無礼を許してくれ
今回は長めです。
カイン視点です。
楽しんでいただけると幸いです。
カインside……
「ルーダァァァ!!!」
落とし穴の方に走るも、すぐに穴は塞がれてしまう。
「クソォ!!」
ダンッ
落とし穴のあった床を叩く。 いくら叩いても穴が開くことは無い。
背後からは監視機械兵が近づいてくる。
俺は即インカムの通信を開始した。
「クソっ! ビーダミーマ! 特部の部屋を調べてくれ、いきなり床が開いてルーダが落ちた! 落とし穴の先を速急に調べてくれ!」
『マジすか!?』
『うっす! 了解だ!』
「よろしく頼む!」
インカムの通信を切る。
「っ! 許さねぇぞ、クソ本部がぁぁぁ!!!」
背後からの機械兵の攻撃を避けて体制を立て直し、一体目の首を刎ねる。 そして一刀両断の追撃。 一体目の戦闘不能を瞬時に確認して2体目の攻撃を刀で受け流す。 そして素早く半回転して突き刺す構えをとり、脳天を貫通させる。 そして抜き取り、流れるように太ももを一閃。 体制を崩し倒れるところを、胸に力強く刺しこむ。
やはり刀は重い……軽く改良するか? その方がルーダとも戦えそう……って違う! 今はルーダの安全確認だ。
インカムの通信を開始し、ビーダミーマ姉妹に聞く。
「どうだ、分かったか!?」
『おっカイン! いいところに!』
『全作業手ぇ止めてこっちだけ全力でやったから分かったね! その部屋の落とし穴は、地下深くの死体捨て場に落ちるよ! だけど、その死体はどこかに運ばれているらしいんだよ』
『まぁ、死体が多すぎて、ルーダは流れていることに気づかないだろうけどな!』
流れる? ベルトコンベアみたいなのか?
「そうか、その行先はどこか分かったか?」
『うっす! 分かったよ!』
『どうやら本部の地下へと続いているらしいよ! これは特部機密情報だったよ』
本部地下!? まさか、それって……
「核都市か!!?」
『まさかのそういうことね』
『あと、落とし穴を起動させた部屋が判明したぜ! ここは………グリン室長の部屋!?』
「なにっ!? 今すぐグリン室長の状況確認を!」
まずいことになった。 そんな操作ができる部屋だったのかグリン室長の室長室は。 まさか、不自然な大人しさは、これを狙って……? ということは、まだなにか操作するかもしれない。 そうじゃなくても、何かしら行動を移す可能性も……?
『カイン! 大変だよ! グリン室長の姿が見当たらないよ!』
『きっと戦闘力のバカ高いルーダが、この場から消えたからだな! 今すぐ全員に通達するよ!』
ということは、メンバー全員に危険が及ぶ……?
「ビーダ! 全員に通達、一旦撤退しろとも伝えてくれ! 最優先事項だと! あとあのことも話してくれ」
『了解だぜ!』
『カインはどうする?』
「俺は全員が撤退し終えるまで、グリン室長の足止めに向かう。 全員が撤退完了したら状況を説明して休んでいてくれ。 それと本部の情報で奴を探して、見つけ次第で作戦通りに」
『了解。 でもまだ室長の居場所掴めてないよ?』
「大丈夫だ。 んじゃよろしく頼むぞ」
そこで通信を切る。
さてどうしたものか。 ルーダは本部地下に流れて行っている。 しかも守らなくてはいけないものを抱えてだ。 だが本部地下、核都市は相当遠い場所だ。 時間は少なからずある。 今はメンバーの安全を優先し、今日中には本部に向かわなくてはいけない。 死体だらけベルトコンベアに敵がいないとも限らない。
「さて、久しぶりに使うか」
深呼吸し集中する。 神経を研ぎ澄ませ、冷静になる。
「全知よ、道を示せ」
すると、額に紋章が浮かび、それは鼻先まで伝う。 髪の毛と瞳には小さな光が軽く収束する。
視界がいきなり勝手に動き出す。 そしてグリン室長を捉えた。 ここからの道筋が自然に頭に浮かび、それと同時にメンバー達の居場所も把握する。
「そこか」
いくつかの道筋から最短距離を選択し、走り出す。 一秒でも縮めるため、今の自分で行ける道を行く。 窓を割り、今の力で壊せる壁を選択しては壊し、手元にある物で行ける手段は全て使う。 近づくにつれ、俺は更なる思考を凝らす。
「全知よ、共に戦え」
息を殺し床を蹴って飛び、グリン室長の首元を背後から斬り落とそうと刀を握り、振り抜く。 だがそれを躱されてしまう。 そのままグリン室長の横を通り過ぎてしまう。
「くっ」
俺は体制を立て直し、グリン室長の前に立ち塞がる。
「よぉグリン室長……何処に行く気ですか」
「ふん、そろそろ若者たちの命を回収しようかと思ったのでね。 それにしても、なんだいそれは。 物騒な物持っちゃったり、額に紋章なんて描いたり」
「あんたには関係のないことです」
ふんっと鼻息を鳴らし、唇を歪ませるグリン室長。
「俺は残念ですよ。 毎回自分だけ憎悪に立ち向かって俺達には改造させないあなたの精神に少なからず憧れていたというのに。 あの編集技術も毎回すげぇなって思ってたんですよ。 まぁでも仕方ないですよね。 あなたは殺さなくちゃいけない存在だったのだから。 それでも良心的なあなたは抗っていたらしいですが、どちらが本物なんでしょうね」
「フハハハハ……そうか、やはり気づいていたか」
「えぇ、大変でしたよ。 ビーダミーマ姉妹と徹夜して調べに調べたんですから」
額に手をやり不気味に笑うグリン室長。
「フフッ、やはりあの姉妹はすぐに切り捨てるべきだったか」
「俺こそ後悔してますよ。 もっと早くに知っとけば良かったって。 ねぇ、本部の犬。 改造所監視長グリン、洗脳までしてその体を操る気分はどうだよ」
この人は、今となっては元だけどタミューラルという名の元騎士の体だ。 スカウトされ本部に行き洗脳され肉体の主導権を奪われた。 だが改造の時は、頑張って主導権を取り返し誰にも悲しみを与えないようにしていた。 いつも改造後に聞くあの声を出していたのも本当はタミューラルだ。 絶望し疲れて眠った後には主導権はもうグリンに取られているという状態。 徹夜でビーダとミーマと俺で調べたことである。
「最高だよ」
そう言って、剣を片手に突っ込んでくるグリン。
「クソ野郎がっ!」
ガガガガッ!
様々な方向からくる斬撃を躱し、受け流し、受け止めて防ぐ。 だが力量不足か後ろにどんどん押されていく。
「反撃しろよ、今まで殺すの我慢してたんだからよぉ!」
それでも冷静に対処していく。 そして大体動きが読めたとき、
ここだ!
一瞬剣を下に下ろした瞬間、手首を半回転し先端を地面へ。 そして体制を低くし、真上に振り上げるように縦に斬撃をする。 それに反応して剣でグリンは防ぐも、勢いに押され後ろによろめく。
やっぱり重いなぁ……!!
刃先を次は真横に向け、しっかりと両手で握り横から一閃をするが、相手はそれを躱すように後方へ軽く飛ぶ。
そして俺はすぐに集中する。 神経を更に細かく集中、集中、集中っ!
「全知よ、戦闘開始だ」
額の紋章が少し形を変える。 そして鼻先まで伸びていたのが、次は目元まで少し伸びる。
「見たことねぇ魔法だなぁおい」
「そりゃあ魔法じゃないですしね」
床を蹴り、下から上へと刀を振る。 だが狙った剣を持つ左手の手首は軽く躱され、相手は剣を斜め下に振る。 それを持ち方を瞬時に変え、手首を曲げギリギリで受け流す。 その後、右に半回転し、剣の先端を振り切った相手の胸に向かって刺す。 が、それを片方の空いている右手で掴み防ごうとする。 それを先読みしていたので、手首を回し刃を右手へ向け、器用に振った。
「んなっ!」
咄嗟に右手を引っ込めるよう動こうとするがもう遅い。 だがグリンの反射神経により、俺は相手の右手の小指と薬指しか斬り落とせなかった。 すぐさま、相手と距離をとるために後方へ飛ぶ。
「やるじゃねぇか、カイン」
痛みを感じないのか、指を斬られたことに全くと言っていいほど反応を見せない。 痛みの感覚共有はしていないらしい。 ってことは、ただ使えなくなっただけってことか。 完全な戦闘不能にしなきゃならないみたいだな。
「あんたが俺の名前を呼ばないでくださいよ。 呼んでもいいのは、俺達の室長、タミューラル室長だけだっ」
「もう死んだがな」
野球のバットを振るイメージで、フルスイングで刀を振る。 相手も剣をより一層力を込め握った状態で振る。 そしてふたつの刃がぶつかる。
ギィィン……
重い。 力量の場合、俺は不利だ。 だが、一時期ホームラン打とうと徹夜で素振りした俺をなめるなよ!
「うおぉぉ……!!」
「ふっ……! そんなに力んじゃってぇ。 かっこいいなぁおい。 ルーダって馬鹿野郎を救うためか? あ?」
………あ?
「てめぇがっ………ルーダの名を……呼ぶんじゃ、ねぇぇ………!!」
俺の反応を見てか、押し合いをしているというのに、面白がって口を動かすグリン。
「あの野郎は馬鹿だよなぁ? 守れなかった小せぇチビを機械になっても抱きしめて泣くんだぜ? 傑作だぁ! しかもそんな馬鹿野郎は落とし穴にまんまとかかり、今は本部地下へ直行さ! あっちに着いたら、あいつも機械にされて挙句の果てに、2体共にスクラップだなぁ!」
「少しは……黙れ」
「しかもよぉ、今まで絶望で満ちていたあの野郎が、小せぇのと出会って変わったよなぁ? 吐き気がしたぜ、気持ち悪すぎかよって! うざったらしくて仕方なかったよ。 だからよぉ、俺が担当の日はな、気づかれないところに傷とか付けて遊んでたんだ。 いやぁ、これがもう楽しくて楽しくて。 そして誰かに言ったらルーダを殺すとか脅したら、ルーダに怪しまれても必死に誤魔化すんだよ。 笑えるねぇ! それとは違い、ルーダはもう気持ち悪いわ。 お前が他人の心配できる権利なんかねぇだろーってのによぉ!」
「ふぅっ………少しは黙れよ」
睨みつける。 これでもかと言うほど、今までで最大の憎悪を込めて。
「おいおい、そんな顔すんなよ。 ……力んじゃうじゃねぇか」
ズガッ……ズドォォン……
いきなり力が爆発したかのように、剣に力が込められ押し負け、吹き飛ばされる。 壁にクレーターができるほど激突する。
それでも立つ。 ふらふらになりながらも立つ。 そんな俺を動かすのは……。
「お前は……俺の大嫌いなことをしたんだな……。 ルーダを侮辱するにも飽きたらず、罪の告白まで堂々するたぁ……いい、度胸じゃねぇか?」
息を荒くして、憎悪が溢れ出す。 殺意が湧く。
「ひとつ、質問だ。 お前は………虐待を、したんだな……?」
「ぎゃくたいぃ?」
「幼き子どもに……傷を負わせたんだな?」
それを聞いて、更に歪むグリンの唇。
「あぁ、もちっるぉっ!」
瞬間的に距離を詰め、顔面に一発、返事の最中なんて気にせず本気の殴りをお見舞いする。 後方へ吹き飛ぶグリン。 刀よりも先に拳が出たのは、説教にはゲンコツと自分の中で割り切られているからだろう。
「ごふっ……な、何故痛みがっ!?」
「俺はブチ切れたよ。 久しいな、この感覚は。 あと、遠隔操作でお前の設定をいじらせて貰ったよ」
ナイスタイミングじゃないか、ミーマ。
そして俺は神経を限界まで集中する。 光が収束する。
「全知よ、最強は我なり、従え、奴をぶち殺す力を! ………共に殺ろうか」
紋章が変わる。 頬まで伸びる。 血の涙が止まらない。 そして、髪の毛が自然に靡く。
「こんの……クソガキゃああぁぁ!!」
すぐさま鼻血を拭い、立ち上がり剣先を俺に向ける。 が遅すぎる。
「その方向に俺はいないよ」
相手の剣にしゃがむ。 それに相手は驚く。 と同時に、刀の先端を剣に付け、少し力を加える。 すると途端に、その剣は剣身部分だけ綺麗に砕け散った。
「なにっ!?」
「脆いね、クソ野郎が使うと剣もクソになるのか」
床に着地し、目に止まらぬ速さで、先程斬り損ねた右手首を斬り落とす。 そして流れるように、先端部分を相手の右膝に向け刺す。 そして抜く。 それに少々悲鳴をあげながらも、剣身のない剣で殴ろうとしてくる。 それを後方に軽く飛んで避け、腕を振り切った直後、走り出して股の間をスライディングし背後に周り、背中の中心位置くらいを貫く。
「ぐはぁ!」
怯んでいる隙に、床を蹴り飛んで、グリンの頭上を踵落としする。 それにまた怯んでいる隙に、グリンの目の前に着地し貫いた刀の刃を握り、勢いよく縦に振る。
「んなっ! がふっ……!!」
ハンマー感覚で、何度もグリンの頭を床に叩きつける。 その後、ストップして、足をかけ無理矢理に刀を自分側に引っこ抜く。 柄などは気にせず引っこ抜くと、それなりの穴が開く。 血が辺り一面に飛び散る。
「ぐふっ……!!」
後方へ倒れ込むグリンの目元を片足で踏みつけ床に後頭部を強打させる。
「クソ野郎、あの子のどこに傷を付けたんだ、あ?」
「ガハッ……知る、か。 殺すなら、さっさと俺を殺せぇぇぇ!!!」
「でもクソ野郎は体借りてるだけだから死なねぇだろ? んじゃ痛みを与えてやるよ。 傷がどこだか分からない以上、切り刻むことにするよ」
「ひぃぃ!!」
喉をまず刺し抜き、斬って、四肢を細かく斬り、後は下から上へズパンと斬り、死ぬ間際に頭を真っ二つにする。
死んだことを確認、大丈夫そうだな。
「あとは雑魚だけか」
3体の監視機械兵がこちらに向かってくる。 グリンの悪足掻きかな。
俺も床を蹴り走り出す。 一体目に近づいた時、素早く一回転して野球のバットのように真横に腹を一閃し、走り抜かずブレーキをかけ、次は背後から首を刎ねる。 そしてまた前から次は両太ももを真横に両断の、真横に3連斬撃をする。 次の2体目はすぐに背後にいたので、半回転して、胸あたりを真横に一閃、そして真ん中に縦に一刀両断する。 3体目は助走をつけて胸の中心に突き刺し、貫通したまま真上に上げ、勢いよくフルスイングし壁に激突させる。 その後、走って距離を詰め、立ち上がる途中に刃を下に向け顔面に突き刺し、そのまま真下へ振り切る。 縦に両断され3体目も戦闘不能。
「ふぅ……」
紋章が薄れ、やがて消える。 力がどんどん抜けてく感覚。
「こんな俺を見たら……ルーダはどう思うのかな」
インカムの通信を開始する。
「こっちは片付いたよ。 今から向かう」
『良かったねぇぇ! 怪我してない!? 大丈夫よね!?』
『早く戻ってきてくれカインっ! ルーダもいない以上、皆心配してるんだぜ!』
「分かったよ。 無事だから、今すぐ行くよ」
『うっす! 了解だぜ! 話はこっち来てからだ!』
「あぁ」
通信を切る。
あぁ、ルーダ。 どうか無事でいてくれよ……。
読んでくれてありがとうございます。
次回はルーダ視点へと戻ります。
落ちた先で、ルーダは……
次回も読んでくれたら嬉しいです。




