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半機械は夢を見る。  作者: warae
第2章
30/197

メッセージという名の想いの記録

今回は少し多めです。

少女の最期、その時少女は……

楽しんでいただけると幸いです。

ねぇ、ルーダ。

ルーダ、私の命もあと残り僅かになってきて、もうルーダに会えそうもないから、メッセージを残すことにしたよ。

ねぇ、ルーダ。 私は、お母さんに会えたんだ。 でもルーダには会えなくて悲しいんだ。

ルーダは今元気ですか。 笑ってると嬉しいな。 その近くに私はいないけれど、楽しく生きていて欲しいです。

覚えてますか?

あの日、ルーダに出会いました。 一輪の花、お母さんとの最後の繋がりである花をひとりで育てていたとき、声をかけてくれたよね。 孤独が壊れた瞬間でした。 でも本当は、ひとりじゃなかった。 そこには、いたんでしょ? お母さんが。 そして、ルーダが来てくれた。

でも、初めて見たあの日のルーダは。 私よりも、とても悲しそうでした。 悲しそうな目で、優しい表情を作ろうと頑張っていたよね。 その優しさだけでも私は充分なのに、悲しみ堪えて抱き締めてくれたルーダは、とても優しい人なんだと思いました。

ねぇ聞いてる? 届いてる? 不安だけが募っていく私はまだ思ってしまうよ。

また会いたいよ。

弱い私だよね。 また救いを求めてしまっている。 情けないなぁ。

こわいんだ。 もう自分の身体じゃないこの身が。 こわいんだ。 もう死んじゃうんだと。 こわいんだよ。 私はまた独りぼっちだ。 でも、それより悲しいよ。 記憶の中だけどお母さんと再会できた。 短い時間だったけど、あの子とも仲良くなれた。 でも、最期を迎える前に、ルーダには会えないんだね。 誰にも会えないし、あの花だってもう見れない。 見えないんだから。 時間よ止まってよ。 私はまだ死にたくない。 やりたいことができてしまったんだ、まだ笑い合いたい人ができてしまったんだ、また帰りたいと思える場所ができてしまった、だから。


ねぇ、いつになったら迎えが来るんだろう。 冷たく冷えてく温度のような心を感じる感覚など慣れてしまった今日の日、自分の身体が操れない不可思議な状態で、生きてるのかそれとも死んでいるのか分からなくなってしまった。 記憶が私に懐かしさと、忘れていた違和感を思い出させるけど、そこに映る全ては過去のもので今ではない。

ふとそんなことを考えていると、聞こえた。

音がした。 そんな気がした。 ここには外の音声は届かない。 なのに。

貴方様を表現し真似ることを、お許しください。

テレパシーのように、どこからともなく聞こえる彼女の声。


それからどのくらい経ったのか。


温かな、温かく、温かい。 懐かしく愛おしい感覚が、とても薄く。 届いた。

なんなのか分からない。 だけど、なんなのか私は知っている。

涙が、零れた。

落ちていく。 その零れたものは。

あぁ、私じゃない私の身体が。 大きな感動に包まれている。 たとえその身体が、悲しみに染まっていても。 影が光に抱かれるような。 そんな感じがして。

熱い、まるで好きな人に抱き締められているみたいに。 熱い。 なにかに照れている時みたいに。 あつい。 それが優しく包み込んでいてくれるから。 あつい。 まるであの時のような、お母さんを思い出してしまう。 あつい。 でも優しい。 それ故にか、とても辛く悲しくて。

離さないで。

私はここだよ。 そばにいてよ。 私は、ここだから。 ねぇ、どこにいるの?

孤独な精神世界じゃ、狭すぎて広すぎて過去の作りものばかりだ。 お母さんも本物のお母さんであって本物ではなく、記憶の欠片に過ぎないのだと現実は語る。

でも、この温かさ。 温もりは……

ねぇ……

声よ。

ねぇ……っ!

お願い、出てよ。

胸に手を当てる。 苦しげに声を出そうと目を強く瞑って。

「………そこに、いるの?」

その喉から、とても弱々しく今にも泣きそうなくらいの声で。 静かに、精神世界に響く。 私は、息を呑んで少し驚き、次の発声に力を込める。 まるで、初めて声を出せた子どもみたいに、必死に。

ルーダ。

「ルー、っ」

「ルーダっ」

「ルーダ!」

後半からは、半泣きで叫ぶ。 口を大きく開け、囚われの少女は、檻である精神世界から声を出す。

あぁ、知っているよ。 知ってる、届かないこと。 ここで声を出せても無意味であり、外には届かない。 それでも、呼んでいたいんだ。

「ルーダ」

「ルーダ!」

「ルーダ!!」

縋るように。 置いてかないでと泣きじゃくる子どものように。 何度も何度も声に出すその名は。 当の本人には届かずとも。

「ルーダ……」

落ち込むように、下がる声。 まるで手を引っこめるような、その声に。

その時、

『私はな』

外から声がする。 聞き間違えない、ルーダの声。 懐かしく感じてしまうその声は。

『お前さんの母親になりたかったんだよ』

静かに、ゆっくりと。 ひとつの線。 涙を涙で濡らす。 瞳は歪み、綺麗な流れ星のように、零れた。

視界が上手く定まらない。 冷え切っていた体に熱が篭もった気がする。 耳はその声を、嬉しそうに聞き取った。 全身を優しいなにかが包み込む。

そんな気がするんだ。

そのような感動を味わっている時、彼女が戻ってくる。

急いでください。 これが最後ですよ。 私ができるのはここまでです。 貴方様も最期くらいは、報われて良いはずです。

「え、何を言って……」

私は、貴方様のほとんどを受け継いだ者ですよ? これくらいの御褒美、受け取っても誰も怒りませんから。

そう言って彼女は、ニコッと笑う。 その笑顔と同時に体が光り出す。

ギュッ

そして後ろから、光るお母さんが抱き締めてくる。

挨拶くらいしてきなさいよ。 あの方も私達と同様あなたを愛しているのだから。

そう言って微笑むお母さん。

涙が、止まらないよ……

「うんっ! いってきます!」

彼女とお母さんの2人に見送られ、私はお母さんの腕の中で意識が移動するのを感じた。

■■■

ルーダの声が聞こえる。 久々の自分の改造された身体に無理やり慣れて、ルーダを見る。

ルーダだ……本物の、ルーダだ! やっと、やっと会えた。 でも宙に浮いている。 私の最期が近い証拠だろう。 時間がない。

思考をぐちゃぐちゃになりながらも、私は言葉を紡いだ。

「ルーダ、ありがとう。 私と出会ってくれて、皆と出会わせてくれて、お母さんの花を育ててくれて、ありがとう」

泣きながらルーダに言うその声は、ふいに私の涙も誘う。

「ルーダ……大好きだよ」

伝えたいこと、やっと言えた。 ここまで耐えてきた甲斐があった。

その時、宙に浮く私にルーダは手を伸ばす。 でも届かない。 私も手を伸ばしたいけれど、もう何故か動かないんだ。

「行かないで……」

弱々しくルーダが言う。 止まれない。 止まりたい。 戻りたい。 でも戻れない。 残酷な運命だ。

「ルーダ」

最後の声。 絞り出すように出す声。 これが、きっとルーダに届ける最後の声。

「私を愛したように、この私も愛してね」

最後の心残りを言い、私は微笑んで言った。 涙は止まらない。 私の最期も。

「私を、愛してくれて……ありがとう!」

私の、ふたりめの、おかあさんーーーーーーー

■■■

短い時間だけど、とても長く感じた。 また私は精神世界に戻ってきていた。

お疲れ様です。 そろそろお別れの時間となりますが、私は少々休まなくてはいけなくなりました。 貴方様がいつか、幸せに包まれることを願います。 それでは、この辺で失礼致します。 さようなら。 スリープへ移行……

そう言って、彼女は精神世界から姿を消した。

「……ついに私、死んじゃうんだなぁ」

精神世界、なにもない世界を見渡し独り言を呟く。 さっきのお母さんは、もういない。

分岐点だ。 もう別れなくてはいけないんだ。

はぁ……

ただ息を吐く。 まだ私は生きてると実感する。

「最後に過去の自分でも思い出してみようかな」

すると、目の前に座り込んで顔を隠し震える私が現れる。

「そうだったね。 私は……」

私しか知らない過去だ。

私はそっと、私を抱きしめる。 私は私の顔に顔を近づけて、謝った。 次第に、涙も溢れ出す。

ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね。 その言葉はどこに向けて言っているのか、涙よりも零れるそれは。 雨のようにうたれたような、人々に踏まれた雑草のような、疲れ切ったその心は。 謝り続けるのだ。 感謝の意も共に込めて、繰り返すのだ。

「死ぬのは、誰だってこわいよね」

自分に言い聞かせるように、私に言い聞かせるように。 震えながら。

あぁ。

ルーダは知らないでしょ? あの瞬間の、私の救われた心を。

ルーダは知らないんだよ。 私よりも悲しい顔をしていること。 もう振り向いてもいいんだよ。 今度はルーダが救われてよ。

ルーダが泣いちゃうと、私も泣いちゃうんだよ。

最期を待っている。 ルーダやお母さん、自分の過去を思い出して。

その瞬間。

不可思議な、残酷の音が私の全てに鳴り響く。

視界に映る全てが光に溢れる。 光っていく。

思考も記憶も知識も何もかもに、残酷の音は鳴り響く。

内側も外側も全てが光り出して溢れ出す。

私はなにかに気づき泣き出す。 それを自らが理解しきる前に、それは起きる。

「待ってーーーーー」

そんなの、いやだよ……………

冷たく冷えてく温度が低くなって感覚がおかしくなって、もう手を振る時間が来てしまったようだ。 手を伸ばしても、手遅れなこの行為は良い結果を生まずゴールへと走り動き出してしまう。

ねぇ、ルーダ。 私はねーーーーーーーー






どうやらもう振り返れないみたいだ。

目の前がゴール。 望んでやまなかったゴール。 あと一歩踏み出せばゴール。

だけど、嬉しいはずなのになんか悲しいよ。

目の前に、今まで手を伸ばしていたものがそこにはあるのに、どうして私は悩んでいるの?

どうしてこんなにも、もどかしいの?

『短い期間だったけれど、私にもうひとり家族くらい大切な人が。 ……ううん、家族が増えたよ。 ひとりぼっちの私に寄り添ってくれた、もうひとりのおかあさん』

後ろから声がする。

違った。

その声は、私の口から発せられたものだった。

でもどうして? 私はその人を知らないのに。

それでも私はゴールした。 やっと解放された。 ずっと望んでいたそれは。

いざ達成すると、とても後味の悪い感じがする。

ずっと、何故かもどかしいんだ。

なんで、なんで私は……

「泣いてるの「おもいだせないの?」」


涙と共に、静かに。 声は微かに重なり光と共に、消えてーーーーーー


■■■


「以上、メッセージと記録の開示を終了します。 この記録は、あの精神世界の思い出と共に、私の中に半永久的に残し続けます。 おやすみなさい、私の友よ」

涙を流し続けた私は、最後の半機械人間の発言にも涙した。

「お前さんは……あの子の友達だったのか」

「はい」

「そうか……」

とても嬉しいな。 孤独な少女だったあの子が……友達を……!

「私も、大好きだぜ。 幸せ、あの子に届くといいな。 絶対届けような」

「はい……っ」

半機械人間の人間部分の目から涙を流す11546。

私は思わず背を向ける。

その涙につられてか、私は、

あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

ごめんな。

ありがとな。

心の底から、愛してるよ。

第2のお母さんだけど、頑張って生きるから。

見ててくれよ。

私は、なんたって、

天才で、最強で、

馬鹿で、涙脆くて、

お前さんが好きでたまらない

ルーダ・テミファルなのだから!


あぁ、あるはずのないものが。

止まらないのだ……

読んでいただきありがとうございます!

次回からはカイン視点に変わります。

次も読んでくれたら嬉しいです。

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