今行くよ
今回は少し長めです。
楽しんでいただけると幸いです。
そこに広がっていたのはひとつの国家。 巨大すぎる大きな土地があり、大都市が続いている。 遥か遠くに見えるのはそれを飲み込むくらい大きな球体型のなにか。 その周りには巨大な城などが多く建ち並び、どこを見ても豪邸が目に入る。 まるで異世界に来たかのような感覚に襲われるほどの核都市は、地下深くに自分達がいることを忘れさせてしまう。
「おいおい、なんすかこりゃあ……」
「うおおお! すげぇなミーマ!」
「はいっ姉上! 情報以上の景色ね!」
バーオリーは空いた口が塞がらず呆然としている。 その横で興奮状態のビーダミーマ姉妹。
「あらまぁ、綺麗ねぇ」
「すげぇな、あたいも住んでみてぇなぁ」
「ここが……」
続いて残りの3人も各々反応を見せる。
これこそ驚愕だろう。 まさに圧巻。
「地下に空があり、湖があり、数々の城や豪邸に春を連想させるほどの野原。 見たことのない綺麗な花畑に、あそこには巨大な噴水かな? すごいな、ここは本当に機械が盛んなのか?」
この光景から見ると息苦しそうな大都市の中にも、巨木などが所々生えている。 魔獣だろうか、様々な色の羽を生やした大きな鳥達が元気よく飛び回り、普通のペットみたいに魔獣が人間と共に歩いている。 首輪はしているが鎖もなにもしていない。 たまに機械人間らしき人を見かけるが、数は少ない方だろう。 それにしても、ここら辺はビルが多い。
今は、ネイチャンの隠蔽魔法とバーオリーが瞬時に見つけた死角を通って最初の目的地である最新の移動機械降り場に向かっている。 たまに俺の『全知』を使ってサポートはしているが。
「それにしても高い建物ばっかっスねぇ。 あっちとかは城がたくさんあるし、遠くに見えた球体の周りは城壁ばかりだったし」
「しかも、自然が結構あるのはすごいね! 改造所の近くなんて緑全く見ないよ!」
「これだけの規模で、あれだけの自然はすごいものねぇ」
機械の発達と同時に環境破壊が続いた結果、自然は減少傾向にある。 その原因は機械が発展して間もない頃、噴火があり、それが軸となって様々な環境破壊が始まったとか。
「でも、あれはただの噴火じゃなかったよなぁミーマ」
「そうだったね。 しかもあれは意図的に噴火したように感じたよ。 噴火付近にはいなかったけど、推測するにあそこら辺でなんかあったのは確かね姉上」
「いつか知りてぇとは思うんだけどなぁ。 情報が少ないし、知ってても答えたくない答えられないって言う人ばっかで、今でも謎めいてるんだよなぁ。 あー気になるっ!」
ビーダミーマ姉妹でも知りたいけど知れないこともあるんだな。
「やばいっス、サポートお願いしますカイン」
いきなり先頭のバーオリーが立ち止まり振り返る。 死角が途切れたと俺に言う。
「分かった」
俺は瞬時に集中して精神を鋭くさせる。 紋章が出ない程度に、力を発揮する。
まだこのことは皆には教えられない。
全知よ、道を示せ!
周辺の簡単な立体地図と数々の道、行き方が思い浮かぶ。 そこから安全かつ素早く目的地に行ける方法を厳選し考える。 これを一瞬にやる。
「死角から抜け出して数メートル先に建物があるだろ? あれ多分一階はカメラも何もない空き部屋だと思うから、窓をロッカスの軽い殴りで割りネイチャンが多分使える消音魔法を最大級で全員にかけて、窓から潜入して向かい側の窓を同じ方法で割り抜け出す。 その時は丁度近くを通る者はいないな。 そしたら、その目の前の建物は階が低いかもしれないから、ロッカスが全員を軽く屋上に飛ばす。 きっと屋上あるから大丈夫だろ。 あとはネイチャンが浮遊魔法をロッカスにかけて、あ。 その時は、魔法あんま使えないラッカーは俺をパイプにネイチャンに魔力送るってことでいいな? あとは屋上伝って行ける所まで行けば、目的地に近い場所でまた死角が見つかると思うぜ!」
と、今思いつきましたと言わんばかりに、バーオリーの問いにすぐ答える。 ただ怪しまれないように、信憑性に欠ける言い方をしながら。
「分かったっス! それで行きましょう!」
ちなみに、バーオリーとはこういうやり取りを何度もしてきたおかげか、どんなに信憑性薄いこと言っても大体信じる。 まぁ結果大体当たってるからだけど。
「ふえぇ……魔力大丈夫ですかねぇ」
「あたいも途中魔力送っから頑張れよネイチャン。 バーオリーが了承したんだし行けるぜきっと」
「疲れたくないですぅぅ……」
そのようなこと言ってる間にバーオリーはもう飛び出していた。
「ほら早く行くね!」
「うっす! 早く行くぞ、ネイチャン!」
「嫌ですじゃぁぁぁ……」
ビーダミーマ姉妹に引き摺られていくネイチャン。 語尾がいつもと違かったけど、あれが本当のネイチャンなのかな?
■■■
「死ぬかと思たですよぉぉ……」
「魔力が……あたいも死ぬかと……」
「結構皆軽いのう」
疲労に座り込むネイチャンとラッカーの隣で、平然としているロッカス。
「重すぎなんですよぉぉ!」
「死ぬかと思ったんだぞ!」
急に怒り出し叫ぶネイチャンと同じ台詞を吐くラッカー。
ちなみに屋上を伝う時に、追加でネイチャンに全員分に気配を察知されないよう別の魔法も最大級でかけてもらっている。 魔法発動時は嫌がっていて魔法維持時は平然としているあたり、魔力量絶対多いんだろうな。 魔法発動は苦手なのか。
「ネイチャン、魔力量全然平気でしょ」
「あ、気づきましたぁ?」
「ネイチャァァァン!!」
ラッカーの怒号は消音魔法により、周りの人の耳には届かなかった。 だが、俺達メンバー全員には聞こえるので、ビビった。
「カイン、見えたっスよ。 あれが目的地っス」
カインが死角から顔を出しなにかを見ている。 目的地がついに視認できる距離まで来たらしい。
俺もカインと代わり顔を出す。
「って目の前じゃん」
豪華で派手な移動機械降り場。 俺達が乗ってきた移動機械とは比べものにならないほどに大きく、数も多く作られている。 そこを見知らぬお偉いさん見たいな人が出てきたり入ったりしていた。
「ってことは目的地に来れたということで良さそうだな」
貰ったメモを取り出し、バーオリーとメモを睨む。
「んー、こっからは分からないっスから頼みましたよ、カイン」
「やっぱバーオリーは無理なのか?」
「適当すぎて僕にはさっぱり分かりませんので、お手上げっスねぇ」
「そうか……ビーダミーマ姉妹にもさっき聞いたけど同じ答えだったし、ここからは俺が先頭で行くか」
そう言って深呼吸をする。
全知よ、道を示せ!
「なるほど……」
少し考えて、
「おーい皆、早く着くが少し疲れる方と遅く着くがめちゃくちゃ楽な方だと」
「楽な方でぇお願いしまぁす」
「早く着くが少し疲れる方の方がいいよなぁ?」
「ふええええ!?」
フライングしたネイチャンをそっちのけで提案する。
「あたいはいいと思うよ」
「僕はただついて行くだけなんで、いいっスよ」
「右に同じね!」
「ミーマと同じだ!」
「賛成じゃ」
ネイチャン以外から賛成を貰えた。
「悪いなネイチャン。 これは多数決で決めることにしたんだ。 ってことで行くぞ」
そう言って俺は堂々と死角から大通りへ出る。 俺は今先頭にいて顔は見えない状態。 だから……
全知よ、我々を隠せ!
紋章を露わにできるのだ。
「ちょっ、大胆っスねぇ」
「ん? 気づかれていないのか? ……面白い魔法じゃなカインよ」
「あぁ、俺のちょっとした特殊魔法のひとつさ」
「疲れたくないですじゃぁぁぁぁ………」
ラッカーを加えた3人でネイチャンを後ろから引き摺って来る。
「ネイチャン、大丈夫だよ。 魔法は使わないから」
「さぁ早く行きましょう? あの子が心配だわ」
立ち直りはやっ! 言った瞬間やる気取り戻したようでなによりだけどさ。
「でもどうやって行くんだぁ? カイン」
「簡単だよビーダ」
パチンっ
その問いに答えるように俺は指を鳴らす。
「あっ!」
「ご苦労さま、ネイチャン。 後は着くまで俺がやる」
今ネイチャンが今まで維持していた魔法を全て俺が肩代わりした。 そして……
「これはすごいのう……」
「カイン、すごいね。 驚愕ね!」
「身体大強化の超最大級を全員にかけた! あとは俺を何処でも視認できるよういくつか他の魔法もかけた。 超簡単、俺は今からいろいろ走って改造本部に行くからついてきてくれ」
それを聞いてネイチャンは青ざめる。
「そ、それって速さはどれくらいですか」
「そのために身体強化かけたんだよネイチャン」
「ふえぇ……」
そう言っても距離は相当ある。 だからこれをかけた。
「戦闘前の準備運動だと思えばいい。 さぁ、久しぶりに運動らしいことするぞ。 俺はこう見えて結構動けるんだぜ」
そんな軽口言っておきながら、内心本当はルーダを早く救いたいという想いでいっぱいなのをメンバー達は知る由もない。
だから……
「お前ら、ちょっと本気出すけどついてこいよ」
その一言に全員が緊張するのを感じ取る。
死なせるものか、もう苦しませたくないんだ。
「全速力で行く。 しっかりついてこい!」
待ってろルーダーーーーーー
読んでいただきありがとうございます。
次回は、ルーダを救いにカイン達は地下へ……
次も読んでくれたら嬉しいです。




