いつかの償い
楽しんでいただけると幸いです。
「やぁやぁカイン・アヴィエール。 お前全部知ってるんだろう? だから、処分ご苦労さまです」
口元歪め笑い、頭を下げる男。 レバニー・バンムッチだ。 その態度が俺の癇に障る。 そっと柄に手をかけた。
『やはり予想通りか。 レバニー、お前は魔錠者特有の特殊能力を持っていて、その能力というのは身代わりによる生き返りか。 随分と嫌な能力を持ってるんだな」
それを聞くとレバニーは笑いながら答え合わせをする。
「あぁそうだ。 そうだよ、笑っちゃうよねぇ? 何も知らないクレイもサチェゼンも実は俺の残機のためにずっと情報屋にいたってわけだ。 まぁあいつらは元敵だし全然愛着湧かないし、まぁどうなったっていいんだよなぁ。 あははははは、傑作だったよ。 クレイは常に正義感に燃える男だったなぁ。 敵の頃もすげぇ正義感強くてさぁ、ちょいといじったら全く別の正義振りかざすようになっちゃって。 サチェゼンも、ずっと敵だった俺達を全力で守ったり………いやぁ、最高に面白かったなぁぁ!」
俺はそれを聞いて柄を握りしめる。
『ならさ、レバニー。 後ろの6人は、お前の残機ってことか?」
その6人は手錠と足錠と首輪を付けられていた。
俺と目が合うと彼らは目を見開き頭を垂らす。
レバニーは口角を上げて、目を細め笑った。
「あぁ正解だ。 だからお前は、俺を殺せなぁい……あっはっはっはっはっ! ………はぁ。 んじゃ、殺ろうか」
その台詞を合図とするように、他の5人が俺を一定の間隔で囲む。 そしてフードを脱ぎ捨てた。
俺は、彼ら彼女らを見た瞬間鞘から勢いよく黒炎燃え盛る黒刀を抜き、レバニーの前に迫っていた。
「おぉ? なんだよ、最初に俺を狙っちまうのかぃ?」
『てめぇ………!!! くっ……雷鎖、拘束!」
俺は刀を突き出す前に手を突き出し唱える。 直後雷の鎖がレバニーを拘束した。
「おぉおぉ、痺れるねぇ……」
そう言いながら口元を歪ませ続けるレバニー。 直後、背後に気配を感じ横に飛ぶ。 すると拘束されたレバニーを守るように囲む5人の子供。
「はははっ、いい表情するじゃねぇかよ。 そうさ、お前の予想通りさ。 ダーク・サイドの情報屋ってのは、常人は俺だけ。 あとは元敵と残機と、そのKD共だ。 情報屋の本部は核都市の少数精鋭達であるから、もし俺達を倒せたとしても情報屋はなくならない。 そんなことよりさぁ、聞いてくれよ。 お前達のおかげでこうしてこいつらは俺達の手駒に改造できたんだ。 感謝してるぜマジで。 元特別警備型戦闘兵器はあの事件をきっかけにいろんな所に取り引きされ、改造を施され自己改造型半機械人間として生まれ変わったんだよ。 もちろん服従紋も更新済みで戦闘能力は受け継がれている」
俺は地を蹴りレバニーに斬りかかる。 だがその攻撃を子供のひとりが剣で受け止める。
「だからこいつらはよぉ……最高の捨て駒なんだよ……」
………殺す。
殺意を引き金に俺は瞬間的移動でレバニーの背後に立つ。 そして胸あたりを剣で貫いた。
「ゴフッ…………おいおい、もう忘れたのかぁ? お前が今殺したのは俺じゃなくてぇ、ガフッ……そこにいる奴だとよぉ…………」
レバニーは口から血を吐き出す。 そんなレバニーから剣を抜くと前の方に倒れた。 その時だった。
「ゴハッ………ぐぅぅ…………あぁぁ………」
残機と呼ばれた者の中のひとりが、いきなり血を吐き苦しみだす。 そしてその男は俺を静かに睨みつけると、前に倒れ絶命した。 他の5人が微かに震えだす。 俺はその状況に言葉を失う。 そんな俺に肩を叩き笑うレバニー。
「なぁ、言ったろう? 殺したのは、俺じゃなくてぇ、そこにいる奴だとよぉ……」
俺は罪無き人間を殺めてしまった。 一時の感情が殺した。 どうなるかなんて、最初に敵が言っていたじゃないか。
すぐに罪悪感が俺を襲う。 それを察知したかのように、追い討ちをかけるように俺を囲む子供たち。
俺は、どうすればいい。 あの時みたいに彼ら彼女らを解放できるか分からない。 時間も経ちすぎている。 もしできないのなら、命を奪うことになる。 だからと言って最初にレバニーを殺れば、次に死ぬのは残機の5人だ。 倒すのは容易いが、だが選択が難しい。
「そういやよぉ、あそこにずっと立っている馬鹿でけぇ魔法陣でできた時計? あれ何しても壊れねぇし、まだ半分しか過ぎてないし、あれ一周するとお前はどうなんだろうなぁ?」
そう言いながらレバニーは、俺が姿を変える時に発動した巨大な魔法陣を指さす。
あれが一周する前に、俺はこの姿を解かなければいけない。 一周すると暴走に至るからである。 それだけは避けなければいけない。 絶対に。
ということは時間は限られているということ。 長考している余裕はない。
その時、KDのひとりが剣を出し俺に迫る。 すぐに距離を詰まれ、俺の首目掛けて剣を横に振る。 俺はそれの攻撃を左手で受け止め、相手の剣身を掴む。 そのまま握力で剣を砕いた。 だが、それを予想していたように、相手は俺に手を翳しながら後方斜め上に飛び、「起爆」と短く言葉を吐く。 その瞬間、間近に魔力を感じた。 目に力を込めて砕かれ宙を舞う剣の破片を見る。
『なるほど」
魔法陣が破片に無数に張り巡らされていた。 最初から剣身に爆発の魔法陣を展開させ、その上に隠蔽魔法をかけていたというわけか。 それで弱々しい攻撃だったのか、全てはこっちに気づかせないために隠蔽に全力を注いでいたということか。
そんな一瞬の思考後、それらは俺の至近距離で爆発した。 その次にレバニーの笑い声が辺りに響く。
だが、こんなもので俺が死ぬことはない。
それに気づいているからか爆煙が俺に包み込む間に、KDである5人の少年少女は俺を囲み武器を出す。
真正面、背後、右と左、頭上の遥か上空から勢いをつけ接近して来る奴で5人。
さて、どうしたものか。 悲しいことだ。 かつては先生なんて立場にいた俺が、まさか二度……いや、三度も子どもを泣かせてしまうとは。
時間は有限、状況は最悪、迷っている暇などなく、殺す方を選んだ方が良いという残酷な現実。 ここにいる命を無差別に消せば結果だけみればハッピーエンドに近づけるのかもしれない。
悲しいな。 最高の先生ならば、このような時はどのような選択をするのだろうか。
『……悲しいな。 今の先生じゃ、こんな終わりしか思い浮かばない」
全知全能、全力全開!!
その時、右からは片手に短剣を握りしめて飛び蹴り一直線で、左からは自分の拳に先程の爆発魔法陣を展開させ突き出してきて、背後からは斧を振りかぶって迫り、正面からは双剣をクロスさせて斬りかかろうと距離を詰めてくる。
俺はまず正面から迫る双剣をクロスさせた子が剣を動かす直前に素早く刀でクロスの間を縦に斬る。 瞬間、双剣の剣身が両方とも半分ずれて地に落ちる。 双剣が使い物にならなくなったことに一瞬動揺を見せた瞬間、短い距離をさらに詰め腹に手を当てて軽く空波をして後方へ飛ばす。
すぐに定位置へ軽く後ろへジャンプして戻り、次に右からくる足に右腕を振り相手の足に柄頭を当て軌道をずらす。 同時に勢いも落ちて、その瞬間に体の向きを変え左手で足首を掴む。 すぐにそれに気づき相手は片手に握っていた短剣を俺の顔目掛けて投擲した。 俺はそれを首を傾け避ける。 が、どうやら相手の指に巻かれていた魔力糸と短剣の柄頭が繋がっていたらしく、それを瞬時に引き短剣を上手く俺の後頭部に刺さるように操った。 俺も瞬時に右手で糸を手刀で切り短剣をキャッチし、体を半回転させ左から来る魔法陣付きの拳を突き出す子へ目掛けて相手を投げ飛ばす。その瞬間に、相手の背中に爆発魔法陣と同じ魔法陣を展開させ相殺するよう細工する。 結果、上手く左から迫る子の拳と右の子の背中が当たり魔法陣は相殺され消すことに成功。 俺はすぐに手元の短剣に麻痺魔法を付与しその2人の方へ投擲する。 2人の肌にほんの少しだけ傷をつけることに成功し、2人は麻痺状態になる。
最後に背後から迫る斧を振り上げた子。 だが、3人に時間を使いすぎたのか振り返った時にはもう眼前まで斧が迫っていた。 俺はそれを体の向きを変えて間一髪で避ける。 斧はそのまま地に刺さると思いきや、俺の目の前に振り下ろされている時に軌道を少し斜めにしたらしく地に着かず俺がいない側の横に振られ、相手はその場で一回転。 勢いづいた斧が視界横から素早く迫る。 俺はそれをその場で体制を低く頭を下げ、しゃがみ込むくらい下げて避ける。 そして俺の頭上を斧が通過する瞬間に刀を真上に突き出す。
『ひとつ」
刀は斧刃の真ん中を貫き、その後透明化で真上から迫っていた子のランスの先端へちょうどよく突き刺さる。 そして落下の速度と俺の攻撃の衝撃でランスの真ん中が凹む。 これ以上は武器では不可能と判断したのか、2人とも武器から手を離し俺から一旦距離をとった。
『教えてやる。 お前らの、なくした心と忘れた思い出を」
そう言い地に手を着き、
『黒沼」
俺の着いた手を中心に地が一定の範囲黒く染まる。 そして5人全員その枠内に瞬時に入れると立ち上がった。 5人全員が瞬時に驚きを見せる。 黒に染められただけの地に少しづつ沈み始めているからである。
それを見てレバニーは言った。
「結構優勢になって来てるけどさぁ、俺を忘れられちゃあ困るなぁ」
『あぁ、忘れてねぇさ」
そう答えてレバニーに手を翳す。 そんな俺を見て余裕そうに笑みを浮かべたレバニーを一瞥し、目を瞑った。
『生贄の亡骸の上で笑うは死神。 愚かな罪人を裁くは運命。 薄命を佩帯し、自らの力に溺れ苦しむがいい。 不滅の杭」
詠唱中もずっと笑みを浮かべていたレバニーだったが、俺の技の発動が終わると同時に笑みが剥がれ落ちる。 胸に手を当て驚愕の表情を見せるレバニーの顔からは、勢いよく汗が出て俺を睨む。
「なにを………したぁ………お前ぇぇ!!」
その時、レバニーの背後にいた残機扱いされていた数名の男女がバタバタ倒れだす。 彼ら彼女らは息を引き取った。 自らの意志で、レバニーを地獄に落とすがために。
「っ!?」
レバニーはその光景を目にし、きっと今考えているであろう予想が当たったことに絶望している様子を見せた。 そして怒りと憎しみを露わにして俺をさらに歪んだ顔で睨みつける。
『永遠に苦しめ、レバニー・バンムッチ」
そう言っていくつかの死の上で成り立った技が出した結果に無力さを感じながら、沼から抜け出ようと抗っている子供たちに目を向けた。
「っ! …………っ、っ!」
頑張って沼から抜け出そうとしているみたいだがここからは抜けられない。 暴れれば暴れるほど、どんどん深くのめり込んでいく。 ただ、服従紋の力がまだ未知の領域のためそれを上手く使われたら抜け出せるかもしれない。 その可能性を潰すために、さっき服従紋に関するものも共に技を使った。 が、子供たちの身体にはまだくっきり紋章がある。
俺は紋章に気を配りながら、刀を腕に突き立てる。 そして指の先まで一直線に斬り裂いた。
黒い腕からは血が噴き、溢れ出る。 そのまま出た血は黒い沼に入り込んでいく。 俺は気にせず痛みを我慢して腕を斜め上に掲げ横にブンブン振り回し、血を宙に舞わせる。
『全知全能、魔法陣展開」
そう言いながら両手を沼につけしゃがみ込む。
直後、沼を軽く飲み込むほどの巨大な魔法陣が地に浮かびあがった。 次に小さな魔法陣が連なった鎖のようなものが、壁を作るように沼を囲む。 何本もの鎖が俺の身長より少し高いほどの囲みを作った後、黒い沼全体が一瞬歪み、沈めていく五人の子供たちの下半身をスライムのように固定し、同時にいきなり沼から出てきた黒い錠が腕や手首にかけられた。 次に身動きがほとんどとれなくなった五人の額から濃い魔力の糸が天へ突き出る。 それは天井を作るように大きな花を咲かす。 大きな花五輪の中心には真っ白な砂時計が姿を現す。 そして最後に、つい先程まで離れた所にあった巨大な歯車状の時計魔法陣が全てに覆い被さるように、俺達の頭上に横にして現れる。 そして時計のような魔法陣の中心から淡い光の線はいくつも出てきて、鳥籠のように俺達を包んだ。
自分の今の状態なんとかしようと端でもがき苦しむレバニーを横目に俺は全ての力を注いでいく。
『っ、ゴフッ……ッ…………」
出さないようにしていた血が、口から溢れ出る。 そのまま沼に俺の吐血が沈んでいく。
最後だから、耐えてくれよ……時間魔法っ!!
時は遅くなる。
『全知全能。 涙は枯れず、声は届かず、空はこんなにも暗く青い。 誰が為の道だったか、剣はもう折れてしまった。 天にも地にも待ち人は来ず、まだ悲劇は続いていると知る。 烈火は私を温めてはくれないようだ。 清水は私を流してはくれないようだ。 緑は私の傍にいたくはないようだ。 光は私の足元を照らしてはくれないようだ。 闇は何も隠してはくれないようだ。 ならばせめて夢だけは。 眠りの中までは奪われないように。
子供たちよ、子羊となりて、我が羊飼いの導きに従え。 道だった道無き道の果てに、望むものがあると願い。 祈りはいつか必ず届くと、届かせてみせると自らに誓え。 武器など無く、あるのは足と手と頭と心と。 奪われないように、奪われないように、堪えて耐えて守り抜け。
包むは心、依代は身体、天は頂き、地は底。 鬼は天使の翼を千切り空を飛ぶ。 憧れは黒い羨望へと姿を変え、偽りでできた異形の化物が降り立つ。 時計の針に怯え、力に溺れ、正しさを噛み締めて砕き、悪を演じ続けた。 炎を黒く染め、武器を手にとる。 汚れた両手は愛を忘れていた。
彼方、いつの日か。 夢、忘れずにいられるか。 その記憶はそのままに。 消えゆく君、去りてもなお悲しみが邪魔をするならば。 幸せを、見て消えたいと」
そして、汚れた両手で刀を強く強く握り、沼に突き刺す。
『心は天に、身体は地に、魂は在るべき場所へ。 いつの日かの夢と共に、子羊達よ。
眠れ、枕はあるか布団は、ベッドは。 隣は誰がいる、お前はそこにいるか。 まだ明るいか、暗いのか、否か。 まだ大丈夫か、出発点は見えているか、ゴールはどこだ。 数えてやろうか。 怖いのか。 安堵の溜息、寝息をたてるのは」
まるで、語りかけるように。 安心して眠れるように。 穏やかに静かに優しく。 囁いて、強弱をつけて、相手の心を上手く操るように。
大丈夫だ、と。
『黒き翼を持つ天使は赤子を抱いた。 破壊を背景に寝息を聞いた。 寝かせるために自分を犠牲にした。 またいつか会える日を、希って。 さぁ」
すると、静かに黒沼は姿を変える。 真っ黒な影のような、まるで母親のような悲しい寂しい、目を瞑ったままの堕天使に。 そして、優しく半機械人間であるKDの子供たちを抱いて、眠らせるように。
息を全て吐いて、静かに多く吸い込む。 鼻血も吐血も止まらない。 目からは血の涙が零れ始めている。 詠唱と言うには長すぎる理解不能すぎる言葉達を紡ぎ終えて、俺は心から安心した気持ちで言った。
『全知全能、浄化。 大魔法。 夢うつし」
これでいい、行きなさい。 最後の一時よ、どうか幸あれ………!
子供たち全員から紋章も機械部分も全てを取り除き、一番最初の人間の姿に戻す。 だが、だからと言って普通に生き続けられるわけではなく。
今、彼ら彼女らは、家族の夢の中へと今旅立った。 ほんの僅かな時間だが、どうか………
■■■
とある人々は今、奇跡を見ていた。
死んだと思われていた自分の子どもからのメッセージ。
本当に最後のお別れの瞬間であり、最後の家族との時間。
たとえそれが夢の中だとしても、姿が声が、感触が。 そんなことなどどうでもいい、と。 ただただ今起きている奇跡に感動していた。
夢の中で感触? じゃあ夢じゃない? そんなことどうでもいい。 やっと会えた、やっと帰ってきた、帰ってこれた、ただいまってやっと言えた、おかえりってやっと言えた。 今は、今はそれだけで充分すぎて。
嫌な過去など、今だけ忘れられて。 今は涙が止まらない。 感動が止まらない。 感謝が止まらない。 数年分の、一生分の愛が止まらない。
もう会えないから。 もう戻ってこれないから。 もう帰ってこれないから。
どこかの両親が泣いた。 どこかの不甲斐ない兄が泣いた。 どこかの心閉じていた妹が泣いた。 どこかの弟妹達が泣いた。 どこかのたったひとりの親が泣いた。 どこかの家族が皆泣いた。
もちろんこれは夢の中の出来事で。 眠りながら涙を流しているなんてことには誰も気づかず。
そう、今はただいつものような平和なあたたかい日常が戻ってきているだけで。 それがどれだけ幸せなことだったのか、悲劇のヒロイン5人の子供たちは涙を流した。
このまま、ずっとこのままだったらいいのに。
そんな気持ちが強く頭の中を駆け巡る。 けれど、彼ら彼女らは知っている。 自分達のために、見ず知らずの自分達のために、命をかけてこの奇跡を起こしてくれたひとりの男を。
行かなきゃ。
行かなければならない。 遠い遠い、もう手の届かない場所へ。 僕は私は俺は、もう行かなければいけない。
死というゴールへ。 もう過ぎているはずのゴールへ。 この場所から離れなくてはいけない。
行きたくない。 行きたいわけがない。 でも、あぁ。 分かってるから。
5人の子供たちは思う。 臨時の先生を死なせないためにも帰らなきゃいけない。
だからーーーーーーーーーー
彼ら彼女らは、言いたかったことを家族に告げて、別れの挨拶とした。
ありがとう。 さようなら。
また、いつか……………
■■■
5人の子供たちの身体を片翼で抱く。 治癒魔法をかけて傷だらけの身体を戻した。
眠っているように見えるが、寝息はしていない。 心臓はもう止まっていた。
そんな時。
ありがとうーーーーーーーーーー
声が聞こえた。 きっとあの5人だ。
神ノ解放を解いて顔についた血を袖で拭きながら、黒い沼が消えた地に尻もちを着く。
とてもいい気分だ。 悪くない。 とても、いい気分だ。
荒い呼吸を整えて、少し休んだ後立ち上がる。 離れた場所ではレバニーが生き返り死にを繰り返していた。
死んだ後に誰かを犠牲に生き返るのがレバニーの能力。 ならばその能力を書き換えて、時間魔法などを上手く細工してやればいい。 結果、レバニーは一度死んで、時間魔法の効果で未来の自分を犠牲にして生き返り、過去の自分に犠牲認定されて死んでの繰り返しになっているというわけだ。 自分を犠牲にするために高度な先送り魔法も上手く使っているため魔力の消費が激しいが、その魔法自体を無意識的に使わせるよう全知全能でいろいろしておいたから、レバニー・バンムッチは死を完全に受け入れるまでは、永遠にループするというわけなのだ。
誰かの命で生き長らえてきたんだ。 お前はもうとっくの昔に死んでいる。 それでも死から逃避行を繰り返し、何度も死に直面する。 なにも学ばないな。 まぁこの状態じゃあ思考能力も低下するか。
そんなことを思いながらレバニーを一瞥し、俺は足を引きずって気絶して倒れているディアの元へ向かった。
その時だった。
ズドォォン…………
少し離れた場所になにかが猛スピードで落ちてきた。
疲労と血の足りなさに頭が朦朧とし始めてきて、上手く捉えることができなかったが……
ん、あれは……
「ザーク!?」
空から降ってきたのは、傷だらけのザークだった。
読んでくれてありがとうございます。
次回、時遡り。
エルトとザークは……
次も読んでくれると嬉しいです。
次回の投稿は来週末予定です。




