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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百五話

お待たせしました。ちょっと短めです。

手術した所はちょっとずつ良くなっています。

 ライルが覗きをすることもなく女子たちの番は終わった。スレインさんは結構苦労したみたいだけどね。ほんとに覗くつもりだったんだ…なんて恐ろしいことをしようとするんだろう。この世界、魔法があるから武器が無くても人は殺せるんだよなぁ。


「ほんとに覗こうとするとは思わなかったよ」


「馬鹿野郎、俺は覗こうとなんかしてねぇ!ちゃんと仕事してたんだぞ!」


 ライルは、濡れ衣だって騒いでるけど、そこの所はどうなんだろうか?スレインさんに視線を送ると


「大体は真面目にやってたけど、一回だけ怪しい動きがあったな」


「んなっ!?ばれてるっ!?」


 やっぱりあったのか…まあ、未遂で済んだのなら良しとするか。


「じゃあ、今度は僕達が体拭いてくるよ。見張りよろしくね」


「はい、いってらっしゃい」


 ニーナとタニアに声をかけてから手拭いと着替えを持って天幕の中に入って、ささっと体を拭いて着ていた服を洗う。風呂は無理だろうからなぁ、せめてシャワーが浴びたいよ。




 体を拭いて着替えてまったりしていたら、商会の人がやってきた。


「皆さんお疲れさまです。赤の牙の皆さんが今日の夕刻に合流できるそうです。明日の出発まで護衛をよろしくお願いします」


 商会の人は、そう言って手をお腹の前で組んで頭を下げた後、宿へ帰っていった。


「とうとう合流か。ん?でも何で合流できるってわかったんだ?」


「あ、それは…」


 独り言をつぶやいたつもりが、丁度横にいたルータニアさんに聞こえたらしい。ルータニアさんが教えてくれた。


 この世界には一般の人が使える遠距離の連絡手段が手紙くらいしかない。しかも確実に届くとは限らないんだ。郵便屋さんなんてものは無く、冒険者に頼むか商業組合に頼む。


 そうなると緊急時にどうするんだ?と思ったら、伝言魔法なるものがあって組合にはその魔法が使える魔法使いの人が四、五人いるらしい。


 でも制約もあって、届けたい人の魔力を覚えてないと駄目なんだって。ルータニアさんは、「魔力には個人差があってぇ…」って結構詳しく教えてくれたけど僕には全く分からなかった。


 で、赤の牙のノルエラさんもその一人で、先ほど伝言魔法が届いたそうだ。


「あいつにしては時間がかかったなぁ。なにかあったんだろうか」


 ライルが心配そうに呟いていた。




 野営の準備をしていると宿の方が騒がしくなった。


「宿の方が騒がしいな。何かあったのか?」


 辺りはもう日が暮れかけている。空は綺麗な茜色だ。宿の方に目を向けると、入り口付近で人だかりができている。


「僕達も行ってみようか」


「ええ、行ってみましょう。」


「タニア、ちょっと見てくるよ」


「はーい」


 タニアに声をかけてからニーナと二人で見に行ってみると魔法使いの格好をした人が三人と大きな盾を持った男がいた。


「あ、赤の牙が着いたのか」


「そうみたいですね。見た目は普通ですね」


 ちょっと遠いけどここから見た感じでは普通っぽい。まあ、癇癪持ちっていうだけだからな。


「怒らなければ普通なんだろうな。ちょっと変わった人って認識でいいかな?」


「おー!やっと来たか!ノルエラ、なんかあったのか?」


 僕たちの後ろからライルが現れた。いい笑顔だな。


「あ!ライちゃん久しぶりー。私たちは大丈夫だよ。ここに来るのにちょっと時間がかかっちゃっただけだから」


 ライちゃん?


「ばっか!お前それで呼ぶなって言っただろ!」


「だってライちゃんはライちゃんでしょ?いいじゃない。ライちゃんもノーラお姉ちゃんって呼んでいいんだよ?」


「呼ばねえよっ!もう子供じゃないんだから、まったく」


「あははっ、相変わらずね、ライちゃんは。あれ?そっちの二人は?」


 ライルの幼馴染は、聞いてたのと違ってフレンドリーな人だった。背は、ニーナよりも少し高いくらいでスレンダーなタイプだ。髪の色は茶色でフードを被っているから長さは分からないな。快活そうな美人さんだ。


「あ、今回の護衛依頼を受けたニーナとリュウジです。もう一人タニアって娘がいます。三人組です」


 ノルエラさんは、にぱっと笑って手を差し出してくる。


「私は、ノルエラ。赤の牙の頭リーダーやってる。仲間は三人の四人組だよ。よろしく」


「よろしくお願いします」


 ノルエラさんと握手して自己紹介する。なんだ、普通に普通の人じゃないか。


「こいつがあのホブゴブリンを討伐したやつなんだぜ。のほほんとしてるけどな、戦闘になると頼りになるんだ」


「ああ!あの銅級でホブゴブリン倒したって奴か!ほー…そんな風には見えないね?」


 ノルエラさんは、僕の周りを一周して首を傾げる。


「だろ?でも凄かったんだぜ。こっちのニーナもな。あの威力の火球ファイアボールは凄ぇぞ」


 ライルの賞賛が止まらないな。あんまり言われると恥ずかしいんだが。


「ライル、そのくらいにしてくれ。そんなに褒められるとくすぐったいよ」


「いや!あんときはお前らがいなかったら、俺たちは間違いなく帰ってこられなかったからな」


 ニーナを見ると真っ赤になって俯いている。照れてるのかな?あの時はニーナの火球ファイアボールが凄かったけど、あれ食らってまだ動けてたホブゴブリンがバケモンだったんだろう。


「ま、明日から頼りにさせてもらうよ。えーっと、リュウジとニーナだったっけ」


 ノルエラさんは、並んで立っていた僕とニーナの腕をポンポンと叩いて、「じゃ、またあとでね」といって宿に入っていった。


「なぁ、ライル。ノルエラさんって姉御肌の人なんだな」


「おう、普通の時はあんな感じだ。でも怒らせんなよ、めんどくせぇからよ」


「わかりました。怒ったときは近寄らないようにしますね」


「そうだね、それがいい」


 あの感じだと気を付けるのは戦闘中だけでいいのかな?


「まあ、お前らなら気に入られると思うぞ」


「でも、ライちゃんって…そんな風に呼ばれてたんだな」


「まだ子供だった、小さい頃の話だぞ。それで呼ぶんじゃねえぞ、頼むからよ」


 明後日の方を向いて頬を掻きながら言うライルの顔はなんだかちょっと嬉しそうに見えた。

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