第一話
初投稿です。よろしくお願いします。
「ここは?・・・どこだろう?」
目の前が明るく感じ、目を開けた。
あたりを見回してみたが、何処だか見覚えがない。
それなりに深い森の中みたいだ。
「なんでこんなところにいるんだ?」
順を追って思い出してみるか。まずは自分の名前。
五島龍次郎
よし、大丈夫。
次は年齢。四十五歳。これも良し。
えーっと。じゃあ何してたっけ?
確か・・・・・・
ああー!事故ったんだった!そうだっ!車で家に帰る途中で、右からすごい衝撃があって・・・
そうかぁ。死んだのかぁ。
ん? あれ? じゃあここは? 僕、生きてるな。あれ?
んー、怪我、無いな。何処も痛くない。こ、これはも、もしかして・・・異世界?
マジか!そんなこと起こるわけが・・・・・・腕を抓ってみる。痛ぇ。夢じゃない?
じゃあ!本当か!
いや待て。まだ異世界とは決まっていないぞ。もしかしたらただ山の中にいるだけかもしれないし。
持ち物は?ウェストポーチはあるな。服も今まで着てたやつだけど材質が麻?綿?になってる。向こうにリュックサックもあるな。まずはウェストポーチの中身を確認しよう。
ウェストポーチを開けると皮でできた財布みたいなものや皮袋と家や車の鍵っぽいもの、マルチツールがあった。財布が変わってるなぁ、皮袋なんかあったっけ?まあいいか。財布の中身は、あれ空っぽ?給料日後だったから下したばっかりだったのに。カード類はないな。小銭入れもなくなってる。皮袋の中身は?なんかパンパンだぞ? えー?見たこともない変な硬貨がいっぱいだ。
とりあえず数えてみるか。
硬貨の数を数えようとしたところで、ガサガサと葉擦れの音が聞こえてきた。
音のした方を見ていると、ウサギが出てきた。角の生えたウサギだった。
角の生えたウサギは、こちらを赤い目でギロリと睨むとキュッと鳴いて飛びかかってきた。
「えっ⁉」
角の生えたウサギは顔に向かって飛んできたが、とっさに避けることができた。
「あっぶねー!」
右の方でザッと着地した角の生えたウサギは、くるりと方向を変えまたこっちに飛んできた。
「うわぁ!」
びっくりしながら右腕を振ったらちょうど角の生えたウサギの胴体に当たってすぐ傍にあった木の幹に叩きつけられピギッと言って動かなくなった。
「なんちゅうウサギがいるんだ。角の生えたウサギか。角ウサギだな。」
そこらへんに落ちていた木の枝を拾って、恐る恐る角ウサギに近づき突いてみる。
「どうやら死んでるな。はあぁぁ。怪我しなくてよかった。やっぱりここは日本じゃないな。角ウサギなんて聞いたことないもんな。こいつ持ってくか。偶然とはいえせっかく倒したからな。」
そう独り言を言いながら、リュックサックを拾ってきてビニール袋を取り出そうとすると気が付いた。
材質が違う。化学繊維だったのに帆布みたいになってる。形は似てるけどファスナーだったのが紐で絞るようになってる。
「まあいいか。」
とりあえずふたを開けてみる。覗き込むと中は真っ暗で底が見えない。
「こ、これはぁぁぁぁぁ!もしかして!?」
手を突っ込んでみる。すると頭の中にリュックサックに入っているものが浮かんできた。
「おお!やはりあれじゃないかっ! えーとなんだっけ、ほら、あれだ、あれ!うーんと、そう!無限収納!」
テンション爆上がりだった。しばらく小躍りしたよ。
十分くらいして落ち着いてからリュックサックの中身の確認を始めた。
僕は、キャンプを趣味にしていた。事故にあった当日も一人でキャンプに行った帰りだったことを思い出した。
「そうだ。キャンプ道具が入っているかも。」
そう思い、もう一度手を突っ込んでみると内容物が頭に浮かんでくる。
一覧表みたいだ。
「テントはあるかなぁ。あ、あった。よし、取り出してみよう。」
出てこいと思ったら突っ込んでいた手に何かがパシッと当たったので、掴んで引っ張り出すとヌルンといった感じでテントが出てきた。出てきたテントは、やはり材質がナイロンではなく綿でできていた。
「テント自体は使えそうだが、化学繊維はダメなのか。タープも素材が変わってる。ペグは変わってないのか。ハリケーンランタンもそのままだ。これは使えそうだな。鉄や鋼製品はそのままか。ジュラルミンポールなんかは…なんだこれ?虹色の金属だ。となると……ああ、やっぱりスマホもダメみたいだな。」
スマホも虹色に光る金属の板になっていた。
「スマホは使えないな。リュックの中に入れとくか。そうだ。剣鉈があったな。出してみよう。」
またリュックに手を突っ込み取り出してみる。取り出した剣鉈は、刃の長さが15センチくらいのものだ。これは材質が変わったようには見えない。よかった。一応武器になりそうなものがあって。ズボンのベルトに吊っておく。あとは上手く使えるかだけだ。まあ何とかなるだろう。
「そろそろ移動するか。といっても、どっちへ行ったもんかな?」
リュックを背負い、どっちへ行ったらいいかと周囲を見回してみる。
何処を向いても似たような風景だな。空を見上げて太陽の傾きを見て、とりあえず南と思われる方向に向けて歩き出す。