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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百四話

先週手の手術を受けたので投稿できませんでした。まだ痛みがあるので更新が遅れてしまいますが見捨てないでくださいね。

 出発して半日経った。もうすぐ休憩場所の村に着くらしい。まだ森の中の街道をひたすら進んでいる。


「次の村であいつらと合流予定らしいぞ。村でも護衛の仕事はしっかりあるからな、リュウジ」


「とうとうか。どんな人か楽しみだな。ライル、よろしく頼むぞ」


 村に行けば多少は仕事が減るかと思ったらそうではないらしい。セトルの町くらいの規模なら宿屋に任せておけるみたいなんだが、小さな村では宿も小さく家族経営で人が雇えないから見張りをすることができず、それをいいことに商隊が来ると盗みを働く輩が出たりするそうだ。


「護衛の代表者は来てください。打ち合わせがあります」


「リュウジ、行こうぜ」


「わかった。行ってくるよ」


「はい、いってらっしゃい」


 ニーナは相変わらず機嫌がいい。タニアは手をひらひら振って返事をしている。


 ライルと一緒に担当者のところに行ったらリッツモルさんもいた。


「ああ、お疲れ様です。今からあの村で赤の牙の皆さんと合流するため暫く滞在します。すぐに合流できてもこの村で一泊することになっています」


「この村で一泊するんですか?そのまま出発ではなく?」


「はい、一泊します。初めからその予定なんですよ。ここから先、盗賊団の縄張りを通ることになるんです。なので三組の護衛が揃ってから、明日の早朝に出発します」


 タニアもこの先が危ないって言ってたな。


「もし、あいつらが明日になっても合流できなかった場合はどうなるんだ?」


「先ほども言った通りここで三組揃うまで待ちます。赤の牙の人たちは信頼できますからね」


「前にも依頼したことがあるんですか?」


「ええ、私たちがフルテームまで移動するときは必ず指名して依頼しています」


 おお、指名依頼かぁ。僕たちも指名されるようになるといいなぁ。活躍して名前が売れればきっと来るようになるよね。あ、その前にパーティ名つけなきゃ駄目か。


「あいつらは俺たちよりもだいぶ早く鉄級に上がってるからな。もうすぐ銀級になれるんじゃないかっていう話も聞いたことがあるな」


「じゃあ、かなりの実力があるんだな。ライルと同い年くらいか」


 幼馴染だって言ってたからな、年齢は近いんだろう。


「ああ、俺より二つ上だな。でもよ、あいつは昔から運動はからっきしだったけどよ、魔法だけは凄かったからな」


 ライルより二個上ってことは、二十四歳か。若いのに銀級に近いなんて凄いなぁ。


「赤い牙と合流できるまでその村に滞在か。早く合流できるといいな」


「ああ、あいつらなら問題ないだろ。もう村にいるんじゃないか?俺はいると思うぞ」




 それからすぐに村に着いた。街道が少しカーブした先にあった。ほんとにすぐ近くだったんだ。森の中だと見通しが悪いからなぁ。


 この村はシグ村といって、街道を中心にして開墾して作ったみたいで道の両側に家が建っていて畑なんかは家がある外側、森の側に広がっている。


 商隊が村の入り口付近で止まったと思ったら、リッツモルさんがわざわざ僕たちのところまで来て頭を下げながらお願いしに来た。


「私は、村長のところ挨拶に行ってきますので護衛の皆さん、荷物をよろしくお願いします」


 腰の低い人だなぁ。仕事だから確りやりますよ。こっちではリッツモルさんみたいな商人は珍しいんじゃないだろうか。


「わかったぜ、任しといてくれ」


「わかりました」


 リッツモルさんは村長の家へ、商隊は宿へ向かう。


「俺たちは馬車の近くで天幕張って警戒だな。リュウジ、あれ、また貸してくれよ」


「それはいいんだけどさ、折角村に来たんだから交代で水浴びでもさせてもらえないかなぁ?」


 僕がそう呟いたら、女性たちの目が光った気がした。


「私、聞いて来ますね。待っててください」


 ルータニアさんが、いち早く駆け出していく。いつもと違って動きが速いな。


「ルーはこういう時は早いんですよ。いつもああだと僕たちも有難いんですけどねぇ」


 いつの間にか隣にいたガイラスさんがため息をつきながらあきれている。ルータニアさんっていつもそんなに動かないかな?


「結構動いてる気がしますけど…違うんですか?」


「ええ、戦闘中はいいんですが、普段の時はシアの方が先に動いてしまうので…元々のんびりしていたんですが、最近それがさらに動かないんですよね。うちはスレインとか私が色々やってしまうのでそれもいけないと思っているんですが、何かいい考えはありませんか?」


 ああ、スレインさんとガウラスさんとシアさんなら何でもすぐにやっちゃいそうだ。


「でも、こう言うときはさっと動いてくれるんだから、ちゃんと話せばやってくれそうですが。あとは料理が苦手とか、そういう何か理由があるんじゃないですか?」


「そうですかねぇ。まあ、一度話してみることにします。ありがとうございます」


 ガウラスさんは、馬車の方へ行ってしまった。皆大なり小なり困ったことがあるんだなぁ。こういうのは一人でため込まないで話し合ってみるのがいいと思うんだ。


「さあ、宿についたら自分たちの準備をしないとな」


 ゆっくり五分くらい歩いたら宿についた。村の外れの方になるのかな?道の向こうに門らしきものが見える。


「皆、交代で体拭いていいって!」


 宿に着いてすぐ、ルータニアさんが急いで戻ってきた。交渉してきてくれたのかな?何にせよ有り難いな。ニーナとタニア、シアさんも喜んでいる。


「じゃあ、ルーとシア、ニーナさんとタニアさんは先に行ってこいよ」


「でもね、部屋はいっぱいで貸せないんだって。どうしよう」


「森の中に行く?」


 森の中で裸になるのはやめておいた方がいいと思う。


「天幕で目隠しを作ってみるか?」


 タープはニ、三枚あるから壁みたいにして張ればいけるかな?


「そんなことできるの?」


 タニアが心配そうに聞いてくる。そう言えばテントはよく使うけどタープは使ったことなかったな。


「二メートル、あ、いや二メルチくらいのなるべく真っ直ぐな木の枝を四、五本探してきてくれれば出来ると思う」


「わかった!行こう!皆!」


 タニアは皆に声をかけて森に入っていく。すぐに帰って来るだろうから準備しておこう。


 場所は、馬車が置いてあるところでいいか。この村の宿は馬車を置くスペースがなくて、ちょっと離れていて、森との境に木でできた簡単な柵で囲ってある広場だ。この馬車なら五台くらいは止められそうだ。馬をつないでおける杭もある。


 馬車はもう止められていて、馬もつながれて飼葉を食んでいる。余った所を使って場所を作るか。


「すいません。この部分使ってもいいですか?」


「ん?ああ、護衛の君達か。いいよ、俺たちは宿で寝れるからここは好きに使ってくれ。夕飯は後で運んできてくれるからな」


「わかりました」


 ということはここで寝るのか。宿小っちゃいからなぁ。


「よし、皆手伝ってくれるか?」


 男どもは皆ここにいる。馬車を見張ってないといけないから当たり前だけどね。


「おういいぜ、ガウラス、お前は馬車を見ててくれ」


「はい、わかりました」


 ガウラスさんは、頷いて馬車の方へ。ライルとスレインさんが手伝ってくれることになった。


「まずは…」


 リュックサックからタープを三枚とポールを四本取り出して地面に置く。


「おまっ、これミスリルじゃねえか…」


 あっ、アルミのポールってミスリルになってたんだった。スチールはそのままだったんだけど、二本だけアルミのがあったんだったよ、忘れてた。


「ああ、黙っててくれよな」


 スレインさんも驚いて口が開きっぱなしになっている。


「それは別にいいけどよ、もうちっと気を付けろよ」


「うん気を付けるよ。じゃあ…これ持っててくれる?」


 四本あるうちの二本の長いポール、長さは二メートル半の奴だ。その内の一本を基準にする位置で持っていてもらう。


 タープは大きさの違う三枚があった。一番大きいのが五メートル×四メートルで、次に大きいのが五メートル×三メートル半、一番小さいのが二メートル半×二メートルだ。三枚とも長方形レクタングルのタープだ。


「うーん、どうやって張ろうか…」


「それは帆布か?色んな大きさのがあるが…何か塗ってあるな…ああ防水剤か。この円い金属環は…」


 スレインさんがタープを触りながら感心している。スレインさんが言っている円い金属環って言うのがグロメットだ。ブルーシートの端とかにある引っかけることができる穴の開いた部分を補強している金属の輪っかのことで、これがあるから色々な張り方ができるし、ここにロープを通して木に固定すれば一枚の布を屋根にできる。


「よし、庇を作る形で張ってみよう」


 またリュックサックからペグとハンマー、ロープを取り出して一番大きいタープを張っていく。


 長いポール二本をタープのグロメットに通してロープとペグを使って固定していく。ロープ二本とポールで三角錐を作っていく感じだ。今日は風があまりないから適当だ。きっちり張ろうとすると三角錐に結構スペースがいる。幅を五メートル、庇を二メートル壁も二メートルで作る。いま張った所が庇の先端になる。ああ、いかん幅を五メートルで作ると壁が足りなくなるか。まだ二本ポール立てただけだから良かったよ。


「これじゃあ駄目だな。横から見えちゃうから張り直そう」


「ちょっとくらい見えたっていいじゃねえか」


「それ、ルータニアさんとシアさんに言ってみる?」


「わはは、ライルぶっ飛ばされるな」


 ライルが二人とタニアにボコボコにされる光景が目に浮かぶ。


「うーん、どうしようかな?…あ、そうか!」


 ちょっとスペースが狭くなるけど長いポール一本にしよう。


「ごめんライル、一回崩すよ」


「おう、んで、どうするよ」


 長いポールを二本とも外して、一本をタープの真ん中にあるグロメットに通し、さっきと同じように立てる。で、タープの反対側のグロメットの二か所をペグで地面に直接固定する。さらに、テントを張るようにタープを形作ってペグで地面に固定していくと体を拭く場所は完成だ。グロメットがないところはちょっと大きめの石を置いて捲れないようにしておく。


「おー、布一枚で天幕ができちまったなぁ。でも向こう側が丸見えだぞ?」


 そう、森の側から見たら丸見えなんだ。


「だからもう一枚で壁を作って見えないようにするんだよ。また手伝って」


 そこに女子たちが帰ってきた。


「木の枝探してきたよー。おお!立派なのが出来てる!」


「ありがとう。じゃあそれを使おうか」


 探してきてくれた木の枝は、太さもちょうどよく何も加工しなくても使えそうだ。


「いい感じの奴ばっかり探してきてくれたんだな。これならすぐできるよ」


 また同じようにもう一枚のタープを張っていく。今度はさっき張ったタープを半円を描くように囲うようにする。下側は捲れるといけないからペグで固定していく。木の枝が二メートルだから一メートル半余るんだけど余った部分は重石で固定しよう。


「はい出来上がりだ」


「ありがとう!私お湯貰ってくる!」


「あ、私も行きます」


 ルータニアさんとニーナが宿へ走っていく。


「それじゃあ私たちからでいいわよね。ライル、覗くんじゃないわよ」


「そ、そんなことしねえよ」


 あやしい、覗く気だったな、これは。まあ皆スタイルいいからなわからんでもないが、あとが怖そうだから見張っていようか。


「ライルは僕が見張っておくよ。安心して入ってきて」


「リュウジなら安心ね。スレインもしっかり見張ってるのよ」


「わかってるよ。だがなるべく早くしてくれよ。俺たちも体拭きたいんだからな」


 やっぱり皆汗だくか。鎧着てあんだけ歩いたんだからそうなるよな。


「あー、清浄クリーンが使えればなぁ」


「清浄クリーンって基礎魔法にあるの?」


「ああ、あるぞ。だけど、神官しか使えないんだ」


 あるんだ、清浄クリーン。なんで使えるのが神官だけなんだろう?


「なぜかわからないが、神官は使えるやつが多いんだ。魔法使いには使えるやつはあんまり聞いたことないな」


「そうなんだ。今度神殿行ったら聞いてみるよ」


「お湯貰ってきました。皆さん入りましょう」


 ニーナとルータニアさんが小さめの樽にいっぱいのお湯を持って戻ってきた。意外と力持ちだな。


「ライル、覗かないでよ!」


「分かってるよ!何だよもう…」


 女子四人が着替えを持って入っていく。


「じゃあ、僕たちは馬車とここの見張りに分かれようか」


「んじゃ、俺はあっちに行ってくるわ、覗かれたって言われたらたまんないからな」


「あはは、私はこちらにしましょうか。リュウジさんはどうしますか?」


「僕もこっちにしようかな。それでいいですか、スレインさん」


「わかった。ライルを見張ってればいいんだな?」


 スレインさんは、ウィンクしながらライルを追いかけて行った。スレインさんって冗談も言うんだなぁ。

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