エピローグ 『見届ける黒』
王の間。
瓦礫だらけのそこにいるのは、ルハド、バリオンド、アーバー、ルシウス、マーネ、そしてギーノの6人であった。
「十三の塔を破壊したのはあなたですね、ギーノ」
マーネがギーノに問う。
「いやぁ、なんのことですかねぇ。俺はちょうど街から戻ってきたばっかりなんですけど…」
「そんな武装した状態で街に出るか?」
「はっはー。王様ぁ、俺ってばいつでも悪と戦えるように武装してる勤勉な男なんですよ」
「ははっ! どの口が言っているんだ!」
玉座があった付近の瓦礫の上に座っている王は愉快そうに笑い声を上げている。
「陛下、笑い事ではないかと」
「そうかぁ?」
「ええ。建国前からあるとされる十三の塔が破壊されたのですよ?」
「まぁ、あれがあった意味は分からんからいいんじゃないか?」
「陛下…」
「お前はもっと笑うこと覚えろよ、バリオンド。なぁ、アーバー?」
「ははは、全くもってそうですなぁ」
この状況で緊張感が微塵もないのはルハドとアーバーだけであった。
「ま、一応聞くか。何であれを壊したんだ?」
「だから俺は壊してない――」
「あの塔全てに結界が張られています。だから外側からではただの爆発程度では傷一つつきません。しかし、内側からなら話は変わります。あの塔は脆いので内側からは容易く崩せるでしょう。その代り中に入るには結界を解除しなければいけませんが」
「なら尚更無理でしょ? 俺はマーネさんの結界を解除なんてできませんし」
「まだしらを切りますか…。あの結果はあなたと私で改良したものですよ? あれを解除できるのは、今日宮殿に私とあなたと黒騎士の仲間のうちの一人しかいません」
「…その黒騎士の仲間って容疑者じゃないのか?」
「私と戦闘していましたからそれはありません」
「…………」
ここにきて初めてギーノが黙った。
「無言ってことは認めるってことでいいんだよな?」
「問題ないですよ、王様。俺は黒騎士の仲間です」
もう言い訳のしようがなくなったからか、彼は潔く自分が塔を破壊した張本人であることを認めた。
「そうか。なら聞かせてもらおうか。なんであの塔を破壊したんだ?」
ギーノが犯人であることなど特に気にしていないような様子のルハドは尋ねる。
「んー、王様は知らないって増したけど、マーネさんの方はそもそもあの塔が何のためにあるのか知ってます?」
「…知りません。しかし、護らなければならない建物だとは教わりました」
「なるほど。まぁ、あれって端的に言ったら封印を維持するための楔だったんですよ」
「封印…。じゃあ、あれか? その封印されてたのがあのイアンとかいうやつなのか?」
「らしいですよ。俺も詳しいわけではないんですが、黒騎士はそう言ってました」
「ほぉ…。で、イアンをわざわざ地上に出した理由は?」
「今後のため、だそうです」
シュバルツが口にしていた言葉をそのままギーノは伝えた。過不足なくそのままだ。
「今後のためだと…? 宮殿をこんな状態にしておいてふざけているのか、貴様は」
当然そんな言葉では「はい、そうですか」とバリオンドが納得するわけもなかった。
「でもよ、バリオンド。黒騎士たちがいなかったら、あんな強い奴がいつ出てくるかもわからない状態で俺の足元にいたんだぞ? 怖くないか?」
「た、確かにそうですが、黒騎士たちを擁護するのですか?!」
相手は名の知れた黒髪の騎士。バリオンドからすれば討つべき敵以外の何者でもない。
「…んじゃ、そっちは聞きたいこと聞けたんでしょうから、さようなら~。二年後ぐらいにまた来まーす」
ギーノは当然のように踵を返して王の間から出ていこうとする。
「待て、敵を逃すわけが…」
バリオンドが鞘から剣を抜こうとした瞬間、それをルハドが制止した。
「…陛下、奴は敵です」
「わかってるわかってる。でも落ち着けよ、バリオンド」
ルハドはゆっくりと立ち上がって、去ろうとしているギーノの背中に声を掛けた。
「おい、ギーノ。黒騎士に伝えておけ。もう借りはねぇから次俺たちの前にのこのこ出てきたら今度こそ殺すぞって」
その言葉が耳に届いたギーノは適当に手を上げてボロボロになった王の間を去った。
「…てなわけであいつらを殺していいのは次だ。いいな、バリオンド」
ルハドの目を見たバリオンドは静かに頭を下げて了解の意を示した。
「――さて、片付けるかぁ…」
ルハドとしては面倒くさいのはここからであった。なにせここから彼には事後処理地獄が待っているのだから。
*****
「――甘いな。相変わらず。でもこれで欠落姫は……」
王都内。
駐屯地に存在する塔の上で座っている黒髪の男が一人呟いていた。
「いたか? ああ、いた。見つけたぞ」
「……ん?」
独り言を口にしていた黒髪の男に、どこからともなく現れた黒いローブを身に纏った男が声を掛けた。
「ザナムか」
「その通りだ、探したぞ、ノワール」
「お疲れさん」
「お前のせいなんだが…まあいい。それよりここで何をして――」
ノワールが見ている方向へ、ザナムも目を向けた。
「――あれは宮殿か? そのようだ。酷い有様だ」
「そうだな。まあもうひと段落したみたいだけど」
「…あの状態なら王の首ぐらい持って帰ってこれると思うがどうする?」
宮殿の一部が崩落している。つまり混乱状態のはずだ。ザナムの意識に干渉するアビリティもってすれば誰にも気付かれることなく侵入するのは容易である。暗殺だって可能だ。
「やめとけ。安定してきてる王国の頭を潰したところで大したメリットないだろ。どうせ後釜がいる。それに騎士団には『奴』がいる。多分お前があそこに行ったところで、バレて終わりだ」
「…あぁ、お前が警戒しろと言ってた奴か」
「そうだ。あれも『特異点』の一人だからな」
王国騎士団は全体で見れば、他国と比べるとそれほど脅威ではないのだが、一部のメンバーに関してはノワールは特別視していた。三隊長の一人であるルーダスなどがまさにそうである。
「――見たいものは見れたな。それでなんでこんなところにわざわざ来たお前の要件はなんだ?」
「司教が早く戻ってきてくれだそうだ。次の任務は大きなものになるんだろう? そうだ。ノワールはそう言っていた」
「…ああ。アン、トロワ、サンク、シスで行く」
それを聞いたザナムが眉をひそめた。
「あの女との任務は嫌だぞ」
「悪い奴じゃないだろ。臭いだけで」
「あいつのことを悪くないとか言うのはお前だけじゃないか? そうだ。ノワールしかいない」
「かもな」
ノワールはゆっくりと立ち上がった。
「戻るぞ」
「了解」
見るべきものは見たと、ノワールは王都を去っていった。
長い間毎日投稿してきたこのシリーズもひとまず一区切り。
元々これ本編じゃなくて番外編だったんですけど、気が付いたら本編より先に投稿してましたねぇ…。
四章以降の話に関しては一旦放置です。多分今やると脳みそが死ぬのと、いつか出そうと思ってる本編より先に行ってしまうので。
まぁ、このシリーズをどれだけの方がここまで読んでくれたかはわかりませんが、これまでありがとうございました。小説の投稿は普通に続けるので応援してやってください。




