囚われた今と過去の暴走
今回は少し長めです。
ルーダ(?)VS……。
楽しんでいただけると幸いです!
歩く足音がただ響く。
どうやら周りには今の所、邪魔な機械兵は一体もいないようだ。 後ろの3人は息を潜め戦闘を見守りながら周囲を警戒しているらしい。
少しづつ近づく相手にようやく気づいたらしい機械兵。
なるほど、一定の距離まで来ると反応するのか。 あぁそれにしても、ワクワクが止まらない。 倒せと本能が疼く。
大きさは普通の人間とほぼ同じくらいで、白と黒の着色しかされていないシンプルなデザイン。 頑丈そうな監視機械兵よりも、いい感じの素材で作られている。そして肩には紋章。 それは戦闘機械兵の証。 戦うためだけに作られた機械兵は、戦闘力も硬さも強さも監視機械兵の倍以上だと考えていいだろう。
「さぁて、始めようぜぇっ!」
歩く足を加速させ床を蹴り眼前の機械兵に向かう。 が機械兵は余裕があるように、その場を動かず左手をこちらに向けた。 そして上腕の皮が剥がれるように開き、左手を囲うように移動。 そして左手にエネルギーは収束するのを感じる。
「なっ!?」
ボンッ
エネルギーの玉が撃たれる。 起動は真っ直ぐだったので軽々それを躱す。 体制を立て直し走る。 次のエネルギー収束が始まった時には、ある程度距離は近づけていた。 次は顔を狙っているらしく銃口となる左手は少し上を向く。 すぐさまスライディングして股の間をすり抜ける。 その瞬間に足首を両方とも素早く剣で斬る。 そして背後に回るが、足首には痕が少し付いただけだった。 瞬時に相手が振り向き、顔面に向かってゼロ距離で発射。 だがそれも予想通りで、発射の直前に体制を低くする。 隙ができた相手の懐に移動し、高く勢いよく飛び、その間に高速で器用に上腕を斬りつける。
ガタッ、ガシャン……
そのまま飛んだ勢いで相手の頭を超えて相手の背後に着地。
「やっぱり接合部分は取れやすかったか」
だが、私の目的はそれじゃない。 最初のエネルギー弾時に溜めて撃つというのが分かり、2度目のエネルギー弾の時は溜める時間がほんの少し長くしていることに気づいた。 よってそこから溜めれば溜めるほど威力が増す、言い換えれば相当長く溜められると言う仮説を立て、スライディングし背後に回り、振り向くまでわざと待ち、溜め時間を伸ばした。 しかもその時の私の背後にあったのは機械兵が守っていた扉であり、その扉は無駄に頑丈そうだったから、相手の溜めたエネルギー弾で壊してくれれば成功となったんだが……
「頑丈だな、あの扉」
扉はエネルギー弾を受けてもかすり傷も何も付いていなかった。
機械兵は上腕を削がれたのでエネルギー弾は撃つことができず、肩から突き出ている出っ張りに手を掛ける。 そしてそれを抜く。
「おいおい、どんな収納方法だよ」
ってことは逆のあれも細剣か。 ったくどんな機械兵だよ。
そんなことを思っている瞬間、床を蹴り機械兵が姿を消した。 否、天井に立っていた。 こちらを見上げている。 足をよく見ると、光輪が小さく足首の近くで回っている。
「魔法かっ!」
喋る暇を与えないようで、機械兵は天井を蹴り頭上に向かって落ちてくる。 剣を振りかぶり、叩き斬る気なのだろうか。 私は瞬時に剣身に片手を添え、その攻撃を受け止める。 体重が倍になったかのような感覚、 沈むように床に押される。 そして私を中心に小さなクレーターができる。 直後、のしかかってきていた重力が軽くなる。 瞬間、視界の隅に相手の足が見える。
ドスッ……!!
「ぐふっ……」
真横から腹を蹴られたらしい。 蹴られた衝撃で体が吹き飛んだ。 ゴロゴロ転がって壁に激突する。 だが機械兵はすぐには反撃せず立ったまま。
「へっ、ただで受けるかよ」
機械兵の首には剣が突き刺さっていた。 先程蹴られる直後、剣を持ち替え蹴られる前に首に刺していた。 そして握ったまま握力と腕力を振り絞り刺さった剣を捻る。 機械の鈍い音が聞こえた瞬間に機械兵に蹴られたということだ。 天才だろ、私。 だが武器が無くなってしまった。 だが、まだある。
「久しぶりにあれやろうか。 痛くて痛くて仕方なくなるけど、あれしかねぇしなぁ!」
口から溢れ出す独り言。 機械兵は剣を頑張って抜き、投げ捨てる。 そしてもう片方の剣も抜く。 双剣。
「禁術人工魔術の最高傑作のひとぉつ! 天才の私だから使える代物! 人工強制発動魔法エラーポイント004、発動を許可する! 起動ぉ!」
思考がぐちゃぐちゃになる。 殺意が殺したいという衝動が溢れ出て仕方ない。 目の前にそれなりに強い相手がいるのだ。 仕方ないだろう!? 殺したいなぁ! なぁ! 目が見開く、ヨダレが垂れそうになる、さぁ、さぁ! さぁさぁさぁさぁ!!!
「……始めよう、ぜ?」
その時、この時だけ彼女は戻るーーーーーーーー
「身体強化」
床を蹴り飛ばす体を動かし、一瞬で相手の顔面くらいの高さで接近。 相手はまだなにも反応はできていない。 そのまま速さに乗っ取り両手で頭を鷲掴みにして、鼻の少し上辺りに、その強烈な速さを生かして膝蹴りをする。 他の人から見たら一瞬の出来事。 そして機械兵は頭は吹き飛ばされなくても、頭を思いっきり引っ張られるように後方に吹き飛ぶ。 それを気にせず、膝蹴りにより勢いを殺した後、床に着地した瞬間、更に壁に激突した機械兵に向かって飛び、腹にめり込むほどのパンチをやり、続けて顎にアッパーをする。 その後軽く飛び、相手の上を向いた顔面に踵落としをする。 そして着地、の隙をつこうとしたのか片腕を上げ剣で貫こうとするが、それを懐に潜り回避。
「硬化」
剣で貫こうとした腕の肩を、硬化した手で貫通する。 その瞬間、もう片方の相手の剣が、私の腕を斬った。 その斬られた腕が、貫通した所から落ちる前に
「瞬間再生」
斬られた腕が磁石のようにくっつき、何も無かったかのように完治する。 その後、後方に飛び距離を置く。 貫通した腕の方の剣を奪い取って。
「これちょっと長ぇな。 改造」
そう言って手を剣に翳すと短剣くらいの長さに変わる。
「お前さぁ、もっと頑張れよ。 本気も出せねぇじゃねぇか」
そう言って刃先を機械兵に向ける。 すると機械兵の貫通した部分が直る。 わざと私が楽しむためにやったんだ。 もう少し遊んでくれよ?
体制を低くし左手を前に、短剣を持つ右手を後ろの方にして構える。 そして床を蹴り、体制を立て直した機械兵へと飛ぶ。 それと同時に右手の短剣を弾き飛ばす。 勢いよく飛び、回転していく。 だが機械兵はそれに気づかずに向かってくる私に対して戦闘態勢に入る。 私は前のめりで機械兵に向かっていく途中で体を大きく一回転させ、その回転にのり回し蹴りを機械兵に向かってする。 それを機械兵は避けて、瞬時に回し蹴りに出した足を掴み床に叩きつける。
「ぐっ……」
そして見下ろすような体制で機械兵は剣を持つ腕を振り上げ、斬ろうとした直後に、先程弾き飛ばした短剣が回転しながら振り上げていた剣を斬った。 これで機械兵は剣を失う。 短剣は勢いが切れ、少し先の床に転がったが、もう刃はボロボロだろうからもう使えない。 機械兵は剣が使い物にならなくなり一瞬戸惑いはしたものの、すぐに拳に切り替え、殴ろうと腕を動かす。 その拳が顔にぶつかる直前に右手は拳を、左手は前腕の肘よりを掴み攻撃を防ぐ。 そして掴まれていない片方の足で、前腕に強く膝蹴りをする。 ミシリと機械が軋む鈍い音を鳴らす。 足を掴んでいた方の手を放し、攻撃をしようとする機械兵。 その拳を後転して回避するが、機械兵の次の攻撃の方が一歩早かったらしく拳はあと数センチの所まで迫っていた。
ズドォン!
床には一切触れず壁に激突した。 壁にはクレーターができヒビが入っている。 が、
「おいおい、それが本気かい。 腕の一本くらい吹き飛ぶと期待して受けたのに、弱い。 弱すぎるぜ。 本当に貴様は戦闘機械兵か? もういいか……」
音速すら越える勢いで機械兵との距離を詰める。
「身をもって我の力を味わえ、そして」
ドドドンッ
機械兵の胴体に綺麗に3つの貫通された穴が空く。 それに機械兵は気づいていない。 両腕は骨となる部分しか見えず、手だけが骨にくっついていると言うような状態。 太もも辺りには、貫通はしていないものの、無数の斬撃の痕がある。 そして、何も出来ずにいる機械兵の頭上を掴み、もう片方の拳を深く握って、振りかぶることなく軽くパンチするように殴る。 すると、まるで工場の単なる作業のように、ただ指で弾いて切り外したかのように、簡単に軽く掴んでいた頭以外、首から下の部分全てを、その一発で吹き飛ばす。
ズドォォォ……ン……
後ろの先程吹き飛び機械兵が激突した場所に首なし機械兵が更に強く激突、めり込んだ機械兵の体を中心に蜘蛛の巣を連想させるように、壁全体に深々と刻まれる。 その衝撃で建物全体が大きく揺れる。 壁が厚いのか数メートルくらい吹き飛ばされた体はめり込んでいる。
グサッ
私は握っている機械兵の頭を一度軽く上に手放し、顔面を拳で突き刺し貫通させる。 そのまま手首にはまった頭を更に上へと投げて、高く飛び穴の空いた頭に踵落としをして床に叩き落とす。 そして頭の落下地点を中心にクレーターができ、その頭上に着地する。
「もう終わりか」
何度も壊れている頭を踏みつける。 そして強く踏みつけ度にクレーターも何重にかかる。 跡形も無い無残な頭を見下ろして、溜息ひとつ。 そして扉へと向かう。
「さすがにこんなかには強ぇ奴ぁいるだろ」
そして扉を軽く弾くと、扉は後方へ吹き飛ぶ。 その先にもうひとつ扉があった。
「あれか」
床を軽く蹴り扉が付いている壁ごと蹴り飛ばし破壊して侵入。 中に居た人間全てを標的とみなし無残に殺していく。
「ここの人間はつまらん。 簡単に死んでいく」
距離を詰めるのも容易くて胴体に穴をいくつか空けただけで死んでいく。 頭を吹き飛ばせば壁に激突し、果実のように潰れる。 四肢は柔らかく手刀で斬れるほどだ。 しかも無抵抗で無慈悲に殺される仲間を助けようともせず、その隙に見捨てて逃げ出そうとする奴もいる。 軽く骨を折ったら喉から甲高い悲鳴ばかりあげて反撃をする様子もなく、それを見た人間の中にも同じように悲鳴をあげる奴もいる。
貴様にはまだなにもしていないと言うのに。 まぁ殺すが。 …………それにしても弱い生き物だ。 私の記憶が正しければ、一番厄介な生き物だったはずだが。
その後も、その部屋に居た人間を片っ端から殺していく。顔の部位全て斬り落としたり、細かく何度も斬りつけたり、打撃を何度も与えたりした。 その時、
「下がれ、戦えない者は逃げろ! 私は元騎士だ! 私が時間を稼ぐから今のうちに逃げろぉ!」
「ほぉ、我に挑むか」
と言って、一瞬で柔らかい肩を片方斬り落とす。 もちろん手刀で。
「あぁ! 俺が……っぁああああああああああ!!!!」
返事をしている間に斬られたことに気づいたのか、悲鳴をあげる。 そして痛みのせいか、その場に尻もちをついてしまう。
「だ、だがぁあ……私はこの程度で……」
ガタガタ震えながら絞り出すように強がる元騎士。
「へぇ……いい位置だ」
尻もちをついている元騎士の顎下を蹴り飛ばす。 後方に吹き飛んで壁に激突。 さっきも聞いたグチャリという果実が潰れたような音が響く。
「ひぃぃぃぃ」
「逃げろぉぉ!!」
「俺らは特部だぞ! 本部に言いつけてやるからな!」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「どけぇ! 道を開けろ! 俺が逃げるんだ、道を開けろクズ共!」
「押すな! 正確に早く出てください!」
「奴はすぐそこだぁ! 早くしてくれぇ!!」
「助けてぇ! 死にたくない死にたくない! 嫌だよぉぉぉぉ」
愚か者共は自分が一番の優先事項らしい。 まぁ逃げられないがな。
「重力操作」
直後、愚か者共は一斉に立ち止まる。
「足が、重い!?」
「なんだこれは! 魔法!?」
「お前ぇ! なにをしたんだ!」
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」
「嫌だ嫌だ死ぬのは私以外だけでいいでしょーがぁぁ」
「おい、どうなってんだよこれ!?」
「ふざんけんじゃねぇ!! てめぇふざけんな! 馬鹿!」
「私に手を出すとはいい度胸ですね! 私は元貴族ですよ!?」
「足よ動けよ俺はなにもしちゃいねぇよ糞が糞が糞がぁぁぁ」
「天罰なのか、これが、この時が定めなのか!?」
「訳分からねぇよ! 雑魚のくせによぉ! てめぇふざけんな!」
「そーだそーだ! 身分をわきまえろ!」
「助けてぇ嫌だよぉぉ死にたくねぇぇ!! あああああ!!」
ひとりひとり喚き散らし始める。 とても癇に障る悲鳴ばかりだ。
「うるせぇな、とにかく死ね」
手刀にエネルギーを込めて、エネルギー弾のイメージを斬撃のイメージに変えて、適当に
「手刀、斬撃弾」
横に手刀を一閃。 すると斬撃がエネルギー弾のように具現化して斬撃を生む弾が発射される。 それに斬り飛ばされる数々の頭。
「これはいいな」
何回か斬撃弾を放ち、悲鳴をあげていた全員の首を斬り飛ばす。
「ふぅ終わった終わっ」
その時、背後から剣を持ち斬りつけようとしてくる男がいた。 気配だけでそれを躱し、手刀で喉を数回斬る。 男は怯み後ろに後ずさる。 何か言っているらしいが上手く声が出せていない。 私は歩いて距離を詰め、正面から顔面を片手で鷲掴み。 少しづつ握力を増していく。 鈍い音が響き渡る。 正面らへんの顔面お骨が数秒後に砕けたので目や鼻を潰す。 そして舌や歯などを……。 出血によるものか男は死んだようだ。 倒れて血溜まりができる。 その時、横の、巨大な機械の上の方から声がする。
「ルー……ダ………?」
その声に、過去の私は消え去る。 落ち着いた気持ちが到来した直後に後悔の波。 ゆっくり、声のした方向に顔を向ける。
見なくても分かっていた。 彼女の声はとても震えていた。 怯えていた。 恐がっていた。 とても震えていた。 その目は。 声は。 表情は。
そうさせている原因は、そうだ。 ごめんね。
あぁ。 罪深き私だ…………。
読んでいただきありがとうございます!
次回はついに、救出……!?
次も読んでくれると嬉しいです!
これからは週に数話程度にしていく予定です。
曜日などはまだ決まっていませんが、よろしくお願いします。




