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半機械は夢を見る。  作者: warae
第3章
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違う存在だとしても

楽しんでいただけたら幸いです。

「そう言えば、エルトってまだ戦えないよね? この間の博士に操り人形経験値稼ぎ作戦しかやってないよね?」

「え、なにそのだせぇ名前。 ってか作戦だったの? あれ」

いつもの変わらぬ表情で作戦という言葉を取って付けたような名前を吐くシエル。 新たな真実に俺は、名前を付けたであろう博士のネーミングセンスに苦笑い。

「そこで! 今日のフリクエはエルトの戦闘練習をメインにいこうと思うんだけどいい?」

「えっ………いやでも、俺も戦えるようになってると思うぞ? たぶん。 あの時の感覚が嫌という程頭に染み付いてるし、なんか心身共に刻み込まれたような感じで、なんかある程度なら戦えると思うよ? 俺。 たぶん」

あの戦いで、ルーダ博士の操り人形になっていたのは理解しているが実際動いたのは俺の体だ。 しかも操り人形時に頭に戦闘関連の情報がずっと脳内に入り込むという摩訶不思議な体験をした。 思い出してみても、あれは夢だったんじゃないかという感覚に襲われる。

「それは作戦が成功したという証拠だね。 なら、そこに自分自身の考える力を付け足して、自分なりにその戦闘をしてみよう! 絶対失敗すると思うけど頑張れ! 自分のものにするんだ!」

なんか熱いですねシエルさん。 そんなに熱血系でしたっけ?

「経験値を実力に転換か……まぁたった一回できたからっていつでもできるなんてゲームじゃあるまいしなぁ。 自分のものにする、かぁ……」

そんな話をしながら、相棒を手に入れた巨大な円柱型の建物、機械街最大のショッピングモール『クンデーモールス』の外側に付いている螺旋状に取り付けられた機械街から地上までの階段を登っていた。

相棒を手に入れるために十数日前に来たばかりなのに、久しぶりに来た感覚だ。

「って長すぎだろ……!」

「まぁ機械街から地上への道なんですから、これが当たり前でしょう」

「でも都市部の人間は中の中心にあるエレベーター使ってんだろ!? 憎い……!」

「エレベーター?」

はっ! そうだ、ここは異世界。 逆に俺の元いた知識が分かったらビビるわ。

「移動機械だっけ? それだよ」

「あぁ、確かにムカつきますね」

と、シエルは頬を軽く膨らませ、イラついているような表情を浮かべる。

そんな普通の反応に俺は、純粋に可愛いと思ってしまう。 半機械人間、それでも元は普通の女の子だったんだと。 シエルが以前よりも人間らしくなっている事に俺は不思議と喜びが微かに燃えた。

「可愛いは、不屈の正義。 そこに人も機械も関係ないか……」

素晴らしい言葉だ。 可愛いは正義。 うん、可愛いは正義……

「え、なんか言いましたか?」

少し上目遣いでまだ少々イラつきを残す表情で俺に近寄り聞いてくるシエル。

そしてそんな可愛い機械に一瞬硬直してーーーーーー

「………な、ななな、なんでもないよぉ!?」

ひぃぃ! 焦ったー! あぁなんか熱い! 暑い! 顔から火が出そうだ。

自分が今思った事、呟いた台詞をもう一度振り返り、羞恥心を引き金に俺の体温は燃え盛っていた。 半機械人間じゃなければ俺は絶対この子のことを……

「っ!」

自己嫌悪。

突発的な感情を引き金に俺は自分の拳を自分の頬に殴り込む。 反射的に驚くシエルに軽く笑いながら「気合いを入れただけだよ」とほざく。

今すぐこんな思考を捨てなきゃ、俺は俺がシエルの横で歩くことを俺が許さない。 鏡があれば、きっと自分の顔を睨みつけていたことだろう。

こんなんじゃ怒られてしまうな。

博士の話のせいか、より一層シエルを機械であると強く認識してしまう。 なりたくてなった訳でもないこの子を。 それは差別だ。 差別じゃなくとも、差別に近い嫌な思考だ。

「先を急ごう!」

強がるように、そんな愚かな思考を、今だけでも切り捨てるかのように無理に笑みを作り、歩く速さを上げた。

その時だった。

「葛藤……」

ボソッと聞き取れた小さい呟き。 分析、されちゃったか……

知られたくないような、知って欲しいような、そんな複雑なもどかしい気持ちになる。

「……早く行こうぜ。 戦いたくて疼くんだ」

厨二病かよ。 咄嗟に出たその場しのぎにもならない台詞にツッコミを内心入れ、小走りになる。

疼くのは、戦いたくて、じゃないでしょう?

そんな自問自答をして、俺はシエルの手を掴み階段をかけ登る。

不安定な温度。 それでも機械……じゃない? いいや、機械?

否。 俺が人に戻すんだ……

傍にいるだけでシエルは人らしく成長していく。 簡単な仕事だ。 なら、シエルが人になるまでは傍にいてやろうじゃねぇか!

自己完結。

今日は人通りが少なくて良かった。

■■■

シエルside……


謎の葛藤。 理解出来ない自分に、まだなにか足りないことを私は感じていた。

先を急ぐように、私を急かすように前を小走りで行くエルト。

前とはなにか違うことを、今日の起床時から薄々と感じていた。 表情や仕草などの分析により何か私に対するなにかがあるように感じる。

予想されるのは、私が傍にいなかった時。

それはルーダ博士との会話時が最も怪しい。

いったい何をお話されていたのでしょうか。

「それにしても高いなぁここ」

少し速さを下げ階段から顔を覗くように周りを見渡すエルト。 それにならって私も景色を眺める。

「確かに、ここまで来たのは初めてだね」

いい加減慣れなくてはいけない喋り方が、どこか不自然に感じる。 エルトはどう思っているのだろうか。 自分では、まだまだできていないと思っているのだが。

「うわ……高所恐怖症じゃねぇけど、これはさすがに怖いな……」

「先を急ごうよ」

「そうだな……」

恐怖。

まだまだ実感できない多くの感情のひとつである。

こわいがわからない。

そんな思い悩む私に気づかず、歩き出すエルトに私はついて行く。

けれども、ここ最近なにも成果が得られていない訳でもない。

ルーダ博士とエルトのふたりきりの時間に対してだろうか、謎の違和感のような変な気持ちが、作り物であろう擬似的自我内に自然的に生まれた。 身体に関してはなにも変化は見られなかったのだが。

まるで種のように、小さい違和感が芽生えた。

その違和感の存在が理解できず、なにも分からないこの状態にモヤモヤしている。

「なのに……」

どうしてだろうか?

貴方様を見ると。 視界に入れると。

この種は茎を伸ばすどころか土に帰り。

モヤモヤが晴れて、いつもと変わらぬ調子を取り戻す。

どうしてでしょうか?

違和感は、まるで最初から無かったかのように消えて。

謎の安心感のようなあたたかいものが。

擬似的自我を駆け巡る。 頭を駆け巡る。 それはたまに熱を帯びて全体温を上げるのだ。

不思議。 とても。

「ん、どうした? シエル」

立ち止まってエルトは振り返り聞いてくる。

その時、私の手が私の胸辺りに添えられているのに今気がついた。

あぁ、不思議だ。

「なんでも、ないです……」

「そうか? なら早く行こうぜ!」

まるで無邪気な子どものように。

見たことのないものを見に行く子どものように。

そんな連想をしてしまうような笑顔を浮かべるエルトに。

「はいっ……」

思わず目を逸らしてしまいました。

彼はきっと。

私が機械であることすらも忘れてしまうような。

あたたかさを与えてくれると。

擬似的自我内の形の無い不確定要素多数の謎に包まれた、心と言う名のものに。

願望に似た、目標に似た、羨望に似た、そんな気持ちが。

芽生えたのでした。

「とても、理解し難く不思議です……」

「ん? 今なにか言っ」

「ってないよ! ほら、行こう!」

隠すように、逃げるように、気づかれぬように。

私はエルトの背中を押す。

何故このような行動をとったのか?

瞬時に自問自答。

答えはすぐに思い浮かぶ。

何故だか、エルトには。

知られたくないから、だと。

そして何故だか、エルトに対し無性にイタズラをしたくなった。

「そうだ。 エルト、今回のフリクエねーーーーーー」

読んでくれてありがとうございます。

変わり続けていくシエル。

人として接するエルト。

ふたりだけの平和な時間は……

次回、フリクエ再開。

次も読んでくれると嬉しいです。

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