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取り調べ②

 次に呼び出されたのは真中信吾だ。

 真中は被害者である井田と共にサッカー部に所属していた。


「真中さん、あなたは昨日夜十一時頃に何をしていましたか?」

「部屋で明日の準備をして、後は漫画などを読んで眠くなるまで時間をつぶしてました」

「誰かと一緒にいたというわけではないんですね?」

「部屋で一人でいたんで。さっきも聞かれたんですけど、俺の部屋は二階にあって、家には家族がいたから、家から出ようとしても家族に気づかれますよ。まあベランダからロープを伝って出ていったって言われればそれまでですけど」

「ふむ」


 隼人は今の言葉をメモしておいた。


「次に被害者は誰かに恨まれたり、あるいは妬まれるような覚えはありませんか?」

「あいつは誰かに恨まれるような奴じゃありません。あいつとは中学からの付き合いで、高校に入ってからも一緒にサッカー部で活動してきたし、そこでもチームメイトや監督からの信頼も厚かった。クラスでも誰にでも分け隔てなく接しているし、皆あいつのことはいい奴だって言ってますよ」

「ふむ。まさにクラスの中心人物のような存在だったわけですね」

「そんないい奴が、誰かに恨まれたりするもんか。でも、そんな奴だからこそ妬まれることはあるかもしれません。でもそれは少なくとも俺らのグループにはいない。それは断言しますよ」

「わかりました。お話ありがとうございます」


 次に呼び出されたのは吉野貴子だ。

 吉野は言わずもがな、ミステリー研究会に所属していた。


「吉野さん、あなたは昨日夜十一時頃に何をしていましたか?」

「その時間はもう寝ていました。私は基本的に夜更かしはしないので、夜十時にはもう就寝するんです」

「健康的でいいことですね。被害者は何か恨みを持たれたり、あるいは妬まれるような覚えのある人でしたか?」

「恨みとか、妬みについては私はよくわかりません。人によって思うことって違うし、なんでもないことが、人によっては琴線に触れているかもしれないので」

「ほう、曖昧なことを話しますね」

「ええ。ただ、私は犯人がどんな理由で殺人をしたのか、何となく見当はついています」

「それは本当ですか!?」


 隼人が身を乗り出した。


「まあ、私の勘違いかもしれないので、まだ話せませんが」

「いや、何かに気づいているならぜひ話してほしい。些細なことでも、間違っていてもいいから」

「……」


 しかし、吉野は話そうとはしなかった。


「なぜ話そうとしないんです? 殺人の動機に心当たりがあるのは、もしかしてあなたが犯人だからですか?」

「そんなわけないですよ。私が犯人だったらこんなことは言いません。ちょっと確認したいことがあって、それが当たってたら話します」


 そういって吉野は自分から教室を出ていった。


「……ふー。まあとりあえず取り調べを終わらせてからにするか」


 そして最後に呼び出されたのは、遠野菜々美だった。

 遠野は剣道部に所属していた。


「まず聞きたいのは昨日夜十一時頃に何をしていたかという点なんですが」

「夜十一時……、その時間はもう寝ていたと思います。トレーニングをして疲れていたので」

「トレーニングとは?」


 隼人が質問をする。


「私剣道部に所属していて、大学も推薦で入ることになっていたから、体がなまらないように毎日欠かさずにトレーニングしているんです。昨日も日課を終わらせてから就寝したので、多分その時間は寝ていたんだと思います」

「なるほど」


 隼人は次の質問に移った。


「被害者はあなたたちのグループとは親しかったようですが、何か彼は恨みを買うようなことをしていたり、妬まれるようなことは?」

「個人個人の間で何かあったのかはわかりません。ただ、私は彼が人から恨みを買うような人間ではないと思っています。だから殺されたとしても、恨みを買ってではなくて無差別的なものなんじゃないかなって思います」


 遠野は自分の意見をはっきりと主張した。


「昨日被害者と最後に会話をしたのはいつですか?」

「うーん、HRが終わって下校時間になったときに、一言挨拶を交わしたのが最後だと思います。その後私は日課のトレーニングに行きましたし、その後のことはわかりません」

「そうですか……」


 隼人は頭を悩ませる。


「となると、最後にアクションを起こしたのは水瀬聖奈とのゲームでの対戦か……」

「えっ?」

「あ、いやなんでもありません」


 自分が呟いているのがうっかり漏れていたことに気付いた隼人。


「……」

「それで次の質問ですが……」


 その後も取り調べは続いた。




 これで一通りの取り調べは完了した。


「それで、何か収穫はあったかな?」

「うーん、まとめてみないと何とも言えませんね」


 榊が取ったメモを見ながら頭を悩ませる式。


「そうか。僕はこれから被害者の自宅へ行くが、君たちもあまり遅くまで残らないようにね」

「はい」

「じゃあこれで失礼するよ」

「あっ、一つ聞いていいですか?」


 立ち去ろうとする隼人を呼び止める。


「なんだい?」

「被害者の井田さんの携帯って、ロックはどんなタイプのものでしたか?」

「指紋認証とパスワード認証を選べるタイプのものだ。だから犯人が殺害した後、被害者の指紋を使ってスマホを開けることは可能だ」

「そうですか。ありがとうございます」

「では失礼するよ」


 そう言って隼人は急ぎ足で立ち去った。


「式くん、今まで手に入れた情報をまとめてみましょうか」

「そうだね」

「では図書室にでも行きましょう」


 式と榊は図書室へと向かった。

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