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半機械は夢を見る。  作者: warae
第3章
97/197

誰が為の決着

楽しんでいただけると幸いです。

「ストッチ、アミー!」

イングがそう叫ぶと、イングの影から2つの影が出現する。 次第に細かい容姿を見せ2人が現れた。

「厄介なことになったわね」

「エルト……ヘイオに手を出した……」

ストッチとアミーはそれぞれの反応を見せ、ストッチは自分の手よりも数倍大きなグローブを付け、アミーは魔法の杖を取り出した。

「お前達はエルトからヘイオを救い出せ。 俺はアヴェイルを殺ってからそっちに加勢する」

「このような状況下で、まだ私を敵視するとは……」

そう言いアヴェイルがイングを睨む。 だがイングは、口角を上げそれに答えた。

「お前もそうじゃろ?」

「同感です。 師匠!」

「アヴェイル!」

空気が何度目かの震えを帯びる。

そんな2人を見て、カインは俺に話しかける。

「おいおいどうする? あっちはまた再戦したが」

「なら先にこっちに来る2人を倒そう。 だがまぁ、立場上この組織のトップはヘイオだ。 決断はお前に任せる」

そう言うとヘイオは向かってくる2人を見て、一度口を固く結び。 悲しそうに目を瞑り、開いた。

「2人を倒して、捕まえるんだ! 絶対に、殺さないで!」

高らかに命令するヘイオの幼き声に、全員声を揃え返事をした。

「「「了解!!!」」」

その返事と同時に、アミーの高らかな呪文が聞こえる。

「荒れよ、大土波! 敵を飲み込み平地にせよ!!」

そう言って、軽くステップした後に跳躍し杖を地に勢いよく刺した。 すると波紋のように大地がうねり、地が巨大な大波となり自軍に迫り来る。

「「「っ!?」」」

ヘイオは既に微かだが震え始めている。 カインも薄ら笑みを浮かべ驚きを見せた。 背後の兵士達も驚く中、団長が波に向かって叫ぶ。

「構え!!!」

ガチャガチャガチャガチャッ……

団長の合図により天砲団員達がロケットランチャーのような銃砲を構える。

「こんな波程度、俺ら天砲団に穿てないわけがない! 撃てぇ!!」

ドドドドドドンッッ……!!

砲弾は一直線に波へ放たれ、着弾と同時に爆発が起こる。 土の大波と砲弾の連発が続く中、頭上から別の声が響く。

「なかなかやる。 なら……これはどうだ」

そう言うと空中にいるストッチは拳を天に掲げ、固く拳を握る。

「なにやる気だ、あのデカブツ……」

「ちょっと待て! あの拳辺り、空気歪んでねぇか!?」

他の残党の兵士達が上を見上げて口々に言う。

「拳砲、三百の雨」

そう呟き、思いっきり真下へ腕を振り拳を突き出すストッチ。

「ふんっ!!!」

その瞬間、空気の歪みが拳の形を成して雨のように自軍へ降り注ぐ。

「数は?」

そう聞くと、カインは見回して答えた。

「三百ちょうどだ」

「じゃあいけるな。 なぁ、お前らぁ!」

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

そう聞くと、後ろの大勢の残党共が声を上げた。

俺達もずっとただ機を狙って隠れていたわけではない。 空中戦の奴は一人は必ずいるだろうと言うカインの言葉を信じ、残党共には空中戦の鍛錬をずっとさせていたのだ。 そのためにカインに浮遊魔法を持たない者全員への魔法の石作りもしてもらった。 俺は空中戦を少し教えたくらいだ。 慣れれば自分なりの戦い方を取り入れ練習するようになった。

「練習の成果を見せてやるぜぇ!」

「高所恐怖症を完全克服した俺をなめるなよ!」

「俺があのデカブツの首をもらう!」

「殺すなとさっき言われたばかりだろ! 捕まえるのはこの俺だ!」

「ちょっとチビったが、絶対倒してやるぜ!」

「え、いや待て。 拳の数多くね?」

「やってやるぜぇぇぇ!!」

各々やる気を見せ迫り来る拳に、ストッチ目掛けて空へ飛んでいく残党共。 俺達は拳の流れ弾からヘイオを守り、その戦況を見ていた。

「アミーは天砲団、ストッチは残党共。 順調に進んでいてなによりだ」

「カインはこの未来は見えていたか?」

「お前の作戦のせいで矛盾な未来ばっか見てたから、もう覚えてないよ」

「そうか。 まぁ、あとは高みの見物とでもしようか。 俺達の出る幕は、あの2人の激闘を終えてからだ。 あの2人だってそれを分かってて互いにぶつかり合ってるんだからな」

そう言って笑うと、カインが言う。

「どっちが大切な戦いか分かってて殺りあってんだもんな。 こっちにはヘイオもいるってのに」

「アヴェイルは世界の破壊を止めるため、イングは罪滅ぼしのため、か。 俺達がヘイオをリーダーにしているから手は出さないとでも踏んだんだろう。 最後は俺らと戦うと知っていても、師弟の決着をつけたいと2人は思ってるんだろうよ」

そう話していると、ヘイオが弱々しく聞いてきた。

「どっちかは死んじゃうの……?」

そんなヘイオに、俺はしゃがみ込んで目線を合わせ答えた。

「どっちも死なせない。 そのための平和を目指す組織だろ? ヘイオ。 でも少なからず痛い目に合うのは確実だ。 そこん所は許してくれ」

そう言うとヘイオは俯いた。

「……うん。 分かってるよ」

たとえ悪役っぽいことをしてでも、この戦いは勝たなくてはいけない。 勝ってヘイオが頂点に立ち、下界を変えなくてはいけない。 そして当初の目的である王城襲撃、下界をより良くするためにも、人々を我が家へ帰らせるためにも。 この戦いは勝たなくてはいけないのだ。 その敵である2人は今、自分の中でずっと長い間燻っていた想いのために、ヘイオを一旦俺達に預け決着をつけようとしている。

今、2人はどんな想いで戦っているのだろうか。

この戦いが終えた頃、2人はどのような想いを抱えることになるのだろうか。

■■■

アヴェイルside……


「師匠!」

「アヴェイル!」

剣を出し、相手の杖と激しくぶつかる。 衝撃で両者の武器が弾かれるが、私はすぐさま剣を真上へ投げ、その勢いで体制を整える。 それを相手も全く同じタイミングで行った。 それに気付き、私はすぐに後方へ飛び距離を置く。 そんな私にイングは拳を突き出した。

「拳砲、千連打!!」

歪んだ空気が拳を形作り私に四方八方から襲いかかる。 だが……。

「連続転移!」

視界は一瞬の内に幾多の光景を流して、イングの背後に剣を片手に迫っていた。 剣を真横に振るも、イングも転移を使い空中で杖をキャッチしてそこに留まっていた。

「なるほど。 空中で剣を取り、千の転移で拳砲を斬り俺の背後まで来たということか。 随分と転移が使いこなせるようになったじゃないか」

「貴方ほどではありませんよ。 拳砲を転移しながら様々な角度や場所から放ち、ましてやそこにタイミングなど計算を加えてあるのですから」

私が台詞を言い終えた瞬間に、イングは私の真横から拳を迫らせていた。 それを見越して私はすぐに地へ魔力を流し込む。 するとイングの立ち位置の周りから土の槍が生え、イングの腹を数本の土槍が貫いた。 同時にイングの体が光りだした。

「くっ……!」

私はすぐに地を蹴ってその場を離れる。 イングは大爆発を起こした。 俗に言う自爆だ。 だが……。

「いつの間に分身をしたんですかね」

先程からずっと空中にはイングが留まっているままだ。 腕を組み私を見下している。

「そこまでの力を持ちながら何故貴方は……」

その時、背後から凄まじい気を感じた。

「それ以上、言うな」

振り向いた時には既に遅く、拳は腹にめり込んでいた。 そのまま勢いよく吹き飛ばされ地を引き摺り削れていく。 抉られた地に勢いはやっと止まったかと思うと、自分の倒れている地が先程と同様円柱状に天に昇っていった。 そして四方から円柱の途中から生えたであろう鋭い土の巨大な槍が、私目掛けて襲いかかる。

だが、その槍は私の剣と拳により砕かれる。 そして、歩き。 私は円柱状の地の外側に足を着けた。 真下より、外側の壁を走り迫ってくるのは。 我が師匠であり憎むべき存在であり、憧れの存在。 イング・ヴァニラ。

「何故、そこまで強いと言うのに。 何故」

真下へ、イングへ歩きながら私は言う。 それに対し吠え迫るイング。

壁を蹴り私の前まで迫ると、拳を構え跳躍し。

「それ以上、何も言うなぁ!! 勝者の絶対権限、英雄の拳(レジェンドパンチ)!!!」

それを聞き、悲しく残念な気持ちに心は襲われる。 けれど仕方ない。 愚かな私は、こんな人に憧れを抱いてしまった。 偽りを被せた羨望。 憎悪という名の復讐心の言い方を変え、そのうち本物へと変わってしまった私の心。

だがしかし。

それでも、全部が全部変わってしまったわけではない。

「貴方は英雄ではない。 それに。 大事な言葉も忘れるようじゃ、貴方はもう私の師ではない。 ちゃんと思い出し、受け止め認め、共に前へ。 進んでください」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

迫る元最強に、師に。 ギリッと一度歯を噛み締めて、それらを想い、思い出し。

「単純故に最強ぉ!!! 」

時が遅く流れるような感覚。 腰を捻り、拳を握り締めて。 敵を、見据え。

口を動かし、空気に私の言葉を刻むがごとく。

「忘れたくない、あの憎悪を。 忘れられない、あの憧れを。 そして。 忘れたとは言わせない。 悲しみも幸せも、忘れたとは、この私が言わせないっ!!」

走馬灯のように思い出される声。 笑顔が楽しげに言う。


『私ね、アヴェイル。 あの人がたとえ脳筋馬鹿だとしても、その隣にいて幸せなの』


思い出に奮い立つ感情が、私の背を押す。 師に向かう勇気をくれる。

腰を動かし、肩を動かし、肘を動かし。 全身に力を込めて、拳を。 突き出す!

「罪を追憶し嘆けーーーーーーーーーーーー」


『何故って? だってね、あの人はああ見えて、仲間を誰よりも大事に想ってるから』


「ーーーーーーーーーーーーこの、拳の名は」

時は、速さを取り戻す……。


『その理由はね。 あの人、実は。 すごーく寂しがり屋なんだよ。 私がいないとダメみたいなの』


嬉しげに笑い、自分の夫について話す彼女は。 彼女は。


『だから、私が隣にいてあげるの。 大好きだから、愛してるから』


……畜生だ。 お前は。 イング、貴方だけはやはり。

「昔人が為の一撃。 私の、一撃! 決勝の拳(ファイルパンチ)!!!」

素早く体制を傾けてイングの拳を躱し、拳を叩き込む。

あぁ、愚かで我儘なのは、私だ。

ズガガガガガガガッ!!!

イングは真下へ吹き飛ばされ、円柱状の地の壁を抉りながら落ちていく。 同時にその地も崩れ落ちていったイングに覆い被さるように倒れ始めた。

これで決着、かに思えたが。

「弟子に負ける師など、あってはならないのだ。 まだ、今は!!」

ズタボロのイングが崩れ始めている地の壁に転移していた。 どこからどう見てもボロボロであるイングは、だがそれでも壁を蹴り私に拳を固め迫り来る。 私は先程の一撃に全てを込めたためか、すぐには反応できなかった。

やら、れる……!?

その時だった。 頭上に気配を感じた。 目の前に迫るイングも目線を上げた。

そこには、私達へ手を翳すカインの姿があった。 それを捉えたと同時に、魔法通信を受信する。

『たとえ悪役っぽいことをしてでも』

エルトの魔法通信による声が聞こえた同時に、カインがもう片方の手で指を鳴らした。 エルトが言葉を切ると同時にカインの翳す手の先から私達を囲むように様々な角度や方向に、幾多の魔法陣が出現する。

『お前達は必ず倒す。 ヘイオの願いのために』

「詠唱は済ませた。 あとは、お前達次第だ。 全知全能、複製魔法、勝利への拳砲(ビクトリーパンチ)、千連打」

エルトの通信が終わりカインがそう言うと、幾多の魔法陣から空気が歪み拳を形作った攻撃が千もの数で四方八方から放たれる。 しかも、その拳ひとつひとつが意思を持つように様々な軌道に乗ってこちらに迫り来る。

「「っ!!?」」

「化け物じみたお前らにでも、干渉者の技なら有効のはずだろ? エルトが少しアレンジを加えたんだ。 そう簡単には防げない」

あのエルトが……! 先の戦いを見て転移対策もされたか。 それにコピーするカインもカインだ。 言う通り、簡単にはいかなそうだ。 それに今は回復がしたい。 ここで一旦、イングとの距離を置きながらあの拳から逃げるしかないか。 幸運にも、あのイングも迫る拳に身構えている。 今は、避けるが先決!

そうして私はイングへ背を向け、走り出そうとしたその時だった。

『どこに行くんだ?』

「2人とも」

背筋が凍るとはまさにこの事。

たった今魔法通信でエルトが一言喋り、次の瞬間背後から同じ声がかけられた。 目線を動かすと、そこにはエルトが立っていた。 私達と同じ、崩れ始めている円柱状の地の壁に。

緊張感に大きな衝撃。 興奮と一瞬の恐怖と困惑と驚きが混じり合い、精神的苦痛が身体的疲労をバネにヒートアップする。 イングも同様、目を見開き硬直していた。 そして。

エルトは双剣を抜き、ダッシュで私達の間を駆けていく。 その瞬間にエルトは私達2人を勢いよく斬りつけて。 そして、それが体に動きを思い出させたかのように精神的なダメージは消えた。 同時に気が抜けたのか、身体から力が抜け……。

あ、なるほど。 エルト、君は。

ドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!!!

そんな私達2人に無慈悲にも無惨に拳が襲いかかる。

軌道に乗らせたのは、エルトの行動が終わるまでの時間稼ぎだったというわけだ。 様々な軌道を描いて私達に近づいていた拳砲は、エルトの行動が終わり次第、ちょうどいい感じに、いい位置に配置できるよう計算して操っていたんだなカインは。 だがエルトはどうやって……。 あぁ、だからか。 不規則かつ死角ばかり素早く移動する拳がひとつあったな。 あれは、逆転移で来たエルトだったというわけだ。 今思えば認識阻害の気配があったな。 そしてエルトは魔法通信をした直後に背後に来たというわけか。 やられたな。 それに気づかないとは。

そんな長考をしながら、防げぬ拳砲の蹂躙に私は飲まれていった。

「それは。 些か思い込みが過ぎる」

視界が閉じる瞬間、エルトの声が聞こえた。

そこで意識は途切れた。

読んでくれてありがとうございます。

次回、それはやっと届く……。

次も読んでくれると嬉しいです。

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