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半機械は夢を見る。  作者: warae
第3章
91/197

決意

楽しんでいただけると幸いです。

「カイン、これからどうする?」

「倒すべき敵は分かった今、焦っても仕方ない。 今日は休んで明日ここを出て探索を開始する」

「でもここは核都市よ? 探索すると言っても危険だらけじゃない」

「……俺は一度ここに核都市には来たことがある。 一度改造本部跡地に行ってみるよ」

「どうしてカインが……まぁいいわ。 今日は泣き疲れたから先に休ませてもらうわね」

そう言ってディアはいつの間にか抱いていた花束と本型の入れ物と共にベッドに潜り込んだ。 それを確認するとカインが俺に話しかけてきた。

「ちょっといいか、エルト」

「ん? あぁ、なんだ?」

俺は手招きされカインと共に別の部屋に移動した。

「なぁエルト。 どうして壁の隠し扉に気づいたんだ?」

探るような目で俺を見て、カインは聞いてきた。

そりゃあそうだろう。 いきなりなにもない壁の隠し扉を開いたりなんかしたんだから。 怪しまれても仕方ない。

「言っておくが、俺は気づいていた。 俺の特殊能力は予知みたいなこともできるからな。 ディアの話を終えた後に見えた未来では、俺が壁の隠し扉を開けて3人で奥に行くという未来だった。 自分で言うのもなんだが、俺の予知は結構な確率で当たるんだ。 けれど違った。 エルト、お前が開けた。 どうして気づいたんだ? 普通なら気づかないし、壁を探ろうともしないだろ」

「……どうしてだろうなぁ。 俺にも分からないや」

俺がそう言うとカインは即答した。

「嘘だな。 エルト、なにを隠してるんだ?」

「いや嘘じゃないし本当に分からないんだよ。 それに、隠し事なんてあっても言う気はないよ。 ディアのようにすぐに話せるほど俺のメンタルはそこまでできてないし。 まぁでも、隠し事なんてしてるつもりはないんだけどな」

「…………なら、何故壁を触ったりして探ったんだ?」

「さぁなんでだろうな。 まぁそんなことより」

その時、

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

「来るぞ」

「…………獲物を逃した気分だよ」

「まぁいつか分かるだろ。 俺もカインも」

「まぁ、そうだな」

ズドォォン…………

いきなり目の前に戦艦が落ちてきた。 いや、突っ込んできた。

「久しいな。 艦隊か。 全知全能、敵を示せ」

そうカインが唱えると、何かが分かったような顔つきになった。

「な、なにがあったの! うわっ、戦艦!?」

そこに後ろの扉から勢いよく飛び出して来たディア。

「ツアルチェはもう艦隊を抜けたと噂で聞いたが……まだこんなやり方をする輩がいたのか」

「ツアルチェ?」

ふいにカインの口からこぼれたその名前について聞くと、代わりにディアが答えてくれた。

「ツアルチェ・アゼガルドン、元艦隊の隊長をしていた男よ。 数年前くらいに核都市に潜入した組織を壊滅させたとかいろんなことをやった人だけど、最近はあまり姿が見られず艦隊を辞めたって噂が立ってるのよ」

なるほど、ルーダ博士の話に出てきた男と同一人物ってことか。 だが何故隊長なんて座を手放した? いやまぁ、まだ確証があるわけじゃないが。

そんな話をしていると、戦艦によって空いた隙間から、人だかりの声が聞こえる。 同時に戦艦内からひとりの男が出てきた。

「また人ひとり避難もさせずにやったのか。 答えろ、お前は何者だ!」

俺達は戦闘体制に入る。 だが、出てきた男からは殺気もなにも感じず口を開く。

「なるほど。 あなたがカイン様ですね? 奥にいるのは王女殿下、お隣の君は誰かは存じませんがカイン様のお連れの者と判断しましょうか」

「………何者だ。 我に楯突くとは、それなりに覚悟はできておるのだろうな? 私は、元であっても王女であるぞ」

ディアが男を睨む。 だが男は怯まずそのまま名乗った。

「私はとある御方より任を与えられそれを果たす者でございます。 よって、只今カイン様達の味方という立場でございますゆえ、どうかご安心を」

「味方だと? 見ず知らずのお前がか」

「はいカイン様。 ですがここで立ち話をしていると艦隊が向かってきますので、まずはこの戦艦に乗ってください。 それとここクロート様の研究室等は魔法により異空間へ保存致しますので王女殿下、ご了承ください」

そう言うと俺達の返事を待たずに、3人に手を翳した。

「転移」

視界が切り替わる。 広がる景色、そこは戦艦の中らしき部屋。 そして戦艦はいつの間にか空を浮遊していた。 窓から外を覗くと、真下に人だかりの輪ができている。 その中心は何も無い平地になっていた。 本当に地下室はこの世界から姿を消したらしい。

「なにがなんだか分からないわ……」

「話を聞かせてもらおうか。 まず君は誰だ」

ディアは未だに混乱中。 カインは謎の男に問いかけた。

「そうですね。 まずはこのような強引な方法をしてしまい申し訳ございません。 私の名はアヴェイル。 干渉者です」

「干渉者?」

俺はその話を聞きながら、まだ頭を抱えるディアの傍に寄った。

「はい。 私は干渉者です。 私の目的はルイダ・テミファル・ヴァース、今はたしかルーダ・テミファルでしたか。 その彼女を探しだすこと。 そのためにあなたを探していました」

「っ……彼女を、ルーダを見つけて……何をする気だ」

険しい表情を見せるカイン。

「お気の毒ですが、彼女には死んでもらいます。 魂ごと。 ですがこれは不本意なのです。 やりたくてやるわけではありません。 原因は全て、あの男のせいであり」

パキンッ……

「っ!?」

カインはアヴェイルが話し終わるのを待たず瞬時に魔力で剣を形作り、物凄い速さで相手の首目掛けて距離を詰め腕を振った。 だがその剣は軽く片手で受け止められ、剣は容易く砕かれた。

「カイン様の怒りを買うことになるのは重々承知しております。 ですが、その程度では私を倒すことはできません。 あの解放を使ってやっと私と互角に戦えるくらいでしょうか。 まだまだ鍛錬もなにもかもが足りませんね。 ですが、そのうち私に勝つことくらいは容易くなると思います。 ですが、それは今ではありません。 ただそれだけです」

そう早口気味に言うと、一見軽そうに掌底打ちをカインの腹辺りに打ち込んだ。 直後カインが消えた。

「カイン!」

俺がそう叫ぶと部屋の端から声がした。

「大丈夫です。 殺しはしません。 本気も出していませんのでご安心ください」

声がする方を見るとそこには、青ざめたカインを抱えたアヴェイルがいた。

まさか目にも留まらぬ速さでカインを吹き飛ばして、それより早い速さでカインが壁に激突する前に受け止めたのか? なんて馬鹿げた力だ。

「お、おいディア、お前は見えたか……?」

そう隣にいる彼女に聞くと、静かな寝息が聞こえてきた。

ね、寝てるーっ!? この状況でか!

「お、おーい……」

花束と本型の入れ物を抱いたまま眠っているディアの横で焦る俺に構わず、アヴェイルはカインを下ろし、先程までの話を続ける。

「お……お前、あいつと同じか。 あの変な野郎と同じくらいの強さだ。 何者だ……」

「先程から申している通り、アヴェイルです」

「…………ならアヴェイル。 何故、ルーダが死ななきゃならねぇんだ」

「この世界を守るため、でございます」

「世界を、守る……?」

「はい、とある脅威からこの世界を守るために必要なのです。 ルーダ・テミファルの死とその保護が」

だがカインは納得した様子は見せず、苛立ち含んだ表情で話す。

「分からないな。 何故ルーダが関係ある。 死と保護だと? なら保護すればいいじゃないか。 殺す必要なんてどこにも」

「あるのです」

カインの台詞が終わる前にアヴェイルは即答した。

「保護するとなれば、ルーダ・テミファルには苦しみが生まれ残酷な死が襲うでしょう。 死は確定、私達が保護も何もせずともそのうち脅威が彼女を襲うこととなる」

「ならその脅威を倒せば……」

と、俺は眠るディアを部屋の端に運び終わった後にその話に加わった。

「倒すことはできません。 それほどの力を持つ者なのです。 奴は……。 ところで、あなたは?」

「俺はエルトだ」

「エルト様ですか。 ですがエルト様の言うようにできたら全ては丸く収まるでしょう。 当分ルーダ・テミファルも死なずに済むでしょうし、この世界の諍いだけでなんとかやっていけるでしょう。 ですが、それは叶わない。 全てはもう手遅れな状態まで来てしまっているのです」

「それはどういう……」

そう俺が聞くと、いきなり部屋の扉が開かれた。

「アヴェイル様、艦隊に見つかりました! どうされますか!」

「ふむ、どうやらまだ艦隊は力を残していたようですね。 ここで叩くのは容易いですが、他の核都市勢力が多く動き出す引き金になってしまう恐れもありますので、一旦地上に出ましょうか。 行き先は、そうですね…………あなた方がおられたダーク・サイドという地にでも移動することにしましょう」

そう言ってアヴェイルはカインを見る。

「……俺に許可でも求めるつもりか? あいにくそこまでの権力等は持ち合わせていない。 行きたければ行っても構わない。 俺らがどう抗おうとお前にはまだ勝てないようだしな。 エルトもそれでいいか?」

「あぁ、それでいいよ。 イングとかどうなったのか知りたいし、当初の目的であるダーク・サイドの支配はまだ完了していない。 ディアにも安全な場所に眠ってもらいたいしな」

「では決まりですね。 ということですので、地上に行きましょう」

「はっ! 分かりました!」

そう言って隊員らしき男は部屋から出ていった。 その後アヴェイルは俺を見て、まるで品定めでもするかのような表情で言う。

「そのうち、あなたとも手合わせをしてみたいですね。 エルト様」

「はは、俺は嫌ですよ。 あんなの見た後じゃあ、戦う気も失せる」

「アヴェイル、ひとまずはあんたと共に行動をすることにする。 だが、ルーダを殺そうもんなら全力で俺は戦うが、それでもいいか?」

「ええ、構いませんよ。 カイン様といれば私もそのうちルーダ・テミファルと会える確率が高くなると思いますので。 戦うことになってしまいそうな発言を聞いて少し残念ではありますがね」

そして俺達はダーク・サイドに着くまでの時間、この部屋で待機することとなった。 防弾のため外の景色は見えなくなっている。 戦闘が外で起こっているのかそれすらも分からない。 外からは何も聞こえない状況で、様々な魔法が施されているとカインは言っていた。

「だがカイン、これでいいのか?」

「なにがだ?」

「いやだって、ディアとクロートの話で改造に関する敵は分かったんだろ? そいつを見つけなくてもいいのか?」

そう聞くと、再度苛立ち含んだ表情で話すカイン。

「あぁ、イープス・ネッツ・クウォーカーのことか。 あいつは大丈夫だ。 そのうち奴は死ぬ」

どうやら名前すら全部分かってるらしい。 カインの特殊能力っていうのはどんな魔法なのだろうか。

「な、なんで言い切れんだよ」

「さっき言ったろ? 俺は予知もできるんだ。 その予知通りだと、近々奴は死ぬことになっている。 今すぐ殺してやりてぇが、今はやることが増えてしまった。 ディアのあの話を聞いてしまったからには、即刻エレイバクスを玉座から引きずり下ろさなきゃクロートの死が浮かばれない。 そのためにもダーク・サイドは早めに支配して下界の民達を救わなきゃならない。 それがディアの願い。 そしてダーク・サイドを新たな勢力に天界都市の王城へ襲撃。 お前も最後まで付き合ってもらうからな。 シエルと再会して、すぐ帰るとか許さないからな」

「お、おう。 もちろんだ。 けど、俺達の当初の目的はルーダ博士に会うことだ。 当分は行動を共にすると思うぞ」

「ほう? まぁシエルはいいとして、何故お前がルーダに会いたいんだ?」

「俺はシエルの付き添いだよ。 まぁ幾つか聞きたいこともあるが。 そんなことより俺が前に博士について聞いた時逃げやがったのに、なんで俺が馬鹿正直にカインの質問に答えなきゃなんねぇんだろうなぁ?」

そう挑発気味にカインに言ってやると、いとも簡単にカインは苛立ちを見せる。

「んー? なんだその喧嘩腰な態度は? え? なんですか喧嘩売ってんの? こう見えて俺エルトよりも年上なんだけど、俺元先生だからね? お前なんて生徒同然だからね。 やるのか? 俺の特殊能力まだ全部見せてなかったよな。 ここで見せてもいいんだぞ? お?」

なんだか彼女を馬鹿にされた彼氏のような雰囲気を醸し出しながら苛立ちを開放するカイン。 まぁそんなカップル見たこともないし、恋愛経験記憶正しければゼロの俺が言うのもなんだけどさ。

ってかこれ絶対さっきの苛立ちも引きずってんだろ。 八つ当たりですか。

「まぁまぁそんな意図は全くないから怒らないでくれよカイン。 見た感じ俺と同じくらいか、ひとつ上だと思ってたし。 それにしても……へぇ、先生だったんだカイン」

「そうだぜ? 毎日生徒のお悩み相談してたんだからな。 毎日毎日小さな悩み事から大きな……まぁ先生の悩み事は解決は…………まぁしたって言うのも間違いじゃない、が……。 うん、そうだぜ? 毎日生徒のお悩み相談してたんだぜ?」

だんだん話す速度を落ちていく。 同時に徐々に俯き始めるカイン。

「なんで2回言った?」

「だ、大事ことだからじゃないか?」

「いや俺に聞かれても……」

その時、艦内に放送が流れる。

『艦隊は退けました。 もう少しで地上に出ます』

「もうか。 エルト、ディアを起こしといてくれ」

「分かったよ。 先生」

「その呼び方はやめてくれ」

「はいはい」

そう言って俺は眠るディアの元へ駆け寄る。

「すぅ……ぅ……………すぅ……」

「っ…………」

そこには綺麗な花束とクロートの忘れ形見を抱いたまま眠る王女様がおられた。 花束の花は微かに涙に濡れていた。 なんだか、さっきまでカインと馬鹿な話をしてたのが申し訳ないと思ってしまうほどに可愛らしい眠り姫がそこにいた。

可愛い。 なるほど、クロートの気持ちが物凄く理解できた気がする。 それほどディアはクロートが好きだったんだな。 あぁ、カメラはないのか。

「ぅ………っ、クロートぉ…………いかなぃでぇ…………っぅ………すぅ…………」

「っ!!」

強い衝撃が電流のように全身を駆け巡る。 そして使命感のような感覚に襲われて。

「カイン。 眠り姫はどうやら、夢の中で大切な人と会っているようだ。 たとえそれが悪夢であろうと、今は起こさない方がいいと俺は思うぞ」

「そ、そうか……ならば防音対策などいろいろしなきゃな。 これでも元でも王女様だし」

そうして俺達はアヴェイルに頼みベッドを持ってきて、眠り姫を横たわらせた。 他の隊員らしき男達が影で眠りの女神降臨なんてふざけた話をしていたので、ダーク・サイドに着くまでの間ディアが女神だとしてそこから様々な物語を思い描いたりして盛り上がった。 カインは部屋の端でその話をなにか探るような目で眺めていた。

それから数十分後。

艦内に放送が流れる。

『皆様、ダーク・サイドに着き……っ。 なるほど、そういうことですか』

「ん?」

アヴェイルはどうやらなにかを見つけたらしい。 そしてすぐに部屋にアヴェイルが来る。

「なにかあったのか?」

だがカインの質問には答えずアヴェイルは別の質問をカインに投げかけた。

「まさかとは思いましたが、カイン様。 イングという者は、もしやイング・ヴァニラではございませんか?」

「あぁ、そんな名前だったな。 なぁエルト」

「そうだよ」

するとアヴェイルは俺に詰め寄ってくる。

「な、なら他にヘイオ・ヴァニラやストッチ、アミーといった者はいませんでしたか?」

「ん? ヘイオはイングの孫でストッチとアミーもいたな。 そういや最近は全然会ってないけど大丈夫かな」

そう答えるとアヴェイルは片手で顔を隠し項垂れながら窓に寄る。 いつの間にか窓は外の景色を写していた。 戦艦はどうやらダーク・サイド頭上にいるらしい。

「はぁ……そうですか。 ……なるほど、あの闇の雪。 そして…………イングさん。 どうしてあなたともあろう者が……! そこまで我々を憎んでおられるのか。 ですが、ですが……そっちに行ってしまわれたら、もう」

そう独り言を呟くと、小型マイクのような物を取り出して悲しげに言った。

「全員、戦闘準備をしてください。 敵を、イングを討つのです」

「えっ!?」

俺はそのはっきりと聞こえた言葉に驚いてしまう。

「イングを殺すつもりか。 何故だ。 イングは何もしていないぞ」

すぐにカインが異を唱える。 ダーク・サイドのために頑張ってきたイングが殺される道理が分からない。

「この件に関しましては、カイン様方は関係ございません。 イングは、もう既に我々の敵です」

「関係ないって……俺らはイングに助けられた借りがある。 なのに黙って見過ごせるわけがないだろ」

「カインの言う通りだ。 イングがいなかったら俺達は今ここにいない。 だから」

「ならば!!」

俺の台詞が終わる前に、アヴェイルの強烈な声量が割り込んだ。 そして一瞬の静寂、そして感情に震える声が言葉を言う。

「ならば、お前は。 世界が滅んでもいいと言うのですか。 イングと世界を天秤にかけ、どちらをとると聞かれたら答えはもう決まっている。 あなた方にはできないはずでしょう。 大切な人が生きるこの世界とイングひとりの命、愚問でしょう?」

俺達はその言葉を聞いて黙り込んでしまう。 言う通りだからだ。 俺からしたら、今まで出会ってきた人々の命とイングの命。 ならば、俺は……。 答えるまでもない残酷な答え。 きっとカインも同じような考えを巡らせているのだろう。 俯いたままだ。 だが。

「お前はどうなんだ」

カインは顔を上げ、アヴェイルに聞いた。

だがアヴェイルはその問いに対し無言で答えた。 要は無回答だ。

「………………私達は作戦を練り、明日にでもイングを捜索し襲撃します。 あなた方はどうするかは自由です。 味方になってくれるのなら歓迎致します。 敵となるのなら、檻にでも入れましょうか。 それでは、また」

そう言ってアヴェイルは部屋から出ていってしまった。

部屋に響くのは、頑張って集中しなきゃ聞こえない程の小さい寝息だけ。

「エルト」

「なんだ、カイン」

「俺らの目的は、エレイバクスを玉座から引きずり下ろすことだ」

「あぁとりあえずそうだな」

あんな話聞かされたらそれしか頭に思い浮かばん。

「ならこれからどうする」

「そんなの決まってんだろ」

「なら決まりだな」

「ああ」

俺らふたりはずっと考えていた。 それはアヴェイルに会っても揺らぐことはない。 世界がどうこうよりもまず先に、クロートの死を無駄にしないため、泣き虫王女様のために戦う。

「さて、じゃあカイン。 作戦を考えようか」

「そうだな。 だが今回は敵が多いから覚悟しろよ?」

「あぁ、なんだってやってやるさ」

それに、そんな奴が王である天界都市には今。 シエルがいるのだから。


そんなふたりの姿を、ベッドの隙間から覗く元王女様。

「このお人好しお節介野郎共がぁ…………ぐすっ」


読んでくれてありがとうございます。

次回、そしてダーク・サイドへ……。

次も読んでくれると嬉しいです。

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