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半機械は夢を見る。  作者: warae
第2章
38/197

青空の下に僕はいない

少し長めです。

楽しんでいただけると幸いです。

ルーダside……


「どう……して……」

カインなの……?

あれもカインだったの?

さっき戦ってたのもカインだったの?

どうして、私は。 私は。

気づかなかった、の?

深々くカインの腹に刺さる剣を見る。 その剣を持つ自分の手を見る。 そしてゆっくり視線を戻して。 そこにいたのは、いつものカインだった。

微笑んでいた。 優しく。

刺されているのに。 私に刺されているのに。

痛いはずだ。 痛いはずだ。 痛いはずだ。 痛いはずだ。

なのに……

どうして、私を見て優しく微笑むんだよ。

カインの方が痛いはずだ。 はずなのに、私は胸が痛い。 痛くないはずなのに痛い。

あぁ、なんてことを。 私が手にかけたのだ。

許されないことだ。 カインが、カインが死んでしまう。

無数の懺悔が頭の中をぐるぐる駆け巡る。

■■■

カインside……


「大丈夫だよ、ルーダ」

優しく微笑む。

だって、ルーダはなにも悪くない。

自分の過ちにすぐ気づき、涙を流しているのに。

怒れるもんか。

怒れるもんか。

怒れないよ。

さっきの機械達の意識に触れて、そこで初めて機械ひとつひとつに自我があることを知った。 悲劇のヒロイン達のようだ。

何故、気づかなかったのか。 悲しみ、怒りを感じたあの時間。

それらが、あるひとつのことに確信を持つきっかけとなり、俺自身とても悲しかった。

だから、怒れないよ。

だってーーーーーー

「ねぇ、ルーダ」

胸に刺さっている剣も、光により傷ついた体も、戦闘によって傷ついた体も無視して。

ルーダを見る。

ルーダは動かず震えていた。

きっとどうしようってパニクってるんだろうな。

そっと、俺は手を伸ばし。 ルーダの頭を軽く優しく撫でる。

「今まで頑張ったな。 ルーダ」

この言葉が指すことを、ルーダは知っているはずだ。 でも、ルーダが俺がそんなことを知っているだなんて思いもよらないはずだ。

その時、頭上から騒音が聞こえる。 地下に響き渡る。 まだ戦いは終わっていない。 でも今だけは。

瞬時に、能力を絞り出して本部丸ごと能力圏内に入れ、大きい丸い球の形を形作った、俺の力で本部を囲む。 その内側にある全ての時間を遅くさせ無音の魔法を全域に放った。 ルーダと俺以外の全てに。 それを瞬きひとつでやる。

すると、先程響いた騒音が聞こえた頭上から本部の一部であろう瓦礫が雨のようにゆっくりと音もたてず降ってくる。 小さい物から大きい物まで。 ゆっくりと。

「ルーダ」

呼びかける。 俯いていたのか、俺にそう呼ばれるとビクッと反応しこちらを見てくれた。 まだ震えている。 悲しみの表情を浮かべて。

「ルーダも同じだと、感じたんだ」

そうだ、ルーダもあいつらと。

それでも、ルーダはなんのことか分からず戸惑っている。

「それでもルーダはルーダだと俺は思ったよ」

理解できない、分からない。 そんなことが顔に書いてるみたいな表情で、再び溢れそうな涙を堪えて口を開く。

「分からない、分からないよ。 でも私は、カインに。 カインを……」

ルーダはここまで成長したんだね。 これを口にしてしまうと上から目線に思えてしまうから言わないけどさ。

「大丈夫だよ、ルーダ」

「でも、私は! 私は、私っ。 私は!!」

俺は胸に刺さっている剣に触れた。 すると剣は溶けるように消えた。 直後俺はルーダを抱きしめる。 それでもルーダは震えて、

「私は、カインを。 カインを殺してしまったっ。 なんで気づかなかった。 どうしていつもこうなんだ。 私がやってしまった。 私はまたやってしまった。 カインを、この手で。 この手で。 殺して……。 死なないでカイン。 でもそんなこと言う権利なんて私は。 でも、死なないで死なないで。 もう嫌だから、またあの時のようになんて。 汚れてしまった。 汚してしまった手は。 手が。 手では、もう触れられない。 嫌だ、嫌だよ。 またひとり、また暗いのは。 なんで、どうして。 いつもいつも。 カイン、殺してしまった。 私が、私が。 嫌だ、置いてかないで」

とても早口に、震えと共に零れ出るルーダの本心は。 まるで、幼い子どものような。

そうか、やはりそうだったのか。

抱きしめたルーダを更に胸へ当てる。 頭を撫でる。

そうだった。 あの時もーーーーー

止まないルーダの嘆きに、俺は歯を噛み締めた。

誰がっ!!!

俺よりも長く生きて、俺よりも多く苦しんで。

誰がそんな運命を、ルーダに背負わせたんだっ。

あの日だってそうだった。

ひとり、あの丘で佇むルーダは。 冷酷な瞳で、世界を眺めひとり泣いていた。

零れ出るように、自問自答を繰り返し呟いていた。

どうにかして、その悲しみを止められないものかと思った。

涙が俺を強くした。 そして、たまに見れた笑顔が俺を癒してくれた。

ルーダは覚えていないだろうけど、あの日が俺の背中を押した。

ルーダの隣にいたいと思った。 それでも。 悲しみは…………

「ルーダは、ルーダだ。 大丈夫、もうひとりじゃない。 誰もが嫌おうと、俺は隣にいてやる」

終わりが近いと気づいている。 もう一緒にいられないことも気づいている。 嘘になってしまうこと、気づいている。 それでも、今しかない。 伝えるんだ。

「ルーダ、いや」

ルーダが、俺を見上げる。 胸の中、悲しみに満ちたルーダの顔。 俺はこの後、更に悲しませてしまうことを、知っている。 こんな思いをしたのは、何年ぶりだろうか。

「ルイダ・テミファル・ヴァース、俺は心からルーダを愛してるよ」

告白。

瓦礫の雨の中、悲しみに染まったルーダの顔を見て。

本当の名を呼んだ。 想いを打ち明けた。

こんな状況なのに、素直に照れながら。

終わりと共に、最期と共に。

こんなにも、無責任で身勝手でダメな俺だけど。

できれば、返事を聞きたかったけれど。

もうお別れのようだ。 時間は止まってはくれない。

刻一刻と、進む。 俺の死はもう訪れている。

バタッ。

ドラマとかだと、前向きに倒れて相手に抱かれてって感じなのかな。

俺は後ろに倒れた後にそんなことを考える。

ルーダが口を動かす。 もう何を言っているのか、分からないや。

涙が顔に落ちる。 今この全てが染み渡るように心に残る。

あぁ、こんなものかって思われたくなくて、思いたくなくて。

ルーダのために精一杯やってきたつもりだったけれど。

これは、とてもいいご褒美じゃないか。

なんて、呑気なことを思いながらルーダに抱きしめられていた。

泣いてる。 瓦礫の雨の中、好きな人の雨にうたれている。

死が俺を染めていくのを感じているが。

能力のおかげか、すぐには死なないらしい。 けれど、五感がだんだん終幕へと進んでいるのが感じる。

すると、ルーダが俺の頬に触れた。

「っ」

泣いて……いるのか? 俺が……?

ルーダが涙らしきものを拭った。

待て、俺は涙を流しているのか? あの日、忘れがたきあの日に泣かないと心に決めたはずなのに。 ははは、俺は。 まだまだ弱いなぁ。

その時、唇に感触が。 ぼやけ始めた視界には、ルーダが眼前にいた。 視界が埋まる。

……これじゃあ、死にたくなくなってしまう。

俺はルーダにキスをされていた。

あぁ、死にたくない。 心残りは全部果たしたはずなのに。

こんなことしてしまったら、後々悲しんじゃうだろうに。

どうか、傷つけてしまう俺を許してほしい。

あぁ。

愛おしい。

涙止まらず、涙止まず。

瓦礫が静かに降る地下で。

愛した人の腕の中。

悲しい過去を背負い続ける悲劇のヒロインの腕の中。

確かに感じた、あつくてあたたかい優しさが。

ルーダの覚えたての優しさが、俺を包み込んでくれた。

まるで、あの場所のようだ。

笑顔が絶えないあの場所。

ルーダにも見せたいな。 優しい世界を。

いつの日か、救えたら。


突如声が聞こえた。 時は完全に止まる。

こんなシチュエーションには似合わない謎の野太い男か女か分からない声が。

『全知・全能である我が問う。 汝の求めるものは見つかったか』

おいおい、こんな最高のエンディングに水を差さないでくれよ。 台無しじゃないか。

内から聞こえるこの声は、やはりお前か。

見つかったよ。 ここにあった。

『そうか。 だが、それは違う。 まだ答えも知らぬとは情けない』

っ……!?

あぁ、そうかい。

ありがとな。

時は動き出す。


あぁ、まだ泣いてる。

ルーダ、その苦しみを忘れさせてあげたかった。

でも見えたんだ。

きっと誰かが解放してくれるところを。

願望は夢の中で、終わってしまうけれど。

ルーダの笑顔はもう見れないけれど。

どうやら、もう満足らしい僕の心は。

遠くで見守ることを選ぶことにしたよ。

その時、

「死なないでっ! カイン!!」

少しだけ無意識に、目を見開く。 涙の勢いが増した気がした。

声が、声が聞こえる。 ルーダの声だ。

その後、すぐに聴力は死に染められ聞こえなくなる。

悲しいな。 寂しいな。 やっぱり死にたくねぇな。

最後の台詞がこれじゃあ、 また繰り返すことになる。

でも力無き身体はもう動かない。 心も終わりを受け入れようとしている。

ドラマで、死ぬ間際の恋人の切なく人間らしい思考のようなものが思い浮かぶ。 必死に生にしがみついて、愛しい人と別れないように。 一瞬一秒でも多くいられるように。 そんな登場人物が自分でも想像できてしまうほど、俺は手を伸ばそうと足掻いていた。 気持ちが溢れ出す。

あぁ。 嫌だ。

死にたくない。 まだいたい。 俺が幸せにするんだ。

できなかったことを、ここでするんだ。 悔いが残らないように。

俺が。 俺が。 俺が。 俺が。


なんて欲深い男なんだ、僕は。 死ぬ間際だというのに、ここまで無様な愚か者に成り下がってしまうのか。 先生だろ? しっかりしろよ! 僕は、彼らのただの通過点なんだから! 教えるんだよ、そのーーーーーーー


何度、涙を流すつもりなんだ僕は。 まさか、あの日の自分を律するあの日が俺を救うとは。 なにが起こるか分かったもんじゃないな。

死が迫る瞬間とは、ここまで長く感じてしまうものなのだろうか。 きっと個人差はあるだろうな。 俺にとってはとても長い時間だ。

でももう終わりだ。

悔いはある。 やりたいことも、やり残したことも。

でも、もう終わりなんだ。

でも。

もしも。

最後にひとつ叶うとしたら。

ルーダの笑顔を隣で見たかった。

平和な世界で、笑……い合いた、かっ、た……なぁ……。


カインは知らない。

最後の願いが言葉に出ていたことを。

カインは知らない。

ルーダがその言葉に対し謝っていたことを。

「ごめんっ。 ごめんね。 上手く笑えなくて……!! でも、死ななけりゃ、いつだって!! ………っ。 カイン………!!!」

カインは、知らない。

ルーダが、カインの微笑みを見て、笑顔の練習をし始めたことを……

そして、かつてはカインも過去に同じことをしていた。

「カイィーーーンンーーーーー!!!!!!」


ルーダの届かぬ声が地下中に響き渡る中。

ルーダの零れた涙と、カインの流す涙が混ざり合って、頬を伝い地に落ちた頃。

カイン・アヴィエールは、静かに目を閉じた。

瓦礫の雨は止んでいた。

読んでくれてありがとうございます。

次回はバーオリーが頑張ります。

次も読んでくれたら嬉しいです。

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