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半機械は夢を見る。  作者: warae
第1章
17/197

泣いて忘れて

今回は……夢です。

楽しんでいただけると幸いです。

戦いから2日が過ぎる。 俺はどうやら過度の経験値の取り過ぎで体の回復のため一日中寝ていたらしい。 朝目が覚めると、ベッドの横で椅子に座り、姿勢よく眠っているシエルがいた。 ずっと看病でもしていたのだろうか。 看病される程でもないと思うんだが。

窓から涼しい朝の風が入り込む。 意識が完全に覚醒する。 朝日も入り込んできた。 だけど、そんな外の景色より、眠っているシエルから俺は目が離せない。 何故だろう。

「おはよう、シエル」

返事はないだろうと思いながら声をかけてみると、ゆっくり目を開けてシエルが返事をする。

「おはよう……エルト。 ………起きたっ!?」

いきなり正気に戻り、俺の目覚めに驚く。 いやいや、大袈裟な。

「あぁ、起きたよ。 それにしても俺は一日中寝てたのか。 あの戦いから2日くらい過ぎてるなんてな」

「え、何を言ってるのエルト。 エルトが眠りに入ってからもう5日だよ」

「え?」

いやいや、感覚的にはそこまで日は経っていないはず……。 なんだ、この違和感は。 その時扉が開かれる。

「もう起きたのかエルト。 明日まで寝ている計算だったのになぁ。 そして起きた時に、今日が約束日じゃあ! って驚かそうとしたのに計画台無しじゃねぇかよ」

「やっぱり博士だったんだ……あの劇薬は」

「劇薬?」

記憶を探り思い出す。 そうだ、確か戦いの後、回復薬だ的なこと言われて、無理矢理何か飲まされたんだっけ。 なんというご都合主義な展開だよ……。

「ってことで、もう一日寝とけぇ!」

と一瞬の内に腹パンと手刀をくらって意識を落とされる。

「もう、駄目だよ博士。 乱暴しちゃ!」

「てへへっ!」

そんな会話が聞こえた直後、俺は深い闇に意識を落としたーーーーーー

■■■

窓から見えるのは、宇宙。 下を見ようと窓ギリギリまで顔を近づけると、星が見えた。

「危ないですよ、お客様」

「あ、すいません」

乗務員に注意を促され俺は首を引っ込める。 遠くの方の飛行船らしき乗り物からは、窓が割れて、何かが蠢き入っていき、人のようなものが宇宙に出されていく光景を目にした気がしたが、何も感じない。 今の俺じゃ、なにも……。

俺は、何かを忘れているような気がした。

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

焼け野原、空は黒い雲に覆われていて、辺りは火のせいでやたら明るい。 戦争が起こる時代はもう、とうの昔に終わっていたと思っていたんだが。 人々はまだ争い足りないようだ。

「まだ、俺は死ねないっ!」

時間はまだある。 何とかしてこの国から出なくてはいけない。 日本に帰らなきゃ。 死体から奪った拳銃を片手に走り出す。 もう逃げ隠れなど無意味だ。

「うおおおおおおおおおおお!!!」

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

平和な日常が再び帰ってくる。 だけど、どこか物足りなさを感じる。

「なんだっけ……?」

こんなにも静かで平和だったっけ? なんかもう少しうるさかったような気がする。 おかしいな、こんなにも虚ろな心じゃなかった筈なのに。

でも平和はいいことだ。 子供が遠くで駆け回って遊んでいる。 俺にもあんな時間があったはずだな。 女の子が子犬と元気に戯れている。 俺はペットなんて飼ったことはなかったな。 天気がいいからか、外でパンケーキを親子一緒に仲良く食べている。 最近は全然食べてないなぁ。 ベンチで、男女が資料を見合って何かを楽しく話し合っている。 カップルかな、仲良さそうでなによりだ。 元気な老人が、孫らしき少女を肩車して遊んでいる。 すごいな……あの人何歳だろう。 隅っこで、剣を振って修行している人が何人かいる。 剣道かな? 強そうだなぁ。 背を向けているからあまり見えないけど、とてもいい笑顔で誰かと笑い合っている少女がいる。 あぁ、なんか懐かしいな。 俺は犯罪者予備軍かよ。 空は今日も青空。

温かいなぁ。 ………温かいのに、俺は心のどこかで「違う」と思ってしまう。

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

「なに眠ってんだ! 起きろ、死にたいのか!」

「あ、あぁ……すまない」

ここは戦場。 妙な感覚が頭に残りながらも俺は立ち上がり戦う。 危ない危ない、死ぬところだったぜ。

「おら、行くぞ! お前の最強を見したれぇ!」

「当たり前だっ!」

俺は戦友の声に背中を押され、地を蹴り敵軍の兵に突っ込む。 ってあれ?

「武器忘れた!」

「馬鹿野郎!! これでも使っとけ死に損ないがぁ!」

「ナイスだ元教官!」

「黙れ! いいから体動かせ!」

他の戦友が元教官をおちょくる。 俺の手元にタイミングよく短剣が飛んでくる。 俺はそれを上手く受け取り相手の背後に素早く周り、柄頭に手をそっと添えて、心臓へ刺す。 そしてすぐに抜き、体制を低くして背後から襲いかかろうとする敵兵の顎に柄頭を強打。 そのまま流れるように喉元を斬り、下から上へ相手の胴に斜めに斬る。 それでも死なないと思い、そこから瞬間的に胴にバツ印を描くように、上から下へ短剣で斬りつけ、右足を軸に回転し左足で回し蹴りを与える。 後方に敵兵が吹き飛び、こちらに近づいて来ていた他の敵兵2人くらいに当てる。

「さすがぁ!」

「まだまだ行ける、こんなもんじゃねぇ」

戦友が話しかけてくる。

「おい貴様ら、まだ終わりではないじゃろーが!」

「行くぞ!」

「おう!」

戦場を駆ける。 俺は次々に敵を倒して行く……。

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

「死刑が……決定して、しまいました……っ!」

「は………?」

彼はとても悔しげに、後悔と怒りの形相で歯を噛み締め、静かに言った。 なんで、どうしてこうなったんだよ。 なにが、そうさせたっ……!!

「誰だ、裁判長は。 俺がこの手で間違いだと言ってやる」

「駄目です! そんなことをしたら貴方までもが罪を背負う羽目になるっ……」

怒り溢れる俺を、彼は必死に止める。 分かってんだ。 何も変わらないことは、彼も怒りで満ち溢れていることは!

「じゃあ、どうすりゃいい!? この感情、どうすりゃいいんだよ!」

「くっ……っ! 私も……私も同じだ!!!」

誰が見ても悔しいという感情が分かる表情が、そこにはあった。 今この瞬間だけ、彼の全てからは、悔いが感じられた。

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

「早く行こうよ!栄斗(えると)!」

「待ってよ、ミナ!」

僕は、先に走り出す君を追いかける。 集合時間はまだなのに。 まだあいつらも来てないよ、たぶん。

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

雨が降っている。 冷たい、路地裏でもここまでの寒さなのか。

「早く……行かなきゃ」

声は出るものの、傷だらけのこの身体は動かない。 死ぬのか? 俺は。

夜になっても降り続ける雨。 そして、

「大丈夫ですか?」

いきなり瞼を閉じていた視界が明るくなり、目を開ける。 明るさの先には、知らない人がいた。 懐中電灯のようなものを持ち傘をさして、心配そうに尋ねてくる。

視界に写る景色が切り替わるーーーーーー

廃墟となった事件現場、少女がいた。

視界が切り替わるーーーーーー

君は眠ってしまったようだ。 俺も眠くなってきたな。 机に突っ伏して俺は……。

視界が切り替わるーーーーーー

「この身が朽ち果てようとも俺は!」

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

視界が切り替わるーーーーーー

そしてーーーーー

気持ちのいい笑い声、温かい団欒のような、うるさい楽しい日々、君の微笑む横顔、首を吊ったそれ、血がついた手、聞き覚えのある歌、思い出せないもどかしさ、捨てられた人形、神様は居なかった、お別れ、出会い、手を振って、遊ぼうよ、泣かないで。

ねぇ。 さようなら? 悲しいーーーーーーーーーーーー

■■■

「はっ!」

俺は起き上がる。 辺りはまだ暗い。 今の夢は……? 最後、ぐちゃぐちゃだった。 いろんなものを無理に詰めたような、混ぜたような。 呼吸が乱れる。 考えるのは一旦止めよう。

「ん……どうしたの?」

近くにいたシエルも起きたようだ。 起こしてしまったようだ。

「どうして……泣いてるの?」

「え?」

全く気づかなかった。 枕を見ると濡れている。 何故か止まらないんだ。 洪水のように流れ続けている。 分からない。

「大丈夫?」

心配そうに聞いてくるシエル。 こんなことで心配はさせていけないな。 俺はなんとか涙を拭って止めて答える。

「大丈夫だよ、もう寝るよ」

そう言って俺は少し濡れた枕をひっくり返して枕に頭を預ける。

「うん、分かった」

シエルはそのまま再度眠った。 俺はなかなか寝つけないでいる。 さっき見た夢をもう忘れてしまった。 なんとか思い出そうとするが、思い出せない。

「寝るか……」

俺も再度、意識を深い闇に落とした。 そして眠る。

■■■

そして朝、俺は目覚める。 ついに来た。 狡い方法を使ったなんて思いもよぎる約束の日。 2日間の戦い後、あと5日は寝て過ごして、一週間過ぎるって、なんだか無駄なもったいない時間を過ごした感覚だな。

「ってあれ?」

シエルがいない!? 慌ててベッドから出て部屋を飛び出すとすぐ近くに、壁に寄りかかっている博士に会う。

「安心しな。 シエルは今一人でフリクエ中だ。 とびきり安全で長時間かかるやつのな」

俺はその言葉を聞いて安堵する。

「フッ……いいから支度して飯食って早く表へ来いよエルト」

そう言ってニヤニヤしながら奥へ歩いて行った。

「あぁ、今すぐ行くよ」

俺は支度をして朝食を済ませ、博士の元へ向かった。


読んでいただきありがとうございます!

次回は博士とある場所へ……。

次も読んでくれたら嬉しいです。

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