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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第十一話

 いつもの習慣で次の日の朝はちゃんと一の鐘が鳴る前に起きることができた。何時もは五時半くらいに目が覚めるからな。年取ると寝てたくても寝てられないんだ。

 身支度をしてニーナと一緒に朝御飯を食べる。今日のニーナは、出会ったときの格好だった。厚手のローブに杖。とんがり帽子はないのか。髪は綺麗に纏めてアップにしてあった。リュックサックを背負って腰にはポーチを着けている。足元は昨日も履いていたごついブーツだ。僕もブーツ買うかな。今はいてる靴が駄目になったらだけど。よし、ニーナも食べ終わったし組合に行こう。

 さあ、初依頼を選ぶぞ。とりあえず採取依頼の欄はどこだろう?


「薬草採取や毒消し草なんかは常設依頼なのか。えーと何々、薬草採取などの常設依頼は実物を提出してください。一株につき銅貨一枚で買い取ります。って銅貨一枚かぁ。なぁニーナ、薬草っていっぱい生えてるのか?」


「そうですね、結構群生していることが多いんですが、新人向けなので森の浅いところのは採りつくされていることが多いです。私もそれでゴブリンに襲われましたし。でも、買い取り料金は低いですが結構採れますのでそれなりの収入になりますよ。」


「ま、兎に角お金が要るから薬草取りに行こうか。」


「はい、行きましょう。私がいつも採取している場所が何か所かあるのでそこに行きましょう。ふふ、初のパーティでの依頼です。」


 薬草採りに行くだけなんだけどめっちゃ嬉しそう。ニーナの笑顔見てるだけで元気出るなぁ。よーし、ご飯のために頑張るか!

 町を出るときに昨日忘れた許可証を返却したよ。銅貨五枚は大事!



 町を出て歩くこと一時間くらい。こっちの世界の人はよく歩くよなぁ。馬車とかあるけど乗るときはほんとに遠くの方、別の町とか行く時だけだって。しかも料金は高いらしい。行く場所にもよるけど、銀貨数枚必要なんだって。だから急いでないときは遠くても歩くらしい。町の人たちは基本その町から出ることはなく、移動するのは冒険者や商人くらいなんだって。それだけ町の外が危険ってことなんだな。


「ここから森の中に入っていきます。少し歩きますけど一杯採れると思いますよ。」


「わかった。あ、採るときに注意することってある?」


「そうですね、えと、薬草は葉の部分を使うので根っこを残して採ってください。一つの株から三~四枚の葉が取れます。葉は萎れていくんですけどなるべく新鮮な方がいいのでさっと採取して時間をかけないで持って帰るのがコツですね。」


「了解。実物を教えてね。よろしく。」


「はい、わかりました。任せてください。薬草が生えている近くには角ウサギがよくいるので注意してくださいね。見つけたら狩ってください。肉は美味しいから売れますし毛皮も結構な値段で買ってくれます。」


 僕たちは下草を踏み固め、藪を払いながら進んでいった。


「誰も来た形跡がないですね。もうちょっと真っ直ぐ行った処です。リュウジさん、きっと薬草いっぱいありますよ。」


 ニーナがそう言った時だった。近くでガサガサっと音がしたと思ったら左手の方から何かが飛んできた。


「えっ?」


 なんだっ?と思ったら左腕に衝撃と痛みが走る。どうやら攻撃されたらしい。服が裂けて腕から血が出ている。


「いたっ!」


「大丈夫ですか!」


「大丈夫!掠っただけだ。気を付けろニーナ!」


 藪の中から角ウサギが飛んできたらしい。角ウサギはまた藪の中に隠れてしまった。くそっ油断した。僕は、剣鉈を構え、周囲を警戒する。後ろ側にはニーナが背中合わせになって杖を構えている。


「ごめんなさいリュウジさん。私がもっと気を付けるように言っておけば良かったんです。」


「それは後でな。来るぞ!ニーナ!」


 僕の右斜め前の藪が揺れたと思ったら角ウサギが突っ込んできた。今度は警戒していたから余裕で対処できる。角ウサギが飛んでくる方に剣鉈を突き出すと角を掠めて角ウサギの頭に剣鉈が突き刺さる。結構な衝撃が来たと思ったら刀身の半分くらいまで刺さっていた。何という突進力なんだ。


「よっ、と」


 僕は、刺さった剣鉈を抜き、リュックサックから水筒とタオルを取り出して血を洗い流し、水分をふき取り鞘に納める。


「ごめんなさいリュウジさん。角ウサギは縄張り意識が強くて、縄張りに入ってきた動物にああして攻撃してくるんです。あ、傷を見せてください!」


「これくらいなら大丈夫だよ。血を止めておけばいいからさ。」


「駄目ですよ。見せてください。結構血が出てるじゃないですか!ちょっと痛いかもしれませんけど我慢してくださいね。」


 そう言って水筒を取り出し傷口を洗って、布で縛ってくれた。


「ありがとうニーナ。でも角ウサギを仕留めることができたし、良かったね。」


「それは……そう、ですね。今度から気を付けます。でも、良かったことにしていいんでしょうか。あ、角ウサギの血抜きをしてしまいましょう。」


 ニーナは、そう言ってナイフとロープを取り出してウサギの頭を落とし、後ろ足をロープで縛っていく。処理が早い。手慣れてるんだ。頭は皮袋に入れて持って帰るみたい。角が売れるんだって。鏃にするみたい。


「リュウジさん、そこの枝にロープを引っかけてくれませんか?」


「こう?」


「はい、そうです。もうちょっと引っ張ってください。ありがとうございます。」

 

ニーナは、ナイフでウサギの腹側から裂いていく。


「あ、リュウジさんウサギの下側に穴を掘ってくれませんか?少し深めで。お願いします。」


 ロープを木に括り付けて、リュックサックから折り畳み式のシャベルを取り出し穴を掘っていく。

 三十センチくらい掘ったところでガツっと石に当たった。


「こんなもんでいい?」


「はいありがとうございます。ん?何かしました?あれ?何ですか、それ?」


「これ?折り畳み式のシャベルだよ。」


「リュウジさんて変わったものを持ってますね。」


「あはは、まあね。」


 この折り畳みシャベルは鉄製だったからそのままだったんだ。つい使っちゃったよ。

 向こうのキャンプ道具は見せない方がいいかな。ニーナならいいか。

 内臓を傷つけないように丁寧に捌いていくニーナ。上手だなぁ。とてもじゃないが僕にはできないな。今度教えてもらおう。ちなみに僕は前の職業が医療系だったので血とかは全く平気なんだ。

 血抜きが終わった角ウサギを皮袋に入れて先へ進もう。


「もう少し行ったところに薬草がいっぱい生えてますよ。頑張って採りましょう。」

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