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半機械は夢を見る。  作者: warae
第3章
60/197

見えてきたのは

楽しんでいただけたら幸いです。

「そういやさぁ、天界都市ってなんで天界都市って呼ばれてるんだ?」

天界都市へ向かっている途中、俺はふと思った疑問についてシエルに聞いてみた。

「んー、なんででしょうね? 博士に前聞いたことがあるけど、その時に言われたのが『それは知らなくていい情報だ。 知ったところで何も得ないよ』と知ってる風なこと言ってたよ」

「なんだそれ」

知らなくていい情報……そう言われると知りたくなっちゃう。 何も得ないのなら教えてくれたっていいと思うんだがね。

俺達は今、この間のフリクエに向かう時にも通った階段を上っている。 天界都市には、基本的には機械街の人は立ち入り禁止なのだが、その警備は緩く、届け物等がある場合などは簡単に入れてくれる。 今回は、ちょうどスートが納品しに行くところだったので事情を簡単に話し、納品のフリクエを出してもらい俺達はそれをクリアするためという口実で天界都市に向かっている。

「そういや天界都市ってどんな所なんだ?」

「えー、エルトそんなのも知らないで天界都市行こうとしてたの?」

露骨に驚き、仕方ないなぁとシエルは持ってる知識を披露するように自慢げに話し始めた。

天界都市クロスピア・ヘヴン。 宙に浮かぶ超巨大な大地の上にあるその大都市は、ビルなど多くの建物がそびえ立っている。 その中心には、周りのどの建物よりも高く立つ大きな塔があり、先端部分は尖っているらしい。 実際雲の中まで高さはあるらしく、誰も確認したことがないらしく憶測で語られているのだそうだ。 空飛ぶ機械もあるが、何故か先端部分までの飛行は禁止とされている。 ちなみに浮かぶ大地についてはシエルも分からないらしい。

「それでね、天界都市は世界一犯罪率が低い、っていうよりもうほぼゼロの都市なんだよ!」

再度自慢げにシエルがまた話し始めた。

天界都市クロスピア・ヘヴンに定められている掟があるらしく、それはきっと国の法律レベルのルールだろうと推測する。 犯罪は駄目ってことぐらい何処でも当たり前のことなのに犯罪が消えることはない。 なのに天界都市ではゼロだと? ずいぶんと大きく出たな。

聞いていくと天界都市の掟はガチガチのルールだった。 まず犯罪駄目。 まぁ当たり前だよなぁと思う。 その大都市では少しの小さな犯罪も全て死刑らしい。 だが今はその掟が少し変わりつつあると言う。 大勢を死刑にするというのも掟に反するのでは、という思想も広がり死刑の代わりに天界都市の浮かぶ地の下、ダーク・サイドという犯罪公認地域に落とされることになるらしい。 ダーク・サイドについてはシエルはあまり知らないそうだ。

そして天界都市ではとても細かく掟が定められていて、とてつもなく息苦しい所だとルーダ博士曰く言っていたらしい。 しかも都市には王族なども存在するらしく超格差社会が構成されているらしい。 だが細かい掟のおかげで奴隷等は存在していないらしいが。 裏ではどうなっているか分からないだろうな。 だが例外もあるらしい。 その場にとある組織の人がいたら、その人が掟関係なしに正しいか否か判断できるらしい。 理不尽である。 だからそいつらがいれば犯罪やりたい放題である。 それを全部正しいなんて判断されたら革命でも起こりそうだ。 逆のパターンもあるらしく、普通では正しいはずの事柄を悪だと断定し決めつけダーク・サイドへ落とされる、なんて事例もたまに起こりうるらしい。 だが、その場合流石に理不尽だとデモが起こる可能性があるため、滅多にないとシエルは教えてくれた。

「なんか……めんどくさいな……」

「そうっ! めんどくさい、めんどくさい! だから、ルーダ博士がいなかったら絶対に行かないよ私は!」

本当に心底嫌がる仕草を見せるシエル。 俺もそれには同意である。

というよりも、そこまでの都市なら普通にデモや革命くらい起きてもいいはずだろう。 何故、都市では誰も何もしないのだろうか。 息苦しくないのか、はたまた勇気がない臆病者の集まりなだけなのか。 それもシエルに聞いてみる。

「そうだよねぇ。 何も起きないのはちょっとおかしいかなぁと思うよ。 しかも犯罪率ゼロなんて現実味無さすぎるし」

こういう場合、絶対なにかが裏で蠢いている場合が多い。 なにかが支配しているのだろう。 暗黙のルールなんてものもありそうだ。

「………なにか、臭うな」

「えっ……わ、私じゃないよ!」

お決まりっぽい台詞が返ってくる。 うん、予想通りだ。 そういう意図で言ったんじゃないんだけどね。

天界都市、隠しているな? なにかを。 天界都市と呼ばれている理由も関係ありそうだな。 そして中心の塔も。 頂上にはなにを隠しているんだ? しかも王族、なら貴族もいるとみていいのか? 王族なら王権を握る者がいるはず。 そして王族の存在がある以上、君主制と見ていいだろう。

一人の支配者が統治する国家形態か。 だが裏で蠢く組織や塔を守る理由。 よくある光景だな。

だが、やはり謎だ。

「天界都市、天界という言葉が宙に浮く大地を指しているとするのなら、まぁ多少納得できなくもないが。 都市ということは、どこまでいったら国になるんだ? もし君主制ならば都市ではなく国名を付けるなどすると思うが。 なにか事情でもあるのか、そうしなければいけない状況下にでもあるのか。なんにせよ、何故『天界都市』と呼ばれているのか、全く見当がつかない」

「くんしゅせい?」

繰り返して首を傾げるシエル。

あらやだ可愛い。 幼い子どもが分からない単語を聞いた時、カタコトでそれを繰り返し聞く姿を連想してしまう。 シエルの容姿でそれをやられると、幼さがいつまでも抜けない少女のようで、なんか、うん。 もう、あれだ。 可愛い。

「ごめんなぁ、シエルは知らない言葉だもんな。 俺のことは無視していいから、足止めずに行こうぜ? ほらほらっ」

おぉっと。 思わず子どもを相手しているような口調になってしまった。 俺気持ち悪い。

「なんだか……不快感を感じざるを得ないよ!」

一瞬考え込む仕草をして、笑顔で俺に突き刺すごとく言葉の槍を放つシエル。

先程のロリコン的思考と自分の急な口調変化のせいで、その槍は俺の心という名の的に的中した。

だが。 と、俺の中で脳内会議が開かれる。 ちなみに現実では俯きながらシエルの後を追って歩いている状態。

いやいやでもでも! さっき可愛い仕草をやったシエルが悪いと思いまーす。 カタコトで繰り返し聞く言動。 外道であります。 いきなりの不意打ち酷いであります。

そーだぜっ! 可愛いは全てにおいて弱点! 可愛いは正義、可愛いに穿たれたこの心は一般的にも理解いただけるもののはずだっ!

だが仕方ないのでは? ここは異世界であり日本、地球でもありません。 しかも槍を撃ち刺したのは、言ったご本人。 自分の可愛さに気づかないのはごく普通では? もし気づいていたのなら、そこにわざとらしさが加わり、ぶりっ子認定せざるを得ない状況となります。

よって、言ったご本人の言葉なので仕方ないということだ。 刺されて当たり前だろう? お前もそれなりに気持ち悪い台詞を吐いたのだから。 これが結論である。 終了!

「仕方ない……うん、俺もキモかったし。 仕方ないなっ、うんっ!」

あのようなことを言われても仕方ない! 俺が気持ち悪かったのが全ての元凶だ……っ!!

「ど、どうしたの? エルト、さっきから様子変だよ……?」

「あぁ、大丈夫だなんともない。 もう全て、終わったから……」

「いやエルト。 まだ天界都市入ってもないし、何も始まってないよ?」

心配するシエルの目線が妙に痛く感じる。

俺はそんな目線から逃げるように走り出した。

「っ………置いてくぞシエル!」

「あ、いきなり走るなんてずるいよー。 なにか隠してるでしょー」

少し走って、いきなりシエルが立ち止まる。

「ん?」

「ねぇエルト。 さっき思ったんだけどさ。 ……これが、なんか臭うって、ことなんじゃないかな?」

その日シエルは直感的に異世界の言葉のひとつの意味を当てたのだった。

この数時間後天界都市が見える所までたどり着く。

日はまだ傾いてもいない。

■■■

「はぁ……はぁ………」

汗が流れるように出る。 タオルが欲しくなってくる。 が、そんなものを俺は今所持していない。 シエルももちろん持っていない。 服で汗を拭い、数時間かけてたどり着いた末に今見ている光景に俺は驚きを隠せず目を見開いていた。

「なんじゃぁ………こりゃぁ……」

荒い呼吸を少しづつ安定させながら、目の前。 あと数十キロ先の光景。 宙に浮かぶ超巨大な大地とその上にそびえ立つビルの圧巻さに俺は、話に聞いていた通りの光景に俺は、ただただ感嘆による溜息を吐くことしかできなかった。

「私も初めて来たよ……話に聞いていた通りだね。 でも、ここまで迫力があるなんて、凄いね……」

まるで初めて見た物に感動し目を輝かせるようにシエルは、少々興奮状態でいた。

ていうか、どういう原理で浮かんでやがるんだよ。 こんな馬鹿でかい大地をよぉ……

快晴の中、濃い色合いの超巨大な大地は、向こう側の空が見える程宙に浮いていた。 その上には空高くそびえ立つビルがいくつも建ち並んでいて、まるでビルが都市を囲む城壁のような雰囲気すら感じる。

そして、なにより俺が凝視したのは。

「シエル、見えるか……?」

更に遠く、微かに見える高い建物。

「うん。 距離は遠すぎて、もう少し分析が必要だけど。 あれはきっと、中心に建つ塔、だね。 薄らとしか見えないのが不可解なんだけど、たぶんなにか魔力障壁のような妨害障害魔法かなにかがビッシリと周りにかけられてる。 人の警備が緩いなんて言われてるのもそのせいかもね」

「やはりか……」

警備は厳重の方が良いに決まってる。 だが、今までの結果から見るにその障壁はとても効果的なものと判断し人の警備の方は、その障壁を頼り信用しているせいで緩くなった。 まぁそのおかげで物資の流通もしやすくなって、結果的には警備は緩いまま維持していくなんて事にでもなったんだろうけど。

「まぁ考えてても仕方ないし行こうっ!」

感情に任せるがごとく、シエルは歩き出す。

こういうところ見てると本当に半機械人間なんて思えないよなぁ。 機械的思考からちゃんとした人間的思考に変わっていっているのが、なんか成長を感じる。 これももしかしたら擬似的自我内のプログラムだったりしてなぁ………………まさかな。

「それにしても女の子っぽくなったなぁ……」

………はっ! また意味深発言をしてしまったっっ!!

軽やかなシエルの足踏みは硬直して、顔がギギギと音をたてているみたいにこちらを振り返る。

「それ、前までは女の子っぽくなかったってことですかぁ?」

あれ、もう普通の人間じゃないすか。 こういうことでもいちいち苛立ちを見せる辺り、俺はシエルにちゃんと人の心を教えてあげれているってことじゃないすかね。 ねぇそうだよね。 ね?

自分は何もしていないのに、なんか自分がなにかを達成したような変な気持ちになる。

最初はあんなに機械じみていたのに……今は……ぐすっ。

顔に影がかったシエルは、謎の感動を感じている俺の胸ぐらを静かに掴むと、瞬時に大地の方向へ投げ飛ばす。 だからと言って天界都市に着くわけじゃないけど。

そして俺が地に着く直前に猛スピードで走るシエルにお姫様抱っこでキャッチされた。

「早く行くよっエルト!」

「……はい」

人間っぽくなってきたけど、これは普通の女の子じゃないっすわ。

そんなことを思った今日この頃。

シエルに投げ飛ばされても、それでもまだ天界都市地下のダーク・サイドという地域はまだ見えなかった。

読んでくれてありがとうございます。

次回はついに天界都市の中へ……

次も読んでくれると嬉しいです。

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