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半機械は夢を見る。  作者: warae
第2章
45/197

恐れず逃げずに

少し長めです。

楽しんでいただけると幸いです。

「ぐすっ……」

目が覚める。

視界はこれでもかと言うほどにぼやけていて、頬は何線も濡れた跡があった。

私は今も溢れる涙を拭い、立ち上がる。

「行かなきゃ」

こっちの世界ではあまり時間は経っていないはずだ。

急いでカインを見つけなくてはいけない。 そして無事地上に戻るのだ。

そう決意を改め、私は走り出す。

そして一歩目を走り出した、その時だった。

ゴゴゴゴゴゴ……

「っ!? 地震!?」

突如地が揺れる。 振動が全身に伝わる。

地上で何かあったのか? いや、だが……

地に手を当ててみる。 やはり地下からだ。

「こんな時に……!」

続く地震により転びそうになりながらも、螺旋階段を走り出す。

真ん中は光の柱により地下まで穴が空いているが、高すぎて危険だ。

走り続けている中、途中から熱を感じた。 空気が変わる。 まるでサウナにいるような暑さに変わってくる。

この尋常じゃない暑さ、まさか地上で放った火の海の影響がまだ残っているのか? 全て消したと勘違いしていたのか。 急がなきゃ!

焦りだす私に追い討ちをかけるように、光の柱によってできた穴深くから高熱エネルギーを感じ取る。

まさか、この気配は……!

いきなり穴深くから光の柱が作った道を走るように、穴を埋めるほどの火柱が勢いよく突き抜けていく。 それらを囲むように位置している螺旋階段にも微量の熱エネルギーが飛び散った。 私じゃなかったら死んでいた。

「いったい誰が……? いや、今はそんなことよりもっ!」

止めていた足を動かす。 暑さなど気にせず走る。

ただただカインの無事を祈って。

二度と味わいたくない悲しい別れに怯え。

力強く階段を降りていく。 だが、下に行くにつれて弾けるように飛び散る微量の熱エネルギーが更に量を増していく。 次第に降りる階段は火によって足場が少なっていく。 それでも前へ。 カインの元へ。 その一心で走り続けた。

「カイィィン!!!」

叫び声。 届かずとも叫ぶ。 彼の名前を呼ぶ。

当然のように火柱の音にかき消され、返事などくるはずもない。

分かっていても、彼の無事を求めて叫んだ。

■■■

カインside……


ルーダが過去との対峙を終え、もうひとりの自分との別れを告げた後の頃。

カインは不思議な現象と対峙していた。

「今までにも何回か見たことがあるんだが……全知よ、これはいったいなんだ」

画面の中、電子世界にいるのは俺達だけのはずなのに突如現れた小さな光達。

俺の問いに、男か女か分からない野太い声が返ってくる。

『罪の産物。 貴様には到底辿り着けぬものが生み出したものの一種だ』

「罪の産物……」

返答で言った言葉をそのまま繰り返し呟き、目の前にいる現象を見て考え込む。

この光は、いったい……

その時、

『ありがとう』

「……えっ?」

唐突の感謝に気の抜けた声が漏れる。 それよりも目の前に浮かぶ小さな光達から声が聞こえたのに驚愕を隠せずにいた。

まさか喋れるのか。 意思疎通が難しいとは想像していたのだけれど、予想外だ。

『これからもルーダのことをよろしくね』

『あの子は不器用だから優しくお願いね』

『ルーダは恩人だからね』

『恩人の恩人であるカインも死なないように頑張ってね』

『あなたまでいなくなってしまったら悲しんじゃうわ』

『そうだね』

『悲しんじゃうね』

『ルーダが悲しいなら私も悲しい』

『私も私もっ』

『涙なんか出ないのに、泣いちゃうからね』

『悲しませたら許さないんだからねっ』

各々喋り出す光達。 それに圧倒されてしまう。 この感じ懐かしいな。

その後、いろいろ省略されていたと思うけど、簡単に光達はルーダの先程までの状況を教えてくれた。

ルーダとルイダ、か。 結局はどちらも同じはずなのに、仲良くというのはやはり難しいものなのか。 ルーダ……

「………でも、今俺はこんな状況だし、きっとルーダを悲しませてしまう。 もしかしたらもう会えなくなるかもしれないんだ。 なんとかここから出られればいいんだけど」

頼まれたすぐに、悲しませてしまうかもしれないと言ってしまう弱気な自分に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、悔しそうに俺は今の状態を話した。

『そうかぁ。 それは災難だったね』

『でもルーダと比べたらちっぽけなもんだよね』

『そうだね』

『ルーダはとても、とてーも頑張ってたんだから』

『長い長い時間ずっと、ずーっと耐えてきたんだから』

『そうだね』

『こら、比べるもんじゃないのよ。 こういうことは』

『そうだね』

『『おい!』』

『あははは……じゃあ、どうしようか』

『うーん……』

光達が話しているけど、どれも小さい光でひとつひとつにあまり変化がないから、どれが喋っているのか分かりずらい。

「ここから出れないことはたぶんないだろうけど、今すぐってのは難しいな。 さすがに時間が少なすぎる」

せめて死んでいないことだけでも伝えられたらいいのに。

そうすれば幾分かは悲しませなくて済む。 きっと。

『なら私達がルーダの元に戻って、カイン死んでなかったよって教えればいいんじゃない?』

『それだ!』

『その手があったな!』

『駄目ですよ。 今戻ったらルーダに取り込まれて、また不安定な状態になってしまうわ。 私達がルーダのエネルギーを無意識下に吸い取って生き長らえようとしてしまう。 ルーダは根は優しいから、無意識的にそれを許してしまうと思うの』

なんかさっきから、一人……いや、ひとつ? だけネイチャンのような話し方の光がいるなぁ。 親戚とか? はないか。 光だし。

「なるほど……じゃあ文字とか書いて伝えるのが妥当かな」

と俺が言い終えた瞬間、

ピキッ……

空間にヒビが入る。

「っ!!?」

ちょっと待て。 ここは画面内の電子世界のはず。 要はデータの中、仮想空間と言っていい。 そんな空間にヒビだと!?

『見つかった!』

『見つかっちゃった!』

『早く帰らなきゃ!』

『早く早く!』

いきなり焦り慌てる光達。

『早すぎる……』

「いったいなんだ、あれは」

全知に聞こうと辺りを見回すが、あの姿はどこにもいない。

こんな時に……!

ヒビは少しずつ広がり、空間に人の頭程の大きさの穴が空いた。

穴の奥からは手をこちら側に伸ばそうとする姿が見えた。 がこちら側の空間に入れないのか壁に激突したかのように奥から伸びていた手が止まる。

『ん? あぁそうか。 時間が違いすぎたか』

そんな男の声が奥から聞こえてくる。 そうして手が一度奥へと消えたが、またすぐに伸びてくる。 ヒビが広がりながら。

『逃げなきゃ逃げなきゃ!』

『どうしようどうしよう!』

『とにかく脱出を』

『あれ、動かない!?』

『なんで!?』

完全に取り乱している光達。 ここは俺が守らなきゃ。

光達と今も広がり続けるヒビの間に立つ。

『無茶です! あなたでは勝てません!』

『無理だよ!』

『無駄死になんてしたらルーダ悲しんじゃうだろ!』

「それでも、ルーダの一部だった者を見捨てられるわけないだろ」

空間が割れる。 奥からは人の形をした影が出てきた。

「ん、そうか貴様か。 だが、どうやら我の姿がまだ見えていないようだな」

「容姿はよく見えないが、どこにいるかくらいまでなら見えるさ。 まるでシルエットだな」

なんだこの違和感は。 俺はこいつと会ったことがあるのか……?

「まぁよい。 後ろのそれを回収するために、わざわざ我が来たのだ。 そこをどいてはくれぬか」

「どくと思うか?」

俺が挑発地味たことを言うと、奴は笑った。

「なるほど、知らぬが仏か。 知らぬからこその……ふふっ、面白い」

最後の言葉を言うと同時に奴は俺の目の前にいた。 音も無く近づいたのか!?

「ならば、試してみるがいい。 その強さ我に示してみよ」

顔を近づけてくる。 挑発を挑発で返すか。 この野郎……

全力じゃなきゃ勝てないと、いや、それでも勝てないかもしれないと。 本能が訴えかけてくる。 だけど、

「ここで勝てなきゃ、意味ねぇだろ……」

独り言、呟く。 何故か、さっきから震えが止まらない。 情けねぇ……!

俺はルーダを守るために……!!

「全知よ! 全能よ! 我と共に戦え、同調(シンクロ)! 」

今こそ限界超えるときだ。 全身が軋む音がする。 莫大な力の代償など考えない。 今ここで奴を倒しておかないと後悔する気がするから!

その時、奴はあまり早くない速さで構えて殴ってくる。 その拳は弱々しい乙女のパンチのように誰でも避けられるような速度のパンチだった。 なのに腹辺りから下が全く動けずにいる。 俺は困惑しながらも両腕をクロスして、そのパンチを防ごうとする。

そして、相手の拳が俺の腕に付いた瞬間、いきなり強烈な力が相手の拳に加わり防ぎきれず後方に吹き飛ばされる。 腕はもうピクリとも動かない。 それどころか、呼吸困難に陥ってしまった。

「相当な手加減をしたというのに、こんなものか」

その後光達に向き直り、触れようと手を伸ばす。

「やめ……」

一度俺を一瞥した後、奴は光達に触れた途端。 その場に浮いていた光達全てが消えた。

「っ!」

「安心しろ、意思は邪魔なだけだから帰してやった。 さて弱き者よ、我はもう失礼するぞ」

「はぁ……はぁ、待、て……」

「待たぬ」

そう言い残し、空間の穴の奥へと消えていく。 そして奴が見えなくなる頃、穴はみるみる埋まっていった。

「く……そ……」

ルーダに合わせる顔がない。

俺は、どうしたらいい……?

その場に蹲る。 そんな体を、先程の全知の力の代償が襲う。 体内に無理やり溜めた力の強制放出。

『火柱』

男か女か分からない野太いあの声が聞こえる。

「あ……?」

途端に体中が燃え始める。 それは次第に更に熱く大きくなっていき……

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

炎が溢れ出す。 その炎が出口を求めて、光の柱でできた穴へと向かい地上へ火柱ができる。

『生命を燃やせ。 それが代償。 だが今回は運がいい。 ここは電子世界だ。 復活など容易かろう』

声だけが耳に響き、姿は見えない。 俺はただただ燃えて焼かれていった。

来ないでくれ、ルーダ。 こんな惨めな俺を見せたくはない。

いや、こんな俺すらもう見せられないんだったな。

もう会えないのかな。

そんなことを思いながら、熱さに痛みに苦しみに襲われながら。

ただ、遠くから近づいてくる足音を聞いていた。

読んでくれてありがとうございます。

次回、再会……?

次も読んでくれたら嬉しいです。

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