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半機械は夢を見る。  作者: warae
第2章
32/197

近く遠くにあった残酷

今回は少し多めです。

楽しんでいただけると幸いです。

改造所から出発して。

数時間後ーーーーーー


ビーダミーマ姉妹が得た情報や情報屋仲間の人の支援により、無事に移動機械まで来れた。 ビーダミーマ姉妹の昔の仲間は、姿は現さなかったものの、手続き等行っていてくれたので、案外スムーズに事を運べた。

移動機械の中。 乗客は俺達だけで貸し切り状態。 広さも狭過ぎず広過ぎず、俺達の人数で大体丁度いい広さだった。 核都市まではまだまだ時間がかかるので、静かな時間が続く。

「暇すぎるね。 姉上」

「全くだなぁ。 カイン何か話題でもないのかー?」

「そうっすよぉ! カイン、何か話しませんかい。 暇すぎて心が干からびそうっスよぉ」

沈黙を破った姉妹に便乗して、バーオリーも俺に聞いてくる。 その声に他のメンバー達も反応して、俺を見る。

「確かに暇ですわねぇ……」

「あたいは筋肉を鍛えたりできるが、ネイチャンじゃ特になにもやることないもんな」

「いっそのこと、ラッカーと共に鍛錬に励んだらどうじゃ?」

「嫌ですぅ」

笑顔でロッカスに圧をかけるネイチャン。

そう言えば、結構前にネイチャンが嫌いなことは努力だと言ってたっけ。

そうこう話している間も、物欲しそうな目で俺を見つめてくるビーダミーマ姉妹とバーオリー。 そのうち話題が尽きたのか、他の3人もこちらに目線を送り始める。

こっちみんな! とは流石に言えないので、少しでも役立つような話題でも出そうか。

「……皆は、どのくらい改造所について知ってる?」

その問いに、この中で一番頭が良いだろうバーオリーが答える。

「あそこの改造所で働く奴なら誰でも知ってると思うんすけど、死にかけた人や老人に罪人、小さい捨て子など、人に見捨てれた人が改造される施設。 それが俺達の居た第2改造所っスよね?」

そう答えると、続けてビーダミーマ姉妹も答える。

「そのクソ改造所の他にも第1、第3まで改造所があるんだよな! 胸くそ悪う! 第1改造所は確か死体だっけ。 一番数が多いらしいな。 それと第3改造所は動物……あぁ、今考えただけでもむしゃくしゃするぅぅ!」

その気持ちについては誰もが同意見だろう。 メンバー全員が頷く。

「それで、改造後は機械文明の発展や兵器のために研究・実験の毎日ね! 他に改造所をまとめる本部。 絶対ぶち壊したるね……! それと死体保管庫、地下の『生贄の檻』や死体捨て場。 ……あぁ、むしゃくしゃするねぇぇぇ!!」

途中ボソリと怒りが垣間見えて、最終的に怒りを露わにするミーマ。 こういう時は大体短気なのである。

「そうだ。 最悪な場所だ、あそこは。 俺も改造所を独自で調べて分かったことがある。 まぁ深くまでは分からなかったが、時間もあるし、今ここで話してしまおうか」

そう言った途端に、メンバー全員が真剣な顔に変わる。 緊張感のある空気と化した移動機械内、核都市はまだまだ先。

「まず俺は順番的に第1改造所を調べた。 不自然なほど、ほとんど他の改造所と関わりがないことに疑問を覚えたからだ」

第1改造所、その改造所での目的は死体を元に機械人間を作り、研究・実験、兵器開発をすることだった。 そこで俺はある計画を知ることとなる。 研究・実験・兵器開発は表向きに掲げる目的であり、真の目的は完全なる操り人間を生み出すことが目的だった。 人間と見た目も何もかも全く一緒な、機械人間を作り、精密な細かい遠隔操作で普通の人間の家庭に溶け込み支配することを目標にしている。 主に権力が強い貴族が狙いのようで、様々な貴族の家族関係や個人情報が記された資料が入れられた巨大な部屋があったりした。 ここまで来れば第1改造所の計画が分かるだろう。

「まず始めに、死体を元に人間であり人間ではない機械人間を作る。 その機械人間に、貴族の家族の誰かの個人情報等多くの情報を埋め込む。 そして本人を殺害し死体を処理した後、その貴族の家族であるよう機械人間を潜入させ演じさせる。 それを遠隔操作でやる。 この遠隔操作は、自動かどうかは分からない。 後は簡単だ。 家庭内からその貴族を崩していけばいい。 もしかしたらその権力を思うがままに振るうことも可能かもしれないだろう」

「なんてことしてやがんだ……」

「なんてことするねぇぇぇ!!」

ラッカーとミーマの台詞が重なる。 他のメンバー達も同感らしい。

「そして次に第3改造所を調べた。 あそこは最初の説明通り兵器開発に力を入れていたよ」

第3改造所、動物達を生きていても死んでいても構わず改造して兵器にしていた。 その開発された兵器が実験のため何処かに大量に移動していたの発見し、後をつけてみると、ある大きな隠し扉があり、地下へと道が続いていた。 その先には、俺達の居た第2改造所の地下にある生贄の檻と死体捨て場の場所に辿り着いた。 そこでは、死体を的に発砲などの練習をしたり、生贄の檻から何十人かが出され、武器を持たせ無理やり兵器化した動物達と戦っていた。 俺も隠れて加勢して、何とか人間を勝たせたが、無残に本部から送られてきた兵士に惨殺された。 助けに行こうとした時、そこで初めて地下の監視カメラに気づき身を伏せた。 よく見ると地下の天井や隅、檻の一つ一つに付いている。 下手に動けなかった。

他に調べると、その改造所の室長などが残忍な奴らばかりで、毎日のように新しい兵器の開発に取り組んでいた。 動物に無理やり子を産ませては、その子供に爆弾等取り付けたり、動物達に毒ガス等での実験体にしたり、無理やり仲間を食わせたり、目玉や足を引きちぎり無理やり武器等取り付け、他の動物を実験体に戦わせたりと、反吐が出るようなことをしていた。

「しかも奴らは、遊びで動物や動物の子供を殺したりして遊んでいた。 とても胸くそ悪かったよ……」

「そ、それは、子犬ちゃんとか猫ちゃんとか、も……?」

恐る恐るネイチャンは俺に問いかける。 それに肯定するように頷くと彼女はすぐに両手で顔を覆い隠した。

この中で誰より動物を、特に犬と猫を愛していたネイチャンからすればショックだろう。

「……俺は、その後地下を調べたんだ。 あの巨大な空間を」

そう。 あそこは地下、大地下である。 天井からは鎖で繋がれた大きい鳥籠のような檻が、ほぼ無数に暗闇の中で佇んでいる。 もちろん、その檻の中には改造されるのをただ待つ事しかできない人々が居た。 檻の中には15から20人ずつ人が入っていて足首には錠が付けられている。 魔法で少し観察すると内側は注射みたいな針のようなものが取り付けられていて、魔力のようなものが流れていた。 どうやら、足首からそれを無理やり注入されているらしい。 その流れているものを調べると、体を動かしづらくする麻痺毒と、死ぬことが許されない強制不死能力の魔力に似たエネルギーが流れていた。 このエネルギーにより、死ぬことはまず無いが、空腹感や疲労感、痛みや苦しみなどはそのまま変わらないので、ただただ生き地獄を味わうだけの状態になる。 その状態で、何ヶ月、何年間も檻で過ごさなきゃいけないので精神がズタボロになっていってしまう。 数時間かけて地下内の檻を数えても、500くらいで俺も鬱になりそうになったので諦めた。 その理由としては、檻の中に居る人間の状態が酷すぎたからだ。 その後、檻と下を埋め尽くす死体捨て場との間の高さが、軽く1000メートルは越えている。 死体はそれも人間ので、傷だらけの酷い死体ばかりだった。

「とても長時間見てられるレベルじゃなかったから、大体調べ終わった後は、あまり地下には行ってないんだよ」

「だから私達姉妹を行かせなかったのか。 ありがとなっ、カイン」

ビーダに礼を言われる。

俺はビーダミーマ姉妹に、地下には行かないでくれと念入りにお願いしていた。 あの光景は、駄目だ。 と、そう思ったから。

「ありがとね」

ビーダの隣に来てミーマも頭を下げる。 こういうところを見るとやっぱり姉妹だなぁと思う。 俺も歳をとったものだ。

そして、再び沈黙が訪れる……

「……」

どうしたものか……調べたことは一通り言い終えたしな。 でも、まだ核都市に着きそうもない。

「では、暗い話ばかりだし自分の故郷の話でもせんか。 改造所に来る前のこととか」

次に沈黙を破ったのはロッカス。

別に明るい話題でもないが、気休め程度にはなるだろう。

そんなたわいのない話しをして、俺達は時間を潰した。


数時間後ーーーーーー


ロッカスは傭兵、ラッカーは格闘家として改造所に入る前は過ごしていたそうだ。 ビーダミーマ姉妹は、情報屋兼フリーター。 様々な職を転々としながら情報集めを行っていたらしい。 ネイチャンは秘密だそうだ。 俺はと言うと、実は初めてがこの改造所なんだと言うと、メンバー全員に驚かれた。

そろそろ着くみたいだ。

全員が休めていた体を起こさせる。 準備を素早く整え立ち上がる。 それでも緊張は感じ取れた。 そりゃあそうだ。 核都市なんて滅多に来れる場所じゃない。 正直、ビーダミーマ姉妹がいなかったらここに来れなかったと思う。 改めて凄いと感じた。

中心深部核都市エヴェン・トリディース。 最強と最高ばかりが生きる、最高級都市。 この世界の頂点の都市。 今から、その都市の、一部分だけだが喧嘩を売りに行くと考えると、自然と力んでしまう。 でも、俺は立ち止まらない。 前に進む。

仕方ねぇじゃねぇか。 だって、

「全ては、ルーダ。 そして、あの子のためなんだから」

喧嘩を売るのに、充分な理由だ。

扉が、開くーーーーーー

読んでいただきありがとうございます。

次回は遂に核都市へ……

次も読んでくれたら嬉しいです。

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