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取り調べ①

 式たちが事件現場に向かうと、相変わらず隼人をはじめとする刑事たちが現場を捜査していた。


「隼人兄さん、調査は順調ですか?」

「君たちか。こっちは特に新しい情報はないな」

「私たちは水瀬さんと瀬尾さん、吉野先輩から話を聞いてきました」


 榊は隼人に三人から聞いた情報を教えた。


「なるほどね。まあこの後改めて取り調べをするから、その時にもう一度確認してみるよ」

「これから行うんですか?」

「ああ、先生たちにも話をして、容疑者候補である六人以外の生徒はとりあえず下校させることにした。これからその六人を一人ずつ呼び出して取り調べを行おうと思う」

「その取調べ、私たちも同席したいのですが」

「同席させるのは無理だね」


 隼人はきっぱりと断った。


「取り調べは空き教室を利用して行うから、その隣の部屋から聞いている分には僕は口出ししないよ。それで譲歩してほしい」

「それで十分ですよ」

「すまないね。あんまり表だって協力すると、いろいろ上からうるさくて」


 確かに、普通の高校生に捜査を協力するという行為は、警察側からしたらいろいろと問題があるはずだ。

 むしろここまで譲歩してくれている隼人に感謝するべきだ、と式は思った。


「じゃあ早速取り調べに行こうか」


 式たちは隼人についていき、取り調べに向かった。




 まず最初に呼び出されたのは、瀬尾高広だった。

 瀬尾は文芸部に所属しており、過去にはコンテストで受賞した経歴もある。

 ちなみに事件の詳細については、事前にある程度伝えられているとのことだ。


「あなたが瀬尾高広くんですね?」


 呼び出した男子生徒に尋ねる。


「はい」

「早速聞きたいことがあるんですが、あなたは被害者と最後に通話した人間です。その時の会話内容を教えてほしいんですが」

「昨日の通話ですか。そんな大したことは話してないんですよ。あいつ優香と付き合っていたんですが、最近うまくいかないことが多いみたいで、そのアドバイスを話してたんです」

「優香というと、あなたたちのグループの一人である福村優香さんですか?」

「はい。あの二人が付き合っていることは全員知ってたし、たまにデートしていたことも知っていました。でも学校を卒業したら二人とも進路がバラバラになるから、最近それも相まって仲がちょっと悪くなってるみたいで」

「なるほど……」


 その辺りの話を聞く必要がある、と隼人は考えた。


「それで、被害者は福村さんに関してどのように言っていましたか?」

「最近ギスギスしているけど、本音では仲直りしたいって言っていました。自分に非がなくても、とりあえず謝った方がいいんじゃないかってアドバイスしたんですけど……」

「ほう」

「刑事さん、俺たちだけ取り調べするってことは、俺たちの中に犯人がいる可能性が高いってことですよね。俺は正直優香が犯人じゃないかって思ってるんです」

「その根拠は?」


 はっきりと言い切る瀬尾に対し、隼人は尋ねる。


「ここからは俺の推測になるんですが、健二は昨日の夜に優香を呼び出して、仲直りをしようとした。でも結局うまくいかなくてトラブルになってしまい、優香は健二を殺してしまった、こう考えているんです」

「ふむ……」


 隼人は少し考えた後、


「あなたの考えはわかりました。今後の捜査の参考にさせていただきます」


 と答えた。


 次に呼び出されたのは福村優香だった。

 彼女は軽音楽部の幽霊部員であった。


「福村優香さん。聞くところによると、あなたは被害者とお付き合いをされていたとか」

「は、はい。健ちゃんは何故こんなことに……」


 涙ながらに話す福村。

 嗚咽混じりで普通に話すのも難しそうに見える。


「昨日最後に被害者と会った、あるいは連絡をしたのはいつですか?」

「一緒に下校して、彼が私の家まで送ってくれたんです。それで、『また明日ね』って言って、健ちゃんも『そうだね』って返してくれて、それで……」


 その後は何を話しているのか、隣の部屋越しに聞いていた式たちには聞こえなかった。

 これでは取り調べにならないな、と隼人は思いながらも、


「最後にひとつだけ、昨日夜十一時頃は何をされていましたか?」


 と尋ねた。


「き、昨日は大学へ入学する前の課題を少しやった後、そのまま眠りました」

「……わかりました、ありがとうございます」


 これ以上情報を聞くことはできないだろうと判断した隼人は、次の人物を呼び出すことにした。


 その次に呼び出されたのは水瀬聖奈だった。

 水瀬は元吹奏楽部所属だ。


「では水瀬さん、あなたは昨日夜十一時頃なにをしていましたか?」

「えっと、その一時間前まで、殺された井田くんと対戦ゲームをしていました。切りのいいところで終わらせて、明日の準備をしてそのまま寝ました」

「ゲームというのは?」

「えっと、携帯型ゲーム機でプレイできる対戦ゲームです」


 水瀬はそう言って鞄からゲーム機を取り出し、隼人に見せた。


「これで被害者とゲームをしていたと」

「はい。ゲーム内に対戦記録なども残っているので、それを見てもらえたらわかると思います」

「わかりました。こちらは預かってもよろしいですか?」


 水瀬は一瞬考えた後、


「……大丈夫です」


 と答えた。


「被害者は何か恨みを持たれるようなことをしていた覚えはありますか?」

「井田くんとは高校から知り合ったので、それ以前のことはよく知りませんが、一緒に遊んだりして悪い人じゃないってことはわかってます。高校に入ってから友達ができなかった私にも気さくに話しかけてくれたし、彼のおかげで私も今のグループに入れたようなものなんです。だから卒業も皆一緒にって思ってたんですけど……」

「なるほど」


 その言葉に隼人は頭を悩ませた。

 これまで話を聞いていると、どれも被害者は恨みを持たれるような人間ではない。むしろ皆から好かれるような存在だ。そんな人物が殺されるとなると、恨みというよりも妬みの方が強いのかもしれない。

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