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半機械は夢を見る。  作者: warae
第2章
34/197

地下へ

今回は少し少なめです。

楽しんでいただけると幸いです。

全知よ、目的地まで道を示せ。

走り出した。 最初の一歩を力強く踏みしめて、次の二歩目で高く斜め上に跳躍。 それだけで大通りを横に飛び越え、向かい側の建物へ。 壁にぶつかる前に足を前に出して、壁を垂直に走る。 身体強化により不可能を可能にさせる動きは。 迷いなく突き進む。

壁を走り抜け、屋根の頭上に高く飛ぶ。 そのまま重力により屋根の上に着地。 直後にまた走り出す。 後ろはついてきていることを信じて振り向かない。 気にしない。

建物の屋根を飛び越えては隣の建物へ。 高い建物なら斜めに跳躍し、壁を蹴って螺旋状に登って回り込み、壁を強く蹴り飛ばして雲を切る。 ちょうど小さい広場らしき地に着地して、瞬時に両足に力を込めて、トランポリンのような感覚で、斜めに高く跳躍。 ようやく見えてきたのは、目的地までの一本道。 着地して即刻ダッシュ。 高いビルとビルの間に伸びる道を全速力で駆け抜ける。 目的地へと向かう。

「っ!」

やっと近くまで来れた。 だが、見えた本部は巨大な工場区の真ん中にあった。

全知よ、敵を示せ。

いつも通り様々な情報が頭に流れ込んでくる。

本部の巨大な塔、それを囲む壁。 それらを中心に工場が周りにぎっしりと建てられている。 その巨大な区の周りを更に囲むのは大きな堀。 そこには水が流れていて、その水中から除くように隠しカメラが何台も設置されている。 その堀の底の下、地下には監視するための部屋がある。 何人かがカメラの映像などを見て監視している。 その人数、周りを囲む堀の地下に総勢600人弱。 空には透明な機械魔獣が飛び回って見下ろしている。 数は58匹。 工場内は人よりも機械人間が多く、そのどれもがある程度戦えるらしい。 約8000超。 本部内は一階から81階までは管理等が中心。 地下一階から24階は改造中心。 25階最深部にルーダとあの子が流れてくるはずの死体だらけのベルトコンベアがある。

ってことは、この国には悪いが一気に一掃した方が危険も少なそうだ。

『おい皆、もう見えただろ。 あれが目的地だ。 俺は先に行くから後から来てくれ。 ここで案内終了だ』

テレパシーで全員に言う。 返答がくる前に行動を起こす。

「転移」

すると視界が一瞬で切り替わる。 俺は本部の塔の真上にいた。 高い場所にいるからか機械魔獣は気付いていない。

集中し精神を冷え切らせる。 全神経を研ぎ澄ます。 口を開く。 浮かび上がる紋章は色濃く鋭くなっていく。

「全知よ、最強は我なり。 世界は思うままにそこに在る。 今こそ力を示す時だ。 さぁ……」

右手を天に掲げ、唱える。 右手に収束するのは得体の知れない力。 見えない力。

「地上に建つ愚かな箱達、水まで破壊せよ。 教えてやれ、我々の前に壁は無いと!!!」

唱え終えると同時に右手を振る。 塔に向けて。

瞬間。

右手から何かが発射されたかのように空間がねじ曲がって。 それは塔に落ちて。 塔が軋み壊れていく。 それを中心に工場が軋み壊れていく。 その現象は周りを囲む堀まで起こる。 土埃は全く起きず、壊したいものだけが軋み壊れていく。 そしてーーーーーー

メンバー達が近くに来たことを確認し転移でメンバー達の背後に移動する。

「なんスかこれ……」

「これはこれですげぇな……」

「なんなのね、これ」

メンバー達が今目の前で起きた現象にそれぞれ感想をこぼす。

ロッカスだけが俺の方を見ていた。 俺はそれにニヤリと笑みをつくり返す。

「目的地には着いたし、これより目標を確認する」

驚愕しつつもメンバー達は俺の方に向いて緊張を持ち聞き耳をたてる。

俺はそんなメンバー全員の表情を見回した後、一度頷き口を開く。

「目標を確認する。 暗殺班はお偉いさんを探し出し、一人残らず暗殺を。 救出班は、地下へ行き、ルーダ達の救出。 目標達成したら片方の班の援護。 どちらも標的は地下にいるとみた。 それでは、行動開始っ!」

俺が話している間に全員の顔が引き締まる。

「「「「「了解っ!」」」」」

全員の声が重なる。 同時に走り出す。 地下へーーーーーー

■■■

2つの班に分かれ工場の残骸を通り抜け、俺達の班はルーダ達を救い出すため地下へと急ぐ。 ちなみに魔法は続行中だから、敵の横を通っても気づかれることはない。 塔の残骸の下に地下への入口がある。 だがいきなりの崩壊に地下からも敵がたくさん出てくるだろう。 だから地下は一時的にだが手薄になるはずなので、その時が一番のチャンス。

「それにしても何が起きたんすかねぇ」

「すっげぇ爆発音や衝撃波、崩壊がすごかったよ! でも何故か爆風はあったのに土埃とかは起きてなかったから気になるっぜ!」

バーオリーは疑問をずっと抱き続けていて、ビーダはとにかく興奮状態でいる。

走っているうちに塔の残骸が見えてくる。

「見えたぞ、あそこだ」

そう言って塔の残骸の山に飛び込む。 後ろを気にせずに残骸と残骸の間を器用に通り抜け地下の入口へ向かう。

「まるで入口がどこかにあるか分かってるみたいですげぇな! カイン」

「直感ってもんなんすよ、あれが」

実際は能力をフル活用してるだけなんだけどね。

「見つけた!」

残骸の山の中に空洞があり、人が一箇所に集まって残骸を退かす作業を行っていた。 きっとあそこに地下への入口があるのだろう。 その入口みたいな場所から人が出てきては作業に入ったりしている。

「よっし、行くぞぉ!」

「あぁ、駆け抜けるぞ。 全速力だ!」

「疲れたくないんすけど、仕方ないっスね!」

3人同時にスタートを切る。

「今だぁ!」

ビーダは素早くタイミングを計り、人々の股の間を勢いよくスライディングして入口へ。

「ここすかね! ってうおっ!」

バーオリーもタイミングを計り集団の中へ走り出すが、所々で人にぶつかりそうになり、それを器用に躱して移動する。

「よっ!」

俺は地を蹴り高く飛び、人々の頭上を超え空洞の残骸の天井を掴み、振り子で勢いをつけ地下入口へ飛ぶ。

「私がもちろん一番だぁ!」

「俺はっ、2番か」

「ちょっ危ねっ! ……最下位っスね」

着地するとビーダがいた。 その後、人にぶつかりそうになりながらもバーオリーも来る。

「よしっ、んじゃあ地下へ行くぞ」

「絶対ルーダとあの子を救うぞぉぉ!!」

「やれやれ、さっさと救い出してこんな所から早くおさらばしたいっスわ」

この地下にいる。 絶対救う……


その頃ルーダは涙を流していた。


■■■

地下に潜入し巨大な螺旋階段を下っていた。

「長すぎるっスよぉ、この階段」

早速弱音を吐くバーオリー。

この地下は一番下の階まで、真ん中に巨大な柱があり、それに巻き付くように巨大な螺旋状の階段が続いている。 その階段の途中途中に扉があり、その奥に様々な改造をする部屋がある。 とても胸くそ悪い施設である。

「それにしてもさ! すれ違う敵さん全員素通りしてくんだから、すげぇなぁカインの力!」

「大袈裟だよビーダ。 それよりも先を急ごう。 まだ地下10階だ」

それに、全知通りならこの先には……

「ん? どうかした? カイン」

「なんでもないよ」

表情を読み取られたのかビーダから疑いのような目線を送られる。 それでも構わず走る足を俺は速めた。

読んでいただきありがとうございます。

次回はカインが………

次も読んでくれたら嬉しいです。

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