだよ」


「ミレナは、とても面倒見が良い人よ。最初からいい人に当たりましたね」


 ノルエラさんも知り合いなんだ。


「よし、報酬も貰ったし、待ち合わせ場所に行こうぜ」


「そうね。皆待ってるからね」


 僕は、ライルとノルエラさんと一緒に待ち合わせ場所に向かう。


 この街ではどんな冒険があるんだろうか。迷宮もあるって言うことだから是非とも行ってみたい!それに手に入れた地図のこともあるし、この街も色々見て回りたいし。うーん!楽しみだ!

今年一年読んでいただいて、さらに誤字報告もありがとうございました!

また来年もよろしくお願いします。

皆さま、良いお年を!

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