表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目の見えない少年は混沌とした異世界で  作者: 久我尚
第二章 『約束をした日』
33/84

幕間 『狂笑』

 眠りから目覚めた男は瞼を開く。

 まず視界に捉えたのは空ではなく、天井。石ではなく木であることから建物の中であることは確定。首を傾けて周りを見る。家具は特にない。あるのは彼が現在横になっているベット、そして仄かな光で室内を照らしているロウソクが立てられた燭台だけだった。


 「あはっ!」


 数秒経過してようやく状況が把握できた。

 そして、


 「あははははははははははははははははははははははははははははははは!!」


 男は狂ったように笑い声をあげた。


 「最高だ…っ! 最高だぞ!! あいつ本当に俺のこと殺しやがった!!!」


 止まらぬ笑い。

 狂笑は小さな部屋の隅々まで届いていた。

 おかしくてたまらないのだ。

 この男――ガルノは心の底から笑っていた。


 その時、バンッと勢いよく扉が開いた。


 「うるさいっ!! あなたは騒音しか出せないの!?」


 「あ? …なんだメイアか」


 扉を開けたのは薔薇色の髪の女性――メイアだった。


 「お、珍しいな。下に足つけてるなんて」


 メイアは床に二本の足をつけて立っていた。

 普段の彼女であれば魔法を使い浮遊しているのだが、今回は珍しく普通に立っている。


 「あなた付き合い長いのに未だに理解してないのね。私は地面に足をつけたくないから浮遊してるだけなの。ベットの上か室内では浮遊しない時もあるわよ」


 「そうだったか? まあいいや」


 「あなたね…」


 「ため息つくなよ。寿命減るぞ?」


 「なによその信憑性のない話」


 「さあ? 昔どっかの誰かさんから聞いたことがあっただけだ」


 起き上がらせていた上半身を再び倒して彼はベットに横たわった。


 「――で? 体の様子はどうなの?」


 腕を組みながら一応容体を聞く。


 「無問題だ。にしてもどうした? 俺の容体を聞くなんてお前らしくないぞ?」


 「別に私は心配してないわ。あの人があなたのこと心配してたのよ」


 「なんだ、あいついるのか?」


 「半日前までいたわ。今は王国に『劔の魔人』が来たって言って様子見に行ったわ」


 「待て。今、半日って言ったか?」


 「そうだけど?」


 半日前という単語は聞き流すことができなかった。

 というのも彼は盲目の少年と戦闘を行って敗北し、死亡した。その後は彼の持つ不死の力によって復活を果たして今に至るわけだが、彼の感覚では敗北してから復活するまでの時間はそれほどないはずだったのだ。


 「どれくらい再生に時間掛かった?」


 「二日ってところかしら」


 「二日も死んでたのは俺は」


 最高記録は三日間であるが、それは何十年も前だ。二日間も死を経験したのは実に久しいことだった。


 「仕方ないでしょ。今回は腕からの再生だったんだから。あの子の魔力が少し特殊だったっていうのもあるけど、流石にオメガ以上の再生能力を持つあなたでも制限状態のしかも意識のない時の自己再生には時間がかかるわ」


 「そうだな。お前のおかげで助かったぞ」


 盲目の少年との戦闘前、白銀の女騎士にガルノは腕を斬り飛ばされていた。それが胴体を跡形もなく消滅させられた彼の生きていた理由である。

 メイアが腕を回収していたおかげで完全な再生ができたのだ。


 「お礼ならあの人に――」


 言い切ることなく言葉を飲み込んだ。

 今のガルノには自分の声は届かないと判断したからだ。


 「――ああ、そうだ…。あともう少しで、完全に死ぬところだった……。跡形もなく消されて、俺の存在はなかったことにされるところだった…! 最高だ…、最高だよあいつは…!! あは、あはははははははは!」


 「…元気が戻ったみたいだから私はあの人に報告するわ。一応言っておくと次の目的地は王都だから、よろしく」


 踵を返し、一人で笑い声をあげる狂人に背を向けたメイアは部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ