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半機械は夢を見る。  作者: warae
第2章
40/197

外と内

今回はあまり長くはないです。

楽しんでいただけると幸いです。

「待ってよ。 行かないでくれ」

手を伸ばしても届かないこと。 もう知っている。 溢れ出るこの気持ちは、もう知っている。 いつか感じたこの気持ちは。 記憶は覚えていなくても、頭が覚えている。 感じた事実だけが残っている。

一本の道。 先にはお前さんがいて、私はあの日々を取り戻さんと走り続ける。

あぁ、気づいているさ。 どんなに頑張って走ったとしても。 お前さんと私の距離は縮まることはない。

ありがとうなんて言わないでくれ。 さよならなんて言わないで。 聞きたくねぇそんな言葉は。 別れたくない。 まだ一緒に……

「行かないで!!」

■■■

「っ!」

ガバッと起き上がる。 近くにはカインではなく11546が傍らにいた。

「か、カインはどこに行った!?」

死んでしまったはずのカインが何故かいないという目の前の事実に、私は焦りだす。

「落ち着いてください。 カイン様はビーダ様に連れられて何処かに行ってしまいました。 なのでカイン様はここにはいません」

冷静に11546は教えてくれた。 私が眠っていた時のことを。 だが未だに帰ってくる気配がないらしい。

ビーダがカインにとどめを刺すとも考え難いし、いったい何が起きているのか見当もつかない。

「とにかく、ビーダが向かった方へ案内してくれ」

「分かりました。 ではあちらの」

ズドォォォンーーーーーー

頭上より遥か高い場所から爆発音が聞こえる。 直後には様々な機械音が……

「この音は飛行船……?」

「どうやら地上で何かあったのかと思われます」

何かあっただと? 地上は今いったいどうなっているんだ。 しかもこんな地下深くまで音が響くってことは……

「聞いたことがある。 確かグリン室長が雑談で、核都市には巨大な空間があり、緊急時のひとつの手段として巨大飛行船での迎撃することがあるとか」

「なら、この音はやはり飛行船の音で間違いなさそうですね」

「まさか本当だったとはな。 グリン室長は核都市出身だったのか」

なら、あの話も本当なのか。 これはまずい状況だな。

「11546! 今すぐにカインとビーダを見つけて脱出するぞ! ここは、いや。 この都市にはもういられない」

「了解しました」

いつか私だけに言ったあの話。 改造本部に手を出させないよう、わざと戦闘経験が豊富である私だけに話したあの話が事実だとしたら、この都市で皆死んでしまう。

その時

ブオォォォォーーーーーーー

「っ!?」

頭上からの叩きつけるような風。 光の柱により空いた穴の出入り口には巨大な飛行船が飛んでいた。

「急ぐぞ! どうやら悲しんでいる暇はくれねぇみたいだ」

あぁクソったれ! カイン、無事でいてくれよ……!

■■■

「見つけました!」

死体の川から抜け出て、ビーダとカインを見つけるため上の階の部屋を探し回っていた。 どうやら11546が見つけてくれたらしい。 私も探していた部屋を出て11546の声がした方へ向かう。 その部屋にはビーダだけがいて、彼女は何故か泣き崩れていた。 ビーダが泣くなんてなにがあったんだ。

「ビーダ! 私だ、ルーダだ。 もう大丈夫だ。 大丈夫だから!」

震え泣くビーダの背中を優しく擦る。

「いったい何があったか教えてくれ、ビーダ」

その問いかけに、ビーダは震えながらも口を開ける。

「カインが向こう側に消えちまって」

目の前にある壁一面覆い隠している大きな画面を指さして言い、

「バーオリーが。 バーオリーが……死んじゃった……」

力なき拳で、静かに床を叩き俯く。 涙の勢いが増す。 床に落ちる。

「もう、ふたりはいねぇ……」

いねぇんだ!!! 顔を天井に向け叫ぶ。 涙が頬伝い床に落ちていく。 そのような姿はまるで自分に言っているような。 そんなビーダを、自分と重ね見る。

だからだろうか。

ビーダを、抱きしめる。

ビーダの耳元で言う。

「生きて、帰ろう」

もう分からない。 こういう時、なんて言葉をかければいいのか。 ほんの数時間前まで同じ状況にいた私でも。 分からない。 分からない。 これは、まだ知らないんだ。

「あぁ……」

一生懸命涙を拭って、ビーダは弱々しく返事をする。

「11546、ビーダを背負って行けるか」

「可能です」

「よし、ビーダは11546に体を任せろ」

拭いきれていない目から手を離し、

「まだ動けらぁ!!」

涙目で強気のいつものビーダが返事をする。 でもきっと、その目は無理してる。

「いや、休め。 お前さんはまだ泣いてろ」

軽く頭を撫でて、優しく言う。 まだ泣いてていいんだ。 心の中、お前さんの本心でも叫んでろよ、ビーダ。 誰だって初めては難しいんだ。

「でも……」

「よし11546、ビーダを背負え。 行くぞ!」

カイン。 必ず探しに戻ってくるから。 待ってて。

巨大な画面を見つめ思う。 分からないことだらけだけど、そこにいるんだろ? ビーダの指さした画面を見て、想い思う。

「行きますよ。 ビーダ様」

「ちょ! 待て、下ろせ!」

涙目で言うビーダに構わず、地下脱出へ足を動かす。

■■■

カインside……


そのような光景を画面内電子世界から見ていた。 部屋から3人が出て行く。

バーオリーが命懸けで俺を生き返らせてくれた。 結果俺は電子世界でデータのような存在として生きられるようになった。 バーオリーの最期の能力によって。

俺はどうやら全知の能力もあってか、俺本体のまま電子世界に居るらしい。 とても不思議な感覚。

でも、そんなことをした結果バーオリーは死んでしまった。 死体が残らないほどの爆発、そして俺だけが見ていた、バーオリーが自分の爆発からビーダを守っていたこと。 光のバーオリーがビーダの前に立ち塞がり爆発から守った。 だがビーダはバーオリーの爆発に気を取られていたのか、目の前の光のバーオリーには気づかなかった。

「あれはいったいなんだったんだ」

ほぼ光でできたバーオリー、だがバーオリー本体と思われる体は爆発に飲み込まれていた。 バーオリーが2人いるように見える光景。 首を中心に爆発したバーオリーと光のバーオリー。 あの光はいったい………

ビーダには見えていなさそうだったし、俺にしか見えないのか? 俺が一度死んでいるから? なら、似たような現象のあの少女の最期はどう説明する。 ルーダにも見えていたはずだし。 あの少女の抜け殻であるものが11546で、11546という自我は、改造後の半機械人間の機械の自我。 光は人の心? バーオリーはもう死んでしまったから聞くこともできない。

「バーオリー……」

お前が死ぬとは思わなかった。 改造時にも才能をたまに見せたり、たまに頭良いこと言ったり、すげぇなって思ってたのに。 思わず、バーオリーを全知で調べてしまいそうになる。 その時、バーオリーの姿が脳裏に浮かんだ。

「やべっ」

ん? バーオリーは何処かをずっと真剣な表情で見ていた。 その先は、俺とグリン室長が初めて戦ったあの……っ!? 待て、バーオリーは俺の部屋の地下室にいたはず。 まさか、本当に2人いるのか……? だとしたら、今の今までに一度も全知について質問しないのは何故なんだ。 バーオリー、お前はいったい………


突如声が聞こえる。 またあの声だ。 野太い男か女か分からない声。

『汝、それ以上考えるな。 あの者達に勘づかれてしまう』

あの者? 誰だよそれは。

『時期に分かる』

なんだそれ。 隠し事か。

それからは返事をしなくなった。


全く何が何だか分からない。

「はぁ……」

ため息を吐く。

これからどうしようか。 これからひとりきりの世界で生きていくことになったが。 別にバーオリーを恨んじゃいないが、素直に感謝……はまだできない。 きっとできる日がくると思うけど今じゃない。

「ビーダ達、ルーダに一旦別れを告げなきゃな。 バーオリー、お前もお前で頑張ってくれた。 ありがとうな。 そうだ、気づいてたか? バーオリー。 ビーダはな……」

そこで言葉を切る。

これはやっぱ本人が言うべきだな。

さてと、これからどうしたものか。 ひとり、画面内から誰もいない部屋を眺め考え込む。

その時、

ビキビキッ………!!

天井が崩れ、

ズドン……

「最後に話でもしねぇかい……こんな老いぼれと」

そこには地上にいるはずのロッカスがいた。

「おいおい、俺はこっち側にいんのにどうやって話すんだよ」

「その全知とやら使えばできるんじゃろ?」

どうやらロッカスには俺が見えているらしい。 そして俺の口の動きから話していることを予測してきた。

「全知よ、境を失くし我と老いぼれを繋げよ」

するとロッカスは笑う。

「ハッハッハ、老いぼれかいのぉ」

「お前さんが自分で言ったんだろ」

笑い終わった後、少しの沈黙……

そして口を開いた。

「知りに来たってことは、ここで落とす気か、ロッカス」

「艦隊も動きを見せたんじゃ。 わしはここを墓場とする」

「そうかい」

「あぁ」

ロッカスはその場に座り胡座(あぐら)をかく。

俺もその場で同じようにする。


その頃、ルーダは地下脱出のため階段を駆け上がっていた。

読んでくれてありがとうございます。

次回はロッカスとの最後の対話……

次も読んでくれたら嬉しいです。

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