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半機械は夢を見る。  作者: warae
第1章
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決着

今回はついに決着!(サブタイ通り……)

楽しんでいただけると幸いです。

今日は昨日の集まりの時よりも数が少なく感じた。 上位種などに立ち向かう勇気がなく避難したらしい。 南大門周辺の住人には一時的に避難して貰っているらしい。 壇上で男が続ける。

「いいかお前ら! 昨日は数こそたくさんいたが雑魚ばかりだった。 だが今回はそうも行かねぇ! 数十体であるが、その全てが上位種以上、しかもその中には最上位種が数体紛れ込んでいると言う情報だ。 死ぬな! 奴らに打ち勝ち立っていた者が勝者だ! 武運を祈る! 散れ!」

ベテランの強そうな冒険者と参加者達が雄叫びをあげて移動し始める。 なんという迫力だ……。

「俺達も行くか」

「うん!」

シエルもやる気を出している。 俺も頑張らなくては!

『シエル、一番遠い奴を感知しろ』

「分かった! ……発見、データを送るよ」

耳元に手を当てて一瞬で敵位置を把握したらしいシエル。 直後、視界が光に包まれた瞬間、知らない場所にいた。

『テレポート完了!』

得意気にスートが言う。 できればやる前に言って欲しかった。 ちょっと酔った感覚がする。 うへぇ……

『あとは任せなぁ!』

昨日と同様、自分の身体と離れていく感覚。 触覚がどんどん失われていき………操られる準備が完了した。そして俺はあやつり人形となる。

『殲滅開始ぃ!』

数メートル先にいる魔獣族に向けて走り出す。 息を吐き気配を殺す。 足音もできるだけ小さくするよう意識して、背後を未だに見せている魔獣族に近づく。 ある程度の距離まで来た時、上半身を捻り右足から力を入れ次に左足に、と地を蹴り空中で体を捻り視界に写る地面が縦に見える。 両腕を流れにそるように左腕を横に伸ばし、右腕も左腕の伸ばしている方向に伸ばして、体の軸を思いっきり回転させる。 その勢いと腕力、握力で前を向いたままの魔獣族の背中に2本、真っ直ぐな縦の傷をつけようとした瞬間、

ガキィン……

『っ!?』

「んなっ、んだと!」

相手は一瞬で、こちらを振り向かずに大剣で背後の攻撃を防いでいた。 そして、ゆっくりこちらに首だけを動かし睨みつけてくる。 一旦距離をとるため後ろに飛んだ。

『おいおい……こんなレアな奴もいんのかよ』

『は、初めて見たぜ……』

「間違いありません。 分析結果、鬼人種です! 気をつけてください!」

角が額から1本生えている。 紅い模様が所々描かれていて、背は普通の魔獣族でも見られる鱗があり、手首と足首あたりにふさふさの毛が鋭そうに生えていた。 そして大剣を片手で持っている。 威圧感が昨日戦った魔獣族との大きな差を表していた。

『だが、怯まずぶつかるだけだ。 体は私じゃねぇしな! 身体強化!』

「おい!」

鬼人が大剣を素早く振ってくる。 それを左の剣で受け流し軌道をずらし、がら空きの懐へ右の剣を刺そうとするが、瞬時に軌道を変えられた大剣を内側に引き、握りの部分で右の剣の剣先を止める。 止められた直後、今度は左足を軸に半回転し、勢いに乗って右の剣で、大剣を持っている手首を斬り落とそうとするが、それを難なく大剣で塞がれ背後に蹴りを入れてくる。 が、背中に相手の足は当たらず、背後に予測していたかのように準備していた左の剣が足を刺していた。 身体強化のおかげで剣に足が刺さっても反動が一切ない。

『どうだい!』

すぐさま足を抜き、相手は一度距離を置いた、かと思ったらすぐさま、頭上に飛び踵落としを仕掛けてくる。 双剣で立ち向かおうとするが、踵落としの体制で、真下に大剣を突き立てていた。 踵落としが決まらなかった後の攻撃だ。 瞬時にそれに気づき体を動かし、間一髪のところで避けて距離をとる。 先程までいた位置には小さなクレーターと、その中心には大剣が縦に刺さった跡がくっきりと残っていた。 だが鬼人の姿は無く

「どこ行った!?」

『きっとさっきの砂煙の際、気配隠しやがったんだ、ろうっ!』

体制を低くして、いつの間にか後ろにいた鬼人の横一直線の剣筋を避ける。 その剣筋で少し風が吹く。

「うおっ!」

『さすがは戦闘に特化した鬼人種だぜ!』

すぐさま反撃のため、体制を直して振り切った腕を斬りつけようと右腕を伸ばす。 直後、それを予測したように、蹴り上げようと相手の足が上がるが、左の剣で上げようとする足の太ももを刺す。 そして隙が生まれ、伸ばしていた右腕は相手の首へと向かう。 顎を斬ろうとするが、相手が無理矢理力づくで退き避ける。

「シエルは戦わないのか?」

『シエルは情報係だよ! 私に細かい情報をずっと送り続けている。 機械にしかできないことさ』

そうか、シエルが戦闘できればこのまま押し切れると思ったが。

『言っとくがな、シエルが居なかったらこんなに細かい予測戦闘なんてできねぇぜ!』

すると鬼人は地を蹴り、剣を構え突っ込んでくる。 剣先は下を向いているから、下から上へと振り上げる気だろう。 それを避ければ、隙が生まれる! と思った俺が戦っていたらもう死んでいただろう。

距離が詰められた瞬間、下から上へと振り上げるその剣筋を避けた次の瞬間、ものすごい速さで上から振り上げる剣筋に切り替えてくる。 それを双剣両方で受け流し、胸あたりに真横2本斬りつけようとしたが、手首や肘を折り曲げて器用にその技も防ぐ鬼人。 再度距離をとる。

『大剣を気持ち悪いほどに使いこなしてやがる』

『うへぇ、強すぎッスねぇ』

「それを防ぐんですか! 更新、送信、分析再度開始!」

観客のような気の抜けたスートのコメントと、更に集中力を上げ始めるシエル。 あやつり人形の俺はただただ無力感を感じていた。

「大剣邪魔だな」

『同意見だ、あの大剣を何とかするか』

「んじゃ俺に提案あるんで」

と、作戦を話す。

『面白ぇ! いいじゃねぇか、覚悟決まってんだな!』

だがまたも素早く距離をいつの間にか詰めて来ていた鬼人は、空に大剣を掲げ、次はシンプルに縦に両断しにきた。

ウガァァァァァァァ!!!

雄叫びに一瞬怯み、逃げ遅れるのが確定する。 だがその瞬間、双剣を軌道など予測して鬼人に落ちるよう空に両方強く投げる。 そして

「真剣白刃取りぃぃぃ!!!」

ガシィ!

重い……が今は身体強化されている。 しかも今この瞬間だけは俺が俺の身体を使っている。 止めるんだっ! 力がどんどんのしかかってきて押し潰されそうになるのを必死に堪えて、一瞬だけ力が弱まった瞬間

『「今だ!!」』

主導権を入れ替わり、相手の剣先に重力操作をこれでもかってくらいかけて、大剣の剣先を地面に着かせる。 鬼人は大剣を持ち上げようとするが持ち上がらず、その隙に先程投げた双剣が綺麗に相手の両肩に刺さった。 その後、大剣を踏み台に飛び左肩の方の剣を抜かずそのまま肩に沿って素早く斬り抜く。 肩を斬り落とすまではいかなかったが、もう左肩は使えないだろう。 そして大剣を諦めて、素手で襲い掛かってくる鬼人。 その股の間へスライディングして背後に周り、高く飛んで右肩の剣を抜き、肩を踏み台に飛ぶ。 空中、無重力のように一瞬の時間、世界が反転してるように見える。 目の前には厳つい鬼人の顔。 その空中での一瞬で双剣を一本の片手直剣に変えながら振る構えをし、反転した世界に立つ鬼人の首を、地面と並行に剣を振り、跳ね飛ばした。 時間が遅くなってるような感覚だった。 そのまま、体を回転させ地面に着地。

「すげぇ……時間が止まったかのような感覚……」

てか相手の肩から飛んで顔の前に一瞬出て、その瞬間にトドメ刺すとか、他人から見たらほんの一瞬だったろうな。 博士、化け物。

『あばよ、貴重な鬼人種くん』

「終わったね……ふぅ」

「おつかれ。 まぁ俺は一度しか出てないが」

『お、終わった? トイレ行ってたらもう終わってたとか何か複雑だな』

皆で戦いが終わったことに祝い合っていた。 ひとりはなんか別の雰囲気だが。

『いやぁ、久しぶりにこんなに疲れたなぁ』

その時

オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

新たな鬼人種がそこに倒れている鬼人の死体の近くで叫び声をあげていた。 そして俺達を睨みつける。 その目は悲しみと怒りが混濁したような目だった。

「キサマらが殺ったのカ!!」

と大剣を拾い上げ剣先を向けてくる。 その直後

ブゥン……

いつの間にか元に戻っていたキューブからモニターのような画面が空中に映し出される。 そこには博士が写っていた。 そして何故だか、それに気がついた怒りを露にした鬼人の表情が凍りつく。

『おい貴様、誰に剣を向けているんだ?』

「っ!!!」

『勝手に我が領域に入ったのはどちらか明白だろう? しかも立場上でも……。 貴様はそれでも我に剣を向けるか? 鬼人種よ。 貴様の判断がどのようなことに繋がるか良く考えてから、行動に移した方が良いではないのか? なぁ、鬼人種よ』

さっきまであんなに怒りに震えていた鬼人が、今じゃ震えて怯えているようにしか見えない。 何を言われている?

「今ハ引こう。 だが仇はかナラズ……」

『仇? ほぉ、愚かな挑戦者よ、また我に挑むか?』

「クッ……すまナカッた……」

と言うと鬼人は姿を消した。

「博士、分析不可だったんだけど、何を話してたの?」

『うーん……内緒だ! なに、つまらねぇ話さ! うっし、じゃあ帰るぞ!」

「………?」

俺は首を傾げたまま帰る。 やはり博士は何かを隠している。 そう確信した。 何故なら、さっきの会話は俺には何故か聞こえていたからだ。 何故シエルが分析してみても分からない会話を俺が聞けたのか。 疑問が、博士との約束した日に語られると俺は自然に思った。 別にそれは確信じゃないが、そんな気がした。 何としてでも、その日まで生きなくては。

次の日、無事に群れの全滅が報告される。 あの強さの魔獣族を倒せるほどの実力者が多数いることに俺は驚きを隠せなかった。 と思ったら最上位種は俺達のところの鬼人種だけだったらしい。

読んでいただきありがとうございます!

次回は…………夢?

次も読んでくれたら嬉しいです。

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